Erdbeere ~苺~ 5.夏休みの教室へ 忍者ブログ
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2015年07月26日 (Sun)
ギニュー/ギニューは体育の先生・部活顧問/ヒロインは空手部/ギャグ甘/※ヒロイン視点

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夏休み。
それは休みであって、休みじゃない。

特に大会が近い部活に所属してる人たちなんて、毎日部活だ。


「ま、そんなのは真面目な人たちだけの話だけどねー」


夏休みの学校の屋上。

買ってきたアイスを食べながら、校庭で部活を頑張る生徒たちを見つめる。


「あっつ・・・」


気だるく吐き捨てた言葉はセミの音にかき消された。
セミの音を聞いてるだけでくらくらしてきそうだ。

でも、校内に入って涼む選択肢は無い。


だって今、部活さぼってるから。

まぁ、ここに居ても・・・。


「ふー」
「まーたそこでサボリか、このバカヤロウが」
「先生もご苦労様です、こんなところまで」
「誰のせいだ誰の」
「さぁ?」


クスクスとからかうように笑えば、屋上に足を踏み入れたギニュー先生がため息を吐く。


いつものことだ。
私を追いかけ、この屋上までギニュー先生が来るのも。

私がこうやって、さぼるのも。


「戻るぞ」
「えー、暑いですもんあの道場」
「それもまた良い練習になる」
「脱水症状で死んじゃう」
「そんなことでお前がくたばれは苦労しないな」
「先生なにげに酷いな・・・」


こうやって追いかけ合うのも、今年で最後だと思うと少し寂しくなった。

部活に所属してからの問題児。
ギニュー先生は私がいなくなってホッとするのかもしれない。


私は今年が、最後の試合になる。

そして来年にはもうこの学校には居ない。


「まったく、最後の最後まで手間かけさせやがって・・・・」


そう言いながらギニュー先生は私の隣に座った。
何をするのかと思いきや、そのままポケットを弄ってアイスを取り出す。


「え、先生もアイス買ってきたの?」
「貴様を見つけるついでにな」
「言い訳しちゃってー!先生も暑かったんでしょ」
「暑いのは当たり前だろう。先生だって人間だぞ」
「先生ある意味バケモノだよ・・・あの炎天下でどんだけ元気だったよ?」


ギニュー先生の体力はバケモノだ。
どんな暑さの中でも平然としてるし、むしろありえないぐらい元気に飛び跳ねてる。

さすが体育の先生って言うべきなのか。


私はそんなことを思いながら、隣でアイスを食べ始めたギニュー先生を見つめた。


「ね、先生」
「何だ」
「今回の大会、勝てると思う?」
「今まで全戦快勝のお前が、最後になって弱気か?」
「可愛い女の子ですから、不安になることだってありますぅ」


ぶりっ子じみた声を出せば、ギニュー先生に凄い顔をされる。


「気持ち悪いぞお前」


ぐさり。
何のオブラートに包まれることなく突き刺さった言葉の刃。

別にショックだったわけじゃないが、思わずアイスを落としかける。


「っと・・・あぶな」
「ふっ・・・冗談だ。お前は女だと思っているぞ?」
「いや女ではあるから。何その適当なフォロー」


溶け始めているアイスを急いで口に咥えた。

冷たくて甘い食感が私を癒やす。


「おいしー」
「食べ終わったら戻れ」
「えー?」
「お前な・・・・今年が最後だろ?」
「最後でもいつも通りにいきたいんですよ!」


その言葉にギニュー先生が私の方を見た。


「そうやってると負けるぞ」
「負けたら先生慰めてくれる?」
「今のお前を慰める気にはならんな」
「ええーー!?」
「頑張ったお前が負けたなら、慰めてやらないこともないが?」


言いながらギニュー先生が私の口元にアイスをねじ込む。
突然のことに驚いたが、アイスが溶けそうになっていたので慌てて口を大きく開いた。

そのまま、何故かギニュー先生のアイスが私の口の中に消える。


「んま!」
「今日くればそのアイスを帰りにも食わせてやる。ほら、行くぞ」
「物で釣るなんて考えたものですねー。どうしよっかなー?」
「お前な・・・・」


次は呆れ顔。

立ち上がったギニュー先生が、私を見下ろす。


ギニュー先生大きいから良い影になるな。
なんて考えてたら、がつっと強めの鉄拳が落ちてきた。


「ったーーー!何すんですか!」
「いいから来い!最後なんだ。最後ぐらいしっかり俺の指導を受けろ!」
「暑苦しいー!!やだーー!!」
「帰りにアイスを食わせてやるって言っただろ!」
「子供じゃないんですからね私!」
「子供だろうが!」
「違いますっ!そんなにモノで釣りたいなら、正々堂々勝負しましょうよ?」


自分のアイスも全部口に放り込んで。
にんまりと笑いながらそう言った私に、ギニュー先生が挑発的な笑みを浮かべた。


「ほう?勝負?」


私達が言う勝負なんて、言わなくなって分かるだろう。

そう、空手。
試合で勝負に決まってる。


何故そんなこと言ったかって?

