Erdbeere ~苺~ 9章 それは私がいらない世界 忍者ブログ
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2024年11月15日 (Fri)
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2014年09月12日 (Fri)
9章/※ヒロイン視点

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桐生を葵に運んだ時、私の見知らぬ男が座っていた。

そういえばあんな男のことを、伊達さんから聞いたような気もする。
瓦、だっけか。あいつは何なんだ?

そこら辺の話は、私の頭の中で整理できてないから分からねぇが。


それよりも今は。
私の見上げた先にある――――大阪城。


「・・・・・」


桐生の治療をした時、ジャケットのポケットに入っていたメモ。
そこに書かれていた言葉に導かれ、私はここにいた。


メモに書かれていたのは

「お前の大事な子供を預かった 千石」という言葉。


このメモを見た私は、桐生が必ず無茶をすると考え、桐生が起きるよりも前に外に飛び出した。
そしてすぐに情報網を使い、千石の居場所を突き止めたのだ。

一人で来て何が出来る。
そんなこと一切考えなかった。

・・・やっぱり私は、こうやって後先考えず突き進むのが似合ってるらしい。


「来てやったぜ?」


千石がいるという情報の元、私は大阪城の目の前に立っていた。
だが大阪城には、どこにも入り口らしき場所が見当たらない。

騙された、のか?

いや、まだ決め付けるには早い。裏口があったりとか・・・。


「・・・・え?」


色々悩んでいる内に、自分の足元が揺れていることに気付いて足を止めた。
地震か!?と思って周りを見るが、私の周り以外はそんなに揺れている様子は見えない。

もしかして。
嫌な予感を感じながら大阪城を見上げた私は、ありえない光景に口をぽかーんと開いた。


間違いなく。
間違いなく、動いてる。

私じゃない。

大阪城、が。


「・・・・・なに、これ」


大阪城から現れる、黄金色の城。
そこには私の探していた扉があり、私は驚きを隠せないままその扉に近づいた。

一体、どうなってるんだ。

城が動くなんて、どういう構造なんだよ。

い、いや今はそれよりも、遥を探すことが大事だ。
混乱した頭を落ち着かせるために深呼吸をした私は、自分の顔を両手で叩いて気合を入れた。


「っしゃぁ・・・やってやるぜ」


敵のど真ん中だろうと関係ない。

これ以上、桐生が傷つくのは嫌なんだ。
カッコつけに見えても、桐生だって人間。
身体だけじゃなく心にも傷を負う。


どっちも傷ついた今の桐生を、こんな戦いの場所に出したくない。

避けれる戦いのためなら、私は自分自身を差し出す。


狭山と桐生のことを、悩んでる暇はない。
私自身にできる事をするしか無いんだ、今は。


「・・・・よし」


強がりかもしれない。
それでも、構わない。

城の中に侵入した私は、数々の不思議なギミックを回避しながら慎重に進んだ。


「どう、なってるんだ?」


敵の基地のはずなのに、警備はほとんどいない。
時々いる警備も、そんなに強くなかった。

ナメられてんのか?

こんなの、桐生が来たらどうするつもりだったんだ。


「私だったから助かったな・・・・」


警備の男を細道に引き込み、急所を狙ってかかとを落とす。

男は鈍い呻き声を上げ、その場で気を失った。

城の中は、本当に城かってぐらい悪趣味で、広い。
神経を使い続けて進むのは、肩が凝る。


「・・・・にしても、悪趣味だな」


この城が、千石とかいう男の事務所なのだろうか。
それなら本当に悪趣味だ。

目に入る鎧。
備え付けられた銃。
金ぴかな内装。

落ち着かない。
目が、痛い。


私はこの劣悪環境に耐えながら、千石が居るであろう城の上を目指した。

私の考えは、ビンゴだった。
城を登れば登るほど護衛は数を増やし、私の体力を奪っていく。

この奥だ。
遥は桐生の力じゃなく、私の力で助ける。

いつまでも支えてもらう私じゃ、いられねぇんだ。


「おらぁ千石ッ!!そこにいるんだろうが!!!」


何枚目かの扉を蹴り破った時、私の目の前に見覚えのある姿が現れた。
でもその姿はいつものように明るい姿ではなく、口をガムテープで塞がれ、手を縛られている痛々しい姿。

