Erdbeere ~苺~ 8章(4)悲しみの真実 忍者ブログ
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2014年09月10日 (Wed)
8章(4)/※ヒロイン視点

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小さなみすぼらしい店。

その部屋の奥に居た村井―――ジングォン派の生き残りは、狭山に話を聞かせてくれた。

ジングォン派の事件。
実は生き残っていたと言われる人たちのこと。
そしてその生き残りの、正体。


私はただ静かに話を聞いてた。
話を聞けば聞くほど、狭山の動揺が広がっていくのが分かる。

震える声で、話の続きを促して。

でも、出てくる話は全て、狭山の心に突き刺さるようなものばかりだった。
生き残っていた人物はボスの女房と子供。


つまり狭山の読みが正しければ、ジングォン派の生き残りという説を考えるなら、その生き残りの子供は・・・。


「その子供の父親を殺したのは誰なの?」


その質問に答えられるのは村井じゃない、桐生だ。
ジングォン派との抗争。関わっていたのは風間の親っさん。

私だって、知ってる。

拉致されてたのもあって、話が飛び飛びで整理が出来ない。
どうにか自分の頭の中で話を結びつけようとして、私は桐生たちに背を向けた。


つまり、狭山の両親が死んだのがその時期。
ジングォン派の生き残りの中にいた、子供。

となると、狭山の父を殺したのは、抗争に関わっていた親っさん。


・・・なんか、納得いかない。

私の情報不足なだけか?誰がどう絡んでるのか分からねぇ。


勝手に一人でモヤモヤしていると、上から足音が聞こえてくるのに気付いて眉をひそめた。
話をしている最中の桐生の方まで下がり、肘で小突く。


「・・・っ、なんだ」
「なんか、来てる」


その私の言葉と同時に、無数の男たちが部屋に入ってきた。
男たちは容赦なく無関係の人たちを差し、私達を見つけて微笑む。

ジングォン派、だ。

私は村井を庇うように立ち、男たちの動きを警戒した。

ジングォン派のことはよく知っている。
この身でも味わった。あの容赦無さは、油断してはいけない。


「お前たちには感謝してる。・・・この裏切り者の居場所を突き止めてくれたんだからな」


片言の日本語で喋りだした一人が、村井を指さした。
やっぱりジングォン派ってのは怖いんだなって思ってた矢先、私の方めがけてナイフが飛んでくるのを見て、咄嗟に村井を引っ張ってその場に倒れこんだ。

