Erdbeere ~苺~ ★9.さぁ、悪夢はここから 忍者ブログ
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2015年01月24日 (Sat)
9話/ギャグ/戦闘/※ヒロイン視点

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結局二人を見失った私達は、それぞれで二人を見つけることにした。
ベジータの気を感じて追いかけてきたのはいいものの、肝心の20号の姿はない。

20号は人造人間だ。

気も、魂も感じない彼は、ただの自然と同じ。

気配を探れれば行けたかもしれないけど。
ああいう奴らのことだ。そんな簡単に気配を感じさせるとは思えない。


「うーん・・・・」


どこを見回しても岩、岩、岩だらけ。
動物たちの魂を少し感じるだけで、ほとんど何も無い。

私はその殺風景さに飽き、ピッコロに念を送った。


「(岩ばっかだよー。この岩全部吹き飛ばしちゃえばもう1回出てくるんじゃない?)」
「(集中しろ)」
「(えー)」


こういう、作業じみたことは一番嫌いだ。

特に敵が見えないという不安が、変な疲れになる。


敵は人造人間。
向こうも意味深なセリフを吐いてたし。

まだ何か作戦があるって可能性も。


「(ゆえ!悟飯・・・っ!)」
「(?ピッコロ・・・?)」


怒っていたピッコロの声が、急に震えだした。
念の力も、やたら不安定だ。

不安になった私は、もう一度念を送る。


「(ピッコロ?どうした、ピッコロ)」
「(ゆえ、悟飯、きてくれ・・・すぐ、だ)」
「(!・・・まさか)」
「(人造、人間が・・・・)」


弱まっていく声に、急いでピッコロの位置を探った。
すぐに感じ慣れた魂の色を見つけ、その方向へと急ぐ。


「(悟飯、私の魔力についてきて)」
「(はい!!)」


わざと魔力を放出し、皆に気づかれるようにしてスピードを上げた。

大きな岩陰を抜けると、それはすぐに姿を現す。

20号に後ろから抱きつかれ、エネルギーを吸い取られているピッコロ。
私は思いっきり勢いをつけ、20号に向かって蹴りを放った。


「がはっ!?」


首裏に蹴りを食らった20号が、ピッコロの身体から離れて吹き飛ぶ。
地面が抉れる音と共に、私の魔力を感じ取った皆が集まってきた。

もちろん、ベジータも。

これでもう、20号に勝ち目はない。
囲んでしまえば今度こそ、逃がさない。


「クリリンさん、ピッコロさんに千豆を!」
「あぁ!」


すっかり千豆役になったクリリンが、急いでピッコロに千豆を投げ渡す。

ピッコロはそれをあまり味わうこと無く飲み込んだ。
そのまま、ターバンを外して身軽になる。


「ベジータ、俺にやらせろ・・・手を出すな」


あーあ。
ピッコロ、ちょっとカチンと来てるんじゃない?