その姿に、ギリッと唇を噛みながら犯人を睨みつける。


「噂に聞いとっただけはあるなぁ。アンタが桐生っちゅうやつの女かい」
「さっさと遥を返せ」


ふくよかな、メガネを掛けたごっついおっさん。
千石の第一印象は、そんな感じだった。

もちろん、第二印象なんて無い。
これから私がこいつを、倒すのだから。


「従わねぇなら・・・どうなるか分かってんだろうな?」


相手に見くびられないよう、動揺を隠す。

表に出す表情は冷静さと冷酷さ。

正直、怖いさ。
敵のど真ん中にいるんだ。殺される可能性だってある。

それでも私は引くことを選ばず、拳を構えた。
戦う気満々の私を見て、千石が嫌な笑みを浮かべる。


「まぁ待てや。ここでアンタをやってしもたら、桐生の首取るのが大変そうやからなぁ」


余裕の、表情。
飛び込めば、千石に手が出せる位置。

・・・いや、まだだ。

檻で囲まれたこの部屋に、何か仕掛けがある可能性も考えて、私はあえて動かなかった。
私の警戒心に気付いたのか、千石が扇子で仰ぎながら大声で笑う。


「さすがや!・・・でもここで、少し痛い目、見てもらおか」


檻が動く音が聞こえ始め、私は慌てて後ろに下がった。
今来た扉を背に、敵の姿が見えるまでここで。

ここ、で。


「・・・・え」


今回、ここに来て何度目の反応だろう。
すっとぼけた反応。自分でも笑えるぐらいだ。

でも。

私の目の前に現れた”敵”は、もはや”人”ではなかった。


「ワシのペットや。ま、さすがに食い殺さんようにはなっとるが・・・・オイタが過ぎると、食われるかもしれへんなぁ」


檻からゆっくりと出てきた、二匹の虎。
一瞬で冷静さを失いかけた私は、静かに息を吐いた。

慌てるな。

相手も、生き物だ。

いや、生き物だけど、こんなのどうしろってんだ!
相手は人間なんかじゃ比べ物にならないぐらい獰猛な、野獣だ。


「っ・・・・」


ビビらないほうが、可笑しいだろ。
そう開き直って冷や汗を浮かべた私は、笑う千石を睨むことしか出来なかった。

どうすればいい?
虎の目は、確実に私を捉えている。

殺すつもりはないなんて、そんなの嘘に決まってる。

たとえ躾されてるペットであっても、こんな。


「グゥゥウ・・・・」
「っ!!!」


カタン、と。

背を向けていた扉が音を立てた瞬間、虎が反応して私に牙を向いた。

まったく覚悟の決まっていなかった私は、間抜けにもその場に尻もちをつく。
食われる。食われるぐらいなら、足掻くしか―――ない。


「っちくしょう!!!」


大口を開けて迫ってきていた虎に、持っていた薬の瓶を投げつけた。
もちろん、ただ投げつけるだけじゃない。ちゃんと口を狙う。

対人間用の、神経の痛みや痺れを狙った薬が、野獣に効くのかなんて分からない。

分からないけど、せめて口の中で割れてくれれば。


「・・・・」
「・・・・」


しばらく様子を見るが、瓶を飲み込んだであろう虎は元気に私を見ていた。
変な空気が虎と私の間に流れ、そして。


「ガァァ!!!」
「うわぁああっ!!」


痺れを切らしたかのように、二匹の虎が一斉に私に対して襲いかかった。
口を開け、鋭い牙が私の目の前に迫り、爪が食い込む。

終わりだ。

終わるぐらいなら、遥を助けたい。


「なめ、んなよ!!!!」


虎に勝とうなんて思わない。
不可能を可能にしようなんて、思わない。

ただ、やるだけは、やる。
私は自分に襲いかかっている虎の首元に蹴りを入れると、虎が怯んだ隙にその場から抜けだした。

