Erdbeere ~苺~ 4.生徒会室を占拠して 忍者ブログ
2024.11│ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
いらっしゃいませ!
名前変更所
2024年11月15日 (Fri)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2015年07月21日 (Tue)
未来トラ/トラは生徒会長/ヒロインは同級生/甘/※ヒロイン視点

拍手




めんどくさいことは基本嫌い。
だから授業中もほとんど寝てる。

このクラスには何でも出来るイケメンな生徒会長様がいるし。

寝てても問題ない。


だからいっつも私は寝てる。
役員系もどうせ生徒会様がやってくれる。


「・・・・い、おい」


話しかける声が聞こえるけど、とりあえず無視してやった。

起きたらうまい具合に役員とかにするつもりなんでしょ?
寝るが勝ち。


寝てる間に決められてても、そんなの知らないで押し通すだけだ。

悪いやつ?なんとでも言え。


「・・・い、おいってば!」


あまりにもしつこいので仕方なく顔を上げた。
同時にチャイムの音が聞こえ、ぼやけた視界に綺麗な髪が映る。


「んあ・・・?何、トランクス」
「寝てたから聞いてなかったんですよね。ゆえさん、貴方は今日から生徒会の秘書の代理です」
「寝てたから聞いてませんでしたー」
「いつもはそれで済むだろうけど、俺はそれじゃ済まさないですよ?」


にこっと笑うトランクスはイケメンと噂の通りイケメンだった。

彼は優等生でイケメンで頭も良い。
いつも寝てたりさぼってたり頭の悪い私とは次元の違う存在。


こうやって間近で彼を見ることなんて滅多に――――って。


「ち、近い!」


トランクスの顔の近さに気づいた私は、慌てて席を立った。

それを待ってましたとばかりにトランクスの手が追いかけて私の手を掴む。


力の限り逃げようとするが、彼の手はびくともしない。
う、うそだ。こんな軟男のどこに力が。


ゆえさん、諦めて下さい」
「あ、諦めるわけないでしょ!私の平和な放課後!!帰ってゲームするんだから!」
「駄目ですよ。俺が決めたんですから、逃すわけないでしょう?」
「なっ・・・!生徒会長様、趣味が悪いんじゃない?秘書は可愛くて優等生ちゃんにしとかなきゃ」


にらみ合いながら未だにお互い力を緩めない。


「俺の意志で選んだんです。さ、行きましょう」
「っの・・・優しい顔して案外腹黒だな?レディには優しくしないとモテないぞ?」
「優しくしてるじゃないですか。・・・優しくしなくてもいいんですよ、別に」


少し声のトーンが下がった。

そ、そんな脅しに負けるほど、私は弱くない。


内心ぷるぷるしながらも、挑発的な笑みを返した。


「や、やれるもんならやってみ・・・・」


ぐんっ。

腕が思いっきり引かれて、視界がぐるりと回転した。
そして襲いかかる浮遊感・・・あれ、これもしかして。


「うあぁあああ!?」
「それじゃ、行きましょうか」
「待て待て!!トランクス!!このイケメン野郎待て!!」


まるで荷物を担ぐように持ち上げられた私。
それなりに体重はあるはずなのに、それを感じさせないレベルで軽々と運ばれる。

向かう先は生徒会室。


私の、一番嫌いな場所。

だっていかにもかたっ苦しいでしょ?
だから嫌だったのに。


どれだけ暴れても、何をしても、トランクスはビクともしない。


ゆえさん、意外と軽いですね。運動部だからもう少し重いのかと思ってました」
「アンタこそどんだけ筋肉質なんだよ・・・・」
「俺だって鍛えてますから」
「そうみたいですねー・・・ったく。なんだって私なのさ・・・・」


こんなドラマみたいな展開は欲しくない。
めんどくさいことに巻き込まれるぐらいなら、寝てたいんだ。

でも、それは許されないまま。


抵抗虚しく生徒会室に投げ込まれた私は、出口にダッシュしようとして笑顔のトランクスに鍵を閉められた。


「うわ、内側鍵とかいやらしー!?生徒会室なのに不健全な香りがしますけどいいんですかー?」
「貴方みたいな人を閉じ込めておけるからいいんじゃないですか?」
「き、綺麗な顔してキツイ毒吐きやがる・・・・」


まさか内側からも鍵が出来る部屋だったとは。

逃げる手段はトランクスの手から奪い取るしかないけど。
見た感じ、ちょっと・・・勝てそうにない。


諦めてトランクスが作業する大きな机の隣に座った。

それからパラパラと資料をめくる。


「んで?何すればいいの、会長様」
「そっちの資料、まとめてくれませんか?」
「あいあいさー」


気だるい返事をして、資料を手に取った。


資料にはページ数が書いてある。

よくある生徒会用の資料だろう。

まぁ、これぐらいなら私でも出来るかな。
ぼけーっとしながら資料をまとめていく。


「ねむっ・・・」
「間違ってたらやり直しですよ」
「知ったこっちゃないね」
「また連れてきますからいいですよ」


笑顔のまま言われると何も言い返せない。


この数分でかなりトランクスのイメージが変わった。
トランクスといえばイケメンの優等生、誰にでも優しくて完璧な青年って感じだったけど。

こうやって話した感じ、普通の青年だ。

んでもって・・・・わりと男らしい。


「?俺の顔になんかついてます?」


見つめすぎたのか。
目の前のトランクスが私の方を見て首を傾げた。

慌てて目をそらし、資料作りに専念する。


「な、なんでもないよ」
「・・・・?体調でも悪いんですか?」
「んなわけないでしょ。それならそれ理由に出てってますー」
「意外とそこは真面目なんですね」
「意外とってなんだよ!」


