Erdbeere ~苺~ 3話 違和感との戦い 忍者ブログ
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2014年12月30日 (Tue)
歯向かう奴は許さない、でも
<2部3話/ほのぼの/ヒロイン視点>

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二つの気を感じた場所の近くで、ふっと気の気配が消えた。
それに気づいたベジータが、舞空術のスピードを下げて辺りを見回す。

緑の池と、ポツポツとした小さな島が目立つ何もない場所。

見た目では、生き物すら見つけられない。


「チッ・・・・俺の勘違いか?」
「うーん。でも確かに感じたよ」
「お前は俺よりも気の扱いが得意だろう?分からんのか?」


ベジータの言葉に、もう一度精神を集中させる。

水の音。風の音。
遠くに感じる、大きな気。
足元の島に感じる―――小さく震えた、気。

小さく震えてるこの気は、たぶんナメック星人のものだ。
私がさっき感じた二つの気より、だいぶ小さくて不安定さを感じる。


「おい」
「・・・うーん、ココらへんに・・・・感じる気も・・・・」
「なに?本当か?」
「うー・・・ん」


私はそのことを報告しようとして、口を閉ざした。
確かに気配を感じるが、こっち側に手を出そうとする殺気などは感じられない。

地球人だったとしたら、邪魔されちゃうかもしれないけど。
でも別にあの時感じた気も、今のベジータの敵では無かった。


なら、邪魔されてからでも、十分。

無駄に殺したく、ないもんね。


私はアハハと笑い、誤魔化すように尻尾を振った。
同時に、池の中から大きな魚が音を立てて飛び上がる。


「魚だった!」
「貴様・・・ッ!!!」
「うわーー!!ごめんって!ほ、ほら、とりあえず残りのドラゴンボール探しちゃおう?じゃないと、フリーザ達に集められちゃうし」
「・・・それもそうだな。さっさと1個手に入れて、あいつらの隙を伺うことに専念したほうが有利だ」


