いらっしゃいませ!
名前変更所
仕事はする。
でも、めんどくさい説教は話は・・・嫌い。
敵側に潜伏し、情報を引き抜くだけ引き抜いて殺すという簡単な任務。
その任務で不覚にも傷を追ってしまった私は、渋い顔で屯所に入るのをためらっていた。
何故、か。
理由は簡単だ。
土方が私が傷つくことにうるさいから。
何故かうるさい。失敗にもうるさいのに。
てかもう全部にうるさいのに。
「・・・はぁ」
でも入らないと、傷の手当も出来ない。
覚悟して屯所の中へと入った私は、土方に見つからないよう遠回りをして自室を目指した。
怪我した腹部が、歩くたびに少しだけ痛む。
それでもその傷を悟られないように歩いていた私を、あまり聞きたくない声が引き止めた。
「なんだぁ?餓鬼じゃねぇか。まーた遊びほうけてきたのか?」
「・・・・お前と一緒にするな原田。仕事帰りだ」
”餓鬼”という一言にカチンと来て、思わず刺々しく言い返す。
するとそれが面白かったのか、原田は厭味ったらしく私の前に立ちふさがって笑みを浮かべた。
でかい原田が立ちふさがると、私は何も出来なくなる。
腹の痛みで、更に苛立ちも増していく。
少し遠くで沖田が見ているが、手助けどころかこの状況を楽しんでいそうな目だったので期待は出来なさそうだ。
仕方なく顔を上げ、原田を睨みながら刀に手を伸ばす。
「斬られたくなかったら退け」
いつもなら立場上、私が上だからこれで退いてくれるんだが。
刀に手を伸ばした私を見て、原田は大げさに手を上げると、1歩引きながら笑った。
「いやだなぁ、そんなに怒るんじゃねぇよ”インチキ補佐さん”」
完全な、嫌味。
あまり戦いの場に出ない私を、原田はインチキでのし上がった野郎だとしか思ってないんだ。
無視すればいいだけの嫌味。
でも今日は、そんな余裕が無かった。
危険な道をわたって情報収集して来ているからこそ、カチンときて。
――――挑発に乗って、そのまま刀を抜いた。
「いいぜ?そんなに手合わせしたいならやってやるよ」
「・・・へぇ、やっと俺に負けてぼろぼろにされる気になったのかよ。気が変わる前にさっさと来いよ”餓鬼”」
原田が構えたのは、背負っていた槍。
傷のことも忘れ、私も刀を抜いて天念理心流の構えを取る。
「じゃ、こっちから行かせてもらうぜ・・・・!」
槍を大きく振り回した原田は、やる気充分で私の方に向かってきた。
私は静かにその様子を見守る。
当たり前だ。あんな大振り、ぎりぎりでだって避けれる。
今は集中して、隙を見つけるんだ。
私の目の前まで迫り、振り下ろされた槍を、寸前のところで受け止める。
「どうした!?反応が遅いぜ!」
「・・・うっせぇな。お前みたいな無駄な動きしてると疲れる」
もう一度。
2度目に振り下ろされた槍は、私に回避されて地面に突き刺さった。
そのまま私の刀で突いて押さえつける。
そしてその上に飛び乗り、槍の上で片足立ちをしてやった。
「どう?」
「・・・・っ。てめぇ・・・・!!」
原田が怒りの表情を浮かべると同時に、槍が私を乗せたまま上に持ち上がった。
すげぇ馬鹿力だな。ま、利用してやるまでだけど。
「よっと・・・・」
持ち上げられた力で跳躍した私は、一瞬で原田の背後に回り込んだ。
原田が慌てて槍を構えようとするが、あんな大振りを繰り返して間に合うはずもなく。
振り返る寸前の原田の首に、私の刀の切っ先が触れた。
「・・・・で?終わり?」
「・・・・・このクソガキ。手ぇ抜いてやれば良い気に・・・・」
「手抜いたの?あぁ・・・そういえばお前、銃と槍使うんだっけ?勝つためなら手段選ばねぇとか言ってたもんな。でも」
意地悪い笑みで、突きつけた切っ先をゆっくり下ろしていく。
そしてその切っ先が腹部ぐらいまで来たあたりで、一瞬にして刀を持ち替え
「銃持ったぐらいじゃ変わんねーよ」
柄部分を原田の鳩尾に突き刺した。
「ぐはっ!?」
突然の攻撃に、原田の巨体が沈む。
苦しそうに咽る姿を見て苛立ちが消えていくのを感じ、私は満足しながら刀を収めた。
「これに懲りたら、ちゃんと仕事してるやつに悪口を言うのはやめるんだな」
