Erdbeere ~苺~ 5.彼が彼女で、以下略 忍者ブログ
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2014年12月06日 (Sat)
気持ちが分からないなら、無理やり分かってみればいい
(DB/ピコ/甘々/ギャグ/※ヒロイン視点)

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修行と、恋愛と。

どちらの意味でも一応私と付き合っているピッコロは、未だに恋愛というものが分からないという。

知識や本能的な部分では分かっているのか、キスしてきたり、ヤキモチ焼いてイライラしたりしてるのは見たことがある。
私もそこまで恋愛が得意なわけじゃないから、それだけで満足なんだけど。


まぁ、できれば修行を手加減してくれればいいな、なんて。

そんなこと言えば、意地悪い表情で蹴飛ばされるのが目に見えてるので言うのを止める。


「どこを見ている!」
「ッ・・・!毎回同じ手にのると思うなっつの!!」


ピッコロがスピードを上げ、瞬時に私の後ろに回り込んだ。
そう、こんなことを考えている間も、修行は続いている。

回り込まれることを予測していた私は、反撃すること無く大人しくピッコロから距離を離した。


後ろに回り込んだピッコロがどんな攻撃手を選ぶにしても、力で負けている私が直接打ち合うのは得策じゃない。

離れた私を見たピッコロは、意外そうな表情を浮かべて拳を構え直した。
いつもの私ならあそこで反撃しようとして更に反撃されていただろう。


「・・・少しは学んだか」
「言ってくれるじゃん?・・・組手じゃなきゃ余裕なのに」
「ほう?言うようになったな・・・もう俺も、昔の俺とは違うのだぞ」
「いくら神コロになったからって、本気の勝負じゃ負けませんー!この緑頭~!」
「・・・・・」


ピシリ。

ピッコロの表情に青筋浮き出してきたのを見て、私との修行を見ていた悟飯がヒクッと顔を引き攣らせる。
今までこっぴどく修行された記憶があるのだろう。私も、例外じゃないが。

怒らせちゃったなー、なんて呑気なことを思ってられるのも一瞬。
ピッコロは一度怒らせると後が怖いから。

それを証拠に、早速気弾を私に構えているピッコロの姿が映る。


「あーあー、そういうことしちゃうと神殿が・・・・」
「外ぐらいならすぐ直せる。遠慮はするな・・・!!!」
「のわっ!?」


圧縮された気が音も立てずに足元を抉った。
慌てて後ろに下がれば、その下がった場所にも容赦なく気が飛ぶ。

外したわけじゃない。
私が反応せず下がれなかったら、確実に足に穴が空いていた距離だ。


「あ、あの、ピッコロさん・・・」
「なんだ、悟飯」
「・・・あんまりベリトアちゃん苛めちゃだめですよ。一応女の子なんですから」
「おいそこ聞こえてるぞ、一応ってなんだ!!」
「あいつが失礼なことを言ったと謝れば許してやらんこともない」
「誰が謝るか緑ハゲ・・・・うわっ!?」


私の言葉と同時にたくさんの気弾が足元を抉る。
慌てて身を翻せば、分かってましたとばかりに目の前にピッコロが現れた。

殴られるのを覚悟して、空中で身体を切り返す。

やはり避けきれず、ピッコロの拳が右腕にあたり、私の体勢が大きく崩れた。

それでも意識を集中させる。
このまま怯めば相手のペースに持ち込まれてしまう。


「くっ・・・・」


痛みを我慢し、なんとか身を翻した私はスピードを上げてピッコロの懐に飛び込んだ。
それも予測済みだとばかりに構えられるが、私の狙いはそれじゃない。

組手に集中させて、後ろから気を使って不意打ちする。
ピッコロの後ろに小さく気弾を作った私は、それがばれないようにピッコロに殴りかかった。


「たぁっ!」
「フン・・・そのような動きで俺が止められるとでも?」
「言ってろ!」


私の動きを完全に予測してるのか、どれだけスピードを上げても攻撃が入る気配がない。
苛ついて少し動きを変えれば、それについてくるかのようなピッコロの動き。

でも、焦る必要はない。
私の攻撃もあたってないが、向こうの攻撃も私には当たってないからだ。

私だって何度もピッコロと組手をしてきた。こんなに簡単にやられる私じゃない。


「油断してると・・・足元掬われるよ!!!」


言葉の通り、足元に向かって気弾をいくつか放つ。
まぁもちろん、そんなものが当たるわけがない。

でも私が放った気弾は、別に当てるものが目的じゃないから良いのだ。
避けて得意気に笑うピッコロを見ながら、最初に飛ばしておいたピッコロの背後に浮かぶ気弾をクイッと引き寄せた。


