いらっしゃいませ!
名前変更所
ブゥとビルスが暴れだした時には、もう全てが遅かった。
ビルスは一瞬でブゥを殴り飛ばしてボコボコにし始めるし、止めに行こうとしたベジータもその力に圧倒されて足を止めている。
でも、こんなところで暴れられちゃ・・・。
「と、止めるんじゃ!!」
迷ってる暇はないと、亀仙人がそう叫ぶ。
その言葉に合わせて18号達が飛びかかるが、まるで玩具のように弄ばれて倒れていった。
当たり前だ。
相手は破壊神。
神なのだ。
いまの私達なんて、ビルスにとってはただの赤子だろう。
「ビルスっ!ちょっと落ち着いて!なんでそんな怒ってるの!」
「プリンを食べれなかったからだよ。そのピンクのやつのせいでね」
伸びてるブゥを、冷たい表情で見下げるビルス。
こ、こいつ、プリンで怒ってこんな暴れてるのか。
「プリンぐらいなら出してあげるから落ち着いてください」
「断る。もう怒ったからね、僕は」
「・・・・ウィスからも何とか言ってよ」
「ビルス様はこうなってしまったら止められませんからねぇ・・・」
「んのやろー・・・・」
仕方なく拳を構える。
そんな私を見て、楽しそうにビルスが笑った。
「来るかい?」
「・・・もう・・・どうにでもなれっ!!」
ピッコロが戦うよりも先に飛び出し、ビルスに拳を打ち付ける。
バチリと気が弾ける音が聞こえ、右手に痛みが走った。
さすが、としか言いようがない。
ただ拳がぶつかり合っただけなのに、打ち付けた方の私が痛みを負うなんて。
「っ・・・!」
「やはり悪魔になったらだいぶ弱体化するようだね・・・」
「っあぐっ!!」
「ゆえ!!」
蹴り飛ばされた私を、ピッコロがキャッチする。
「大丈夫か・・・?」
「だ、大丈夫・・・平気だよ、平気」
一撃がはんぱなく重たい。
こんなの食らったら、ピッコロの一撃なんて軽く感じてしまう。
「ッ・・・!」
「っ!だ、だめ、ピッコロ!」
私のダメージを見てか、少し殺気立ったピッコロがビルスのほうに突っ込んでいった。
結果は分かってる勝負。
それでもやっぱり。
「っがは・・・!」
自分の大切な人がやられるっていうのは。
「・・・・・」
眠ってたものに、火を付ける。
「けほっ・・・・」
「ピッコロ・・・!」
吹き飛ばされたピッコロを抱きかかえ、一旦クリリン達のところまで下がった。
クリリン達も一撃ずつぐらいしか食らってないはずだが、ダメージが大きいのかぐったりとしている人が多い。
「皆大丈夫?」
「あ、あぁ、なんとかな・・・・」
「ピッコロをお願い」
「え?お、おう・・・?」
「ちょっと私、あの破壊神に一発仕返ししてくるから」
「へっ?」
「一発めり込ませてやる」
戸惑うクリリンに、意識が朦朧としているピッコロを預けて。
火のついたものを――――解放した。
一瞬で跳ね上がった魔力。
そのままビルスの目の前まで飛び、重たい回し蹴りを入れる。
「ッ・・・!!なんだ?さっきよりも随分戦闘力が上がったねぇ」
「ピッコロの分、一撃入れてやるッ・・・!!」
「おやおや、そんなにアイツをぶっ飛ばしたのが気に食わなかったのかい?」
「気に喰わないに決まってんでしょ!ピッコロは私の夫だッ!!」
「ッ――――――!?」
もう一度回し蹴りを叩き込んで、ビルスの体勢を崩した。
そのまま気弾を叩き込もうとするが、そんなに上手くいくはずもなく。
防御された気弾。
それすらも気にせず、全力で攻撃を叩き込む。
痛みすら、高まった魔力のおかげで感じない。
「ふっ・・・なかなかだね。弱体化したとはいえ、やはり元は最強の守護天使・・・・ルシフェルか」
「褒めたって何にも出ないんだからね・・・っ!!」
「一撃入れるんだろう?どうぞ?」
「っの・・・・!!馬鹿に、するな!!!」
「なっ!?ぐ・・・っ!!」
一気に魔力を上げ、全力を込めた拳をビルスの額にぶち込んでやった。
もちろん、私の身体も倍以上の反撃を食らって吹き飛ぶ。
ま、一撃入れられたからいいか。
そんな風に考えながら吹き飛ぶ私の身体は、まったく自由に動かない。
「っく・・・あの破壊神やろー、本気で一発いれやがった・・・・」
霞む視界の先で、ベジータやトランクス達がビルスに飛びかかっていくのが見える。
やめておけっていう助言すら出来ない私は、ただそれを見守った。
たった一撃でこれなんて、情けない話だ。
見守りながら、やっと動けるようになった上半身をゆっくり起こす。
「は、はぐ・・・・ヒビ入ってそう・・・」
起き上がると軋む身体。
魔法で痛みを軽減させながらゆっくりと立ち上がる。
「・・・・っつ・・・」
痛みにふらつきながらも、頭の中は冷静だった。
さっきは怒りでビルスに喧嘩を挑んだけど、やっぱり勝てる強さじゃなかった。
あんな力にこれ以上暴れられたら、破壊の前に地球が壊れてしまう。
何よりも、誰もそれを止められない。
だからこそ考えなければ。何かいい方法を・・・!
