Erdbeere ~苺~ F10.どんなお前でも 忍者ブログ
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2015年09月17日 (Thu)
10話/甘?/戦闘/※ピッコロ視点

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あぁ、やはりゆえは強くなった。

”悪の暴走”に対する恐怖を捨て、プライドを捨て、もっと強さを求め始めてからは更に強くなっていったのを思い出す。


ただ彼女の追い求めていた、根本的な強さはまだまだだ。
過去のゆえ――――ルシフェルと戦ったときの戦いの癖と、ほぼ変わらない動きが俺を襲う。


同じ動き、癖のある戦い方。

作戦も単調で、そこだけは成長が見えない。


「っはぁ・・・・」
「どうした?片腕でも勝てるんだろう?」
「ちょこまか逃げてるばっかのくせに・・・!」
「お前の攻撃が単調で当たっていないだけだ。教えただろう?真正面から戦うときはパターンを変えろと」
「うっさいな!」


怒声と共に振りかざされた拳を、真正面から受け止めた。

今まで避けていたばかりの俺が受け止めたからか、ゆえは驚いて動きを止める。
その隙を突き、腹部に一発強めの攻撃を叩き込んだ。


前からの癖だ。

攻撃を受け止められた時の切り返しが遅いのは、お前の悪い部分だと言っただろう?


「っかは・・・!」
「丸見えだな」
「ッ・・・仕返しだっ!!」
「・・・!」


死角の位置からの反撃。
俺の腹部に飛び込むように叩きつけられた攻撃も、俺はダメージを最小限に押さえてカウンターを加えた。


「っ・・・・」


ゆえの目が、焦りではなく怒りに歪む。

何故、と。
疑問と悔しさが俺に投げかけられていた。


何故、か。

簡単なことだ。


お前がしている戦いは、俺が教えたことを全て忘れた過去のままの戦い方だからだ。

どこへ行った?
俺が仕込んだ考えは、戦いは、力は。


「くそっ・・・・!なんで、当たらないッ・・・!」
「力ばかりに頼ってるお前のその戦い方は、俺には通用しないな」
「馬鹿にすんな!馬鹿に・・・っ」


挑発に乗りやすいのは相変わらずか。
それにより少し乱雑になった攻撃を受け止め、もう一度腹部に攻撃を突き立てた。


同じ場所に的確に叩き込んだ攻撃。

重なった痛みにゆえの動きが格段に鈍っていく。


「っ・・・い・・」
「諦めろ。別にお前を殺そうというわけじゃない。俺の手を取れ、ゆえ
「・・・・・」


操られているのではなく、寄生されているのなら。

ある程度話を聞く頭はあるはずだ。


そう思い呼びかけた俺の手を、ゆえは攻撃すること無くまじまじと見つめた。


「・・・・なんで」
「・・・・」
「なんで私の名前、知ってんの?」
「お前のことを知っているからだ。お前の全てを」
「っ・・・・」


ゆえが頭を押さえる。


「思い出せ、俺の存在を」
「私は・・・アンタなんか、知らない。私はフリーザ様の・・・・」
「ならお前はフリーザに仕える前はどこにいた?何をしていた?本当にフリーザに忠誠を誓っていたのか?悪魔として契約していたのは、誰だ!」
「・・・・わた、しは・・・・」


震える手から戦意が失われた。
俺が近づいてその手をとっても、ゆえは暴れようともしない。

俺との記憶は壊されているようだが、根本的な部分は変わっていないようだ。


敵に対しても完全な敵意は持っていない。

殺すことだけを目的とするような奴じゃない。


悪魔、とはいえ。
ゆえはそういうやつだ。


「お、ピッコロ。ゆえはでぇじょうぶか?」


気づけば後ろには戦いを終えた皆が集まってきていた。
ゆえは俺と悟空たちを見比べ、やれやれと首を振る。


「手を取るも何も、こんな状況じゃ私に選択肢はないね」
「ハッ。元のゆえより利口だな」
「・・・・むかつくな」


ベジータの言葉にゆえが不機嫌そうにするが、攻撃の意志は変わらず感じなかった。

確かに普段の考えなしのゆえよりは、利口な気もする。


ゆえはそんな俺達の視線に気づいたのか、不機嫌度を増して俺達から顔を背けた。


「・・・好きにしてよ。どうせ今の私じゃ、アンタたちには勝てない」
「あぁ、じゃあ好きさせてもらう」


そう言ってゆえに近づくと、ゆえの肩が揺れる。
警戒ではなく、恐怖で。

それもまた、普段のゆえからはあまり見れない様子だった。


何にでも馬鹿のように逆らい、戦うアイツが―――恐怖を、見せるなど。


「っ・・・」
「フッ・・・そう怯えるな、ついてこい。おい、ブルマ。どこへ連れて行けばいい?」
「ん?もちろん私の家よ。ほら、ベジータ行くわよ!」
「チッ・・・・」