「(いけ・・・!)」


攻撃用の気弾ではなく、ピッコロの動きを捉えるためだけのモノ。
ばれないでくれと願いつつもう一度拳を握りしめた私に、ピッコロがニヤリと意地悪い笑みを浮かべた。


「わからないとでも思っているのか?」
「な・・・っ!」


引き寄せた気弾がピッコロに当たる前に弾け、分散した小さな気弾が私の周りを一瞬で囲む。


「うええ!?」
「お前の気の術は確かに素晴らしものがある。だが・・・」


”俺様には、通用せんな”

にんまりとした悪い笑顔。
ゾクリとした寒気。
私は冷静に判断し、自分の身体中に気を集中させた。

あーあ、ああいう笑顔もかっこいいなって思ってたのが間違いだったよ。
きっと手加減しちゃったんだ、私。


「手加減してあげたんだから、調子のんないでくれる?」
「何・・・?」
「もういっちょ!!」


さっきピッコロに避けられた、気弾を引き寄せる。
同じ手を食らわないよう、思いっきり気を強めたおかげか、気づいたピッコロもその気弾を弾くことが出来なかった。

それでも、効いてる感じはしない。

ただ、当たっただけ、だろう。


「そのとおりだ」
「ちぇっ」
「こんなもので俺が怯むと思われているとはな・・・」
「むぐ・・・・」


やりにくい。
ボコボコにしたって死なないことぐらい分かってるけど。

彼が痛がる姿を見るより、悔しいけど、意地悪い笑みを浮かべてる姿を見るほうが良い。
そんなことをぼけっと考えていたら、いつの間にか目の前にピッコロが構えていて。


「げっ・・・」
「隙だらけだな!!」
「うわわわわ!!!」


目の前に掲げられたピッコロの拳から、めいいっぱい気が込められた光が輝き出す。
咄嗟に防御の気術を使おうとした私は中途半端に気を込めた状態で殴られ、勢い良く地面に叩きつけられた。

――――その瞬間。

中途半端に使おうとしていた術が弾け、急に気が抜ける感覚が身体を襲う。
いつものやられる感覚とは違う。ずるりと魂が抜けていくような。


「え・・・・?」


もしかして、神殿から落ちてる?
いや、背中に冷たい地面の感覚がある。

でも・・・身体に痛みは感じない。
なのに頭がぐらぐらして。


「ピッコロ、これ・・・・」


叩きつけられて真っ白になっていた視界が開けていく。

同時に開けた視界と、自らの口から発せられた声に、全身の動きが止まった。

自分の声が、いつも愛しいと思っている人の声だったから。
転がっていたはずの自分の身体が、目の前に、転がっていたから。


「なん・・・え、どうなって・・・・」
「何が起こって・・・な、なんだ・・・!?」


私が、地面で寝転がっているのを、私が見ている。
驚いて手元を見れば、ある意味見慣れた緑色の手が自分自身の目に映った。

慌てて地面に降りれば私が、私の身体が私を見上げている。
正しくは、ピッコロが。


「貴様、何をした!!」


私の小さな身体が、ピッコロの身体に掴みかかって揺らす。
分からなくて戸惑っているところに、目を丸くした悟飯が仲介に入った。


「え、ええっと、待ってください!あ、あの、えっと・・・ピッコロさん?」
「・・・・なんだ」


悟飯の言葉に返事をしたのは私の身体。
小さな身体が、不満そうな表情で悟飯を睨みつける。


「じゃあ・・・こっちが、ベリトアちゃん?」
「そうみたいだねぇ」
「おいベリトア。俺様の身体でそんな変なしゃべり方をするな!」
「ちょっと、ピッコロこそ私の身体でそんな乱暴なしゃべり方しないでくれる?」
「なにぃ?」
「何?やるの?今ならピッコロの力もあるし、余裕だけど?」


ピッコロの身体じゃ動きにくいかもしれないが、力は確かだ。
悟飯を無視して睨み合いを続ければ、悟飯が大きな咳払いで私達を止めた。

悟飯に間に入られればさすがに止めるしか無い。


「ひとまず、どうしてこうなったのか分かりますか?」
「んー・・・中途半端に気術使おうとしたから、私の力が作用しちゃったのかも」
「何平然と言ってやがる。貴様が変なことをするからこうなるんだろう!さっさと戻しやがれ!!」
「えー・・・戻せないよ。ただの防御術使おうとして、こうなったんだし・・・・」
「貴様・・・・ッ!!」


私の身体が、ピッコロの身体の私に掴みかかる。
ぐらぐらと揺らされても、私は抵抗すること無く考え込んだ。

確かに、よく考えるとこの状況・・・やばい。
私自身はただの防御で気術を使うつもりだっただけだし、一体何がどうなってこうなってしまったのか私には一切理解できていない。