くすっと意地悪く笑うトランクスはやっぱり綺麗だ。


「トランクスって、おっかけがいるぐらいだから遠く離れた存在かと思ってたけど、意外と普通なんだね」


気づけば思ったままを口にしていた。
トランクスの表情が、驚きの色に染まる。


「・・・・まさかそんなハッキリ言われるとは思ってませんでした」
「いやー、私もごめん。ふと思っちゃったからつい。にしてもトランクスも大変だよねー、ファンに追っかけられるなんてさ」


からかうように言いながら、出来た資料をホッチキスで留めていく。

そんな私を見て、トランクスがため息を吐きながら席を立った。


手には私の倍以上の完成した資料が握られている――――さすがだ。


「正直迷惑してるんですよ、俺はああいうの苦手ですから」
「だろうね。今話してる感じだとそういうイメージかな」
「だからゆえさんを選んだんです。思った通りの人で良かった」
「・・・・・あ、そうなの」


それってなんか反応しづらい。
喜んでいいのか、悪いのか。

変に反応するのもおかしいと思った私は、流すように軽く反応だけして作業に戻った。


「さっぱりした反応ですね・・・・」
「い、いや、変に反応してもあれじゃん?あ、これ終わった」
「ありがとうございます」


手渡した資料。

ふと、私の手と彼の手が触れる。


何も気にしなかった私とは逆に、トランクスはそれにびくっと反応して顔を真っ赤に染めた。
え?何その反応?乙女?

何も反応しなかった私が変みたいじゃないか。


「ご、ごめんなさい」
「い・・・・いいよ別に。やー、モテモテのわりに初々しいんだね?レアなの見ちゃったー」


誤魔化す私の顔を、トランクスが覗き込む。


あ、やっぱり綺麗な顔。
イケメンっていうか、美人っていうか、とにかくなんか普通とは違う領域。


「俺も、レアなの見た気がします」
「へ?」
「顔・・・・赤いですよ、ゆえさん」
「っ・・・!!!!」


トランクスに言われて顔に熱が集中するのを感じた。

さすがに耐え切れず、勢い良く顔を逸らす。
クスクスと聞こえる笑い声が、更に私の動揺を強めた。


な、なんだこの空気は。

大体私達ってそこまで親しくなかったはずだ。


なんでいきなり拉致られた挙句、こんな。
まるでどこかの少女漫画みたいな展開。


「(いやいや、ないない)」


ぶんぶんと首を横に振って色々な考えを吹き飛ばした私は、資料が片付いたのを見て席を立った。


「んじゃ、終わったから帰るね」
「え?あ・・・送っていきますよ、結構遅いですから」
「んー?別に平気だよ」
「俺が送りたいんです。ちょっと待っててください!」


私の意見を無視し、トランクスも帰る準備を始める。

この数分でトランクスへのイメージがガラリと変わったのは、気のせいじゃないだろう。


まぁ、別に悪い方に変わったわけじゃない。
ただ意外と普通なんだなって思っただけで。


「さ、では帰りましょう」
「はーい」


二人きりで廊下を歩く。
それだけで、放課後に残っていた生徒たちがざわつくのを感じた。


「ね・・・トランクス」
「はい?」
「こ、これ、マズイんじゃない?」


あのファン大量のトランクスと、サボリ魔で何の特徴も無い女の私と。

普段ファンの噂を聞くトランクスだが、そういえば”女の噂”を聞いたことはない。
あれだけファンがいるんだから、ちょっと女と二人きりになっただけでも噂になるはずだ。


となれば尚更、この状況はマズイはず。

はず?いや、確実にまずい・・・!!


「トランクス、アンタ今まで結構こっそり帰ったりしてること多かったでしょ」
「え?まぁ・・・」
「そんなアンタが、女と二人っきりで、こんなところ歩いたらどうなると思う?」
「あー・・・」


納得したようにトランクスが困り果てた表情を浮かべる。
可哀想だとは思うが、私は巻き込まれたく無い。

私は咄嗟にトランクスから距離を離すと、若干周りに聞こえるように言った。


「そういうこと。こんな私と噂になりたくなかったら、さっさと一人で帰・・・っ」


――――え?


