Erdbeere ~苺~ ★7.未来のイケメン君 忍者ブログ
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2015年01月18日 (Sun)
7話/微甘/シリアス/※ヒロイン視点

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私が呼ばれてから2年ぐらい、だろうか。
ついに悟空が一緒に戦ってほしいっていってた敵が、現れるその日になった。

私達は悟空たちと合流し、その敵が現れるという島に向かって飛ぶ。


「孫・・・どうだ。今回の敵、勝てると思うか?」


飛びながらピッコロが口を開いた。
腕を組みながら飛ぶその表情は、修行の時よりも数倍険しい。

だがそれとは真逆に、悟空はあまり深く考えていないようだった。

いや、考えてるのかもしれないけど、その表情からは分からない。


「見えてもねぇのに分かるわけねぇさ。見てから答える」
「・・・のん気でいいな。俺は勝つ自信はあるが・・・嫌な予感が、離れん」


ピッコロの不安そうな表情、初めて見た。
大丈夫だよ!なんて無責任なことも言えず、私はただ着いて行く。

今回の敵は、人造人間としか聞かされてない。
それがどんな敵なのか、どんな姿なのか。


・・・確かに、見てからじゃないと分からないね。


「ピッコロ、頼むからおめぇは無茶すんなよ?おめぇがいなくなったらドラゴンボールもなくなっちまうんだから」
「大丈夫大丈夫。私がいるんだからピッコロは死なせないよ?」
「あぁ、そうだったな」
「・・・馬鹿者が。お前が俺に守られる方だろう」
「え?守ってくれるの?」
「誰が守るか。勝手に死んでろ」
「どっちだよ!!」


険しい表情のままだけど、いつもの言い争いが出来て少し安心する。


「あ、クリリンさんだ」


目の前を飛んでいた悟飯がクリリンを見つけ、スピードを上げた。
声をかけられたクリリンは、浮かない表情で挨拶をする。


「どうしたんだよ、クリリン。うかねぇ表情だなぁ?」
「・・・当たり前だろ。これからバケモノと一戦やらかそうってんだぞ?」


バケモノ、か。

確かに地球人であるクリリンには、規格外の戦いになる可能性は高い。
でも、それでも、ここに来てるクリリンは凄いなって思った。

私だったらきっと、どうせ無駄だって逃げることを選んだはずだ。


「やばくなったら逃げてもいいんだよ。クリリンは、来てるだけでもすごいんだから」
「慰めになってねぇよ~・・・」
「慰めじゃないけどなー?私が本当に普通の人間だったら、絶対来ないもん。クリリンのその強さってすごいよ?」
「・・・・ははっ、ゆえ、ありがとな」


