Erdbeere ~苺~ その鮮やかな笑顔の裏で 忍者ブログ
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2014年07月26日 (Sat)
秋山が見せる鮮やかな笑顔に、含まれた、毒
(秋山:龍オブジ:狂愛:微エロ:※ヒロイン視点)

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ぐーっと伸びをして、辺りを見回す。
もう見慣れた繁華街・・・神室町。

どの時間に見ても賑わい続けているここは、私の庭のような場所だ。

なんだって分かる。
情報屋の私には、なんだって。


――――でも、今の、この賑わいは違う。


目に映るゾンビに食われた人々の死体。
そしてそれが起き上がり、新しいゾンビになる姿。

血の香り。

むせ返るような、異臭。


これが、今の神室町。
桐生が持ち込んだ・・・いや、巻き込まれた事件は、神室町ごと巻き込んで。


私の情報で、どうこう出来る次元を超えてしまった。


それでも私は、彼の力になるために傍に居ることを選んだ。
情報が通じなくなっても、薬で、知識で、彼を支えるために。

彼は、私にとって、"最高の悪友”なのだ。


「さってと・・・・」


だから今日も、彼のために危険な場所を歩く。
私の主な仕事はコレ。外から資材や小さな情報を得ること。

秋山には何度も怒られた。

危険な場所に出るな、と。

でもそんなこと聞いてられない。
私は戦う。たとえ何を言われても。


「ま、慣れればゾンビなんてこんなもんだよな」


腰に下げていた2丁拳銃を構え、足音がした方向に撃ち放つ。

最初は恐怖に震えていた手も足も、いつの間にか慣れてすんなりと動くようになっていた。

ゾンビは怖くない。
コワイのは、私よりも最前戦で戦っている人たちがいなくなってしまうこと。


「・・・こんなもんかなぁ」


銃以外手ぶらで外に出た私が抱えているのは、資材になりそうなモノや銃の弾。
悲しいことだが、自衛隊がやられてしまった跡地は、資材の宝庫なのだ。

といっても、私に拾えるのはごくわずか。
大量に運ぼうとしても自分自身の首を締めてしまうだけ。

だからこの場所をよく覚えておき、地図にまとめ、花屋と共有する。

これもまた、私の仕事。


「アァァ・・・・」
「おっと・・・まったく、元気だな」


荷物を抱え、1丁だけになった銃でゾンビを蹴散らした。
ゾンビはコワイ。でも所詮ゾンビ。
行動パターンは一緒だし、噛まれなければなんてことはない。

・・・・油断すると、危険なのには変わりないけど。


私はそのまま真っすぐ走り、ゾンビに見つかりにくいような道を選んで来た道を戻った。
戻るべき場所は、賽の河原。


「・・・・よし、いまだ」


賽の河原も、今では危険だ。
一部が突破され、基地としてもギリギリの段階。

出来る限りゾンビを刺激せず、見つからないように賽の河原へと戻った。


「よっと!」


マンホールに飛び込み、一気に蓋を閉める。

前に使っていた場所はゾンビに見つかってしまい、使えなくなった。
ここも見つかれば同じだ。できるだけ慎重に進み・・・戻る。

ここまで来れば安全だって思えるのがほとんど無いのが、辛いな。

胃がキリキリと痛む中、私は賽の河原への道を歩き、やっと明るい場所へとたどり着いた。


賽の河原は、神室町が破滅の道を歩んでも明るいまま。
色づいた光景―――生き残った人たちが穏やかに過ごせる、最後の場所。


「あ、おねえちゃん!おかえりなさい!」
「ん?よぉ、おりこうにしてたか?」
「うんっ!」


帰り着くと同時に、可愛い少女が話しかけてきた。
そんな少女の笑顔に少し癒やしをもらった私は、思いつきでポケットを探る。

確かに、ここらへんにあったと思うんだが。

あ、あった。キャンディー。


「良い子にはこれをやるよ、ほら」


取り出したキャンディーを、少女の手のひらにコロンと乗せる。
少女はそれを嬉しそうに見つめると、「後で食べる!」と言って走り去っていった。


「・・・と、早いところこの荷物持ってかないと」


片手で抱えられるレベルとはいえ、重たい。
何人かの人たちが手伝おうか?と声を掛けてくれたが、素人が触るには危険なものもある。
なるべく自分で運ぶよう、笑顔で断って荷物を運んだ。