「別に俺は困りませんよ?噂になっても」


私の後ろには壁。
目の前には、トランクスの綺麗な顔。

突き刺さる視線。


私はその瞬間、平穏な学校生活が全て崩れ去る音を聞いた。




























「っだぁああぁあああ!!」


叫びながら生徒会室に飛び込み、鍵を閉める。
外から聞こえるのは、私を追いかけていた女達の声だ。

あれから文字通り平穏は崩れて消え去った。


噂はあっという間に広がり、トランクスと私が付き合ってることになり。

それだけならまだ良いが、私はばっちりファンの標的になった。


「っはー・・・!!ふざけてる・・・!!!!」
「扉壊れちゃいますよ」
「誰のせいだ!!誰の!!」


原因である生徒会長様――――トランクスを睨みつける。

トランクスはぼろぼろの私を気にすること無く資料を作っていた。
鍵を閉めた瞬間から二人きりになるこの部屋は、いつも私達専用。


「っあー・・・やっと安らげる。ってことでおやすみ」
「え!?ダメですよ、この資料今日までなんですから!」
「嫌だよ。私は癒やしを求めてここにきたの!」
「命令です」
「役員になったつもりはないです」
「なら出てってもいいんですよ?ここは俺の部屋ですから」
「っの腹黒野郎・・・!!!」


にっこりと笑うトランクスに拳を見舞うが、簡単に受け止められる。

悔しいが勝てない私は仕方なく資料を手に取り、トランクスの前に机を挟んで座った。


「はぁ・・・ほんと最悪」
「いいじゃないですか、俺は嬉しいですよ?」
「何が嬉しいんだ。私がいじめられかけてるのが楽しいの?ん?」
「いえ、貴方とこうやって二人きりでいられることが・・・ですかね」


トランクスの声が意識を揺さぶる。

気づけばトランクスの顔があの時のように目の前にあった。
机に少し伸し掛かるようにして私の方へ顔を近づけているトランクスから、どうにか離れようと椅子をずらす。


だが、それも許されなかった。

椅子を下げるために机に手を掛けた瞬間、手を取られたのだ。


「っ・・・・な、なにすんの」
「俺、ゆえさんのことが好きなんです」
「わ・・・・私みたいなのは、トランクスには」
「そんなの関係ないんです。今のこの噂を、俺は・・・本当にしたいんですよ」


私の中のトランクスは。
物静かで、誰にでも優しくて、だからなんとなくちょっと優男なイメージで。

それがこの瞬間も含めて全てが変わった。


優しいのは変わらないけど。

本当は男らしくて。


あぁ、あと。
結構計算高い。


「噂が本当になるなら、ゆえさんに迷惑掛けてる全ての人を、俺が追い払いますよ」
「いや本当にならなくても、アンタのせいでこうなったんだから追い払って欲しいんだけど?」
「・・・・う、そ、それは・・・そうですけど」


たじろぐトランクスが少しだけ私から離れる。
やられっぱなしで悔しかった私は、その隙をついて逆に顔を近づけた。


「っ・・・・!」


トランクスの顔が、真っ赤に染まる。


「悪いけど、イケメンだけじゃ釣られないから私」
「・・・・そ、それは分かってますよ。でも」
「じゃあなんで私みたいな子がいいのか言ってみ?ファンの子しのぎとか、めんどくさくなさそうだからとかだったら今度こそ一発いれてやる」


拳を固めて殴るふりをしてみせた。

トランクスはその拳を受け止めて、真っ赤な顔のまま私の方を真っ直ぐ向く。


恥ずかしそうなのにその瞳は私から離れない。
ずっとずっと、私の顔を見つめてる。

その瞳の中に映る私の顔も――――赤い。


ゆえさんのそういう、素直なところです。真っ直ぐでいて、それでいでちゃんと俺を俺として見てくれてる。いつも元気で・・・周りからみてるだけですごく楽しくて」


私の手を掴む力が強くなる。

恥ずかしくて目を逸らしたくても、逸らせない。
まるで吸い寄せられるように。


「俺と・・・付き合って下さい」


私の予定になかった、まるで少女漫画のような青春。


「・・・・ファンの子、追い払ってくれるならね」
「っ!任せて下さい!」
「っわ!!ちょ、いきなり抱きつくなっ!危なっ・・・・!?」


嫌いだった生徒会室が。
私達だけの専用部屋になったのは、それから数時間後のことだった。
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
←No.397No.396No.395No.394No.393No.392No.391No.390No.389No.388No.387
サイト紹介

※転載禁止
 公式とは無関係
 晒し迷惑行為等あり次第閉鎖
 検索避け済

◆管理人
 きつつき
◆サイト傾向
 ギャグ甘
 裏系グロ系は注意書放置
◆取り扱い
 夢小説
 ・龍如(桐生・峯・オール)
 ・海賊(ゾロ)
 ・DB(ベジータ・ピッコロ)
 ・テイルズ
 ・気まぐれ

◆Thanks!
見に来てくださってありがとうございます。拍手、コメント読ませていただいております。
現在お熱なジャンルに関しては、リクエスト等あれば優先的に反映することが多いのでよろしければ拍手コメント等いただけるとやる気出ます。
(龍如/オール・海賊/剣豪)