Erdbeere ~苺~ F11.奇妙な生活 忍者ブログ
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2015年10月17日 (Sat)
11話/甘?/ギャグ/※ピッコロ視点

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それから奇妙な生活が始まった。
一旦俺達は神殿に戻り、前のような生活を始めた。


違うのはゆえの俺に対する気持ちと、態度だけ。



全てを神殿から見ていたデンデ達は快く俺達を受け入れてくれた。

俺とずっと過ごしてきた場所だ。
少しでも思い出に近いほうが刺激になるだろうと思っての事だった。


そして奇妙ながらも、生活の形は変わらない。


どちらかといえば、昔に戻ったような生活だった。


「はぁぁっ・・・・!」


神殿の外から聞こえてくる衝撃音。
ゆえが一人で修行している音だ。

アイツは神殿に連れてこられてから、”アンタを倒してやる!”といって、俺を倒すために修行を始めた。



そう、まるで。


<<見てなよ、すぐにアンタを越して、今ここにいる皆の目の前でぼっこぼこにしてやるんだから!!>>


契約を交わした、あの時のような。


「ピッコロ」
「ん?」


気づけば目の前までゆえが来ていた。
汗だくの顔を上げて、俺の方を見ている。


「修行つきあってよ」


あれから真面目に修行を始めたゆえが、唯一俺に強請ることだ。

前までは人形の・・・・”彼女の過去の姿”が相手をしていたのだが、サリエル様に使いすぎだと怒られて彼女ももうここには無い。


つまり、彼女の相手を出来るのは俺だけになる。
そして俺達二人きりの時間もまた、この修業の時間が一番長い。


「おい」
「ん?」
「髪の毛が張り付いてるぞ」
「・・・っ」


汗で口元に張り付いた髪を、指で掬ってやる。

それに意外と女らしい表情を見せ、照れるゆえがまた新鮮に感じた。


「き、気安く、触んなばーか!」
「触ってから言われても困るな」
「い・・・いきなりだったから!」
「そんなことはない。隙だらけなんじゃないのか?」
「えっと・・・わたしのこと、馬鹿にしてる?」