つまり、仕組みが理解できなければ、私の術であったとしても解除は無理というわけで。

最初は軽く考えていた私も、やばさを感じ取って顔を引き攣らせた。


「あー・・・・・悟飯」
「なんですか?」
「このこと、誰にも言わないでくれる?」


私の言葉に、悟飯が不安そうな表情をのぞかせる。


「え?で、でも、ブルマさんとかに見てもらったほうが・・・・」
「その方が厄介だと思うんだよね・・・・とりあえずどうしてこうなっちゃったのか、自分の術だから解析出来ると思うし・・・ね?」
「うーん・・・分かりました。ただ、あまりにも戻らない場合は僕にも何か手伝わせてくださいね、ベリトアちゃん。ピッコロさん」
「・・・・あぁ、その時は頼む」
「はい!じゃあ、僕は一旦帰りますね!また明日!!」


悟飯はいつもどおりの優しい笑みを浮かべながら、神殿から下界に舞空術で飛んでいった。

悟飯がいなくなったことで、また静かな空気が神殿に流れる。
その中に混じるピッコロの殺気に気づき、私は少しずつピッコロから距離を取ろうとした。

だが、もちろんそれが叶うわけもなく。


「何逃げようとしてるんだ?」
「い、いえ・・・・」
「ほう?今更事の重大さがわかったようだな」
「あ、いや、う、うん・・・と、とりあえずデンデとかにあったらまずいし、ピッコロの部屋にでも入らない・・・?」


ピッコロから、正しくは私の身体から放たれる殺気混じりの気に押され、私は逃げるようにピッコロの部屋に入った。
ピッコロも不機嫌そうに私の後を追って部屋に入る。


「それで?どうするつもりだ?」


ベッドの上にどかんと座るピッコロが、私を見上げるように睨みつけた。

黒いパーカーに、銀色の髪。
普段鏡で見ている自分の姿なのに、なぜかその姿を見て心臓がドクリと脈打った。

ドキドキ、する。
好きとかそういう感覚のものじゃないが、本能的に。

―――見上げるこの姿のピッコロを、食ってしまいたいと思ったのだ。


「ッ・・・」


息が荒れる。
なんだろう。この感情は、私のものじゃない。

ピッコロの身体が、本能的に求めているものなの?

ピッコロはこんな感情で、私を、見てるの?


「・・・・おい」
「・・・・」


身体は、ピッコロのモノ。

この状態を察するに、魂だけが移動した状態なのだろう。

だから本能的な部分は、身体に負けて精神が揺らいでしまうのかもしれない。
今もドキドキしてる。

欲情に近い何か―――でもこれってつまり、ピッコロがいつも私にこういう感情を抱いてくれてるってこと?


「ねぇ」
「なんだ?・・・・なっ!?」


本能のままに、そして頭の中で出来上がった仮説を確かめるために、私はピッコロに覆いかぶさった。
ピッコロが慌てて抵抗するが、今の身体じゃ私を押し返すことは出来ない。


「貴様ッ!!」
「元に戻せっていったじゃん」
「そ、それとこれと何が関係あるんだ!!」
「仮説が正しいか調べたいの。魂だけが入れ替わってるのか、魂と精神どっちも入れ替わってるのか・・・・」


精神が入れ替わっていないのなら、歯止めは効くはずだ。
本能に逆らえないのは、いままで感じたことのない感情に精神が流されている証拠。

精神が入れ替わってなければ、本能を制御できるはず。

そしてもう一つ調べたいのは、これが本当に本能なのかってところ。

これが本当にピッコロの本能なのか。
もし本能なら、きっと今の私に覆い被さられてるピッコロ、いや、私の身体の本能は・・・。


「っ・・・・」


下に敷いたピッコロの表情を見れば、ありえないほど真っ赤に染まっていた。
目も潤み、耐え切れないといった表情で私を睨みつけている。

ああ、やっぱり。


「なるほど、ね」
「な、なんだ・・・・」
「どうやら精神と魂が移動しちゃってるみたい。一応入れ替わる術も作れるから、すぐ戻れるよ」
「フン・・・さっさとしろ」


平然を装うとしているピッコロに、思わず笑ってしまう。


「・・・・・何を笑ってやがる」
「だって・・・頭の良いピッコロならわかってんでしょ?」
「何がだ」
「身体の中に残された本能が、精神を狂わせようとしてるの」
「・・・・っ」
「私の身体、熱いし、ドキドキしてるみたいだし」
「や、やめろ・・・・」


