Erdbeere ~苺~ 戦いの中に平和あり 忍者ブログ
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2025年03月09日 (Sun)
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2014年08月23日 (Sat)
平和なひとときを、過ごそうか
(逆ハー:分岐(土方・沖田・斉藤・桂):甘々:ギャグ:※ヒロイン視点)

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相変わらず、殺伐とした任務が多いもんだ。
別に嫌なわけじゃないが、あまり続くと気が滅入ることもある。

気分転換に何かないものかと歩いていた私は、珍しく外で稽古している土方を見つけた。

土方は何もない時間を、よく部屋の中で過ごす。
ま、私達が見てないだけで、彼も彼なりに修行をつんでいるんだろう。


何もない空間に響くのは、土方の刀が風を切る音。

そして草木が風にそよぐ、平和な音が混ざる。


私は土方に気付かれないよう土方の後ろに回ると、静かに樹の根元に腰掛けた。
木陰が涼しい。土方が流す汗が、光り輝いて地面に落ちる。

・・・鬼の副長。こうやってるのを見てればかっこいいな、なんて。


「何をさっきからじろじろ見ているんだ」


気づいていないと思っていたのは、どうやら私だけだったらしい。
後ろを振り向くこともせず私にそう問いかけた土方は、さすがというべきか。

私はゆっくり立ち上がり、土方にそっと歩み寄った。
そのまま、持っていた布を土方に投げつける。


「汗、ふけよ。ずっとそれじゃ気持ち悪いだろ」


私の言葉で自分の汗に気づいた土方が、渡した布で汗を拭った。
涼しげな顔で汗を拭う姿は、何も知らない人なら一目惚れするほど美しい。

私は土方のことを知っているから、”美しい”というよりは”穏やか”だと感じた。

土方はいつも厳しい表情をしているからな。
じろじろと土方のことを見ていたのがばれ、土方からギロリと睨まれる。


「・・・・何をそんなに見ている」
「ん?い、いや、たまにはそういう穏やかな表情もいいな、なんて・・・・ぬおっ!?」


からかうように言ったのがバレたのか、持っていた刀をゆっくり振り上げられ、私は慌ててその場から飛び退いた。

危ない。反応が遅れたら普通に顔を切られたかもしれねぇ。
それでも涼しい表情のままの土方に、私はひくっと顔を引きつらせる。

こ、こいつ・・・!!


「余裕の表情してんじゃねぇぞこの鬼畜野郎ッ」
「馬鹿にされたような気がしてな」
「気のせいだって!ったくひでーなー。私は褒めてるんだぜ?いっつも眉間にシワがよってるから、今みたいな方が・・・うあぁああっ!?」


二度目。

振り上げられていた刀がまた振り下ろされる音を聞いて、私は悲鳴を上げた。

反応が遅れ、やばいと思った矢先に刀が止まる。
止まった刀は私の頭の上。
切る寸前で綺麗に止まっていた。

その刀に反射して、土方の綺麗で―――少し恐ろしい笑みが輝く。


「何か言ったか?」
「い、いえ・・・なんでもないです・・・・」


こいつ、本気だ。
さすが鬼の副長だと心の中で毒づけば、それすらも感じ取ったのか刀を引く際に柄の部分で一発頭を殴られた。

じんじんと痛む頭を押さえながら、これ以上余計なことを言わないように口を閉じる。
すると土方が、刀を収めながら上を見上げた。


「・・・そろそろ昼か」


つられて上を見上げると、太陽が真上に登りかけていた。
私は今日、これから何もない。だから時間すら気にしてなかったが。


「今日、なんかあるのか?」


時間を気にするということは、なにかあるんだろう。
そう考えた私の問いに、土方が答える。


「あぁ、祇園に盗人集団がいるらしくな。かなり手練らしい・・・その任務で私達は動く」
「へー。手練な盗人達か・・・ま、最近荒れてるし、そういう奴らがいてもおかしくねぇのかもなー・・・・」


この街が乱れ、荒れていることなど今更のことだろうけど。

そんな冗談言う気にもなれなくて、私はじっと土方の顔を見つめた。
土方は私の言葉にもまったく表情を変えず、私を見ている。


「土方ってほんと表情変わんねぇよなー」


何を考えてるのか、分からない。
そんな所がちょっと怖くもあるのだ。

何に怒りを覚えるのか、何に不機嫌になるのか。

土方との会話で、分かることが無い。

土方とは長い付き合いになるが、私の言葉で本気で怒ってるのかも分からないし。
考え事をしていたせいでぼーっと土方の顔を見つめることになった私を、土方とは違う声が叩き起こした。


「おい、あけはいねぇのか!」


ちょっと慌ただしい感じの呼び声。
あの声は、斉藤だ。


あけ!」
「うるせぇなー。こっちだよ、中庭の方ー」


斉藤が大声を出して探しまわる、というのも珍しい。
大声に対して返すと、斉藤の足音がすごい音を立ててこちらに向かってきた。

何をそんなに慌ててるんだ?と。

土方と顔を見合わせ、苦笑する。


あけ・・・っ。探してたんだ」


息切れした斉藤が、私の腕を掴んだ。
突然のことに、私はそのまま斉藤の力に引っ張られる。


「土方、邪魔して悪いな」
「・・・・いえ、別に」
「ふっ、そんな不機嫌な顔してなに強がってやがるんだ?」
「・・・・早くつれていったらどうです?」
「じゃあ、ちょっと借りるぜ。あけ、ちょっと来てくれ」
「あ、あぁ・・・?ぬおおお!?引っ張るなっ!」