「ゆえ!」
「んえ?ぶふっ!?」
「貴様、無茶しやがって・・・!!」
「怒んないでよー・・・だって、ピッコロがやられたらついカッとなっちゃって・・・」
私のその言葉に、近づいてきていたクリリン達がからかうように笑った。
「お前はほんとピッコロのこと好きだよなぁ?」
「アンタだって、18号がぶん殴られたらやり返すでしょ?」
「ま、そ、それはそうだけどよ・・・」
「だからって無茶しすぎだろ?可愛い顔が台無しになっちまうところだったぜ、ゆえ」
「うるさいぞ。アンタも戦えヤムチャ」
「む、無茶いうなよ!」
こうしている間にも、ビルスに挑んでいったベジータ達がやられていく。
体勢を立て直した私はどうにか援護に行こうとして――――その時、目に飛び込んできたもののせいで足を止めた。
「ちょっと。アンタ!!」
ブルマだ。
あの戦闘地域に、ブルマが一人。
しかもビルスに対して声を掛けに行っていたのだ。
相変わらずの気の強さ。
相手が破壊神だということを分かっていないにしても、この戦いを見てあの度胸なのだから本当に凄い。
「アンタ、ベジータの知り合いかなんだか知らないけど・・・私の38歳のバースデーが滅茶苦茶じゃない!!!」
「38歳なんだ・・・」
クリリン、そこじゃない。
というか誰か止めないと、あのブルマの怒り方じゃヘタすると――――
「っ・・・!」
あ。
「あ」
私の心と、誰かの声が重なった瞬間。
ブルマがビルスにビンタをお見舞いした。
もちろんビルスも黙っちゃいない。
静かにブルマを見下ろし、お返しのビンタを叩き込んだ。
「っあ、ブルマさ・・・!」
慌てて駆け寄ろうとするクリリンよりも先に、ベジータの声が響いた。
怒りに満ちた、声。
破裂する、気。
これはベジータの気だ。
でも、いつもと全然違う。
「よ、よくも・・・っ」
「え?」
「よくも・・・!!俺のブルマを――――――!!!!!!」
一気に弾けた気がベジータを包んだ。
金色に染まるベジータの姿は、いつものサイヤ人とはどこか違う。
痺れるほどの戦闘力。
一時的だが、ビルスを防御を崩す攻撃を放ったベジータは、そのままビルスとの攻防を続けた。
「なんてこった、ベジータのやつ・・・・ついに悟空をこえよったんじゃないか?」
「あんなベジータは初めて見るな・・・」
亀仙人や天津飯の言うとおりだ。
あんなベジータ初めて見た。
というか今のベジータ、「俺のブルマー!」って叫んでたよね?
まるでどっかの誰かさんみたいな戦闘力の上がり方。
・・・・・。
「ね、ねぇ、悟飯」
「はい?」
「さっきの私、あんな感じだった?」
「・・・はい」
「うわ、他人の目から見ると恥ずかしい・・・・」
怒ったその時は周りが見えてないからあれなんだけど。
自分と同じ状態のベジータを目の前で見たら、急激に恥ずかしくなった。
恥ずかしいというか。
照れくさいというか。
「・・・・フン」
「わ、笑うな」
隣のピッコロが笑うのを聞いて、顔が熱くなるのを感じた。
「ピッコロだって、私がやられた後にすぐビルスの方いったくせに・・・」
「目の前でお前が殴られて黙っていられるほど、俺は神に近くないんでな」
「・・・・・っ」
さらっと言われた殺し文句に更に熱が集まる。
頭を抱えて座り込めば、からかうような笑い声が後ろから聞こえた。
って、今はそんなことしてる場合じゃないんだってば。
たとえ強くなったとしても、あのベジータだってビルスにとっては・・・。
「がはっ・・・・!」
「もういいよ。それも超サイヤ人ゴッドじゃないみたいだし。地球を破壊して帰る」
「っ・・・・破壊破壊、いいやがって・・・・ッ!!」
「君もしつこいよ」
「ぐっ!?」
赤子に、変わりはない。
額に一撃食らって沈んだベジータを、ブルマが駆け寄って支える。
その間にもビルスは私達の所に近づいてきて――――にんまりと笑った。
「・・・・」
何も喋らない。
ただその背中に、凶悪な力を抱えて。
誰もが恐怖に震えて後ずさった。
こんな力が地球に加わればどうなるかなんて、誰もが想象出来る。
「・・・・っ」
最悪の自体だ。
そもそも、この厄介な破壊神に目をつけられたのが最後。
地球が壊されてしまうぐらいなら。
いっそ、地球へのダメージを覚悟して戦うしか道はない。
ビルスの膨れ上がっていく力を見ながら、私は覚悟を決めて力を開放しようとした。
―――――その時、だった。
「待てッ!!」
聞き慣れた声が、ビルスの力を止めた。
声が聞こえた方向から姿を現したのは、遅れて出てくる救世主。
「悟空・・・!」
「なんだ、またお前か」
え、またお前って言われてる。
いつの間に悟空、ビルスと面識が?