遠くで見ていた沖田に勝利ポーズを見せれば、一瞬笑顔を見せた後、何故か急に表情を引きつらせてどこかへ行ってしまった。
あれ?今日なんか時間が決まってる任務あったっけ。
慌てて時間を確認しようと空を見上げれば、そこに降ってきた声に、私が沖田と同じような表情を浮かべることになった。
「何をしてるんだ?これは」
聞き慣れた、低い声。
状況が状況なだけに、嫌な冷や汗が流れる。
「・・・何をしてるんだと聞いているんだが?あけ」
「・・・・しゅ、修行を、ちょっと」
「ほう?私は任務が終わり次第、私のところへ帰還するようにと言っておいたはずだが?」
「・・・え?あ、いや、ほんといま帰ってきたばっかりで」
「私のところへ帰還するようにと言ったはずだが?」
言い訳は許さない、と。
謎の威圧感が私の冷や汗をどんどん増やしていく。
崩れ落ちていた原田は今までにない土方の冷たい声に違和感を覚えたのか、目を盗みながら徐々に距離を開け始めていた。
それを止めたい気持ちでいっぱいだが、後ろにいる土方の威圧感で無駄口を開けない。
「あの・・・・な、土方」
喧嘩していた、といえば一番簡単ではある。
でもそれじゃあ、挑発に乗った私が結局怒られるわけで。
そうこうしている内に原田は逃げてやがるし。
っくそ!!痛い!!土方の視線が見なくても痛い!!
・・・・ん?痛い?
「・・・・っ」
忘れてた。
嫌な痛みが左わき腹に走る。
「・・・・」
「あけ?聞いているのか?」
「き、きいてるけど、あの、ちょっと1回部屋に・・・・」
「ほう?そうやってまた逃げる気か?何度もお前には説教中に逃げられたんだ。そう何度も騙されるとは思うな」
他の隊長格とは違い、私と土方の付き合いは長い。
そして一応特別な関係でもある。だからか説教も長い。
でもそれ以上に、気付いてしまった腹部の痛みは、私を強く焦らせた。
この傷がばれたら、もっと説教が長引く。
それだけはゴメンだ。
「い、いやあの、お花摘みにいきたいなーなんて・・・」
「・・・・嘘だな」
「うぐ・・・・」
「何年お前と一緒に居たと思っている。良いからさっさと来い」
ああもうこれは。
諦めるしか、ねぇな。
観念して土方の方を振り向いた私は、左わき腹に異様な熱を感じて足を止めた。
確認するように触れてみれば、止血用に縛っていた布が無い。
生ぬるい、感触。
ばれるばれないの問題じゃなく、これは。
「・・・・や、べ・・・・」
「・・・?おい・・・!?どうした!?」
私の異変に気づき、土方が駆け寄る。
駆け寄った土方の手には、私の腹部から溢れでた血がべっとりとついた。
それを見て、土方の目が細められる。
「お前・・・・」
「・・・い、いや、これは・・・」
「傷口はどこだ!なぜちゃんと止血をしない!」
土方が持っていた布をちぎり、私の傷跡に当てた。
「勿体ねぇ」なんて呟けば、一瞬にして土方に睨まれる。
あーあ、それにしても、ただの傷にしてはなんか・・・変だ。
頭がくらくらするっていうか、なんていうか。
力が入らない。大量出血ってわけでもねぇし、なんだ?
「ひじ、かた」
「ん?どうした」
「な、んか・・・・へん」
土方の手を握るが、感覚がない。
痺れてる?
「あ・・・」
「っ・・・まさか・・・!」
しまった。
ちゃんと、傷口を見とくんだった。
痺れと、薄れていく意識と。
切られた刃に何かが塗られていたのだという考えに至る頃には、私の意識は暗闇へと沈んでいた。
意識の外で、土方の悲痛な呼び声を、聞きながら。
・・・眩しい。
久しぶりに目を開く感覚。
ゆっくりと目を開ければ、そこには眠そうな顔の平助がいた。
「・・・へい、すけ?」
「・・・・ん・・・あ!!やっと起きたんですねぇ。ほんと、心配させないでくださいよ」
平助の傍に転がる、薬と水と布。
どれだけ看病されていたのだろう。
あれからの記憶が一切ない。
私は、倒れて、どうなったんだ?
「まったく・・・あけさん、無茶しすぎですよ。傷が浅いからって油断してたんでしょうけど、軽い毒が塗られてたんですよ?」
「そう、だったんだ・・・・」
「ま、あんな泣きそうな顔の土方さんなんて初めて見れたから、いいですけど」
「え・・・?」
泣きそう?
土方が?