ぎこちない笑みに、笑みを返す。

少しでも緊張が解ければいいけど・・・。
なんて思っていた矢先、目の前に島が現れた。


南の都の南西9キロ。

思ったよりも大きな都市のある島が見えてくる。


「結構大きいな」
「これだと町の人を巻き込んじゃいそうだね・・・」
「あの山の方から気を感じるけど・・・たぶん、ヤムチャさん達だな」


クリリンの指差す方向に、大きな山が一つ。

そこから感じられる懐かしい気は、ヤムチャと天津飯のものだ。

私達は急いで方向を切り返し、その山を目指した。
近づいてくる山の上に、手を振るヤムチャの姿が見える。


「おーい、お前たち、ちょっと遅刻だぞー?」


ヤムチャと天津飯、までは分かっていた。
でもそこには、予期せぬ人物がいて。


「ブ、ブルマ?」


見慣れた青い髪が風に揺れる。
私が驚いて声を掛ければ、見たことのない赤ん坊を抱えたブルマが居た。

え、もしかして、それ。


「あ、やっほー」
「やっほーじゃないよブルマさん、なにしてるんですかこんなところで」
「見学よ!大丈夫よ、人造人間ってのを一目見たらすぐ帰るから」


いや、それよりも。

抱えている赤ん坊が気になった私は、勢い良くその赤ん坊に近づいた。

顔の感じや雰囲気はベジータに似てる。
頭の中で、ピッコロの記憶から見た”未来のイケメン”を思い出し、今その目の前に居る赤ん坊と見比べた。


・・・間違いない。トランクスだ。

ピッコロに私を呼ぶキッカケを作らせた、未来のあの子。


「結婚したんですね、ヤムチャさんと」
「俺の子じゃねーの・・・・」
「はははっ!父ちゃんはベジータだよなぁ?トランクス!」
「な、なんで知ってるのよ?」


ブルマは悟空から出た言葉に驚き、トランクスを抱え直した。
うっかり口を滑らせたことに気づいた悟空が、あははと苦笑いを浮かべる。


「驚かそうと思って誰にも言ってなかったのにー!?しかも名前まで・・・」
「あ、いや、そんな気がしたんだよ。な、トランクス?」


適当な誤魔化しに、私とピッコロはため息を吐いた。


「それで、そのベジータはどこにいるんだ?姿が見えないようだが」
「私知らないわよ?そのうちくるんじゃ無いかしら」


意外とそっけないんだな。
まぁ確かに、ベタベタしてるカップルって感じじゃないけど。

島の様子はまだ変わらない。
静かに風が吹き、人々が平和に暮らしてる様子が見える。


「ブルマさん、いま何時ですか?」
「え?今・・・9時半ね」


人造人間が現れるまで、あと30分。


未来のトランクスは10時って言ってたけど、それがきっかり起こるわけじゃ無さそうだ。
悟空の病気とやらも、まだ起こってないらしいし。

ちょっとずつ、ずれてる可能性だってある。

気を緩めるわけには、いかない。


「っ・・・・」
「どうした。珍しく緊張してるのか?」


崖のギリギリのところで街を見下ろしていると、後ろからピッコロが話しかけてきた。
誤魔化すように笑い、ピッコロを見上げる。


「やだなー、私が緊張するタイプに見える?」


正直、緊張はしてない。

私が感じているのは、恐怖だった。


未来のトランクスは、トランクスとブルマ以外は”死んでる”と言っていた。
ヘタすればこの今の時間軸も、その未来と同じ道を歩む可能性だってある。


失いたくない。

誰も。
特に・・・ピッコロは。


「あだっ!?」


考えこんでいると、見上げていた私の額にピッコロのチョップがささった。

ガッ!という良い音と共に、激痛が私を襲う。


「余計なことを考えるな」
「心読むなよーう」
「・・・俺は死なん」
「簡単に死んでもらっちゃ困るよ」
「それは俺のセリフだ」


ピッコロの真剣な表情。

思わずどきっとして目を逸そうとすれば、許さないとばかりに頭を掴まれた。

そのまま、触れ合ってしまうんじゃないかってほど顔を近づけられる。
心臓が口から出そうな思いをしつつ、私は必死に平常心を保った。


「・・・・死ぬなよ。まだお前には教えなければならんことがある」
「し、死ぬわけないでしょ。それに、さっき守ってくれるって・・・」
「守らん。死んだときはあざ笑うだけだ」
「相変わらず酷いなー。でも・・・」


”私はピッコロのこと、死んでも守るよ”
そう言いかけて、口を閉ざした。

こんなこと言えば、怒られるのは目に見えているから。


「・・・お前にとってはある意味初めての実戦だ」
「うん」
「もう一度言う。俺の許可なしに死ぬことは許さん」
「死なないよ。私ももっとピッコロに修行つけてもらいたいからね」


