いらっしゃいませ!
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目の前の戦いは、本当に地球の運命をかけている戦いなのだろうか。
「まるで修行を受けているようだな、悟空は」
皆と一緒に悟空を追いかけて戦いを見守っていたピッコロの言葉。
私はそれに、納得していた。
戦い好きな二人の戦い。
そして神の領域に足を踏み入れた者の、戦い。
誰もが目で追うのに必死の早さ。
私はそんな二人の戦いをただじっと見ていた。
「ゆえ、お前から見て二人の戦いはどうだ?」
ピッコロの発言に、ベジータやクリリンの視線が私に移る。
どうって言われても。
正直、今の戦いじゃ何も分からない。
だって、二人共本気じゃないんだもん。
「わかんなーい」
「何?」
「ぐえっ!い、いきなり掴みかからないでよ・・・っ!?だって二人共本気じゃないんだもん」
「あ、あれで本気じゃないだと・・・?」
最初から全力で戦うのが良いことじゃない。
相手の手の内を探ったりだとか、色んな効果がある。
でも彼らの場合はどうだろう?
ただ楽しむだけかもしれない。
だからこそ、読めない。
「・・・っこっちにくるぞ」
お互いに戦いを楽しんで。
挑発しあって。
少しビルスが本気を出した瞬間、二人の戦闘力が一気にこちらへ向かってきた。
二人が戦っていたのは地下の空洞。
そこから一気に空間を切り裂いて空高く登っていく。
その瞬間に見えた悟空の姿は、既にもう。
「あいつ、もう超サイヤ人ゴッドじゃない!!普通の超サイヤ人に戻っているぞ!!」
「なっ!?」
誰もが驚いて悟空たちを見上げる。
彼らの姿はもう、私達の肉眼では捉えられない場所へと行ってしまった。
普通の超サイヤ人に戻ってたらしいけど。
感じる戦闘力は、さほど前と変わっていない。
悟空のセンスなのかな?
あの短時間で超サイヤ人ゴッドの力を吸収しちゃったんだろう。
「天才なのか、戦闘狂なのか・・・」
「後者だろうな」
「フン。俺たちサイヤ人は戦闘民族だ。それでこそサイヤ人だろうが」
戦闘狂を否定しないベジータに、苦笑を浮かべた。
誰もが戦いを見たくて空を見上げるけど、目に入るのは眩しい太陽だけ。
どうやら彼ら、宇宙に飛び出して戦っているようだ。
「なんも見えねぇよー」
「悟空さ・・・」
「ちょっとアンタたち!どうにかして見えるようにしなさいよー!!」
「見えるようにしてもお前の目には追えないだろうな」
「悟空さん・・・」
心配の声や、ただただ戦いが見たい同じ戦闘狂の声が辺りに響く。
まぁでも、このままぼーっと空を見てるのもつまらない。
彼らの文句に良い方法を思いついた私は、ウィスが持っている杖と似たような杖を魔法で召喚した。
「お?なんだぁなんだぁ?ちょっとは天使っぽいことしてくれるのかぁ?」
煽ってきたクリリンを睨みつけつつ、杖を空に掲げる。
「ひゅー!ゆえ、なんか本当に天使っぽい!!」
「っさいな。見たくないならやんなくてもいいけど?」
「おいクリリン余計なこと言うなよ!みたいなー!俺見たいよゆえちゃん!」
「・・・・やっぱ止めようかな」
ヤムチャとクリリンはもうダメだ。
酔っぱらっててうざ絡みがやばい。
私は二人を無視しながら掲げた杖を振るった。
「” ”」
だから皆の前で天使になるのは嫌なんだ。
私だって別に好きな姿じゃないし、何より色々とめんどうなことが多い。
こんな風にからかわれるのもだし。
戦えば戦闘狂たちに目を付けられるってのも・・・一つ。
「”我が前に全てを映せ”」
私の声に反応して、杖が弾ける。
その杖が鏡のような形に変化し、中に戦う二人を映し出す。