嘘だろ?と驚いた表情を浮かべれば、平助が笑う。
「あはは、やっぱり意外ですよねぇ。でもあけさんが熱で苦しんでた時、泣きそうな顔で俺に看病頼んで来たんですから」
平助の話を聞いて、少し顔が熱くなるのを感じた。
慌ててそっぽを向いた瞬間、後ろから静かに襖の開く音が響く。
「平助、あけの様子は・・・」
「あ、いいところに。ちょうど起きましたよ、土方さん」
「・・・・そうか。すまなかったな、平助。もう下がっていい」
「はいはい。おじゃまですよねー」
「「平助!」」
平助の意味ありげな言葉に、私と土方が同時に声を上げた。
そんな私達を見て、平助は楽しそうに部屋から逃げ出す。
二人きりになった部屋で、私は土方の顔を見ることが出来なかった。
だって泣きそうだった、なんて。そんなこと言われたら。
・・・恥ずかしいじゃねぇか。
それに、すごく申し訳ない。
「・・・・あ、の・・・土方。ごめん、な」
まだ、顔は上げれない。
土方が私の隣に来るのを感じても、私は俯いていた。
「・・・・あけ」
「・・・ん?」
「私に申し訳ないと思うのなら、顔をあげたらどうだ?」
「・・・・うるせ」
すぐそうやって意地悪を言う。
むかついたけど、今の私に逆らう権利はなかった。
土方の手が、私の顎に添えられる。
導かれるように上を向けば、すぐに感じた熱。
「ん・・・」
啄むだけの口づけ。
それだけでも顔が暑くなるのを感じる。
なのに、土方は容赦なく私の唇を割ろうと舌を押し付けてきた。
抵抗の意味を込めて離れようとするが、土方の手が後頭部に回ってきて逃げられない。
「・・・っ」
涙目になりながら拳を固めると、ようやく土方が少し唇を離した。
だがそれは、逃がす気のない、ただの休憩で。
「・・・お前に拒否権はない。観念しろ」
「や、やだ・・・」
「なら・・・観念させてやるまでだな」
また、口づけられた。
必死に唇に力を入れるが、土方の手が腰をそっとなぞって私から力を奪っていく。
くすぐったさに身を捩り、少し力を緩めたところで入ってくる舌。
もう抵抗しても意味ないだろうと身を任せていれば、入ってきた舌が好き勝手に私の全てを貪る。
苦しいと胸を叩いても、土方の力は緩まない。
段々と抵抗する力すらも奪われ、震える手で土方の服を掴んだ。
「ん、ん・・・・っ」
「・・・っは・・・どうした?もう降参か?」
「・・・・ばか、殺す、きか・・・」
息を整えながら、土方を睨みつける。
土方は私の睨みを、意地悪い笑みで返しながら私の頬を撫でた。
「私を心配させた罰だ」
「・・・・ごめ、ん」
「あぁ・・・悪いと思うならこのまま私の好きにされていろ」
「っ・・・性悪だぜ。泣いてたくせに」
「・・・・平助から聞いたのか?」
「あぁ。・・・って、平助を怒るのは無しだぜ?」
鬼の副長。
皆から恐れられているであろう彼の、涙。
それを見れるのは、おそらく私だけであろう。
ちょっとした優越感に浸りながら、土方の腰に手を回す。
「・・・・どうした?今日はやけに甘えるな」
「いいじゃねぇか、たまには。弱った時ぐらい」
「なら・・・・」
一瞬で視界が変わったかと思うと、私は布団の上に押し倒されていた。
息が掛かるぐらいの距離に顔を近づけられ、恥ずかしさで目を瞑ることしか出来なくなる。
ずるい。
なんてことも、もう言えない。
唇に感じる、触れるだけの温もり。
焦らすような手の動き。
着物を器用に開き、腰から足をそっとなぞる。
その動きに身体を震わせれば、土方の唇が耳元へと移動し、クスリと笑った。
「ん・・・っ」
「ふっ・・・随分と可愛らしい反応をするんだな」
「・・・そういうこと、いうな」
「・・・・もう黙っていろ。看病代に今からお前を貰う。それでいいな?」
「いいな?じゃねぇよ・・・拒否権ねぇくせに・・・・」
「・・・よく分かっているじゃないか」
「意地悪いぞ・・・・」
悪態吐きながらも、私の全ては土方に飲まれていく。
もう、抵抗は、出来無い。
ゆっくり目を開けた先に土方の意地悪い笑みが見えて、私は諦めたようにため息を吐いた。
どうぞ、ご自由に。ふてくされたようにそう言えば、土方が低い声で囁いた。
(「気に入らんな、もっと可愛らしい反応が出来るようにしてやる」)
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