運ぶ先は、花屋にもらった小部屋。

ここには鍵がかかっており、花屋のモニターチェックで、私や桐生、関係者以外は入れないようになっている。


「花屋ーあけてー」
『まぁたお前、勝手に出たのか。秋山が怒ってたぞ』
「心配性なだけだ、ほっといとけ」


ハァとため息を吐き、扉が開くのと同時に部屋に入った。
するとそこには思わぬ先客がおり、私を見るなり先客二人の声が響いた。


あけ!」
あけちゃん!」
「っ!?うお、秋山、桐生・・・・ど、どうしたんだよ・・・・っ」


詰め寄られる形で二人に囲まれ、思わず荷物を下ろす。


「どうして何も言わずに物資調達しにいったんだ」
「え?それは花屋にいったぞ?」
「俺達に言わなきゃ意味無いでしょ、あけちゃん。心配してるんだよ?」
「だーもう、心配症だなぁ」


心配症の秋山に、今回は桐生まで加わって。
おろしてしまった荷物を持ち上げて整理しながら、私は二人に言い訳を続けた。


「心配性?俺でも心配したんだ。秋山が心配症なわけじゃない」
「ほら、桐生さんも言ってるよ?」
「ま、まぁ・・・連絡は必要だよな。わりぃ、危機管理が欠けていた。今度は気をつけるよ、な・・・・?」


二人の方向を振り返り、手を合わせて謝る。
その私の反応に二人は呆れ顔で、やれやれと首を振った。

・・・それにしても、桐生がここにくるなんて珍しいな。

桐生はいつも自分で資材調達してるから、あんまりここには来ないんだけど。


「そ、それより桐生、今日はどうしたんだ?桐生がここにくるなんて珍しいじゃねぇか」
「あぁ・・・そろそろ、最終決戦になりそうだからな。使えるものは持って行こうとおもってきたんだ」
「最終決戦!?奴の場所・・・・つかめたんだな」


桐生の真剣な表情。

このゾンビを生み出した犯人が、ついに。
地獄の時間に終わりを告げるため、危険でも―――避けて通れない戦いになるだろう。

それなら、私ができることは。


「なぁ、桐生。その戦い私も・・・・」


言いかけたところで、桐生の手が私の頭を掴んだ。
驚いて言葉を止めた私の頭を、優しげに桐生の手が撫でる。


「き、りゅ・・・」
「今回ばかりは、だめだ」
「でも・・・!!」
「だめだ。この勝負は俺と龍司だけで行く。・・・お前はここにいろ」
「・・・っ」


怖いほど、有無を言わせない雰囲気が私を押さえつけた。
何も言えなくなって、俯く。

しょうがないんだ。
でかいゾンビや化け物は、確かに私一人じゃ無理だった。

それよりも上の奴らに、桐生達は挑もうとしてるんだから。


無理は、言えない。

足をひっぱるわけには、いかないから。


「・・・分かった」


諦めた私は、ポケットに入れていた閃光弾を桐生に手渡した。


「こんなの通用する相手じゃ無いとは思うけど、見つけたやつ。普通のゾンビ相手には使えると思うから・・・・使ってくれ」
「・・・あけ
「絶対に・・・・戻ってきてくれよ」
「当たり前だろう。・・・ありがとな」