なんとか話を誤魔化せたことにホッとし、どこかへ飛び立とうとしているベジータに高さを合わせた。


「んじゃ、次どこいく?」
「そうだな・・・とりあえず移動するぞ。ナメック星人を見つけてドラゴンボールの場所を吐かせるんだ」


あまりスピードを上げないまま、まだ行ったことのない方向へと移動を始める。
それにしても、どこに行っても景色の変わらない変な星だ。

さっきからだいぶ移動したというのに、ドドリアを殺した場所とさほど景色は変わってない。
感覚が狂いそうになるのを我慢しながら、私はベジータの後ろを追いかけた。


「ベジータ、またちょっと早くなったね」
「フン・・・当たり前だろう?」


舞空術の速度が、前よりもまた上がってる。
前は私のほうが早かったのになー、なんて言ったら怒られるから止めておいた。

ついていくのに必死ってわけじゃないけど、ちょっと辛い。

それでも必死にスピードをベジータに合わせていると、ベジータが急にスピードを緩めた。

といっても、目に見えるほど緩めたわけじゃない。
ただ、私がついてこられるスピードになっただけ。


・・・・あれ、これってもしかして。


「ふふっ」
「急に笑い出しやがって・・・気持ち悪いやつだ」
「えー?なんでもなーい」


合わせてくれてるんでしょ?スピード。
そのこと言ったら上げられそうだから、黙っておいた。

ただ、飛んでいるだけっていうのもつまらない。
しばらく無言でついていったが、すぐ暇になった私は口を開こうとして・・・止めた。


「・・・」


ベジータはまだ気づいていないらしいが、時間の問題だろう。
私達が飛んでいる先のところに、小さな気が点々と集まっている場所を感じる。

間違いなく、生きている何かの集まり。


「・・・・!おい、ベリトア


彼も気づいたらしく、声と同時にスピードを上げた。
私もそれに合わせる。あまり気乗りはしないけど。

気の感じる方向に飛ぶと、小さな村のようなものが見えてきた。
どうやらここは、まだフリーザ達が見つけてない村らしい。

まぁ、無理もない。

フリーザたちは今、この村を見つけることすら難しいのだから。


「ふっ・・・スカウターが壊れてくれたおかげで、このベジータ様にも運が回ってきやがったぜ・・・・なぁ?」
「うん・・・・そうだね」


フリーザ達に殺されてなかったのは良かった。
でも、彼らはきっと、フリーザに殺されなくても・・・ベジータが殺す。


幾度と無く見てきた。

幾度と無くしてきた。


無抵抗な相手を、必死に抵抗する相手も。
関係なく殺すことを。


「・・・・何ボヤボヤしてる?いくぞ」
「うん」


もう、罪悪感なんて無いと思ってたんだけどな。
やっぱりこういう状況になると、殺したくないって、思ってしまう。

ベジータには従いたい。

ベジータの全ての望みを叶えたい。

・・・ただそれは、いつの間にか、一番少ない犠牲で出来るようにってオマケの気持ちもついてきていて。
私がベジータと共に行動するときは、相手の被害も最小限に抑えられるよう考えながら戦うようになっていた。


今回も、そう。


「よぉ」
「なっ・・・・」


上空からナメック星人の真後ろに降り立ったベジータは、最初は襲うこと無くただ声をかけた。
もちろん、声をかけられたナメック星人達は勢い良く私達から離れ、一気に警戒心を強める。


「き、貴様ら何者だ!」
「何者でもいいだろう。さっさと村長とやらを出せ」


私達を囲むように輪になるナメック星人。
子供も、大人も、老人も。震えながら私達を見ていた。

あまり、良い光景ではない。

だがベジータは楽しそうに、ただその様子を見ていた。


「私に、何か用かね?」


ざわつくナメック星人の中から、貫禄のあるナメック星人が一人顔を出す。


「お前が、村長か?」
「・・・さよう」
「なら話は早い。ドラゴンボールを渡せ」
「な、なに・・・!貴様のようなやつに、ドラゴンボールを渡せるわけないだろう!」


そう、だよね。
こうなることは分かっていた。
もちろん、ベジータも。

どちらにせよ、素直に渡したとしても、ベジータがこのナメック星人達を殺さなかったとは限らない。

ベジータを囲うように出てきた若いナメック星人を横目に捉えながら、戦いの予感を感じて私は前に出た。


「・・・・なんのつもりだ?」
「こんなところで、ベジータが力を使うまでもないでしょ?」
「ほう?」
「新技試したいんだよねー!!・・だめ?」
「またお前は奇妙な技を編み出しやがったのか。いいだろう、見せてみろ」