少し殺気立った様子のピッコロを見て、ベジータが馬鹿にしたように笑う。


「死ぬのは構わんが、こいつに余計なパワーを与えるだけじゃないのか?」


ベジータの挑発。
20号も助かったとばかりに余裕を取り戻し始めていた。

まぁ、そうだろう。
彼にとっては、皆のエネルギーを奪うことが先決。

じゃないと、この中で一番強いであろうベジータには勝てないから。


・・・でも。


「ぐあっ!?」
「・・・・ほう」


そんな余裕の表情を浮かべた20号は、一瞬で岩肌に叩きつけられた。
ピッコロの動きが、彼の目で追えなかったのか。それとも油断してたのか。

それはすぐ、分かる。
二人の戦いの中で、確実に余裕があるのは―――ピッコロだ。


「ば、馬鹿な・・・倒せんわけがない・・・っ」


地面に叩きつけられた20号が、悔しげに声を絞り出す。


「はぁぁあぁ!!!」
「・・・・フン」


一方的な戦いだ。
20号が遊ばれる、一方的な。

何度向かっていっても結果は同じ。

ピッコロに全ての動きを読まれ、裏を取られ、また地面に戻る。


「・・・・何だかんだいって、ピッコロも手加減してるよねぇ」


観戦してるだけでも分かる。
修行の時とはまるで違う動き、攻撃の鋭さ。

私と組手の修行をするときは、あんな早い攻撃したことない。
私が追いつけるギリギリのスピードで戦ってくれてたんだ。


「・・・・かっこいいなぁ」


ぼそりと。

思わず呟けば、ピッコロがぴくっと耳を動かした。

あ、そうか。聞こえるんだっけ。
恥ずかしくなった私は、大人しく観戦を続けることにした。


「こんなものか?」
「っぐ・・・う!」


動きをかわし、的確に相手の急所を突く。

たまりかねた20号がエネルギーを吸い取ろうと手を伸ばした瞬間、ピッコロはそれをいとも簡単に手刀で切り落とした。


「・・・・っ!」


崩れ落ちる岩場に、ふらつきながら立つ20号。
それを見たピッコロが満足気に目を細める。


「本来なら、二人の人造人間に俺達は全滅させられるらしいが・・・未来は変わってしまったようだな」


本当に?

・・・私はまだ、嫌な予感を拭えてなかった。


だって弱すぎる。
本当にあの未来のイケメンが言ったことがこいつらなら、私を呼び出すように伝えるだけでも未来は変わったはずだ。


修行なんて、そこまで必要なかった。


「お前たちが弱すぎるのか、それとも・・・俺達が強くなりすぎてしまったのか」


というより、あの少年自体物凄い強さだった。
記憶の中では悟空と対等、いや、それ以上に。

つまりはあの少年が勝てなかった相手。

そんな相手が、こんなに弱い?
私に負けるほどに?


「おい、ピッコロ。さっさとトドメをさせ。それとも俺にやってほしいか?」
「ハッ。お断りだ。元々俺は悪の化身・・・悟空のように甘くはない」


ピッコロがトドメを刺すために手を伸ばした瞬間


「・・・・誰?」


私だけじゃなく、皆もそれに気づいていた。
後ろから近づいてくる、とてつもなく大きな気。

それは徐々に姿を現し、やがて私達の前で止まった。


「トランクス!?」
「・・・あ」


それ、言っていいんだっけ?
少年を見てピッコロが口にした名前に、ベジータが少し動揺している。

そして少年も、強く動揺していた。

ベジータを見てじゃなく、人造人間を見て。
震える指で人造人間を指差し、私達に尋ねる。


「誰なんですか、あれは・・・あれと、戦っていたんでしょう・・・・」


こんな状況だからこそ、トランクスの言葉が冗談じゃないことぐらいすぐ分かった。

一応こいつらは人造人間だ。
でもトランクスが見たのとは違う。


「お前が言ってた人造人間だろう!?」
「違う・・・俺は、あんなの・・・見たこと無い」
「何・・・っ!?」


つまり、まだ、人造人間はいる。

トランクスが本当に襲われていた方の、二人の人造人間が。

嫌な予感ってのは当たるもんなんだね。
ごくりと喉を鳴らし、戸惑う20号を見下ろす。


「い、いいんじゃねぇのか別に?大体、あいつがいった歴史とはだいぶ変わってるんだろ?」
「そう・・・なのかな」
「だからアイツの世界とは違う人造人間でも、おかしくないだろ?」
「・・・そうだと、いいがな」


クリリンの言葉に、納得するものはいなかった。
残念ながら、私もそれに納得は出来ない。

トランクスの言ってることは、少し違えどほとんど間違いはなかった。

悟空の病気も時間がずれただけ。
人造人間の出現もずれただけ。


「あれ?あの飛んでるの、ブルマさんのだよな?」


考えこんでいる私の横を、凄い勢いでジェットフライヤーが通り過ぎる。
確かにその中に乗っているのはブルマで、それに気づいたトランクスが慌てて声を上げた。


「駄目だ、ここは危ない!!!」


そんなこと気にも留めず、ブルマは私達に手を振る。

相変わらず無茶するんだから、ブルマは。

そう思いながらジェットフライヤーに近づこうとした私を、20号の高笑いが止めた。
嫌な笑い方に、思わず振り向く。


「くくくっ!お前らが私達に勝てないというのは変わらん。すぐにでも、17号と18号がお前たちを殺しにくるぞ!!!」


17号、18号?
聞き覚えのない名前だが、名前からして確実に人造人間だ。

しかも二人。
もしかすると、そっちの二人がトランクスの言っていた・・・。


「ふははははっ!!!!」
「っ!!しまっ・・・・」


油断していた私の足元で、エネルギーが爆発する。
慌てて20号に近づこうとするも、爆風が邪魔をして進めない。

無茶苦茶に変わっていく地形。
どうせ逃げるために撃ったんだ。
エネルギー弾を爆発させた本人はもう居ないだろうと判断し、すぐにブルマの方向へと切り返した。


「ブルマ!!」


ジェットフライヤーが崩れ、ブルマと赤ちゃんが投げ出される。

何とかブルマを地面すれすれのところで拾い上げた私は、トランクスが赤ちゃんを助けてるのを見て胸を撫で下ろした。


「あー、よかった。さんきゅ」
ゆえ。良かった・・・いたんだね、君も」


へ?