明らかに苛ついた表情が俺を見上げる。
見上げてる時点で、何も怖くないのだがな。

言葉には出さず鼻で笑えば、俺の心の中に気づいたのか、ゆえが急に魔力を引き上げた。


「さっさとしてよね!それともぶっ殺されたい?」
「出来るものならしてみろ・・・と言いたいところだが、今日は俺が相手じゃない」
「んえ?ど、どういうこと・・・?」


拳を固めていたゆえが、拍子抜けしたような声を出す。


”天使化”のため、命の危機に立たせるという作戦。
そう、今日はあの作戦を決行する日。

俺が気で合図を送ると、気配を消して待っていたベジータと悟空が俺の隣に姿を現した。

二人の姿を見て、ゆえが警戒心を強める。


「・・・何、する気?」


このゆえは昔のように自分の力を過信していないタイプだ。
この二人が組めば自分が勝てないことを分かっていて、警戒しているのだろう。

だからこそ、この作戦はやりやすい。


自分の命の危険も、強く感じ取ってくれるはずだからだ。


本当ならさせたくない。

傷つけさせることは、したくない。
俺以外がこいつを傷つけるころは許したくない。


だが、希望に賭けてみるしか方法はないんだ。


「よぉ、んじゃ、初めてええんか?」
「カカロット・・・貴様と組んで戦うのは気に食わんが・・・・今回だけだ」


構える二人にゴクリと喉をならすゆえ

俺の方を見て戸惑いを見せても、俺は動かない。


「わりぃな、おめぇのためなんだ」
「そんな悪人顔で言われてもね・・・・」
「ハッ。死にたくなけりゃ、全力を出すんだな!!」
「ッ―――――!!」


勝負は一瞬で激戦と化した。


我慢というものを知らないベジータが速攻でゆえに殴りかかり、ゆえがそれを軽くいなす。
だがそこに悟空も加われば、ゆえの余裕はほんの数秒で消え失せる。


体力が弱点のゆえは、確実に勝てない。

特にこの二人には・・・どうあがいても。


こいつらは一種のバケモノだからな。


「っはー、もう、疲れたんだけど・・・!!」
「体力のないクズめ」
「言わせておけば・・・!!」
「おっと・・・俺ばかり見ていていいのか?」
「ッが・・・!」
「あんまり前ばっか見てっと、隙増えっぞ?」
「・・・・っ」


背中から一撃。
悟空の容赦無い攻撃を浴びたゆえは、身体をゆっくりと宙に投げた。


手を伸ばして助けたい。

でもそれは、許されない。


頼んだ以上俺がここで手を出すことは、ない。


「っつ・・・なめんなっての・・・・」


ゆえが落ちながらそう呟くのが俺の耳に入った。

その声は耳の良い俺だけに聞こえている。
あいつらには、聞こえていない。


「ぶっ飛ばしてやる・・・!!」


低い、呟き。

そしてとてつもない量の魔力が解放される衝撃。


俺は驚いて目を見開いた。
まだあれほどの魔力を持っていたとは・・・正直、思わなかった。


安堵と同時に感じる、不安。


力が残っていればいつまでも戦い続けるだろう――――つまりそれは、いつまでも、彼女が、傷つくことになるのだ。


「お、なんだ。まだおめぇ力残ってんだな!」
「そうこなくちゃ、楽しくないぜ・・・」
「やられっぱなしなわけないでしょ・・・!殴らせろ!!」





























果てしない戦いは、終わりに近づく。

夕日を浴びながら落ちた黒髪に、俺はそっと手を伸ばした。


「っは・・・ぁ・・・・」


荒い息だけが響く空間。
血だらけのゆえが、ぴくりとも動かず呻いている。

それでも、それでも――――。


「ッ・・・・」


許してくれ。

手は、伸ばせない。


「なんだ、もう終わりか?」
「二人がかりでやっときながら・・・・何言ってんのさ?レディに2対1なんて、さいってーの、やることだよ・・・」
「しょうがねぇだろ?おめぇのためだ」
「さっきから何言ってるか、全然・・・わかんないんだけど・・・?」


追い詰めても、追い詰めても。
ゆえは天使化をする様子を見せなかった。

やはり、記憶にないものは、呼び起こすのも難しいのか。


「まだやれるだろ?立て」
「もう、無理」
「なら殺すまでだな」
「ま、待て、ベジータ!!」


止めれない。

悟空が慌てて止めようとするが、俺は一歩も動かない。


分かっていた。
ベジータが命までは奪わないことを。

だがそれに近いレベルの攻撃を与えるだろうということも・・・分かっていた。



ぐっと拳を握る。

頼む、目覚めてくれ。
お前の心が目覚めてくれれば、お前はもう、傷つかずに済む。


「まだ力を出す気にはなれねぇのか?」
「っなんの、話」
「お前の眠っている力だ。天使化、だ。知っているだろう」
「天使化・・・?なにそれ」
「チッ・・・・まだ殴りたりないか」