二人の会話を理解出来ないまま、私は斉藤の引っ張る方向へついていくことしか出来なかった。






























何も言わず、ただ私を引っ張る斉藤。
普段の斉藤も言葉足らずなところがあるが、今日は更に言葉足らずだった。

無言で、ただひたすらに私を引っ張っていく。

何かあったのだろうと無言で着いて行けば、斉藤の向かう先に蹲った一人の隊員が見えてきた。


血は、流れていない。
ただ顔色が見えない以上、斉藤が連れて行きたい先はあの隊員の場所なのだろうと理解出来た。

斉藤から手を離し、うずくまる隊員に駆け寄る。
すると真っ青な顔色をした隊員が顔を上げ、私を見て驚きの表情を浮かべた。


「え・・・あけさん!?」
「ん?どうした。あー、これ肩切られてんのか。ちゃんと止血はしてたんだな。よし」


土方にあげた布と別な布を取り出し、躊躇なく千切る。
そのまま千切った布に持っていた薬をつけ、傷口を押さえた。

隊員がくぐもった声を漏らすが、手は止めない。
このぐらいの傷なら、薬をちゃんとつければ治るからな。

傷口を布を確認しながら、最後に止血布を結び直す。


「こんなもんか」
「あ、ありがとうございます・・・・」


治療を終えて後ろを振り向けば、心配そうな表情をした斉藤と目があった。
新選組で、こういう生真面目なやつって珍しいかもしれない。


「終わったぜ、治療」
「助かった・・・俺はこういうの、苦手なんだ」
「あー、なるほどね」


あの止血布、だいぶ結び目汚かったのはそういうことか。
ガタイのいい男が困っている姿は、なんだか可愛らしい。

そんな私の心がバレたのか、少し笑っていた私に斉藤がグイッと顔を近づけた。
「何笑ってんだ?」と低い声で囁かれ、思わず顔が引きつる。


「あ、い、いや・・・ね」
「そんなに俺が心配するのが可笑しいか?」
「怒んなよ、そうじゃねぇんだって。不器用なんだなーって思っただけだよ」
「・・・・馬鹿にしてんのか?」


子供を扱うように、斉藤の手が私の頭をがしっと掴んだ。
そのままわしゃわしゃとかき回され、私は必死にその手を止めた。

だが、所詮は女の力。

めいっぱい髪の毛を乱された私は、必死に髪の毛を整えながら斉藤を睨みつけた。


「っ~~~何しやがる!!」
「お前が馬鹿にするからだ」
「のやろう・・・覚悟は出来てんだろうな!」
「お?なんだ?やる気か?」


斉藤の髪の毛を狙って両手を構える。
対抗するように斉藤も拳を構えた瞬間、後ろから陽気な声が響いた。


「なんやー?二人して喧嘩かぁ?俺も混ぜてや」


その声は、後ろを振り向かなくても誰だか分かる。
私と斉藤は声の方向を見ること無く、その声の持ち主に返事を返した。


「喧嘩じゃねぇ」
「そうそう。これはサシの勝負・・・・よ!!」
「!」


斉藤の隙を突き、勢い良く髪の毛をかき回す。
それから声の持ち主である沖田の方に逃げ、べーっと舌を出した。

沖田はそんな私と斉藤を見比べ、ニヤリと笑う。


「なんや、仲ええのう」
「あいつが私の髪の毛こんなにしてくれたからな・・・仕返ししただけだ」
「羨ましいことするのぉ、一ちゃん。そんじゃ俺も」
「あ、おい!!?」


背中に隠れていた私の頭を掴み、沖田の手が私の髪の毛をぐちゃぐちゃにする。

・・・・こいつら、馬鹿にしやがって・・・!!!


「てめぇら、ぶっ飛ばされてぇのか・・・・!!」


乱れた場所を押さえながら、笑う斉藤と沖田を殺気を込めた目で睨みつける。
そんな私を見て、沖田が苦笑いしながら私を宥め、斉藤はそそくさとその場から逃げ出した。

っくそ。絶対仕返ししてやる。

特に逃げた斉藤は絶対に許さねぇ。

再び乱れた髪を整えながら、残った沖田を睨みつける。
すると沖田は楽しそうに歪んだ笑みを浮かべ、私の耳元に顔を近づけた。


「まぁそう怒るなや。面白い話、持ってきたんやで」


面白い、話?

その単語に、私は少し嫌な予感を感じた。

沖田の面白い、はズレていることが多いからだ。
血に染まった羽織を見て、ズレてないと思える方がすごいか。

つまり。


「面白い、話?」
「そや・・・・骸街に、最近騒がせとる人斬りが潜伏してるっちゅう話や」


―――こういうことだ。

沖田の面白い話は、血と狂気に染まった話がほとんど。
暴れるのが大好きな沖田にとって、人斬りを相手に出来るのは嬉しい事なのかもしれない。

だが別に、私はそうじゃない。


「あー、はいはい。行ってこいよさっさと」
「なんや?楽しい話やろ~!?なんも無いんやったら、俺と一緒にきぃや」


人斬り退治、か。
どうするか悩んで空を見上げれば、太陽が西側へと傾き始めていた。

昼を過ぎたら、用事は何もない。
仕事が無い以上、ここにいる必要もねぇわけだ。


どうするかしばらく悩んだ結果、私は






「たまには刺激もいいか」と、沖田に着いて行くことにした。


「わりぃ、これから土方の手伝いだから」と、土方を手伝いに行くことにした。


「斉藤に復讐しにいくから、遠慮しとく」と、斉藤を追いかけることにする。


厄介事は避けて、一人でぶらぶらする。
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