ピッコロに触れれば身体がピクリと震えた。
顔を近づければ、息を呑む音が聞こえる。

吐く息が、荒い。

完全に恋をしている、私の顔だ。

その表情を見て、私が入っているピッコロの身体が暑くなる。
いじめたい。鳴かせたい。どす黒いものに近い感情が膨れ上がる。


「ピッコロって、私に対してこんな風に思ってんだね・・・」
「それは、俺の台詞だ・・・」
「ん?」
「この感情は・・・俺に、理解するのはやっぱり無理だ・・・壊れて、しまいそうだっ・・・・」


ああ、そうか。
ピッコロには、恋という感情が分からないから、苦しいんだ。


「でも、悪いもんじゃないでしょ?」
「・・・まぁ、な。だが、俺はお前をいじめてるほうが楽しい」
「うわ・・・・本能見られたからって開き直り?」
「良く言う。こうやってされている間、お前の身体はありえないほど熱を持っているが?」


お互いの心の中を覗かれているような気分。


「・・・ずるい」
「・・・俺様に勝とうなんぞ、五百年早い」
「うわ、酷いな・・・・」


悪口を言い合いながら、吸い込まれるように口づけを交わす。
いつも味わうような意地悪い口づけじゃなくて、ただ触れるだけの。

そっと目を閉じて、感触を味わって。
少し時間をかけて目を開ければ、見慣れた光景が目の前にあった。

意地悪くも、色気漂う表情を見せるピッコロの、姿。

細められた目。食われてしまいそうな牙。全てにゾクリと震える。


「やはりこっちの方が落ち着くな」
「・・・ど、どいてよ」


恥ずかしくて身体を退けようとしても、ピッコロの身体は動かない。
落ち着いた、自分の身体に収まった精神が、純粋にピッコロを求めて疼く。

――――熱い。

見上げれば、ピッコロも同じような表情をしていた。
恋が分からないとかいうわりには、随分熱っぽい表情してやんの。


「・・・また失礼なことを考えてやがるな」
「心読まないでよねー」
「読んでなど無い。お前の表情でわかるだけだ」
「へー?でも、私もピッコロの考えてること分かるよ?」


にんまりと笑う。
その笑い方が気に食わなかったのか、ピッコロの表情が意地悪く歪んだ。

ピッコロの大きな手に顎を掴まれ、キス出来そうなギリギリの位置まで引き寄せられる。

キスするかと思った唇は静かに私の耳元へ移動し、低く、囁かれた。


「俺に勝とうなんて、1000年早いと言ったはずだが?」


増えてんじゃん、なんて。
いつもみたいに冗談返そうとしたけど、出来なかった。

ぞくりと震える。
この声が、一番好き。


「そうか」
「・・・プライバシーの侵害」
「読んでも読まなくても分かるんだ。どちらでも問題ないだろう?」
「ひねくれの発想だよそれ!ピッコロだって変態のくせに。あんなこと考えて・・・」
「悪いか?」


耳元で、強く囁かれた。
同時に強く腕をベッドに押し付けられ、ついに身動きが取れなくなる。

私を見下げるピッコロの表情は、いつもと変わらない。

特別でも何でもない、でも。


「・・・」
「何笑ってるんだ?」
「ううん。恋愛感情が分からないっていうわりには、だいぶ愛されてるんだなって思っちゃったから、ニヤニヤしちゃっただけ」
「なっ・・・」


だってそうでしょ?

ピッコロの身体に入った時に感じた、私への感情。
どす黒さに似た、確かに恋愛とは言いがたいモノだったけど。

恋愛感情の上では欠かせない、独占欲、欲望を感じた。
嬉しいに決まってる。たとえしっかりとした恋愛感情じゃなくったって。


「なーにー?照れちゃってるの?ねぇねぇっ」
「・・・随分と余裕らしいな」
「ひゃ!こ、こら、まだ昼間なんだからストッ・・・」
「煽ったのは、お前だ」


丸くなったとはいえ、他の人にはあまり飛び抜けた特別な感情を抱かないピッコロの、一部分だけでも私が貰えてると思うと。


「・・・・しょうがないな、いーよ。ピッコロの好きに、して?」


にっこりと笑った私に、ピッコロが少し戸惑う表情を見せた。
それからすぐにその表情を隠してニヤリと笑う。


「いい度胸だ。俺を煽ったこと、後悔させてやろう」


そんなこと言いながら、小さく呟かれた言葉に


「お前はずっと・・・俺様のモノだ」


――――負けた、気がした。












































「今日こそは、余裕ぶってちょっと勝ったつもりしてみようとおもったのにな」
(汗だくの彼に抱きしめられながらそう言えば、まだ足りないか?と意地悪く囁かれた)
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◆Thanks!
見に来てくださってありがとうございます。拍手、コメント読ませていただいております。
現在お熱なジャンルに関しては、リクエスト等あれば優先的に反映することが多いのでよろしければ拍手コメント等いただけるとやる気出ます。
(龍如/オール・海賊/剣豪)