振り返ったトランクスが、ブルマに赤ちゃんを返しながら私に微笑む。


おかしいな。トランクスの話の中に私は一回も出てこなかったけど。
でも私の呼び出し方を教えたわけだし、未来に私がいても可笑しくないのかな?


あれ?

じゃあ、未来の私ってどうなって―――。


「ねぇ、トラン・・・・」


名前を言いかけた時、トランクスは勢い良くベジータの方に飛んでいってしまった。
ベジータを見る目が少し憎しみに満ちていたのは、気のせいだろうか。


「ねぇ、そういえば、さっきのやつって人造人間?」


トランクスを追いかけようとした私を、ブルマの質問が止める。

そういえばブルマは人造人間が見たいって来たけど、見る前に帰らされたんだっけ。
私は小さく頷き、泣いてるトランクスに魔法で玩具を出してあげた。


「あら、ありがとう。ほーらトランクス。玩具よー?」
「あれが人造人間だけど、どうしたの?見れて満足した?」
「うーん。いやね、あれ・・・ドクターゲロ本人だと思うのよ。改造したのかしら、自分を」
「へー。・・・・へっ!?」


ドクターゲロ!?
トランクスの話しじゃ、人造人間に殺されたっていう?

ブルマの話を聞いて、姿を消した20号を探す皆にクリリンが声を掛けた。


「おい、皆聞いてくれ!さっきの20号ってやつが、ドクターゲロらしい!!」


皆がざわつく。

20号を探していたベジータ達も一旦ブルマのところへ降り、傍に居たトランクスを睨みつけた。


「どういうことだ。お前が言ったことは何もかも違うじゃないか!!ドクターゲロは死んだんじゃないのか!?」
「・・・・・っ」


トランクスの手が震える。


「・・・俺が来てしまったことで、歴史が変わったとしか思えません・・・」
「悟空の病気の時間もずれてたしねー・・・」
「だがお前の反応を見る限り、その17号と18号というのがお前の言う人造人間なんじゃないのか?」


ピッコロの言葉にトランクスが頷いた。
なるほど、二人の人造人間。そっちがメインってわけか。

なら、19号や20号なんかとは比べ物にならないのは簡単に想像出来る。

あのトランクスが勝てないのだから。
ベジータの血を引く超サイヤ人でも、敵わなかった相手。


「・・・・厄介そうだね」
「あぁ・・・17号と18号って、どんな奴なんだ?」
「厄介なんてもんじゃない。・・・18号は女の子タイプ、17号は黒い長髪の少年です。二人共・・・僕ですら、手も足も出ない・・・・」
「女の子タイプ・・・・」


おいこらそこ。クリリン。
女の子タイプって言葉に反応するな!


「女の子でも人造人間なんだぞークリリーン」
「な!?べ、別に俺は変なこと考えてねぇよ!?」


必死に否定され、思わず笑ってしまう。

ベジータはその話を聞いた後、すぐにブルマに話を聞こうと振り返った。
超サイヤ人のままで振り返ったベジータを見て、赤ちゃんが玩具を持ったまま泣き出す。


「あーらよしよし。怖い顔よねぇ?」
「ぐっ・・・・」


あ、ちょっとベジータが狼狽えてる。
凄くからかいたくなったけど、ここでからかえば一瞬で殺されそうだったので止めておいた。

ベジータは舌打ちしながら1歩下がり、苛ついた様子でブルマに尋ねる。


「おいブルマ。ドクターゲロの研究所はどこだ?奴は必ずそこへ戻るはずだ」
「うーんと・・・研究所は確か、北の都にある山だったはずよ。そこの洞窟か何かを改造して作ったとか・・・・」