後ろに刺さる、鋭いナイフ。
刺さっていれば完全に死んでいた。・・・ったく、なんて野郎だ。


桐生の苛立ちが強くなる。
背中を見ているだけでも分かった。

桐生特有の威圧感、それが感じられたから。


「郷田会長の居場所・・・吐いてもらおうか」
「その前にあの世に送ってやる!!!」


始まる、戦闘。
相手はそれぞれ本気で殺しにくる武器を持っているが、桐生はまったく動じず彼らを相手にし始めた。

さすがに、こんな戦闘の中に狭山を飛び込ませるわけにはいかない。

今にも戦いに参加しそうな狭山を止めた私は、不満そうな表情を見せる彼女に対して一つの「とっておき」を取り出して笑った。


「あなた・・・」
「さすがにあの中じゃ、私達は足手まといだ。だから・・・・」


とっておき。
普通の催涙スプレーに私なりの手を加えた、強力催涙スプレー。

私はスプレーを手に取り、桐生の死角から攻撃しようとする敵を絞り込んでスプレーを噴射した。

苦しむ間に武器を蹴落とし、桐生に有利な状態を作っていく。


あけ
「・・・・任せろ」


武器がなくなれば、私達でも手が出せるようになる。
狭山と目があった私は同時に頷き、武器がなくなったやつから私達で処理を始めた。

人数は10人ほど。
でも、所詮は私達の敵じゃない。

桐生と私には、強い連携力がある。

狭山にも、私達に合わせる力があった。


―――あっという間、だ。


武器を持った男たちは次々に倒され、武器を無くした人間は私達の足元に転がった。
桐生が乱暴にその中の一人を掴み、殺気のこもった声で脅す。


「郷田会長の場所を言え!!!」


その瞬間。

私達の隣に居た村井が、突然腹を押さえて血を吐き出した。

慌てて村井の方を見れば、お腹に突き刺さる1本のナイフ。
抱えようと近づいた次の瞬間には男たちの悲鳴が聞こえ、次々に男たちが血を吐いて倒れた。

毒、だ。

襲ってきた男たちが皆、謎の粉を飲んで―――血を吐いている。


「これが、掟・・・」


ジングォン派の、掟。
酷い組織だとは聞いていたが、まさかここまでとは。

死に際にナイフで刺された村井は、助けを求めることもせず、一人で将棋盤の方へ向かった。

苦しそうにしながらも、その表情は”死を受け入れている”表情をしている。


「人を不幸にした男が、人並に生きようと思ったのが・・・間違いやったんや」


飛び散る血。
動けぬまま、村井を見つめる狭山。


「・・・・はじめから、死んどけばよかったんや」


その言葉を聞いて、狭山はどう思うのだろうか。
この男の話が本当で、狭山がもし本当にその子供なのだとしたら。

・・・辛い、だろう。


「あの世で、おふくろさんに・・・娘さんは立派になったと報告しとくわ・・・・」


狭山は、何も言わない。
そのまま村井は、覚悟を決めたように自分の腹部を見つめ


「幸せに、なるんやで・・・・」


静かに、ナイフを深く差し込んだ。

血を吐いて倒れる村井を見ても、駆け寄れる力も無い。
狭山の表情がただ痛々しくて。
よろけながら歩き出す狭山を止めたのは、桐生だった。


「・・・おい」
「ッ・・・・」


桐生の手が肩に触れた瞬間、狭山は乱暴に桐生の腕を振り払った。

強い瞳が、桐生を睨みつける。
何か言いたそうにしばらく睨んだ後、結局何も言わなかった狭山は、そのまま桂馬から飛び出していった。


知りたかった過去を知って。
しかもそれが、こんな地獄で。

まるで自分のことにように、胸が痛む。
しょうがないのかもしれない。それは桐生も同じだからだ。

桐生の、身近な人が関わっていた、事実。


「・・・・追いかけるぞ」
「・・・・あぁ」


今はとにかく、話をするしかない。
私は追いかける決断をした桐生に何も言わず、着いて行くことを選んだ。





































狭山はただ静かに、川辺のベンチに佇んでいた。
それを見つけた桐生もただ静かに、川を見つめていた。

この空気に、自然と唇を噛みしめる。

なぜなのだろうか。
この二人に流れる空気が、私達との間に流れるものと似ていると感じるのは。


・・・ばか、だな。

こんな時まで嫉妬するなんて、私は馬鹿だ。


気付かれないように自分の頬を引っ叩き、私は冷静さを取り戻す。
桐生がゆっくりと、ひとり語りのように過去を話し始めたのを見て、私はその話を聞くことにした。


「・・・聞いて、くれ」


桐生が話し始めたのは、私も知っているジングォン派との抗争話。

といっても、私が知っているのは情報の部分だけ。
あの時実際その場に桐生が居たのなら、私が知らないこともたくさんあるだろう。

私も、知りたい。
そう思って聞き続けていた。


桐生の過去。
