Erdbeere ~苺~ 気づいてなかっただけのお話 忍者ブログ
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2015年01月31日 (Sat)
彼がエリートなら、私は落ちこぼれだろうか
(秋山/如く0/甘/※ヒロイン視点)
※如く0発売前妄想

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銀行員。
頭も良くて、才能にあふれた男。

表で輝くような活躍をして。

高校生からこんな穢れたことばっかりしてる私とは真逆。


そう、真逆の存在。
関わることのないはずの存在。

それが何故か、最近私に付きまとうようになっていた。


出会いは単純。
ただヤクザに絡まれてるのを、私が助けただけ。

それからお礼だのなんだのっていって付きまとわれるようになって。


只者じゃないってのは分かる男だった。
きっと何かしらの運命があったんだろうと、でも。


「ねぇねぇ、あけちゃん」
「・・・・」
「今日はどこいく?お茶でも行くかい?」
「・・・・・・・・・っ」


付きまとわれるのは、ごめんだ。

しかも私は高校生。相手は20代そこそこの男。
周りから見れば危険な関係に見えるに決まってる。

付きまとわれているせいで、仕事も上手いように出来ない。


「ねぇ、あけちゃん」
「っ~~~~~!!!!」


我慢の限界を越えた私は、男を引っ張って路地裏に連れ込んだ。
男を壁に押さえつけ、逃げられないよう足を男の横につく。


「いいかげんにしろ・・・秋山」
「やっと話してくれたね、あけちゃん」
「てんめ・・・人の話、聞いてんのか!?」


飄々とした態度に冷静さが失われるのを感じた。

毎回こうだ。
こいつと絡むとロクなことがない。

気まぐれで助けたのが間違いだった。

深いため息を吐けば、私の気持ちをまったく汲み取る様子のない秋山がニヤリと笑う。


「・・・いい加減にしろよ」
「なんでさ?・・・別に誰を好きになろうが関係ないだろ?」
「は?・・・・はっ!?」


好き?

こいつ、今、誰を好きになろうがって言ったか?