戦闘態勢に入った虎は、確実に私を仕留めようと目を光らせている。

私もそれを見て、1発で確実に仕留めようとポケットを探った。


「・・・・」


私の目的は虎じゃない。
―――千石だ。

敵の本拠地だからと、張り切って薬を持って来たかいがあったぜ。

虎と睨み合うふりをして、私は徐々に千石の方へ近づいた。
やれるのは1回だけ。失敗すれば噛み殺される。


「やんなっちゃうね、ほんと」


虎がもう一度私を食い殺そうと飛びかかってきた瞬間、私は千石の方へと身を翻した。
持っていた瓶を投げ、遥だけでも助けようと手を伸ばす。

だがそれは、ただ虚しく宙を掴んだ。

背中に鋭い痛みが走り、目の前が霞む。


「そないなありきたりな方法、ワシに通用するはずないやろ。アンタのことも、調べ済みや。情報屋の鷹さん」


千石は私の薬を吸わないように蹴って飛ばし、私から距離を離した。
遥の痛々しい表情が、私の意識をぎりぎり繋ぎ止める。

背中に食い込む、虎の爪。
ふと軽くなる背中。

あ、結局私は、ここに死にに来てしまったのか。

悔しさと、どこか心が軽くなる情けない感情を感じて、私は目を閉じた。




































「いつまでそうやってるつもりだ」


意識を無くしたつもりだった。
でも、私は起きている。はっきりと意識が残っている。

一体、何が?
痛みに耐えながら後ろを振り返れば、鬼の形相でこちらを睨む桐生が居た。


「桐生・・・・」
「ったくてめぇは・・・俺の話を本当に聞かねぇな」
「お、お前刺されてるんだぞ!?お前のほうがむちゃくちゃだろ!」
「うるせぇよ。後でまたお仕置きだ」
「なっ・・・・」


そう軽口を叩く桐生は、襲い掛かってくる虎の額に一発、重たい拳を叩きつけた。

ゆっくりと立ち上がれば、さっき私の背中にのしかかっていたであろう虎が床に転がっている。
そして今、桐生の拳を受けた虎も、ふらつきながらその場に崩れ落ちた。

これが、堂島の龍の力。

私が一切太刀打ち出来なかった敵に、一切恐れを抱くこと無く倒すその姿は、本物の龍だ。


「な、なんや・・・わりゃバケモンかい!?」


そんな桐生を見て怯えたのか、千石が震えながら遥を奥の部屋に引きずり込む。
私達も慌てて後を追いかけ、千石が逃げていったであろ部屋の扉を蹴破った。


「・・・・りゅ、龍司・・・・」


蹴破った先も、金ピカの悪趣味な部屋。
でもそこには千石だけでなく、見覚えのある男の姿があった。


「龍司、お前なんのマネや・・・・」


千石の席と思われる場所に座っていた龍司は、刀を持ったままゆっくりと立ち上がる。
相変わらず誰とも比べられない威圧感を放つ龍司に、千石も少したじろいだ。


「このおっさんの遊びに付き合わされて・・・・ほんま、ご苦労やったな」


龍司の目には、千石など映っていなかった。
私と桐生と交互に見つめ、それから私の方に近づくと、私の傷ついた手を見て眉をひそめた。

触れた手が、私の手についていた血を払う。
痛みに小さな声を上げれば、龍司がイラついた顔で千石の方を向き直った。

そして。


「がぁっ!?」


一瞬。

龍司は何も言わず、ただ無言で千石に対して刀を振るった。
綺麗に左胸を切られた千石が、震えながら後ろに下がる。


「な、んの、マネや・・・」
「ワシも目的のためならなんでもする男や・・・やが、餓鬼を人質に取るのは性に合わん。その上この女を傷つけるんは、もっと許されへん」
「親の、七光のくせ・・・しよって・・・!」
「・・・黙れやボケが!!!」