さすがブルマだ。
ちょっと本で読んだことがあるって言ってたけど、それをここまで細かく覚えてるのは凄い。

私ならすぐに忘れちゃいそうだなーって。
くだらないこと考えていたら、ベジータが楽しそうに腕を組んだ。


「くくっ・・・なら早速行ってやろうぜ」
「そうか。ドクターゲロより先にいって、その17号と18号と破壊しちまえば・・・!」
「破壊?・・・馬鹿が」


クリリンのナイスアイデアを、鼻で笑うベジータ。


「俺はそんな臆病なことはせん。俺がその人造人間とやらを潰してやる!!」


そう言って飛び出したベジータをトランクスが素早く止めた。
怖い顔のベジータの前に立ちはだかり、両手を広げる。


「いけません。17号と18号は起動される前に破壊すべきです。もしくは最悪でも、悟空さんが戻ってくるまでは戦いを控えるべきだ」
「カカロットの手番はない!!俺は超サイヤ人になったんだ。俺一人で十分だ!どけ!!」
「ダメです!!!17号と18号は永久エネルギータイプの人造人間なんです。一人でいけば、たとえ貴方が強くても、消耗戦で負けるだけだ!!」
「うるさい!!退けッ!!!」


ベジータはトランクスを押しのけ、一人で北の都の方へ飛んでいった。

ほんと、プライドの高い人だ。
自分が舐められるのはイヤ。自分が一番強くないとイヤなんだろう。


・・・でもそのために、死ぬような努力をする。努力家でもある。


憎めないプライドの塊って感じ。
それを感じ取っているのか、トランクスもベジータを追いかける。


「嫌なやつだが、もう二度と父さんを殺させはしない・・・・ッ!」


飛び立ったトランクスを遠目で見ていたブルマが、赤ちゃんを見つめながら首を傾げた。


「父さん?いま、父さんっていったわよね?どういうこと?」
「もう黙っていても仕方ないな。あいつはトランクス。お前のその抱えている赤ん坊の成長した姿だ」
「・・・・えええ!?」


ブルマだけじゃなく、クリリン達も驚いて赤ん坊を見る。

あれ、そういえば誰も知らなかったんだっけ。
驚かない私に気づいたクリリンが、お前も知ってたのかよ!とちょっと拗ねた顔をした。


「とりあえず、追いかけよ?追いかけてベジータより先に見つけて、17号と18号ぶっ壊してやんないと!」


トランクスの言ってることは間違ってない。
ずれているだけ。

そしてその流れでいけば、ベジータでも17号や18号を倒せる可能性は・・・少ない。


「あぁ・・・危険はなるべく潰しておくべきだろうな」
「よし、じゃあ皆いこー!」
「悟飯はブルマを連れて戻れ。悟空に、病気が治り次第ここにこいと伝えろ」
「・・・・はい」


ピッコロに指示された悟飯が、ものすごくショボンとした表情を浮かべる。


「皆さん・・・気をつけてくださいね・・・」


なんか、かわいそうなぐらい凹んでるけど、いいのかな。
そう思ってピッコロを見上げれば、ピッコロは静かに首を振った。


「(戦えないから突き返したわけではない。・・・今のこの状況では、これが最善だ)」


念で送られてきた言葉に思わずニヤケてしまいそうになった。

確かに最善だけど、悟飯が大事ですって心も丸見えで。
そのニヤケを見られた私は、もちろんのことピッコロにぶん殴られた。


「あだっ!?」
「どうしたんだよピッコロ、いきなりゆえ殴って」
「いや、少しな。・・・それよりも早く行くぞ」
「あぁ!」
「ったく・・・もう少し心配してよ・・・・」