「悟空!!」
ピッコロの言ったとおり、悟空は金髪の超サイヤ人に戻っていた。
それでもビルスに負けず拳を打ち合い続けている。
「カカロット・・・・」
宇宙空間の中で。
悟空は誰に遠慮すること無く、全身全霊の力を込めたかめはめ波をビルスに撃ちこんだ。
鏡に映さなくても分かるほどの力。
太陽と同じ方向から、かめはめ波の青白い光が弾ける。
「ビルスを撃ったぞ!?」
「や、やったか!?」
皆がざわつく中、私は冷静にそれを見ていた。
神の気配は私達同じ部類の存在にしか分からない。
そして私にはビルスの気配が消えていないことが分かっていた。
でも、何も言わない。
私はあくまでも傍観者なのだ。
動いたとしても最悪の自体の時だけ。
「それでおしまいかい?」
「ッ・・・!」
「お返しだよ」
微かに聞こえたビルスの声と共に、次は赤色の光が地球を照らした。
戦いを知らない人にとって、地球に差し込むこれらの光は異常なものにしか見えないだろう。
ほんと、お騒がせな人たちだ。
ま、笑ってられないんだけどね。
もし悟空が負ければ次は私の番だ。
「ったく、迷惑なやつら」
「だが・・・楽しそうだな」
「だから迷惑って言ってるんだよ・・・」
「迷惑なのは事実だが、俺は・・・いや、俺達は少し反論出来ない部分もある」
そう言ったピッコロの視線は、いつになく真剣な表情をしているベジータに注がれていた。
強さを求めていた者達。
たとえ平和なこの地球に幸せを感じていても、根本的なものはそこにあるんだろう。
「勝手にやんのは邪魔しないから、私達に影響しない場所でやってよねー」
「それが出来れば苦労しないだろ」
ごもっともで。
なんでここまで巻き込まれるんだか。
やっぱり悟空が何かを惹きつけてる説、あるかも。
悪人だけじゃなく、神様まで惹きつけちゃうなんて。
「悟空さ・・・!!!」
チチの悲鳴に視線を鏡に戻した。
鏡に映ったのは力尽きて落ちる悟空の姿と、ビルスの強烈な攻撃。
「悟空さーーー!!!」
悲痛な叫び。
思わず助けに行こうと力を込めたが、一瞬だけ揺らいだ悟空の力に足を止めた。
チチの叫びに、わずかだが悟空の力が反応している。
「悟空ッ!」
「悟空・・・!!」
チチだけじゃない。
皆がそれぞれ悟空の名前を呼ぶ。
あのベジータでさえも。
誰もが悟空の名前を呼ぶ。
そのたびに感じる、彼の・・・湧き上がる力。
「気じゃない・・・」
「ん?」
「・・・・」
揺らめく力は。
”気”じゃ、ない。
「っ・・・!?悟空、さ・・・?」
驚いたチチの目に映る、赤色のオーラ。
5人のサイヤ人の光を注がなければ出来ないはずのその力が。
何故か今私達の目の前で、復活した。
そう、悟空が赤く輝いている。
超サイヤ人じゃない。
超サイヤ人、ゴッドとして。
「はぁああぁあああああ!!!!」
そのまま、悟空がビルスの攻撃を跳ね返す。
ビルスはその光景を呆然と見つめていた。
「お、おい、今何が起こったんだ!」
「ぐえっ!ぶわ!ちょ、揺らさないでっ!?」
一瞬だが自力でゴッド化した悟空に納得がいかないらしい。
ベジータは何故か私の肩を掴み、勝負の行方など気にせず私を揺らした。
あ、なんかもう、天国見えそう。
泡を吹いて倒れそうな私に気づいたのか、クリリン達が急いでベジータを引き剥がす。
「離せッ!!今のはコイツに説明してもらうしかないだろうが!!」
「なんで私なら出来るってことになるの!今のは正直私にも何がなんだか・・・」
言い伝えが本当なら、今の力はなんだ。
ベジータが感じてる疑問は私にだってある。
やっぱりサイヤ人って恐ろしい存在だ。
