Erdbeere ~苺~ 罰さえも甘い罠 忍者ブログ
2025.03│ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31
いらっしゃいませ!
名前変更所
2025年03月09日 (Sun)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2015年08月09日 (Sun)
セル夢/甘?/ダーク/ヒロインは地獄の住人/※キャラ視点

拍手



地獄には似つかわしくない明るい声。
誰に何を言われても元気に対応する彼女の存在は、地獄の中ではかなり浮いていた。

彼女は地獄の住人で、私達のような罪人に罰を与える存在だという。


針山や血の池など様々な罰がある中、彼女が与える罰は”肉体的”なものではないことを最近知った。


何故なら私が、今その罰を与えられているからだ。


「これが、罰か」


私は彼女を愛してしまった。

彼女の笑みに。
明るさに惹かれて。


悪だったことを忘れて、愛したのだ。

その時、彼女は言った。


”それが私の罰”だと。


「・・・なるほど、な」


彼女の人を惹きつけ魅了する力は、地獄の住人に対して有効なのだという。

魅了し、惑わせて。


届かない場所へ遠ざかる。


「・・・・・・」


精神への、心への罰。
だが私は納得できないでいた。

私は人造人間だ。


人間ベースの18号達ならまだしも、この私が”愛”という感情を覚えるのか?と。


彼女の力が及んでいるからなのか?
本当に?


「どんな罰よりも苦しいとはな・・・笑わせる」


触れられない。
手に入れることができない存在。

それを好きになった私の心は、ただ虚無に包まれて苦しめられる。


「だから言ったじゃん、あんまり私に近づかないほうがいいよって」
「・・・・それでも近づきたいと思ったのだ」
「じゃあ、その時点で効いてたんだよ。セルってば、とびっきりの悪人だからねー」


普通に会話するのも苦しい。
私は声のする後ろを振り向けないまま、会話を続けた。


おかしな話だ。

地球ではあれだけ恐れられたこの私が。


――――こんな小娘一人に。


「っ・・・・」


そう思えば彼女を今すぐ吹き飛ばして殺すことが出来るだろう。
でも、出来なかった。

上辺だけの心。


本心は、怒りではなく愛情を抱いている。


「いつまでこの罰は続くんだ?」
「一ヶ月かな。そしたら効力なくなって、なんとも感じなくなる」
「なら、その後に痛い目を見ても文句はないな?」
「うわ・・・言うと思ったよ。そしたら、次の罰を受けた人が、私を守ってくれるからいいよ」


”それが、私の力だし”

呟くような彼女の言葉は、どこか淋しげだった。


思わず気になってしまい後ろを振り向く。
彼女の姿を目で捉えれば苦しむと、分かっているのに。


「なーに?」


愛おしい。

そう思えたのは何故か。


分からない。
彼女の力だからだろうか。

それで納得すればすべてが終わる。


なのに納得ができない。


「一ヶ月後に分かるよ、うん」


彼女はいつも淋しげだ。
淋しげにそう笑う。

その表情に惹かれる。


「一ヶ月後、きっと私の事追い回すんだろうなー」
「あぁ。私に罰を与えたことを後悔させてやるほどの恐怖を与えてやろう」
「うわ、恐ろしー」
「少しは怯えた表情を見せてはいかがかな、お嬢さん」
「そうやってすぐ皮肉る」


追い返しもしない。

ただ苦しみを味わうだけの日々を、1ヶ月。


何故か嫌には思わなかった。
ただ苦しいとだけ。

これが、罰。























「1ヶ月だね」


もう覚えてすら無かった。
彼女にそう言われることで、私は彼女から罰を受けて一ヶ月経ったことに気づいた。

だが、どうだ?

私はゆっくり彼女を見て息を呑んだ。


「うわ、そんな怖い顔しないでよ」
「殺されに来たのかな?」
「優しい声でそういうこというと、ほんとこわいね~」


気持ちは変わりなかった。
術がまだ完全に溶けきってないのか?


いや、そんなことはないはずだ。

彼女はきっかりと1ヶ月と言っていた。

ならばこの感情はなんだ?
私の気持ちは結局1ヶ月前と変わらず、彼女を求めていた。


「少し、いいかな?」


そう言って私は彼女との距離を詰める。
名前も知らない、地獄の住人。

私を恐れず話しかけてきた女。


「なーに?」


鬼も、住人も、誰もが私を恐れた。
その中でただ彼女だけが、私をまっすぐに見つめていた。

その時からもう、私は術に掛かっていたのだろう。


罰ではなく、この謎の感情に。


「傍で見ると美しいな、お前は」
「っ!?」


私の言葉に女の表情が揺らいだ。


「お前のその顔をもっと見せてくれないか?」
「何言ってんの?ちょ、ちょっとほら、落ち着いて?たぶん・・・ってか絶対私の術が残っちゃってるから!」
「お前の術は一ヶ月だろう。なら、もう今日は切れているはずだ」
「じ、時間的にほら、あと10秒ぐらい?」