桐生はそう言うと、閃光弾をぐっと握りしめて部屋から出て行った。
その後をじっと見つめていた私に、今まで無言だった秋山の声が掛かる。


あけちゃんは、さ」


いつもの飄々とした雰囲気を感じない、静かな声。
どうした?と振り返れば、いつの間にか秋山が目の前にいた。

驚いて後ろずさった私を、秋山は壁際に追いこんだ。

そのまま壁に手をつかれ、股に足を挟み込まれ、身動きが取れなくなる。


「秋山・・・?」
「どうしてそんな顔、桐生さんにはするんだい?俺が心配してもうざったそうにするくせに・・・桐生さんから言われると、嬉しそうなんだね?」


そんな顔、してただろうか。

それは、秋山より桐生との仲が良いから、だと思う。
秋山との時間はそんなに長くない。ただそれだけ。

特別な違いはないのに、秋山の表情は真剣に・・・・私を、睨みつけていた。


「秋山・・・」


秋山も、心配してくれていたんだ。
真剣に考えて、くれてたんだ。

秋山の表情から罪悪感を感じ取った私は、俯きながら謝った。


「・・・・わりぃ、秋山。そうだよな、心配してくれてたのに・・・・」
「・・・・」


冷静になっていく。
いつもうざったいとか考えてた私の頭は、子供っぽかった。

私が桐生達を心配するのと同様、秋山達も同じように心配してる。
そう考えられなかった私は、やっぱりまだまだ餓鬼のようだ。


「秋山、もう心配すんな。無茶しねぇから」
「・・・・うん」
「ほんと、ごめんな。じゃあまた後で」


秋山の表情が和らいだのを確認してから、私は秋山の腕の間をすり抜けるようにして外へ出た。

・・・はじめてみたな、あんな秋山の顔。
私があんな表情をさせてしまった。そう考えると、少し胸が痛くなるのを感じた。

少し、休もう。








































目を開けて、一番最初に飛び込んできたのは見慣れた天井だった。
そうか。少し休もうと思って、部屋で寝たんだっけ。

この小部屋は他の部屋と違って、花屋の監視の目がない。

慣れたことではあるが、人に見られてるって思うと落ち着けないから、いつも私の休憩場所はこの監視のない小部屋になっている。


「ふぁう・・・」


まだ頭がぼーっとする。やることもない。まだ時間もそんなに経ってなさそうだ。

そう言い訳してもう一度寝ようかと寝返りをうとうとした瞬間、身体に違和感を感じてすぅっと目が覚めていくのを感じた。


「・・・・ん?」


不自由・・・ほどではないが、身体の一部一部が重い。
ゆっくりと身体を起こした私は、その重みの正体がジャラリと音を立てて動いたことに目を見開いた。


私の手首につけられている、手枷。

それはベッドの端に括りつけられていて、余裕はあるが私の自由を奪っていた。


足首にも、同じような足枷。
手を伸ばして外してみようとしたが、頑丈に固定されていて、とてもじゃないが外せそうにない。

じゃあ、壊せる物。

出来るだけ冷静さを保ちながら、自由が利く範囲内で動こうとした私を、何かがピンッと引っ張って止めた。


「んぐっ!?・・・けほっ!けほっ・・・・」


それは気付かなかった、首輪。
首輪は手枷や足枷より短い鎖でベッドに繋がれており、私の自由を奪っていた。

まさか、敵襲?

桐生たちが居ない間を狙ってきた可能性もある。

私は苦しさに耐えながら、ギリギリ届きそうな位置にある自分の薬品鞄に手を伸ばした。
あれさえあれば、この鎖を溶かせるものが作れるかもしれない。


一刻も早く、この状態から、脱出を!


首に強い負担がかかるのを感じながら、やっとの思いで薬品鞄に指先が届きそうになった瞬間、その薬品袋が目の前で奪われた。

咄嗟に身構え、犯人を睨みつける――――。


「・・・・・え?」


目の前にいたのは、秋山だった。
助けに来てくれたのか?なんて思えたのは一瞬。

秋山は今までに見たことのない笑顔で私を見ると、薬品鞄を絶対に手の届かない場所へ移動させた。

その笑顔に恐怖を覚え、私は思わずベッドの方へ後ずさる。


「・・・・秋山・・・?」


目の前にいるのは、誰。
秋山、だよな?