不器用なりの配、なのかな。
いつもは死ねだのくたばれだのいう癖に。

私はその心配に嬉しさを感じ、ゆっくり笑った。
そして心のなかで決意を固める。

必ず、誰も死なせず、生きて帰ると。

































10時17分。
ヤジロベーが千豆を渡して帰ろうとしたその時に、戦いは動き出した。

目の前のヤジロベーの飛行機が、何者かの攻撃を受けて海に落ちていく。

空を見上げると、そこには小さな人影が二つ浮いていた。

目を凝らしてよく見るが、その姿はすぐに町の方へ降りてしまい、見失う。
あの二人からは気配や気はおろか、魂すらも感じられなかった。


「まさに、人造人間、だな」
「・・・・気で分からんのなら、目で探すしかなかろう」


ピッコロの言葉に、悟空が頷く。
手に持っていた千豆をブルマに預けると、それぞれに指示を飛ばした。


「それぞれ散って探すぞ。見つけたら深追いせずに連絡するんだ。・・・悟飯はヤジロベーを見てやってくれ」


緊張が、走る。

ゴクリと唾を飲み込み、私は崖の側に構えた。


「行くぞ!!!」


ピッコロの合図を掛け声に、一斉に舞空術で散る。

ヤムチャは町の東側、クリリンはその近くの商業区へ姿を消す。
ピッコロはあっという間に町の奥に姿を消した。

悟空もだいぶ向こうまで行っちゃってるし、私はどうしよう。


「・・・・ここらへん、かな」


一番近いところが、誰もいないようだ。
崖の直ぐ側にあった建物へ降り、ゆっくりと辺りを見回す。

本当に大きな街だ。

こんなところに紛れられたら、うかつに尋ねて回れない。


「・・・・どこだろ」


ううーん。
ピッコロの記憶を思い出しても、”特徴”らしいものはない。

写真とか、特徴とか聞いておけば良かったのに。

人造人間。名前の通り、人間にそっくりな可能性が高い。
・・・・だいぶ厄介だ。


「まぁ、これだけ分散してれば、誰かが見つけれると思うけど」


最悪、あの人造人間達が騒ぎを起こせば分かる。

とりあえず気配も分からない以上、私達だって危ない。
いつ背後を取られてもおかしくないと警戒しながら、私はひたすら足を進めた。


「・・・・・怖いなぁ」


ちょっと、怖い。
得体のしれない敵がいると思うと、身体がゾクリと震える。

強くなるのは楽しかった。

でも、戦いは別。


「困っちゃうなぁ」


―――――ドオン


「ッ!?」


情けない呟きは、遠くからの爆音にかき消された。
この状況での爆音なんて嫌な予感しかしないと、慌ててその方向に切り返す。


「大丈夫かな・・・?」


方角的に、音のする方向に行ったのはヤムチャだ。
気は乱れてないから戦っては無いみたいだけど、急がなくちゃ。

人目を気にするのを止め、目指す方向に飛ぶ。

そして爆発の近くまで飛んできたその時、気が大きく乱れるのを感じた。


「ッ!ヤムチャ!!」
「・・・・・」


乱れた気の中心で、見たこともない奴らにお腹を刺されているヤムチャの姿。
ヤムチャは動く気配を見せず、時折ぴくぴくと痙攣しているだけだった。

あの様子じゃ、もう動けないはずだ。
私は他の皆の気が集まるのを感じ、無謀にもヤムチャを刺しているやつの――――人造人間の目の前に飛び出した。


「はぁあぁあああっ!!!」
「・・・・っ!」


魔法で鎌を召喚し、人造人間の腕を切り裂くように振り上げる。

だが、それは予想通り、軽々とかわされた。


「ヤムチャ!」


代わりに、血だらけのヤムチャが私の目の前に落ちる。
後ろに悟空たちが来たのを確認した後、ヤムチャを抱きかかえて一旦下がった。


ゆえ!ヤムチャ!!」
「クリリン、ヤムチャはまだ生きてる。連れてって千豆を!!」
「・・・分かった!」


ヤムチャの出血を押さえる魔法を施し、クリリンに預ける。

クリリンは何も言わず頷くと、私からヤムチャを引き取ってブルマがいる方向へ飛んだ。

私はすぐに立ち上がり、鎌を人造人間に突きつける。
こうやって敵を目の前にしても、その強さや気は感じ取れなかった。


「・・・貴様らが人造人間か。やっとツラが拝めたぜ」


ピッコロの言葉に、老け顔の人造人間がぴくりと反応する。


「不思議だ。何故我々が人造人間だとわかった?それに・・・・この島に我々が現れるのもわかっていたようだ」
「・・・・」
「何故だ・・・答えろ!」
「さぁな、力づくで聞き出したらどうだ?」


もはや、挑発。
ピッコロの方をチラリと見た老け顔は、表情一つ変えず頷いた。


「そうか、ならばそうしよう」


緊張が走り、私達はそれぞれ戦闘準備に入る。

でもここは町中だ。ここで戦えば犠牲は大きい。
私が言わんとしていることに気づいた悟空は、私と目を合わせてから口を開いた。


「・・・誰もいないところに場所を移すぞ。お前らもいいな!?」


私達の方へ歩き出していた人造人間に聞けば、老け顔の方が足を止める。


「誰もいないところ、か。いいだろう」


あれ、案外物分かり良いじゃん。
なんて思ったのはつかの間。

一瞬にして、人造人間の空気が変わったのに気付き、私は鎌を強く握りしめた。

あいつ・・・何か、してくる気だ。


「だが、わざわざ移動する必要もあるまい?」


老け顔の目が、血の色に染まる。

嫌な機械音。放たれるレーザー。

それが建物にぶつかる寸前、私は魔力を高めて防壁を作った。
耳をつんざくような爆音が響き渡り、防壁への衝撃に蹲る。


「・・・・やめろーーーー!!!!」


ガイン!と金属を殴るような音が聞こえ、レーザーが止んだ。
土埃が舞う中、町にあまり被害が出ていないのを確認して胸を撫で下ろす。

その様子を、老け顔の横にいる白いやつがニヤケながら見ていた。


「なんだ。人がいない場所を作ってやろうと思ったのだが・・・ここは気に入らなかったようだな?」


なんて外道だ。
もしカバーしきれてなかったら、この爆発でどれだけの人が死んだか分かってるのか?

子供の泣き叫ぶ声を聞き、唇を噛みしめる。


「ありがとな、ゆえ。助かった」
「こんなのたやすい御用」
「いいか、ついてこい!!二人共ぶっ壊してやるぞ!!」


殺気立つ悟空に、老け顔が挑発じみた笑みを浮かべた。


「いいだろう。好きな死に場所を選べ・・・孫悟空」
「・・・!?な、なんで」
「お前たちも分かるぞ?ピッコロ、天津飯。だがお前だけは分からん・・・」


機械質な瞳が私を捉える。
緊張で一歩下がれば、それを支えるようにピッコロが背中を撫でてくれた。


「怯えるな」
「・・・あんがと」


ああ、たったその一言で震えが止まる。
何に怖がっていたのか分からなくなるほど。

まるで精神安定剤だ。

場所を移すために飛んだ悟空たちを追いかけ、私も翼を広げた。


「行くぞ」


ピッコロの手を、無意識に掴みながら。

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