Erdbeere ~苺~ F2.偽物の孤独 忍者ブログ
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2024年11月15日 (Fri)
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2015年08月18日 (Tue)
2話/シリアス?/甘/※ピッコロ視点

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目の前に空いた大きな穴。
それは今、俺が創りだした苛立ちの証拠だった。


「どこに行きやがった・・・・」


昨日からアイツが帰ってこない。


普通に居なくなるならわかる。

自由人で馬鹿なアイツだ。
何かしら思い立って俺の前から消える時だってあった。


でもそういう時は、何かしら俺に伝言を残していた。

そしてたとえそういうことがあっても、丸1日以上、俺との距離を置くことはなかった。


それが何故。


「ッ・・・」


どれだけ探っても彼女の魔力を感じない。

やはり神殿から離れたのが気に食わなかったのか?
俺は居なくなったアイツのことを探しながら、自分の行動を振り返った。


らしくもない。

だが、してしまう。


「アイツのことだ、嫌なことは嫌だと・・・言うだろう」


俺達はビルス様との事件の後、神殿を離れた。


それは俺のワガママだった。
デンデも一人で神様としての役目を果たせるようになり、俺達が神殿に居る理由も無い。


そして神殿は平和すぎる。

外界から離れ、何事もない1日を過ごすだけの場所だ。


だから俺は神殿を離れて悟飯達の家の近くの荒野に住むことを提案した。
さすがに驚いていたが――――だがゆえは、俺の性格を知っているからだろう。



”なんかピッコロっぽいよね~。いいけど、条件あるよ?”
”なんだ”
”必ず私を連れて行くこと。なら、オッケー!”
”・・・お前は無理してこなくてもいいんだぞ?神殿でも・・・・”
”朝から夜まで、ずっと一緒にいないと私は死んじゃうけどそれでもいい?干からびた死体を神殿で見たいならいいけど?”
”・・・・・・好きに、しろ”
”やりー!”



怒ることもせず、俺についてきた。


ゆえ・・・・」


不満だったらそれを何かしらの形で伝えてくるはずだ。
こんな、居なくなったりするようなことは、しないだろう。


だからこそ、不安だった。


まったく感じない魔力。

そして今日の昼、一瞬だが見えた”神龍”


「嫌な、予感がする・・・・」


夕暮れ時の荒野。

いつもならアイツを叩き起こして、日が暮れるまで修行を始める時間。


「ピッコロさーん!」
「ッ・・・悟飯」
「見つかりました・・・?」
「・・・いや、まったくだ」
「そんな・・・・」


ゆえを探すのを手伝ってくれていた悟飯が、汗だくで俺の傍に降りた。


「かなり広い範囲を飛び回ってみたんですけど・・・一切魔力を感じません」
「魔力を消すことができるとはいえ、俺達二人がかりで見つからないわけがない・・・」


魔力は気よりも特徴的だ。

俺や悟飯のようにアイツとの関わりが長いヤツは、たとえそれを隠していてもわずかに感じ取ることが出来たりする。


「本当に、まったく感じないんです・・・」
「あぁ・・・俺もだ」
「どうしちゃったんでしょう?やっぱり昨日の神龍が何か関係するんじゃ・・・」


昨日の昼。
俺は悟飯のところで、コイツのガキの面倒を見ていた。


その時だ。

神龍が呼び出され、あまり良くない気を感じたのだ。


関わりがあるとすれば、やはりそれか。
険しい表情をする俺に悟飯が考えこむ。


「にしても、どうなってるんでしょうね・・・ゆえさんが僕達に黙ってどこかに行くなんてことは考えにくいと思います」
「なら、連れて行かれた・・・と考えるべきか?」
「だと思います」
「・・・・殺された、というのは」
「ないと思いますよ。仮にそうだとしたら、ゆえさんがおとなしく殺されるわけないです。ピッコロさんの弟子ですよ?」


苦笑する悟飯に俺も苦笑してしまった。


それもそうか。
あのゆえが、何の抵抗もせずに誰かにやられるわけがない。

もしそんなことになれば、俺達に気づかれて当たり前なぐらいの暴れっぷりを見せるだろう。


「悟飯、もうお前は戻れ」
「え、でも・・・・」
「お前にはビーデルが待っているだろう。・・・・気にするな。俺も休みながら探す」
「・・・・わかり、ました。また明日、僕達も探しますから!!」
「・・・あぁ、頼む」