殺気立つナメック星人を無視して交わされる会話。
彼らもまた、私達を無視して気を溜め始めている。

一斉に気を放出して、私達を消し飛ばすつもりなんだろう。
でも―――無理だ。


「・・・・ごめんね」


あんな力じゃ、皆の力が合わさったとしても、私達には傷ひとつ付けられない。
このまま戦えば必ず殺されてしまう、だから。

せめてもの救いなのだと、私は新技だと嘘を吐いて気を溜めた。

私がすれば、彼らを殺すことはない。
たとえ”瀕死”という痛みを味わっても。


「ほーら、本気でやらないと殺しちゃうからね・・・・?」


手のひらに溜めた気を、ひらひらと見せつけるように飛ばす。
それが空中に飛んで破裂するのと、周りを囲んでいたナメック星人が気を放つのとは、ほぼ同時だった。

飛ばした気の力を調整しながら、自分とベジータの周りにシールドを展開する。

土埃の中、見なくても分かるナメック星人達の行方。
微かな命の灯火だけを残して、村長だけを残して――――全て、地面にひれ伏した。


「・・・・・」
「これはまた・・・ド派手な技だな。お前にしては良い技だ」
「でしょ?」


土埃が無くなり、静かになった空間でただ一人立つ長老を睨みつける。


「さ、ドラゴンボールの場所、教えてくれない?」
「・・・・絶対に貴様らなんぞには渡さん!!」
「だってさ、ベジータ」
「ふん・・・ならいい。勝手に探すまでだ」


そう言うと、ベジータは辺りを見回して一番立派そうな建物に入っていった。
途中でそれを止めようとした長老は、私が口を塞いで止める。


「今、余計なこと言えば、死ぬよ?」
「・・・・ッ」
「アンタなら分かってるでしょ。・・・皆が、微かに生きてることぐらい」


死にかけたナメック星人の気は、さすがのベジータでも感じ取れないほど弱っていた。
でも普段から皆の気を感じている長老なら分かるはずだ。

微かな、生命に。


「アンタ達って、見てる限りだと生命力強そうだもんね。・・・とりあえず、私達が居なくなるまでは死んだふりしといて」
「なぜ、貴方は・・・ぐふっ!?」


手刀を、一発。
余計な声を出されても困るから、殴って気絶させる。

ちょうどそのタイミングで、超ごきげんなベジータがドラゴンボールっていうのを片手に部屋から出てきた。

思っていた以上にでかいボールに、目を丸くさせてしまう。


「ほえー・・・こ、これがドラゴンボール?なんかすごいね・・・・」


オレンジ色の、手よりも大きなボール。
それには星のマークが描かれていて、ドラゴンボールなんて言われなきゃただの玩具のようだ。


「んで、これをどうするの?
「とりあえず隠しておけばいいだろう。この辺とかに、な」


ベジータの手の上にあったボールが、近くの湖に沈められる。


「俺達が持ち歩くのは危険すぎる」
「まぁ、そうだね・・・私達も必然的に、フリーザ達には狙われてるだろうし」
「そういうことだ」


まったく、ベジータの頭はどうなってんだか。
次々と作戦思いつくんだもん。さすが天才。


ベリトア、次だ」
「アイアイサ!」
「ちゃんと探せよ?」
「分かってるってば!」


0個よりは1個。
1個よりは2個。

今は私達が何をしても、動きが分かるのは誰もいない。

今のうちに、しておくことはする。
私はまたふわりと身体を浮かし、次の村を見つけるためにベジータの後をついていった。





































「おい、見つからないのか、ベリトア!」
「うん・・・全然感じない。どうしてだろ」


ベジータに殺してほしくないから嘘を吐いてるとか、そういうのじゃない。
どれだけ一生懸命探しても、気が固まってる場所を見つけることが出来なかった。

もしかして、もう村はない・・・とか?
飛びながらもベジータと目を見合わせ、お互いに厳しい表情を浮かべる。


「もう、村は全部やられちゃった・・・とか?」
「チッ・・・スカウターが無くても、部下たちに探させてるだろうな、アイツなら」
「そうなると、1個でもドラゴンボールを隠せたのは大きいね」


ナメック星という、まったく知らない土地。
飛び回りながら探すという戦法は、私達とフリーザもほとんど一緒だ。

ただ違うのは、私達のほうが探す幅が短いということだけ。

気を感じ取れればそこまで細かく探す必要は無いから。

でも、人数はあちらが上。
眉間にシワを寄せたベジータが、しばらくして太陽が出ている方を振り返る。


「?どうしたの?」
「・・・・向こうの方で、小さな気が二つ・・・動いてないか?」


言われて探れば、確かに感じたことのない気が二つ。
遠くで静かに移動している。

私でも気付かなかったのに、やっぱりベジータは天才だ。

さっき村を探っていた時よりも数倍、気の探る感度が上がってる。


「さすがだね、ベジータってば」
「フン・・・・当たり前だろう?特にお前に出来たことが出来ないわけがない」
「うわ、酷いなー」


何だかんだ言いながら、私達はその気を感じる方向に気を高めて飛んだ。
ベジータも成長した。だけどそれは私も一緒。

さっきスピードを合わせてもらった時とは比べ物にならない速度で、空を飛ぶ。
それに気づいたベジータが、少し驚いた表情を見せた。


「・・・・少し早くなったか?」
「まぁね。慣れてくればこんなもんよ?」
「言ったな?なら・・・ついてこい」


更に速度を上げられ、私も慌てて気を込める。
こんなことしたら、目指してる二つの気も私達に気づいてしまいそうだけど。


「ちょっとー、こんなに気を使ったら、分かっちゃう人ならばれちゃうよ?」
「隠れても出てくるまで探せばいい話だ」
「こわっ」


殺気立ったベジータの声に、背筋がゾクリと震える。


「・・・ん?」


飛んでる最中、感じた違和感。

ふと、二つの気が無くなったように消えた。
その代わりに一つの強い気が、遠くを物凄い速度で飛んでいるのを感じる。

この気の強さは、普通のやつじゃない。
どこかで感じたことあるの気。これは・・・。


「サーボンの気だ。切り返すぞ!」
「ッ・・・う、うん」


消えた二つの気には目もくれず、ベジータは殺意をむき出しにしてもう一つのデカイ気―――サーボンの方へと向かう。

飛んでいるあの綺麗な人は、確かにザーボンだ。
あの綺麗な顔に見合わず強い気を持っていることを知っている私は、ただベジータの後をついていった。


力が、交差する。

わざとザーボンの進路方向へと飛び出し、ベジータがその拳をサーボンにぶつけた。


「よぉ、久しぶりだなぁ・・・・ザーボンさんよ」
「べ、ベジータ・・・!?」


ザーボンは一瞬よろめいたが、すぐに体勢を立てなおして私達を睨みつけた。


ベリトア、お前まで・・・・」
「無駄話をしてる暇はない。・・・・ドドリアは片付けさせてもらった。次はお前の番だ」
「何!?ドドリアを、片付けただと・・・?信じられんな」