慌てる彼女の声を無視して顔を近づける。

目の前の彼女の瞳は、強く私を見つめていた。
恥ずかしさからか赤くなっていく頬を撫でて、囁く。


「なら、10秒数えよう。それでも私のこの気持が収まらなかった時は・・・私のものになる覚悟はあるかね?」
「な、なに言って・・・!」
「では始めよう」
「ちょっと!?話し聞いて!?大体、地獄の罪人が私に手を出すなんて出来るわけ・・・っ!」


暴れようとする彼女の手を思いっきり掴んだ。

そのまま、有無を言わさぬ力で地面に押し倒す。


初めて彼女の瞳が私から逸らされた。
戸惑いと、羞恥と、小さな恐怖。


「10」


私はゆっくりカウントを始めた。

初めてだ。
戦いよりも、夢中になったもの。


この完璧な私が、揺らいだ感情。


「9」


それが術のせいだというならば、私はプライドのため彼女を嬲るだろう。
完璧な私が、こんな女の術にかかるとでも?


そう。

最初から術など掛かっていなかったのだ。


「8」


地獄に落ちた時、誰もが私を恐れる中、笑顔で話しかけてきたのは彼女だけだった。
純粋で真っ直ぐな瞳に映る私自身を見た瞬間から、私は。


「7」


異様な光景だ。

美しい彼女を組み敷く。
周りに映るのは、地獄特有の血の池や針山。


「6」


名前も知らぬ女。


「5」


寂しげに笑うお前に教えてやろう。
私にはそんなチンケな術など効かないと。


完璧な人造人間である私は、自分の意志でお前に惹かれたんだ――――――と。


「4」


もぞもぞと、組み敷いた彼女が苦しそうにもがいた。

あぁ、少し力が強かったか。
そう思い力を抜いてやる。


「3」


逃げ出すのなら今のうちだ。


「2」


彼女もそれを分かっているだろう。

だが、動かない。


「1」


私は確信した。
やはり、この感情は。


「0」
「っ――――――!!??」


0の発言とほぼ同時に彼女の唇を塞いだ。
さすがに驚いたのか、女が私の腹を蹴り飛ばす。


だが、そんなか弱い力が効くわけもない。

私は構わず口づけを続け、満足したあと身体を離した。


「なっ、何すんだっ!!」
「言っただろう、私にそんなチンケな術が通用するはずないと」
「そ・・・そんなはず、ない。どんな罪人にも効くんだ」
「なら、私はお前に触れられないはずだ。その術が掛かっているなら私はお前を求めて・・・触れられない苦しみを味わうはずだろう?」


そこまで含めての、彼女の罰。術だ。

しかし、今はどうだ?
私は手を伸ばせば彼女に触れられている。


そして術だと思っていたその感情は、消えること無く私の心を支配している。


「私はお前を愛している。だがそれは術などではない」
「っ・・・・」
「信用ならないか?この完璧な存在の、私のことが」
「だって、私の・・・術は・・・・」
「フッ・・・案外弱いものだな。誰から好かれるのも、術だと感じて恐ろしいか?」
「ッ・・・・」


彼女が気にしているであろう部分をわざと煽れば、酷く表情が歪んだ。


「うるさいな・・・・私は、そういう存在なんだから、ほっといてよ」


逃げようとする彼女の手を掴む。

言ったはずだ。
私のものになってもらうと。


「私から逃げられるとでも?」
「っ・・・・」
「私はお前のことが好きだ。お前の術など関係ない。さぁ・・・観念して私のものになってもらおうか、お嬢さん?」


彼女の足元に跪いて、手の甲に口づけを落とす。


「それで、お嬢さん。お名前は?」
「・・・・・」
「おやおや。これしきのことで固まってもらっては・・・先が思いやられるのだがね」
「だ・・・、だって」
「初めてだったか?可愛らしい反応だ」
「か・・・・からかうな!!」
「それで、答えは?」
「うっ・・・・」
「答えてもらおう。・・・・ほら」


顔を真っ赤にして固まっていた彼女が、ようやく放った言葉に私は笑みをこぼした。


「わ、私の・・・名前は、ゆえ。よろしく・・・・」


PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
←No.403No.402No.401No.400No.399No.398No.397No.396No.395No.394No.393
サイト紹介

※転載禁止
 公式とは無関係
 晒し迷惑行為等あり次第閉鎖
 検索避け済

◆管理人
 きつつき
◆サイト傾向
 ギャグ甘
 裏系グロ系は注意書放置
◆取り扱い
 夢小説
 ・龍如(桐生・峯・オール)
 ・海賊(ゾロ)
 ・DB(ベジータ・ピッコロ)
 ・テイルズ
 ・気まぐれ

◆Thanks!
見に来てくださってありがとうございます。拍手、コメント読ませていただいております。
現在お熱なジャンルに関しては、リクエスト等あれば優先的に反映することが多いのでよろしければ拍手コメント等いただけるとやる気出ます。
(龍如/オール・海賊/剣豪)