なんでだろう。
かっこよくて、きれいな、笑顔なのに。


・・・・怖い。


「あ、きやま・・・・?」
「どうしたんだい?」
「これ、どういうことだ・・・?助けに、きてくれたのか?」


秋山が傷ついている様子はない。
少なくとも、ここは危なくないようだが。

一刻も早く自由を手に入れたい私に、秋山は悪魔のような一言を放つ。


「助け?・・・・ないよ、そんなの」


秋山の声が、やけにゆっくりと聞こえた。
混乱したままの私に、秋山は笑みを崩さぬまま近づく。

そしてゆっくりと、愛おしむように私の頬をなでた。
その手つきすら怖くて、私は固まる。


「どうして、え・・・秋山、うそ・・・だよな?」


綺麗な、笑顔。


「嘘じゃないよ?今なら桐生さんも、他の奴らもいない・・・今が、チャンスだからだ」


触れる、ぬくもり。


「チャン、ス・・・・?」
「あぁ、そうさ。チャンスだよ」


飄々とした声は、悪魔の声に。
鮮やかで綺麗な笑顔は、恐怖の笑みに。


あけちゃんを俺だけのものにするには、今しかない」


その一言を聞いた瞬間、私は瞬時に秋山を張り倒そうと足を振り上げた。

が、しかし。ベッドに繋がれた体はそんな自由を許さない。
振り上げきれないまま足はベッドに引き戻され、私はバランスを大きく崩した。

慌てて立てなおそうにも、それすらも出来ない身体。

投げ出されるようにしてベッドに倒れこんだ私を、覆いかぶさるように秋山が私を見つめる。


あけちゃんは、これだけ俺があけちゃんのことを見てるのに気づかないで・・・・」


秋山がベッドに膝をつけた。
両手は、倒れこんだ私の顔の両側に。

押し倒されているような、そんな光景。

でも実際は違う。
押し倒されてるのではなく。


―――捕らえられている、のだ。


「桐生さんばっかり見て・・・俺が、あけちゃんの桐生さんへの気持ちに、気づかないと思った?」
「そ、それは違う!!私は桐生のことは別にそんなふうに思ってない!!」


私が桐生に抱いている感情は、そんなんじゃない。
ただの、悪友。そう、そのはず。


「へぇ・・・?じゃあ、無意識なのかな?」
「何がだよ・・・・」
「たとえあけちゃん自身がそう否定しても、あけちゃんはいつも何かあるたび、すぐ桐生さんを優先して・・・何があっても桐生さんって・・・」


声が苛立ちに震えているのに、秋山の表情は笑顔のまま。


「だから、それは違・・・っ」


とにかく、秋山を落ち着かせなければ。
そう思い言い訳を続けようとした私の唇に、秋山が噛み付くようなキスを落とした。

貪られるような、そんな口づけ。

ファーストに近い慣れないキスに私は翻弄され、身体は抵抗する力を失う。


「ン、んっ・・・」
「あれ?あけちゃん・・・もしかして初めてだった?だいぶ初々しい反応だねぇ」


嬉しそうに秋山が言うのを見ながら、私は荒い息を吐くことしか出来なかった。

どうすれば、いい。
どうすれば逃げられる?

どう、すれば。


「無駄だよ、あけちゃん」


耳元で、秋山の低くかすれた声が響く。


「いいんだよあけちゃん。俺が思ったことが思い違いでも、それでも俺は」


"―――あけちゃんが手に入れば、それでいい”


聞こえた一言に、私は秋山が狂っているのを感じた。
逃げようともがいても秋山の身体で押さえつけられ、すぐ身体がベッドに沈む。


やばい。

逃げないと、ダメだ。


そう本能が告げているのに、それが叶うこともなく。
秋山は私を愛おしげに見つめながら、いろんな場所に口付け始めた。


「っ・・・」
「緊張しないで。大丈夫・・・全部俺のものにするだけだから」


何も大丈夫じゃねぇじゃねぇか!!
そんな叫び声も、また秋山の唇で覆われて消えた。

舌が、私の舌を絡めとる。

体中に走る痺れに体を震わせれば、秋山が楽しそうに笑うのが感じ取れた。


口づけを終えた唇が、そっと胸元へ降りる。
シャツの第二ボタン辺りを無理やり引きちぎり、秋山の舌が鎖骨をなぞった。


「ひっぁ・・・・」


感じたことのない、感覚。

耐えるように暴れても、じゃらじゃらと鎖が揺れる音が響くだけ。

秋山はびくともせず鎖骨を舐め続け、満足したかのように離れると、次はそのまま首へと噛み付くように口付けた。
チクリとした痛みがいくつも散らばる。
経験の無い私でも、それが何をしているのかぐらい嫌でも分かった。


「これであけちゃんは、俺のものだね・・・・」


狂ってる。
でも、私には何も出来ない。

そのまま私は、全てを秋山に奪われつくされた。

ずっと、ずっと。
本当はそんなに長くない時間。
だけどその時間は私にとって。




























狂い始めるには、十分な時間だった。










































1日中愛され続けて。
全ての自由を奪われて。

私の目に映るのは、天井と、秋山の鮮やかな笑顏だけ。

その笑顔の裏に含まれる毒に、どんどん犯されていく。


3日。

たった、3日。


でも私にとっては、それは1週間近くの時間に感じた。
何も知らなかった体はいろいろなものを刻み込まれ、嫌でも秋山の行動に反応する。


「おはよう、あけちゃん」
「・・・・っ」
「どうしたの?あけちゃん・・・もしかして、まだ足りなかった?」
「・・・おは、よう」


逆らえない。
そう刻まれた。

桐生達が帰ってくるとの連絡を受けた私の体は自由になったが、それでも私の自由は約束されていなかった。


逃げられない。
絶対に。

この3日間で私はそれを、狂うように教えこまれた。

痛みではなく、快楽という名の拷問で。


「全てが終わったら・・・・戻る場所は、分かるよね?」


質問に答えないでいれば、容赦なく胸を掴まれ、貪られ、貫かれる。

でも本当に酷いことはされない。
愛されているのが嫌なほど分かるぐらい、優しい。

私には、どうすればいいのか分からなかった。
このまま受け入れればいいのか?この優しさを。この愛を。


秋山を、壊してしまったのは・・・・私?