そりゃそうだ。
今までの力じゃ、私達二人がかりでもドドリアを倒すことは出来なかったはず。

でも今は違う。
ベジータは余裕の表情で拳を構え、ザーボンを挑発する。


「やってみりゃあ分かるさ・・・嫌でも思い知るだろうぜ?俺の強さを」


その挑発にも、ザーボンは顔色一つ変えない。
ただ私達を警戒するように睨みつけ、口を開いた。


「ベジータ、ベリトア。なぜフリーザ様に逆らおうとする?」
「簡単なことだ。俺は前からあのフリーザって野郎が気に食わなかったんだ。・・・・今までは力でねじ伏せられてきたが、ひょんなことからチャンスがあると知ってな」
「・・・・ドラゴンボールのことか」


二人の会話に、私は入らない。
特に私は目的がないから。

強いていえば、私の目的はベジータの望みを叶えること。


「フリーザなんかにくれてたまるか」
「・・・愚かだな。ベリトア・・・・君だけでもこちらに戻ってくるといい」
「・・・・へ?」


蚊帳の外だった私に突然声がかかり、思わずすっとぼけた声を出した。

今、なんていった?
私に戻ってくるといいって言った?

一度裏切った、私を?


「何いってんの、ザーボン。私も裏切り者の一人だよ」
「だがフリーザ様は君を求めている」
「・・・・それは私じゃなく、フィレット族の力を利用したいだけでしょ?」


気を媒体とし、色々な術を扱う種族。
超能力などといったものでは片付けられない、その力の幅広さ。

だがフィレット族は本来温厚な性格で、その力を日常生活のモノ以外に使おうとはしない。

私だけなのだ。
フィレット族の生き残りも、その力を戦闘に使おうとしているのも。


「珍しい、だけでしょ」


強く、拳を握りしめる。
私じゃなく私の力だけを見ている、物珍しさで見ている。それが気に食わなくて。


「お断り、よ」
「当たり前だろう。ベリトアは俺様のモンだ」
「ひゃー、何その発言!恥ずかし!」
「う、るさいぞ、黙れ」


からかうようにヤジを飛ばせば、ベジータに一蹴りされた。
膨れ上がった緊張感が、私達の周りを支配する。

そして。


「さぁ、話は終わりだ・・・・ザーボンさんよぉ。さっさと来い!!」


痺れを切らしたベジータが速度を上げてザーボンの懐に飛び込んだ。

もちろんザーボンも、それに反応して拳を振り上げる。だが。

ザーボンの拳は、余裕の表情を浮かべたベジータに押さえつけられていた。
そのまま、ベジータは気合いと共にザーボンを空へと投げ飛ばす。


「なっ・・・・!」


勢いに吹き飛ばされる身体。
ザーボンは後ろに気を放出し、その勢いを殺して体勢を立て直した。

一瞬、一瞬、目が追いつくのがやっとと感じてしまうほどの勝負。

ベジータは畳み掛けるように距離を詰め、サーボンの懐に飛び込もうとする。
だがザーボンはそれを警戒し、一旦遠くへと距離を置いた。


「へっ、素早い野郎だぜ」
「・・・・調子に、のるなよ」


低い声でザーボンが呟く。
そして私達に向かって手を伸ばすと、一瞬で手のひらに気を集めて吐き出した。


「おわっ!?」
「下がってろ、ベリトア


空から襲う、気の波動。
それを恐れること無く真正面に捉えたベジータは、波動に向かって手を伸ばした。

気合を溜め、伸ばした右手で波動を弾き飛ばす。
私達を襲おうとしていた気弾は、ベジータの手によって玩具のように別方向へと飛んでいった。


別方向へと飛んでいった気弾が、ナメック星の星の一部を―――抉る。


「弾き飛ばすだと・・・・」


この勝負、見えたな。
あれだけ高圧縮された気弾をはじき返したんだ。実力差は、見えた。