決まってるでしょ。
少しでも先生との時間が欲しかったから。


私、ギニュー先生が好きなんだよね。


ただこの気持ちを伝えるキッカケも、勇気も、希望もない。


「空手部らしく勝負して、私が負けたら先生の言うとおりにしますよ」


だからこそ。

たまにはこういうハッチャケたことをしたくなるのだ。
最後、だから。


「ただし私が勝ったら、私の言うこと聞いてもらいますよ?」
「いいだろう。この俺に勝てると思ったことを後悔させてやる!」
「ナメないでくださいよ先生?ちゃんとトレーニング自体はしてるんですから」


言い争いながら道場への道を歩く。

練習以外で先生と試合するのは初めてかもしれない。


自然と、鼓動が高まる。


「・・・絶対勝ちますよ」


足を踏み入れた道場は静かだった。
ちょうど皆が昼休憩のタイミングなのだろう。

真剣な表情で先生が私の前に立つ。


いつもの情熱的で少し面白おかしい感じの先生とは違う、男らしい視線にドキリとした。


「フッ・・・・どうしたんだ?びびったか?」
「やだなー。今更びびると思います?」
「なら始めるか」
「っしゃ!よろしくお願いします!!」


真剣勝負。

正直、大会以上に本気になった試合は、最長記録を打ち出した。


























「・・・大丈夫か?」
「死んでたら先生訴えますから」
「元気そうだな」
「・・・・まぁ」


地面に寝そべる私。
それを見下げる先生。

背中をついた私は、負けたのだ。


勝ちたかったな。

勝ったら、何かが変わった気がした。


「それにしてもお前・・・本当に練習をさぼってるわりには強くなったな」
「まぁ、練習はしてますから」
「何故俺の前ではせんのだ。ま、まさか俺の練習が気に喰わないのか・・・!?」
「い、いや、違います」


肩を落とす先生に思わず笑みが零れる。


「それで?お前は俺に勝って何をさせるつもりだったんだ?」


突然の質問に私は身体を起こした。
まさかそこを聞かれるとは思ってなくて冷や汗が流れる。


「ま、まぁ、思いつき?ただ戻るのもつまらなかったから・・・・」


”先生に近づくチャンスが欲しかったから”

なんて、言えるはずもない。
本音をどうにか隠して嘘を吐く。


でも先生は何故か少し真剣な表情で私を見ていた。


「嘘だな」
「なんで?」
「お前は勝負は真剣なやつだ。何も理由なしに賭け事に使うとは思えんな?」
「・・・・・」
「ま、まさか、部活に3時のおやつが欲しかったのか!?」
「さすがにそれはないです・・・・」


肯定したくても出来ない内容に乾いた笑みをこぼす。

秘めた思いを口にすれば、全てが壊れる気がする。
いや、確実に壊れるだろう。


ならどうする?

どうやって、誤魔化す?


「冗談はここまでとして・・・ほら、言ってみなさい。この優しい俺様に」


真剣な表情。

それでいて、いつも通りの口調。


崩されていく。
正常な判断が、乱される。


「先生に」


言ってはいけない。


「デートしてもらいたくって」


でも、止まらない。


「何ぃ?からかうのもいい加減にするんだ」
「先生、デートってどういう人誘うか分かる?」
「そのぐらい知っている。だからこそ・・・」
「だからこそ、勝ちたかった」


せめて卒業式とかで散りたかったな。
こんな時期に失恋するなんて、どうでもよくなっちゃう。

泣きそうになるのをどうにか堪えた私は、先生から目を逸らした。


「・・・・ま、負けましたし!大人しく諦めますかっ」


吹っ切れたように立ち上がった私の手を、先生の手が掴んだ。

その勢いが強すぎて、思わず先生の腕の中に飛び込む。


「っ~~~~!!!!」


私の発言の後のコレ。

まずい。
まずすぎる。


特に私の心臓が。


「せ、先生」
「正直俺は、そういうのに興味がない」
「え・・・この状態でトドメ?」
「いや聞け。だがお前とはこうやっていたいと思ったんだ。まぁ・・・直感だが」
「適当ですね」
「俺は男も女も関係ない。強いやつと戦いを楽しめればいいからな?」
「んじゃ、私もその強いやつだからじゃないですかね?」


好きだけど。

遊びで好きになられたくない。


そんな思いで冷たい答えを繰り返す。
離れられないのに。


「確かにそうかもしれないな・・・・それでは申し訳無さすぎる」
「・・・・・」
「俺に教えてくれないか?」
「へ?」
「その、お前が抱いた俺への感情を、俺に教えて欲しいんだ」
「な・・・に、言って・・・・」
「正直言えば確かに恋愛感情はあまり分からない。だが、お前が来年から居なくなると思うと・・・・」


清々するって。
私の心の中では言われると思ってた。

でも、私の耳元で囁かれた言葉は違った。


「”寂しいと思ってしまった”」


いつもなら出てくるようなからかいの言葉も出てこない。

先生ってば脳筋なんだから、とか。
恋愛分からないなんて、いい年して・・・・とか。


「お前が良ければでいい。お前の気持ちを馬鹿にしてるのに変わりないだろうからな」


抱きついてるたくましい身体は、私をすっぽりと包み込んでいる。
我慢できなくなった私は恐る恐る上を見上げた。


目があった先生の表情はいつもより真剣で。

また、鼓動が早まる。


「・・・・っこ、後悔しないでよ、先生?」


だけどここでしおらしくなるのは私らしくない。

ギニュー先生の腕にしがみつきながら笑った私は、いつもとは違う甘い声で囁いた。


「絶対落としてやるから、先生」
「どうやってだ?」
「まずは誰も居ない教室にでも、どうですか?」
「い、いきなりか・・・?」
「あれ?何照れてるんです?もしかして変な想象でもしましたぁー?」
「しとらんっ!!」
「ならいきましょ、先生。お互いのこと、涼しい教室でたくさん話そ!」


夏休みの教室。
そこで私達の、恋の授業が始まるのだ。

なんて、ね。





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