なら、私にできることは?


このまま受け入れてしまったら、秋山は狂ったままだ。
こんなのはおかしい。

狂わせてしまったのが私だというのなら、私はそれを受け入れるだけじゃなく、なおしてあげなければいけないのではないか。


彼を、元に、戻す。

――――元に。


「・・・・なぁ、秋山」
「・・なに?」
「・・・・好きだよ」


私がポツリと漏らした言葉に、秋山は固まった。
笑顔から淋しげな表情へと変わり、私をじっと見つめる。

それでも、私は秋山の顔をまっすぐ見つめたまま。

与えられた感情を返すように、愛を呟いた。


「秋山のこと、好きだよ・・・・」


自分でも驚くような、甘い声。
縋るような私の表情に何を感じ取ったのか、秋山は静かに私を抱きしめた。

そのまま、そっと口付ける。
むさぼるのではなく、優しく、確認するような口づけ。


私はそれを初めて

・・・受け入れた。


手を回し、もっとと強請るように口づけを受ける。
秋山は慌てて私から離れると、久しぶりにいつもの表情で笑った。


「勘弁してよあけちゃん・・・・」
「なにが?」
「そんなことされたら、これから脱出だってのに・・・本気になっちゃうよ」
「それは脱出してからな」


そう、これが普通の秋山だ。
世界をまったく見ず、暗く淀んだ目をしていたのは、秋山じゃない。

これが、本来の姿。


そして彼が壊れないように、私はこの愛を、受け入れよう。

受け入れて、包むんだ。彼を元に戻してあげよう。


それしかないんだ。
私の気持ちは分からない。

本当に彼を、男として好きなのかは分からない、でも。

もう戻れない。
どこで狂ったかも分からない歯車を、戻すことも出来ない。


「・・・秋山、戻ろう」
「・・・・あぁ」
「外で、秋山のことたくさん教えてくれよ・・・私が知らないこと、全部」
「・・・・もちろんだよ」










































あの事件から数週間。
ゾンビの数は順調に減り、私達は日常を取り戻した。


・・・ように、見えるだけ。


実際、取り戻したのは秋山と私以外の皆だった。
私達はまだ、狂った歯車の中にいる。


元の日常のようで、違う。

秋山のようで、秋山じゃない。
そんな誰かに私はまだ縛られたまま。

私が離れれば狂い、私を貫き、壊れるまで抱き、目が覚めれば淋しげな表情で見つめる。


戻れないのは分かってるのに。
どうか、あの時の秋山に戻って欲しいと、願って。
離れられない。逃げられない。

そして段々と、蝕まれ始めていた。

私の、正常な感覚ですら、徐々に。


これが愛されるということなのだと。
頭が理解しようとしてしまっていた。

狂っているということが、分からなくなっていく。


「違うんだ、秋山っ・・・」
「何が違うんだい?俺に黙って男と会うなんて・・・お仕置きが、必要かな?」
「ほんとに、違うんだ・・・ばったり会っただけなんだ・・・・!!」
「ふーん?・・・でもそんなに慌てられると、ねぇ?」


妖艶な笑み。
身体が反応して、ゾクリと震える。


「・・・・愛してるんだよ、あけちゃんのこと。誰にも、誰にも渡したくない」


愛されてる。
前のように縛られたりはしてないけど、秋山の全てに、私は囚われていた。

狂えば、最後。

私にはもう、狂った歯車を感じることすら出来なくなっていた。
狂った世界に閉ざされて。段々と、それが正しいのだと思い始めていた。


そう、愛されてるんだ。


私は、女として―――愛されてる。


それは、幸せなのでは?
元から狂ってなかったんじゃないのか?


私が気づくのが遅かっただけで。

こういう歯車も、あった。それだけのことでは?


だから、もうこれでいいんだ。
私も秋山を愛してる。


「いいよ、秋山。・・・・好きなだけ、お仕置きして、くれよ」
「・・・・あけちゃん?」
「すきだから。秋山が私を信じれるようになるなら・・・・それでもいいんだ」


私のその言葉に、秋山が嬉しそうに笑った。



















































"やっと、狂ってくれたね”
(今までに見たことのない狂った秋山の笑顔を見た私は、救うはずだった私までもが堕ちたことを、知った)
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 ・龍如(桐生・峯・オール)
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◆Thanks!
見に来てくださってありがとうございます。拍手、コメント読ませていただいております。
現在お熱なジャンルに関しては、リクエスト等あれば優先的に反映することが多いのでよろしければ拍手コメント等いただけるとやる気出ます。
(龍如/オール・海賊/剣豪)