ブルマに命令されたベジータが、めんどくさそうにしながらもブルマを抱えてカプセルコーポレーションの方に飛んでいった。

悟空たちもその後を追い、それぞれ飛んで行く。


「行くぞ」
「・・・え」
「さっさとしろ」
「・・・・・りょ、了解」


俺が伸ばした手に、戸惑いがちなゆえの手が重なる。
それだけで俺は口元が緩みかけるのを感じた。

半年ぶりの温もりがこんなにも嬉しいとは、俺も末期のようだな。


そんなこと、分かっていたことか。

苦笑を浮かべたことを知るわけもなく、ゆえはただ俺の手に引かれて黙って飛んでいた。



























ブルマの家に着き、ゆえは早速診察にかけられた。
変なベッドの上に寝かせられ、よくわからない機械がゆえの身体を見ていく。

それを無言で操るブルマは、いつもとは違いかなり真剣だ。


俺達はその様子を黙って見守る。


「・・・・やっかいね」


一通り見終わったらしいブルマが、機械から顔を上げてそう呟いた。


「厄介、とは?」
「・・・・ピッコロの言ってた寄生してる機械ってやつ、本当みたいね。それが・・・いえ、この場合は見てもらったほうが早いわね」


ブルマはそう言って見ていた機械を窓に転写した。
ブン、と。鈍い音と共に俺達の目の前に映しだされるレントゲンのようなもの。


それがハッキリと見えるようになるまでは少し時間が掛かった。

そしてその光景を理解するのにも、俺の頭は少し時間を取った。


「なっ・・・・」
「うわ、これは中々・・・エグいね」


いつの間にか合流していたルシフェルが、”えぐく”なった自分の未来の姿を見て笑う。


「見ての通り、彼女の頭を覆うように絡みついてるこの細いのが・・・その、”寄生する機械”よ」


映しだされたのは残酷な光景だった。

横たわるゆえの姿。
その頭に、脳内に張り付く無数の糸にも似た何か。


ブルマによれば、それは人間にはありえない素材で出来たものらしく。

つまりそれが――――”寄生する機械”。


「これ、取れるのか・・・・?」
「残念だけど孫君、見ての通り、無理やり取ろうとすればゆえちゃんの脳ごと取れる可能性があるわ・・・・」
「うええっ・・・まじかよ・・・・」
「止めるスイッチも見つからないし、機械の中核的なものも見つからないの。本当にこれ自体が寄生虫のようなものなのよ」
「1本ずつ切っていくというのは出来んのか」
「試したわよ、でも・・・」


ブルマが機械に何かを入力すると、映像の中のゆえの頭に小さな刃が伸びた。
それは繊細な動きで寄生虫が伸ばしているであろう糸を切る、が。


「うっ・・・・」


悟飯が気持ち悪そうに口元を押さえた。

切ったそばから再生しようとウネウネ動くそれが、気持ち悪かったのだろう。


こんなものがゆえの身体に。
どうすればいい?どうすれば。


「取ろうとすればゆえ自体が危ない。どうすればいいんだ・・・・」
「方法はあるよ。天使化すればいい」


天津飯の言葉に、ルシフェルがそう答えた。


「天使化・・・?」
「何故、天使化すれば助かるんだ」
「天使は身体なんて入れ物に過ぎないから・・・天使になれれば、脳みそなんてものもないし、その寄生虫とやらを引きちぎっても問題ないんじゃないかなーって?」


ルシフェルがそう言いながら、ブルマが使っていた機械に自分の頭を滑りこませた。

そこに映しだされたのは、空っぽの身体。
ゆえのように心臓や脳みそはなく、ただの無が広がっていた。


「天使って、そういう風になってんのかよ・・・」
「そういうこと!んじゃ、私はそろそろ眠いから人形に戻るね~」
「ん?あ、あぁ」


相変わらず自由だなこいつは。
そう思いながらも、ヒントをくれたルシフェルに感謝した。


つまりは。

ゆえに天使化を思い出させ、天使になったところを寄生虫から助ければいいと。


まぁ、一番の問題はその”思い出させる”部分だが。
だが希望が見えただけでもかなり違う。


「んでも、どうやって天使化を思いださせるんだ?天使化って、前にビルス様と戦ってた時に見せてたやつだよな?」


クリリンの問いに、ベジータが悪い笑みを浮かべて腕を組んだ。


「命の危機を感じさせればいい。なぁ?カカロット」
「へっ?それはさすがにマズイんじゃねぇのかベジータ・・・・」


そう言いながら悟空が俺の方をチラリと見る。

命の危機、か。
さすがのベジータもゆえを殺すようなことはしないだろう。


あまり許したくはないが、この際なんでも試してみるしか無い。


「チッ・・・本当に殺すなよ」
「え?いいんか?ならオラも参加すっぞ!」
「ハッ。やりすぎるなよ」
「ベジータに言われたくねぇよなぁ?」


笑い合う二人を無視して、俺は一人カプセルコーポレーションから抜けだした。


ゆえは戻ってきた。
完全な形ではないが、確かに戻っては来たのだ。

もしこれで、寄生虫が取れなかったらどうする?


あのままゆえが俺との記憶を全て失ったままなら、どうする?


「フッ・・・らしくもないな。答えは決まっているか」


どうあろうと、手放さない答えは変わらないだろう。

最悪、暴れるお前を閉じ込めてでも俺は。


「俺はどんなお前でも・・・」


俺のものでなければ、気が済まないんだ。

その言葉は最後まで出なかった。
家の中から俺を探す悟飯の声が聞こえたからだ。


・・・・戻るか。

戻って、ゆえを連れて帰ろう。


そして教えてやる。
本当のお前を。

誰がお前の所有者かを。


誰がお前の、本当の契約者かを。





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