追い詰められた彼が引き出した力は、間違いなく神の力。
「やっぱサイヤ人は怖いわ・・・」
「くそっ・・・カカロットめ・・・・」
「心配しないでも、ベジータもあの領域に達すると思うけど」
「何?」
「あくまでも、予想だけどね」
私達が話をしていると、ゆっくりとした速度でビルス達が空から降りてきた。
ビルスの片腕に抱えられている悟空は、もはや超サイヤ人状態でもなく、へろへろだ。
「父さん!」
そのまま投げ出された悟空の身体を悟飯がキャッチする。
心配そうに悟空のことを見つめる人だかりの中、ビルスとウィスは表情一つ変えずそれを見守っていた。
「さぁて、じゃあ、破壊しようか?」
「なっ・・・・」
良い雰囲気なんてあっという間。
悟空の無事を喜んでいた皆の表情が、再び険しくなるのは一瞬だった。
ビルスがそっと手を伸ばし、力を溜め始める。
皆の視線がビルスと、そして私へ注がれる。
でも、私は動かなかった。
何故かって?だって。
「よいしょ」
ビルスが軽く指を振って壊したのは、小さな岩だった。
突然のことに唖然とする皆。
そんな皆を置いて、ビルスとウィスだけは笑っている。
「おやビルス様。随分小さな地球を破壊されましたね?」
「あーあ。力が残ってないや。残念だけど、完全破壊はまた今度にしよう」
破壊神ビルス。
破壊の神が、破壊を止めるなんて今までにあっただろうか。
これが悟空の魅力なのか、それとも。
戦闘バカの血が何かを感じさせたのか。
「ブルマ婦人。騒がせて申し訳なかった」
驚く皆を無視して、ビルスがブルマに歩み寄る。
「そんなことより、叩いたの謝ってよね!」
「・・・・すまなかった」
本当に申し訳無さそうに謝るビルスは、ああ見えても”悪人”ではないのだ。
あくまでも破壊の神様。
というか、今までのこのやりとりを見ててそこまで言っちゃうブルマも凄い。
「また、パーティとやらに呼んでいただけるかな?」
「暴れないって約束するならね」
「約束しよう。その時こそ、プリンとやらを食べさせてもらうぞ!!」
「食べきれないぐらいたっぷり作ってあげるわ。そのかわり、食べてからマズイなんて言わないでよ?」
「その時は今度こそ破壊するまでだ」
ニヤリと笑うビルスに、誰も恐怖を示さない。
それどころかボロボロの悟空が身を乗り出してビルスに言う。
「そしたらまた、ビルス様と戦えるんだな!」
純粋な戦闘バカ。
ビルスは悟空の言葉に笑みだけ返すと、ウィスに捕まって手を振った。
「では、さらばだ」
光となってウィスと共に消えていくビルスを、誰もが呆然を見送る。
夢だったのか?とも思えてしまう静けさ。
でもえぐれた地面やボロボロのパーティ会場は、それが夢じゃないことを物語っている。
ほんと、何しにきたんだあの破壊神。
超サイヤ人ゴッドと戦いたくて来ただけ?
勘弁してほしいものだ。
「疲れた」
ぼそりと呟いた私の頭に、大きくて暖かい手が乗る。
「・・・大丈夫か?」
「うん・・・ありがと」
「そろそろ戻した方がいいんじゃないのか?」
「あ、そうだった」
ピッコロに促され、天使化を解く。
重たかった翼が一気に軽くなり、思わずバランスを崩しかけた。
そこにすかさず伸ばされる、ピッコロの腕。
暖かい腕に抱かれて、やっと平和が戻ったことを認識する。
そしてそんな私の耳に飛び込んできたのは、今のこの空気を一瞬でぶち壊す彼女の声だった。
「さ、何してるのよアンタ達?さっさと私の誕生日パーティ再開するわよ!!」
やっぱり只者じゃないよ、ブルマは。
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