私は無言でベジータの後ろに下がり、頷く。

こういう勝負は手を出されるのを嫌がるから、黙って見てることにしたのだ。

一方的な、勝負。
ザーボンに殴り合いの勝負を挑んだベジータは、余裕の動きでザーボンを翻弄する。


「どうした!?ザーボン様ともあろうお方が、動きが止まって見えるぜ!」
「がはっ・・・・!?」


一発。また、一発。

重たい攻撃が、すごい速度でザーボンに叩きこまれていく。

私達を昔からこき使ってきた奴の一人。
ナメック星人の時とは違って、何も感情は浮かばない。

いい子なふりして、私も相当な悪なんだろう。
苦笑しながら、勝負の行方を見守る。


「後ろだ」
「っ!くっ・・・!!」
「はっ!この程度で手も足も出ないとはなぁ・・・」
「・・・・ッ」


地面を削りながら滑るザーボンの身体が、見守っていた私の足元近くで止まった。
それを冷たい目で見下せば、ザーボンから不気味な笑い声が上がる。


「フッ・・・ふははは・・・っ!」
「・・・どうしたの、ザーボン。ついに壊れた?」
「残念だな、ベリトア。ベジータはともかく、君にもこの力で向かわないといけなくなるとは・・・」


この、力?

違和感を感じる表現に、私は警戒を強めて1歩下がった。

ザーボンから感じる気の感じが、一瞬にして気持ち悪いものへと変わる。
いつも美を好むザーボンのものとは思えないほど、残酷で、気持ち悪いものへと。


「眠らせていた力を、目覚めさせてしまった・・・ベジータ、お前がな」
「眠らせていた力だと?ハッ・・・面白い冗談だ」
「冗談、か。それで済めばいいな。美を好む私にとっては辛い選択だが・・・死ぬよりは変身を選ぶ」


冗談には、思えない。
高笑いするベジータに近づきながら笑みを浮かべるザーボンは、いつもと違う。


「ベジータ。気の感じがちょっと変わった。・・・少しだけ注意したほうがいいよ?」
「フン。言われなくてもわかっている」


・・・それは、あまり見たくない光景だった。


ザーボンが声を上げた瞬間、気と身体が弾けるように膨れ上がる。
ドロドロとした殺気が気に混じり、周りの陸地の一部を削った。


「なっ・・・・」


その気の力に、私とベジータは完全に言葉を失う。

眠っていた力とザーボンは言っていた。
まさに、変身。

ザーボンの原型など、どこにもない。
殺しに特化した爪と牙がむき出しになり、容赦なくベジータを襲う。


「がはっ!?」
「ッ!ベジータッ!!」


ザーボンの速度にベジータが着いて行けず、吹き飛ばされたベジータが地面に激突した。
私はそれを庇うように立ち、気を具現化させて無数のサーベルを取り出す。


「貴様がきちんと戦うのを見るのは初めてだな」
「そこまで戦うのが好きじゃないからね。・・・強くなるのは、好きだけど」
「・・・面白い、気だ。フリーザ様が気に入るのも分かる」
「残念だけど、私は興味ないんだよ・・・ねっ!」


出現させたサーベルを操り、ザーボンの方へ飛ばした。
もちろん、挨拶代わりの軽い攻撃。すぐに弾き返されて粉々になる。

私はそれでも構わず、ザーボンに向かって飛び込んだ。
両手に持ったサーベルをザーボンの急所を狙うように滑らせ、最小限の動きで戦う。

大丈夫、見える。

私は更に気を上昇させ、ザーボンの攻撃をサーベルで弾いた。


「・・・ほう、そんな力を隠していたとは」
「でしょ?私も結構やるんだよー?」
「戦いの緊張感が無いのは気に食わないな。・・・少し、躾が必要か」
「へぇ?躾けてくれるの?出来るもんなら・・・やってみな!!」