怒りの声と同時に、龍司の刀が千石の腹を貫き、千石は力を失って城から身を落とした。
悲鳴が遠ざかっていくのを聞きながら、龍司は刀の血を払い、私達を睨む。


「とうとう明後日や。・・・ワシらは、総力をあげて神室町に攻めこむ」


ああ、やっぱり。
優しさと見えるものがあっても、彼の頭の中は戦いでいっぱいなんだ。

戦いたくないとか、そういうのはない。
ただ桐生が傷つかなくて済むなら、戦いがないことに越したことはない。

でも避けて通れない戦いなら。

私は龍司にでも、容赦しない。


「覚悟はええな?・・・アンタも、はようワシの女になる覚悟を決めとくんやな」
「っ・・・な、なにいってんだ!」
「言うたやろが。・・・ワシは諦めへん」


龍司が私の方に手を伸ばすと、それを阻むように桐生が私を背中側に庇った。
それを見た龍司が、面白く無さそうに舌打ちをする。


「ま、ええわ。・・・ほな」


龍司の背中を見送りながら、私は遥の手を縛っている紐を解いた。
口元を塞いでいたガムテープは、桐生が優しく外す。

そのまま、遥の頭を愛おしむように撫でる。
遥は泣くこともせず、ただ私達に笑顔を見せた。


「信じてたよ、おねえちゃんも、おじさんも・・・来てくれるって」


ほんとに、遥は強い。
強すぎて私が情けなくなるほどに。


「すまなかったな・・・遥」
「いいの。それよりもおねえちゃん・・・背中、大丈夫?」
「ん?まぁ、深くないみたいだから、大丈夫だ」


腕と背中に負った爪の傷。
じんわりとした痛みはあるが、特に問題は無かった。

まぁ、それが通じないってのは、分かってるけど。
嫌な予感がして桐生の方を見れば、今までにない表情で私を睨んでいた。


「ひっ」
「無茶するなという約束は、お前に意味ねぇみたいだな」
「しょ、しょうがねぇだろ・・・お前だって・・・!」


腹の傷が。

そう言いかけた瞬間、桐生が呻き声を上げてその場に倒れこんだ。
慌てて駆け寄り、肩を抱く。

腹の傷、やっぱりまだ大丈夫じゃないじゃねぇか。
小さくそう怒った私の耳に、一つの足音が響いた。


「大丈夫?傷が開いたのね」
「・・・・さや、ま」


私から桐生を奪うように肩を抱いて立ち上がらせたのは、狭山だった。
いやもちろん、私を気遣ってのことだろう。

でも、それでも、私は狭山の存在に、大きく動揺していた。

落ち着き払った表情。
優しげな瞳で、桐生が狭山の方を見る。


ぞくりと、心がざわつく。

今はそれどころじゃないんだ。
そう言い聞かせても、心は聞いてくれない。


「傷?大丈夫・・・おじさん?」
「大丈夫よ。すぐ良くなるわ。早く帰りましょう」
「・・・・・」


遥も、狭山を怖がること無く受け入れ、すぐに二人についていった。

っくそ。本当に情けない。
違うんだ。考えちゃいけないんだ。


しばらくその場に取り残されていた私は、遥の「おねえちゃん~?」という可愛らしい声に呼ばれ、歩き出した。

三人が見える場所に着く頃には、このモヤモヤを忘れよう。
心の中で一人、そう呟いてから。






































嫉妬と、今すべきことと。
(私の頭の中は、ぐちゃぐちゃになっていった)
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(龍如/オール・海賊/剣豪)