悟飯を帰らせた俺は、岩陰に隠れてため息を吐いた。


冷静を装っていたが。
心の中の動揺はいつまでも抑えきれるものじゃない。


ずるずるとその場に座り込む。


頭を押さえ、段々と暗くなっていく空を見上げる。


「どこにいったんだ、ゆえ・・・・」


1日たりとも、俺から離れたことはないだろう?
それは俺がお前をまだ認めてない時から、そうだったはずだ。


俺がどれだけ殺す気で怒ってもお前は俺についてきて。

俺を、呆れさせた。


「っ・・・・くそ・・・!」


俺は孤独が好きだった。

だがもう今は、それは偽り。
帰る場所があると分かっているからこその、孤独が好きになったのだ。


変わってしまった。

いや、変えられてしまった。


「馬鹿野郎が・・・・」


言ったはずだ。

俺からは逃げられない、逃げるなと。


「・・・・」


魔族としての俺をここまで狂わせたんだ。
絶対に見つけ出してやる。


やがて日が落ち、俺の周りを闇が包んだ。


本当の、孤独。

久しぶりだ。
誰とも話さない夜を迎えるのは。


「こんなにも、静かなものだったか・・・・?」


それだけ、アイツは煩いんだ。

毎日俺の周りで楽しそうに笑って。
適当にあしらうだけの俺に、ずっと話しかけてくる。


それが愛しいんだ。

あぁ、随分と俺も・・・毒されたな。


「戻れない、な」


もう戻れない。

あのうざったい騒がしさから。
気に食わない、平和から。


逃れられない。


「・・・・」


もう一度集中して魔力を探ってみる。

少し離れた場所に感じるのは悟飯とビーデルの気。
そこから離れた場所には似た気がある・・・悟空や悟天のものだ。


もう一つ感じるのはベジータやトランクスのもの。

あいつら、夜にも修行してるのか。さすがだな。


「・・・ゆえ


でも見えない。
感じない。

肝心な、魔力が。


「・・・・・」


疲れた俺は、珍しくそのまま目を閉じた。

微睡みに沈んでいく。
この事実が夢ならいいのにと、俺らしくないことを考えながら。

























夢を見た。
寝ている俺の隣に、ゆえが座って笑う夢を。


微睡みから引きずり出されて目を開ける。

辺りはまだ暗かった。


「・・・・・ん?」
「あら、起きましたぁ?」
「!!!!???」


目の前に居たのは見知らぬ女。

俺は声にならない叫び声を上げ、瞬時に拳を振り上げた。


だがそれは軽々受け止められた。
しかも、人差し指1本で。


「な、何者だ・・・!」


目で見るまで認識すら出来なかった。

気も、気配も、感じない。


――――ん?


「まさか・・・」
「気づきました?お久しぶりです」
「サリエル、様」


前見た時とはまったく違う姿だったが、サリエル様で合っていたようだ。

気も気配も感じないとなれば、そこら辺しか覚えがないからな。
落ち着いた俺は失礼のないようにサリエル様から少し距離を置く。


「天界の者が私欲で下界に干渉するのは重罪です。私がゆえをブゥから助けた時も、かなり罰を受けました」
「は、はぁ・・・」
「ですから今回は人間に扮してみたんです。似合ってるでしょう?」
「・・・・」
「まったく、お硬い人ですね?少しぐらい乗ってくれてもいいのに」


正直、こういうのは苦手だ。

サリエル様の言葉に答えかねていると、苦笑していたサリエル様が急に表情を引き締めた。


「というわけで、ですよ」
「?」
「何故私がそんな危険を犯して貴方に干渉しているか・・・若干わかりますよね?」
ゆえのこと、か」
「正解です。単刀直入にいいましょう。今彼女は、私達が干渉出来ない場所に攫われています」
「っ・・・!」


驚いたが、同時に安心する自分がいた。

何よりも怖いのは”死”だ。
彼女は死ねばもう戻ってこれない。


攫われた、ということは”生きている”ということ。


「幸運と不幸が同時にあります。幸運なのは、その攫った奴らがもう一度地球に干渉するつもりであること。つまり、その時にゆえを取り返すことができます」


サリエル様の言葉にごくりと喉を鳴らす。


「そして不幸は、今の私が知りうる情報の中では・・・ゆえは、正気を保てなくなっている可能性があるということです」
「正気を保てない・・・・?」


どういうことだ?

どちらにせよ、最悪な状態には変わりないようだ。
手が出せない場所なら、ゆえを助けに行くことも出来ないだろう。


ゆえが攫われて・・・おとなしくしてるような子だと思いますか?」
「・・・思わないな」
「ですが彼女は攫われてから、一度もその場から逃げ出そうとしていません。何かしら彼女に対して悪いことが起きていることは間違いないです」
「そう、か・・・・」
「残念ながらこれ以上は私も下界で動けないんです」
「どうすればいいんだ、俺は?」


俺達が干渉出来ない場所。
そして、何故か抵抗出来ない状態にいるゆえ


俺はどうすればいい?


ゆえを攫った奴が地球に干渉しにくるまで、ただ待つことしか出来ないのか?


「その待っている間に、貴方は強くなって下さい」
「強く?」
「はい。ゆえがどういう状態になっているか、攫った奴が何者かまでは私の方でも分かっていません・・・。安々と取り返せるとも思いません」
「なるほどな。どういう状態になってもいいよう、強くなれと」
「はい。あ、そうそう。そのために強くなる道具を持ってきたんですよ」


サリエル様が表情を緩めて微笑んだ。


強くなる、道具?
怪しげな響きのものに眉を潜めた俺は、サリエル様が取り出したものを見て固まった。


「・・・・強くなる、道具、といったな?」
「はい。では、これ以上干渉しているとバレてしまいますので帰りますね」


サリエル様の声も耳に入らない。
俺は手渡されたその”道具”とやらを抱えたまま、姿を消すサリエル様を見送った。


強くなる、道具。

―――――そう言って渡されたのは。


「・・・・・・・・・・・・・」


熊の可愛い人形だった。






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