見慣れた光景だし、といわんばかりの皆の適当具合に、私はがっくりと肩を落としながら追いかけた。































見えてきた、北の都。
山に囲まれた大きな街と、冷たい空気が私達を迎える。

周りは山だらけ。

洞窟を改造したと言われても、こんなんじゃ見つかりそうにない。


「手分けするしかなさそうだな」
「うわぁあぁあさみぃぃいい!」


強い風が吹くのと同時にクリリンが悲鳴を上げた。
確かに天津飯もクリリンも、寒そうな格好をしている。

私も思わず叫びそうになったが、ピッコロのマントを身体中に巻いて何とか耐えた。


「・・・よし、じゃあ行くぞ」


千豆を分けてもらい、見つけた時の合図を決めて各自解散する。

皆がバラバラに飛んで行くのを見送りながら、私はその場を見下ろした。


洞窟を改造してるなら、山の中にあることは間違いない。
もし17号や18号に魂があれば、そこから見つけられたりするかも。


生を持つものが必ず持っている魂。

あの世にいけば火の玉のようになって見えるそれが、私には現世でも見える。

悪魔にとっては大事な食事の一つだからなのだが。
まさかこんなところで悪魔の能力に感謝する時が来るとはと、笑ってしまった。


「さーってと」


気を探るように、魂を探る。

飛んでいったピッコロ達の魂。遠くで未だに追いかけっこしてるベジータとトランクスの魂。
山奥で何かをしてる人の魂、動物の魂。


「んー・・・」


こんなところでぼーっとしてたら、探してないって思われてピッコロに怒られそう。

でも、この方が効率がいいんだよね。
人造人間に魂が無かったら元も子もないから、とりあえず目ぼしいのを探すだけ。

19号と20号には魂が無かった。


・・・・17号、18号も、無い可能性が――――。


「ッ!」


目ぼしいのが無ければ探しに行こうと思っていた矢先、生き物の魂がざわつく場所の近くで”奇妙な魂”を感じ取った。

人間に近いけど、明らかに地球人ではありえない輝きの魂が、山奥に二つある。

確信ではないが確認したほうが良いだろう。
私はすぐさまその方向へスピードを上げて飛んだ。


「どこかなー・・・ん?」


飛んでいる最中、動物たちの命が消えていくのを感じてスピードを緩めた。
その近くでクリリンの気も感じる。

ここからだとちょっと遠いな。

でも、向かってる方向の近くではある。


とにかく急がなきゃ。
千豆はあるけど、一人ってのは本当に落ち着かない。


「ん?」


目的の場所に近づいた瞬間、クリリンの気が高まるのを感じて更にスピードを上げた。
岩山を越えてすぐの所に見えたクリリンの姿は、少し傷ついている。


「あれ、クリリン。大丈夫?ちょっと怪我してる」
「あ、あぁ、大丈夫だ」
「にしても・・・ほんと、嫌な予感するなぁ」
「え?」
「あ、ごめん、なんでもない」


19号と20号には魂を感じられなかった。
なのに17号、18号には感じられた。

20号も、元はドクターゲロ。
魂があっても可笑しくなかったのに、見えなかった。


17号と18号は、永久エネルギー式だって言ってたっけ。


エネルギーが強い人ほど魂も強く光る。
これだけ普通の生き物と同じような魂を持っていれば、間違いないだろう。


「トランクスの言ったとおり、だね」
「クリリン!ゆえ!」
「でかしたぞ!!」


少し遅れて、ピッコロと天津飯が目の前に降りてきた。
そして研究所らしき場所を見るなり、突撃しようとする。

が、それをクリリンが止めた。


「ま、まってくれ。実はもう、ドクターゲロが・・・」
「!!戻っているのか!?」
「それを先に言わんか!!手遅れになる前に早く行くぞ!!」


ピッコロ達が急いで研究所に近づく。
研究所があると思われるその扉は固く閉ざされており、天津飯が蹴りを入れてもビクともしない。

後から私達の気を感じ取ったベジータとトランクスも合流した。
研究所の中からは20号の声と、誰か知らない奴の声が聞こえる。


「・・17号・・・だ・・・!!」
「っ!?いま、17号って・・・」
「もう起動してしまったのか!!」


研究所の中から聞こえた、17号という名前。
耐え切れずベジータが扉を気弾で破壊すれば、その爆発にビクともしない二人の少年少女の姿が現れた。


不気味な笑みを浮かべる長髪の少年。

可愛さの中に冷たさがある少女。


トランクスが言っていた、17号と18号の特徴とぴったりだ。
しかも19号達なんかよりやたら人間味があるような。


「あの二人が、17号と・・・18号・・・?」
「見た目に騙されてはいけません」


クリリンも思ったのだろう。
本当にこれが、人造人間なのかって。


「あいつらが19号を倒し、私を殺しかけた奴らだ」
「19号?そんなのも作ってたのか」
「・・・あぁ」


17号の雰囲気が、冷たく揺らぐ。


「なんで最新式なのにエネルギー吸収タイプに戻したのぉ?手に負えないからぁ?」


ねっとりとした喋り方で聞く18号も、また同じ。

博士を慕ってる、なんて感じには到底思えない。
むしろその逆。馬鹿にして嫌っているような、そんな。


「あれ、これ16号?これも永久式なんだねぇ?私達とは何が違うのかなぁ・・・」
「18号!それに触るんじゃない!!」


子供のような、あどけない言葉。
18号が手を伸ばした先には、16と書かれた大きめのカプセルがあった。

必死に止めるドクターゲロをよそに、18号は悠々とそのカプセルの回りを歩く。


「やめろといったんだ!これだけ言っても分からんのか!?それは失敗作なんだ!」
「へぇ?いいじゃないか、面白そうだ。動かしてみろよ18号」
「ッ!!お前たちも同じだ!!失敗作が!!」