好戦的になったザーボンに、力では敵わなくとも、次々と技を放つ。

私がやってるのは時間稼ぎと消耗に過ぎない。
戦いの途中で崩れた岩場を横目で見れば、傷だらけのベジータがやっとこさ立ち上がろうとしているところだった。

・・・出来るだけ、ザーボンを消耗させなければ。

逃げるとしても最悪ベジータが捕まってしまう可能性がある。


「悪いけど、容赦なくやるよ!!」


気を放出させ、更に大量のサーベルを出現させた。
それを一気にザーボンへ投げつけるが、予想通りそれは全て粉々に打ち砕かれた。

もちろん、これだけじゃ終わらせない。
ザーボンに攻撃の隙を与えないよう、次々と新しい技をザーボンに投げつける。


「ノックターン!」


出現するいくつもの刃。
空間を切り裂く刃は、ぎりぎりザーボンを捉えられず消えた。


「相変わらず変な術を使う。魔術でもなく・・・超能力でもない」
「変って酷いな!!ま、私も原理はよく分かってないけどね」


魔法のようなものだと思ってる、けど。

まぁ、今はそんなこと、どうでもいっか。

戦闘力は私が低い。
でも技の多さ、手の内を相手に見せていない強さは、私のほうが上。


「くっ・・・小賢しいマネを・・・!」
「力だけが全てじゃないってわけよ。わかる?」
「・・・ッ調子にのるな!!」
「おー、こわいこわい!」


軽く戦っているように見せて、相手の冷静な判断力を奪っていく。
ザーボンの攻撃手が荒くなっていくのを見ながら、私は冷静に攻撃技を選んだ。


「フォルテ」


一撃。

見えないほどの早さで気弾を打ち、ザーボンの腹を抉る。
撃たれたことにすら気づかないその早さに、ごふっと血を吐き出したザーボンがヨロめいた。


「貴様・・・そ、それは・・・・!?」
「力は弱くても出来ることはたくさんあんのさ。覚えておきなっ!」


無意識に体中がゾクゾクと震えるのが分かる。
悪い血が疼いている証拠だ。

無意味に人を殺したり、傷つけたりするのは嫌い。


でも戦うのは、正直―――好き。


それは一番自由に自分を出せるものな気がして。
誰かの言いなりになる必要もなく、ただただ動ける。
それが、快感。


「フィレット族は温厚と聞いていたが・・・温厚な種族とは思えないな」
「当たり前でしょ。サイヤ人も半分入ってるんだから」


にんまりと笑って、手を翳す。


「クォーター」


次は、4撃。
一点に集中させた気弾が4発、ザーボンの足元を抉る。

勝てない相手じゃ、ない。
パワーではなく技術で押せば。


「フッ・・・フフッ・・・!!」


そろそろかたを付けようと技を考えていた私に、またあの笑い声が響いた。
不気味な笑い声に、私は思わず手を止める。


「・・・・なにさ?」
「お前の目的など、わかっているさ・・・そしてそれが、弱点だともな!!!」
「ッ!!しまっ・・・!!」


私が戦闘中、横目で見ていたのが悪かったのか。


ザーボンは私の後ろで体勢を立てなおそうとしているベジータに目を向け、その手をまっすぐ私ではなくベジータに向けた。

ベジータはそれに気づいていながらも、避ける素振りを見せない。
いや、避けれないのだ。ふらついた足元がその証拠。


「ッ・・・!!!」
「死ね!!!」


私の頭には、それから逃げるという考えは無かった。
ベジータの前に飛び出し、ありったけの力を込めて気の壁を展開する。


「あぐっ・・・・」
ベリトア・・・っ」
「ベジータは・・・離れててっ・・・・」


ザーボンの全力を込めた気が、ばちばちと私の気を抑えこんでいく。

無理だ。
抑え、きれない。

なんとかベジータだけ逃がそうと意識を逸らした瞬間、私の身体に熱い衝撃が走った。

正面に張った気の壁が一部砕け、その穴から私の腹部を貫通する気弾。


「・・・か、はっ・・・・」


守りたい。
その思いだけで、最後にベジータに


「ベジー・・・タ・・・」
ベリトア!!おいッ!!ベリトアッ!!!!」
「逃げて・・・・」


残っていた力の全てを、分ける。

消え行く意識の中、私はただベジータだけを考えて。
伸ばした手は、地面に落ちた。











































落ちた意識の中、それでも思うのは貴方
(お願いベジータ、私には・・・アンタしかいない・・・)
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 ・テイルズ
 ・気まぐれ

◆Thanks!
見に来てくださってありがとうございます。拍手、コメント読ませていただいております。
現在お熱なジャンルに関しては、リクエスト等あれば優先的に反映することが多いのでよろしければ拍手コメント等いただけるとやる気出ます。
(龍如/オール・海賊/剣豪)