風間のおじいちゃんの、過去。


「あのクリスマスの日、俺は・・・ひまわりに来ない親っさんが気になって、一人神室町に向かったんだ」


クリスマスの夜、風間の親っさんがひまわりに来ないのを気にして、追いかけた桐生。
その日が、その襲撃の日だった。

組の方針に逆らい、ジングォン派を逃すつもりだった風間のおじいちゃん。


そうとも知らずに様子を見に行ってしまった桐生が、勘違いして敵の前に飛び出し、逃すつもりだったジングォン派の人間を――――殺すことになってしまったこと。


私が知っている抗争の裏側。
桐生がどんな表情を浮かべてるかはここから見えないが、声はとても落ち着いていた。


「俺がその男・・・お前の父親を殺したようなもんなんだ」


狭山は無言で立ち上がると、桐生を無視するかのように別方向へと歩き出す。


「撃たないのか?」


怖いほど、冷静な声。
狭山の足音が、止まる。

もし撃つのなら、悪いが私は空気を読まずに飛び出すだろう。
狭山の恨む相手が桐生だとしても、私が守るべきは桐生なのだ。

敵になったって、構わない。


「どんな償いでも・・・するといったろ」


もしもの時のために、私は徐々に二人へ近づいた。
桐生の言葉に苛立ちを隠し切れない狭山が、振り返りざまに叫ぶ。


「カッコつけるのもいい加減にして!!!・・・親の仇を取らせれば、自分の犯した罪が軽くなるとでも思ってんの!!??」


悲痛な叫びに近かった。
桐生は何も言わず、ただ川を見つめている。


「罪を償うから俺を殺せだなんて・・・人はそんな簡単に割り切って生きていけないのよ」


狭山の弱さを、見たような気がした。

本当にそっくりだ。
昔の、私に。

いや今の私も、変わってないのかもしれないけど。


強がっても変わらない。
たとえなんだって受け入れると思っていても、耐え切れないことあってある。

狭山がその場から去るのを見届けてから、私は静かに桐生に近づいた。


「・・・・桐生」


何も喋りかける言葉がない。
今の彼に必要なものが、見つけられなかった。

慰め?
共感?

どれも、意味を成さないのが目に見えている。


「・・・・」


私も桐生と一緒に、その場に佇んだ。

ただ、その場にいるだけ。
静かに時間が過ぎていくのを、一緒に感じるだけ。

桐生は私に邪魔だとも言わなかった。

きっと邪魔じゃないんだと、プラスに考えながら寄り添い続けた。










































どれぐらい、時間が経っただろう。
私達はあれからずっと、川の傍から1歩も動かなかった。

しばらくして、雨が降り始める。
それでも桐生は動かない。

冷たい、雨。

雨に打たれるのが、意外と気持ちよかった。


「・・・・」


私も、相当やられてたんだろうか。
ここのところ色々ありすぎて、それなのに。

桐生と狭山の関係に、頭をかき乱される。

流してくれるなら、流してくれ。
このまま、私のモヤモヤも全部。


「・・・・・」


・・・でも、このままってわけにもいかねぇな。

雨脚はどんどん強くなり、私達を濡らす。
ずっとここにいたら、風邪を引くかもしれない。

そろそろ戻ろう?

勇気を出してそう言いかけた時、桐生は足元に転がってきた誰かの酒を拾っているところだった。


「すんません」


みすぼらしい服装の男が、謝りながら酒を取りに来る。
私はその光景を何も不思議がらず見ていた。

そう、静かな、鈍い音が聞こえるまでは。


――――。


一瞬だけだった。
嫌な音が、桐生の方から聞こえて、私は思わず「え?」と声を出していた。

ぐちゃりと、まるでゲームか何かから聞こえるような音。
男は酒を受け取らず、そのまま私の隣を素通りしていく。


「桐生・・・・?」


ふらつく桐生を支えようと前側に回ると、そこには長いドスが刺さっていた。
左腹に刺さるドス。

それをあろうことか、桐生はふらつきながら・・・抜いた。

飛び散る血を見て混乱した頭が戻ってきた私は、慌てて自分のポケットからタオルを取り出し、傷口に巻きつける。


「ばっか!!!なにしてんだ!!!!」


むちゃくちゃだ。
ほんと、馬鹿。ふざけんな。ふざけんなよ・・・!!!

手につく血を気にすること無く、私は桐生の肩を抱いて歩き出した。
向かうは葵。

ここから少し遠いけど、止血で間に合う内に!!


「ざまぁ・・・ないな・・・・」
「馬鹿いってんじゃねぇっつってんだ。さっさと歩け」
「・・・・ありがとな・・・あけ
「しゃべんな!!!」







































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