「なぁ、ビルス様。地球破壊するの、やめてくれねぇか?」
驚く私達をよそに、悟空はごく自然にビルスと話を始めた。
「やだね。僕は一度決めたことは変えない主義なんだ」
「そこを何とか見逃してくれ!」
「断る・・・それともなんだい?君がまた戦うかい?」
「そうしたいところなんだけどよぉ・・・どうやってもアンタに勝てる気がしねぇんだよな」
当たり前だ。
相手は、神様なのだから。
それは誰もが分かっていること。
「・・・あ!」
頭をかきながら悩んでいた悟空が、何か思いついたように手を叩いた。
「なんだい?」
「な、ビルス様、ちょっとまってくれねぇか!?」
「・・・・なぜ」
「その、超サイヤ人ゴッドっての、出来るかもしれねぇ!」
「ほう?」
何かを思いついたようにそう言い放った悟空の視線の先に、7つのボールが映る。
なるほど。
それは、良い考えだ。
分からなければ聞いてしまえばいい。
そう、何でも願いを叶えてくれるアレに。
「上手くいくかは分からねぇけど・・・な?少しだけ待ってくれ!」
「少し・・・ねぇ」
そのぐらいの提案なら待つと思っていたが、何故かビルスは不満気だ。
「・・・・・・・ま、いいよ。でも条件がある」
「条件?」
「あぁ・・・ルシフェル」
え。
「私?」
突然名前を呼ばれた私はびくっと肩を震わせた。
いやだって、今の流れで私が呼ばれる要素って何もないでしょ?
ビビらないほうが可笑しい。
「そうだ、君だよ」
「私が何?」
「そのゴッドとやらを見つける間、君が相手をしてくれるなら待ってあげるよ」
「なんで私!?無茶言わないでよー。私がアンタを相手にしたら死んじゃ・・・」
「嘘を吐くなよ?」
一瞬だった。
低く、鋭く。
威圧するような声が耳元で響く。
いつの間にかビルスは目の前から消え、私の後ろに居た。
囁かれるような体勢になっている私は、一歩も動くことが出来ないままごくりと唾を呑む。
「今さっき僕がこの地球を破壊しようとした時・・・君、一瞬だけどとてつもない力を出したね?」
しまった。
あの時。地球を守ろうと思ったあの時。
天使化のために解放した魔力が、ビルスにバレてしまったんだ。
無意識に唇を噛み、ゆっくりと後ろを振り返る。
「何のこと?」
「とぼけるならいいんだよ、地球が壊れるだけだからね」
「・・・っ」
戦いたくない。
確かに修行を続けて天使化の時間は伸びたし、前よりも動けるようにはなった。
でもあれはあくまでも昔の私の力に頼る行為だ。
それにその力を見られたら、その、厄介なことになると思う。
主に悟空やベジータが厄介。
絶対修行相手になれだのなんだの言ってきて・・・。
「で、どうするの?僕の相手するの?しないの?」
「・・・するしか選択肢がないように見るのは気のせい?」
「どうだろうね」
「・・・・分かった、相手する」
選択肢の用意されてない選択肢に、私は頷くことしか出来なかった。
私の手を、ピッコロが心配そうに追いかける。
「ゆえ・・・・」
「大丈夫。さ、皆はちゃっちゃと超サイヤ人ゴッドってのをお願いします!」
「あぁ・・・頼んだぞ、ゆえ」
悟空達に見送られながら、ビルスと私はゆっくり空に舞う。
「それじゃ、超サイヤ人ゴッドとの戦いの前の、肩慣らしさせてくれよ」
「・・・・ま、やってやりますか」
睨み合う、無言の空間。
静かに黒い髪を靡かせた私は、久しぶりにその力を解放した。
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