ドクターゲロの言葉に少し17号の空気が変わったのを感じた。

・・・やっぱり、17号と18号は人間に近い。
というよりほとんどが人間だ。感情が強すぎる。


「・・・・ごちゃごちゃうるさいなぁ」


騒ぐドクターゲロを静かにさせたのは、17号だった。
ぐしゃりと嫌な音が聞こえ、ドクターゲロの腹部に17号の腕が突き刺さる。


「何をする17号、私は、貴様を作った・・・・」


――――1撃。


そう、1撃だった。
言葉を言い終わる前に、無情にもドクターゲロの頭が蹴り落とされる。

蹴り落とされた頭も、容赦なく17号の足に踏み潰されて。

やがてその場は静かになった。


「・・・・ほら、18号。早く開けよう」


16号。
その名前はトランクスから出てきてはいない。

しかも、ドクターゲロの反応を見るに、17号や18号と同じぐらい強い奴のはずだ。

明らかに違う。
変わってきている、歴史が。


「これ以上、人造人間を増やすわけにはいかないッ・・・・!!!」


どうする?と意見を仰ごうとして振り向いた先に、超サイヤ人となって気弾を溜めているトランクスの姿があった。

気づいた皆が慌ててその場から離れる。


「や、やるならやるっていえよ!」


悲鳴に近い叫びを上げるクリリンに、誰も意見はしない。
当たり前だ。トランクスの放った気弾のせいで、研究所の全てが吹き飛んだのだから。

だが、人造人間達は傷ひとつ付いていない状態で、崖の傍に立っていた。
そして私達のことなんか眼中にないのか、背を向けた状態でカプセルを下ろす。


止めようにも、今からじゃ無理だ。

私達はただそのカプセルが開くのを、見ていることしか出来なかった。


嫌な予感が強くなる。
無口なオレンジ髪の人造人間・・・あれが、16号。
未来にいない人造人間。


「確認するまでもないと思うけどさ、トランクス」
「・・・」
「あれ、未来にはいない・・・よね」
「・・・・あぁ」


人造人間達は何かを話した後、私達には一切目もくれず、どこかへ飛び立って行った。
彼らの目的が一切つかめない私達は、追いかけずにその背を見送る。

戦いたいだけなら、私達とここでやりあうはず。

都が目的なら方向が違う。


「一体、何が目的・・・・」
「!!悟空だ!!だってあのドクターゲロってやつ、悟空を殺したくて人造人間を作ってたんだろ!?」


確かに、そうだった。
でも。

ピッコロも私と同じことを思ったらしく、顔をしかめる。


「あいつらがドクターゲロの命令を聞くとは思えんが」
「でももしそうだったら・・・・」


言葉を続けようとしたクリリンを、ベジータの殺気が止めた。

ぴりぴりと空気を震わせる気が、私達の肌を掠める。

ベジータの方を見ると、17号達に無視されたのを怒っているのか、今にも三人を追いかけそうなベジータの姿が目に入った。
それを止めているのは、あの時と同じトランクス。


「追いかけてはいけない!!」
「なんだ?またカカロットか」
「カカロット?悟空さんのことですか。そうです。悟空さんも合流して、皆で力を合わせなければ勝てない敵なんです!!」


ベジータの息子とは思えないほど、冷静な判断。
だけどピッコロの記憶から見た彼はとても強く、そして甘さを捨てていた。

あの戦い方は、ベジータに似てる。

にしてもよく衝突するなーって人事のように見ていたら、ベジータがトランクスの腹部に重たい拳を沈ませた。


「トランクス!?」


舞空術の高度が下がっていくトランクスに慌てて駆け寄る。
ベジータはそんなトランクスを振り返ること無く、さっさと三人を追いかけにいってしまった。


「大丈夫、トランクス?」
「早く追ってください・・・あの人に、勝手なことをさせてはいけない・・・・」
「やばいぞ、今悟空たちの所に行かれたら・・・ブルマさん達が!」
「しまった・・・・!母さん達が危ない!!行きましょう!!」


少しだけ違う、似たような歴史の流れ。
絶対に、絶対に、同じようにはさせない。

きっとトランクスも、同じことを思っているだろう。

私達も急いでベジータ達の後を追うことにし、その場から離れた。






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