「・・・・誰が好きなんだ?」
「君」
「・・・・誰が?」
「俺が」
「・・・・・はぁ?」


私はただ秋山を助けただけ。
話をしたのはその後のお茶だけ。お礼だって言われたからついてっただけだ。

別に何もしてない。
変な関係もなかった。


”話しただけ”だ。なのに。


「お前、女に苦労するぞ?」


呆れ顔でそう告げると、秋山が首を傾げる。


「なんでだい?」
「女適当に見過ぎだよ。よりにもよって私みたいなのを・・・・」
「そうかな?・・・俺の勘は、当たるんだけどな」


勘で付きまとわれたんじゃ商売上がったりだ。
・・・まぁそういう意味では、こいつの勘は当たってるのかもしれない。

ダメな女を見るっていう、そういう意味での勘だがな。


「ばぁか。最悪の女を引いただけだ、お前は」


悪い笑みを浮かべて。
顔をぐいっと近づけて、見上げながら舌を出す。


「まだ良心がある内に消えときな。・・・じゃないと」


手をそっと伸ばし、秋山の頬に触れる。
そして襟口に来た瞬間そこを掴み、思いっきり頭突きを食らわせた。

ガッ!と鈍い音が響き、秋山がよろめいて座り込む。
それをザマァミロと見下す私は、完全な悪役。


「ざまぁねぇな。懲りたら騙されんなよ、女に」


こっちは歳なんか関係なく”情報屋”やってんだ。
こんなエリートが騙されていいような女じゃない。


騙してお金を吸い取ってやるのもいいと思った。

でもそれは、私の心がストップを掛ける。


見た目か、若さか。
とにかく哀れにも私に騙された奴さえ追い払えれば。


「じゃあな」


立ち去ろうとした私の足に、秋山の足が掛かった。
咄嗟に反応できなかった私は、そのままバランスを崩して後ろに尻餅をつく。


「ってめぇ!!」


怒ろうと振り上げた手は壁に押さえつけられた。
驚いて逃げようとすれば、座り込んだ私に覆いかぶさるような体勢で押さえつけにかかる秋山の姿が映る。

よく見ると、凄く綺麗な顔だ。


・・・ってそうじゃない。


「なんのマネだ、秋山」
「なんで君みたいな子が、こんな汚い世界にいるんだ?」


真っ直ぐ。
本当に不思議だと言った感じに聞かれ、苛立ちよりも疲れが募る。


「・・・どうだっていいだろ」
「なら俺はやっぱり君のことを諦められないな、あけちゃん」
「ハァッ!?」


こいつ、本物の馬鹿だ。


「なんでそこまで私にこだわるんだよ!お前なら普通にモテるだろ。超エリート、しかもイケメン。なに?実はロリコンとか?」
「そんなわけないだろ?俺は単純に一目惚れしただけだよ。それに、歳なんて恋愛には関係ないと思ってるからさ、俺」
「・・・・」


よく分かんない奴に捕まったもんだな。

何が一目惚れ、だ。
ロリコンか、もしくはただ危険な女が好きなだけか。


どちらにせよ、私に付き合うギリはない。
鼻で笑い、秋山を押しのけようと力を込める。


・・・が。


「お前ッ・・・・」
「そんな力じゃ、俺には勝てないよ?」
「調子に、のんなっ!!」


伸し掛かる形になっている秋山を、私の力では退かせなかった。
苦しい体勢のままだが、退かせるために膝蹴りしようとした私の足を、一瞬で押さえる。


「くっ・・・・」
「見た目とか、歳とか・・・そんなのはどうでもいいんだ」


”ただ俺は、君がほしいだけだよ”


そんなことを囁かれても。
何なんだこいつは。私を弄んで楽しいのか?

不覚にもドキリとしかけて、必死に力を込める。


「いいから退けッ!!」
「そんなに歳が気になるなら、君が大人になった時にもう一度かっさらいにくるよ」
「だぁあぁあもういいから!!早く退けよ!!」
「どうしたの?あけちゃん、顔赤いよ?」
「どけーーーーー!!!!」


秋山に流れてしまうのを恐れて、私は勢い良く秋山を突き飛ばして逃げた。


逃げてしまえば後は何もない。
会わないようにいつものルートも変えればいいだけだ。

二度と会わなければ、そう。


少し揺らぎそうになった心も、無かったことになるはずだから。





































「絡んでくるのが悪いんだろ?」


いつもどおり、私は絡んできたチンピラを蹴り飛ばした。
私がテリトリー内に入ったから気に食わなかったらしいが、喧嘩する相手は選べというもんだ。

震える相手を見下し、普段はあまり通らない裏通りに入る。

その裏通りには昔あまりいい思い出が無かったから、通らないようにしていたのだが。


「・・・・ま、10年以上も前の話か」


私にやたら絡んできた男。
結局あの後私達は再会することなく、今に至る。

もう、あいつも私のことを忘れてしまっただろう。

そんなもんだったんだ、なんて思うと、何故か少しだけ悲しくなった。


「・・・さてと」


さっさと仕事にとりかかりますか。

そう思ってその場で伸びをした私に、後ろから声が掛かった。
聞きなれない声に慌てて振り返り、固まる。


ワインレッドのシャツ。
はだけた胸元。

微かなタバコの匂い。

――――気だるそうな、表情。


「・・・・っ」


見た目はあの時と完全に違うのに。
私は何故か、彼のことを思い出していた。

10年以上も前、私に絡んできて


<<そんなに歳が気になるなら、君が大人になった時にもう一度かっさらいにくるよ>>


そう、冗談のように笑ってみせた、彼のことを。
いやでもまさか、そんな。


「久し振りだね、あけちゃん」


クスリと妖しい笑みを浮かべる彼に、心臓が跳ねた。

嘘だ。
私は・・・まさか。


「・・・・あき、やま」
「あれ?覚えててくれたの?嬉しいなぁ。耐えるのつらかったんだよ?ほんと」


近づいてくる彼を追い払えない。
身体が麻痺したように固まって。


気づけば彼は私の目の前に跪いていた。

そのまま私の手をとって、手の甲に口付ける。


「迎えにきましたよ、お姫様・・・なんてね」


ああ、駄目だ。私は。


「・・・・おせぇ、よ・・・」


負けを認めるしか、ない。

伸ばされた手を取って、彼の腕の中に抱きしめられる。
その温もりにくらくらしてしまう私は、きっとあの時から既に。



































ただ私も一目惚れしてるってことに
(気づいていなかっただけのお話)
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