重たい音が響いて、ゆえの身体が再度沈んだ。


「っは、ぐ・・・・」
「ベジータ、やっぱり無理なんじゃねぇのか?」
「・・・・まだだ。こんなんじゃまだ死なないな、こいつは」
「だからってよぉ・・・・」


ちらり、と。
悟空の視線が俺を向く。

俺は何も言わず目を逸らした。


「・・・ピッコロ」
「死にたくなけりゃ、力を出しやがれ!」
「っ・・・・!!!」


強い衝撃と、遠く離れた俺にすら伝わるシビれるような気。

それを避けること無くまともに受けたゆえは、地面に倒れたまま動かなくなった。


・・・・死んでは、いないようだ。
ゆえが気絶したのを確認した俺は急いでゆえの元へと駆け寄った。


「だめだな。・・・こいつはゆえのようで、ゆえじゃない。技の使い方も、戦いかたも、全然楽しくないな」
「・・・そうだろうな」


今の戦いを見ていて、それは俺も感じていた。


「拍子抜けだ。帰る」
「お、おい、待てよベジータ!」


文句を吐き捨て空に消えるベジータと、それを追いかける悟空。

・・・・フッ、アイツなりの気遣いか。


俺がベジータの立場なら、そうしただろう。
二人を見送った俺は静かにゆえを抱きかかえた。


「・・・・馬鹿が」


抱きかかえたまま寝室にいく。
デンデを呼べばいいのにそれもせず。


静かに、ベッドへゆえを寝かせた。

そのまま丁寧に気を流し込んでいく。
肌に手を滑らせて。


ゆっくり、ゆっくり。


「久しぶりだな」


こうやって触れるのは。

ゆえのようで、ゆえじゃない存在。
触れるのを我慢してきた俺は、回復しているうちに限界を超えて、気づけば―――――


「んっ・・・・」


くちづけていた。


「ん、ん・・・・」


聞こえるのは、ゆえの甘い声。
夢中になって口付ければ、もぞもぞと身体が動き始め、ゆえが目覚めたのを知らせた。

だが、もう。

止まれない。


「んん!!んっ・・・!」


抵抗する足が俺を蹴る。
それでも離れずに貪り続けた。


・・・意外にも、魔法は飛んでこない。


このぐらいの力、さすがに魔法で飛ばせるはずだ。

なぜ、俺を突き飛ばさない?


「っは・・・」
「はぁっ・・・・はぁ・・・!何、すんだ・・・!」
「・・・嫌なら、魔法で俺をどかせばよかっただろう?なぜしなかった?」


組み敷いた先のゆえを見た瞬間。

俺はこの質問の答えを、自分で知ってしまった。


潤んだ瞳。
赤い、唇。

恥ずかしそうに少しだけ目を逸らして。


あぁ、そうか。
記憶を上書きされているだけなんだ、こいつは。


「・・・・」
「ピッコロ・・・?」


操られているわけでもなく。


ただあのティアラによって、上から新しい脳をつけられたような。


だから、だ。
脳のどこかに残っているんだろう。


俺との触れ合いの感覚が。

”身体は正直”といえば、一番か?


「嫌じゃなかったんだろう?」
「・・・ち、ちがう・・・・」
「正直に言え。ならなぜ、俺を退かさなかった?答えろ」
「それ、は」
「答えろ」


逃がさない。


「わ、かんないよ。なんか・・・その、よく、わかんないんだけど」
「・・・」


さぁ、答えろ。
お前の奥底の、眠らされた記憶は――――俺を、覚えていると。


「すごく、ふわふわした。なんか、変な感じ・・・・」
「・・・そうか。覚えてるんだろうな?身体が、俺のことを」
「そんなことない!私はお前のことなんか、知らない!」
「もう知ってるだろう?」


そうだ。

覚えてないとかはもはやどうでもいい。


今のお前は俺を知っている。
たとえどんな状態でも。


「今のお前も、俺を見ているだろう」
「わ、や・・・!?何すんの!」
「俺を見ろ。・・・・俺に、触れろ」
「ッ・・・・」


そのまま抱きしめ、魔術で布団をかぶせた。
久しぶりに触れながら眠る夜。

ゆえは無言のまま、何も言わずただ俺に抱きしめられていた。


ただ、それだけでも俺は嬉しいと感じた。

抵抗も―――しなかったからな。



思い出せないならいっそこのままでもいい。
このままでまた、俺のモノにしてやる。

いっただろう?


「逃がさないぞ、俺は、お前を」




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(龍如/オール・海賊/剣豪)