いらっしゃいませ!
名前変更所
私が呼ばれてから2年ぐらい、だろうか。
ついに悟空が一緒に戦ってほしいっていってた敵が、現れるその日になった。
私達は悟空たちと合流し、その敵が現れるという島に向かって飛ぶ。
「孫・・・どうだ。今回の敵、勝てると思うか?」
飛びながらピッコロが口を開いた。
腕を組みながら飛ぶその表情は、修行の時よりも数倍険しい。
だがそれとは真逆に、悟空はあまり深く考えていないようだった。
いや、考えてるのかもしれないけど、その表情からは分からない。
「見えてもねぇのに分かるわけねぇさ。見てから答える」
「・・・のん気でいいな。俺は勝つ自信はあるが・・・嫌な予感が、離れん」
ピッコロの不安そうな表情、初めて見た。
大丈夫だよ!なんて無責任なことも言えず、私はただ着いて行く。
今回の敵は、人造人間としか聞かされてない。
それがどんな敵なのか、どんな姿なのか。
・・・確かに、見てからじゃないと分からないね。
「ピッコロ、頼むからおめぇは無茶すんなよ?おめぇがいなくなったらドラゴンボールもなくなっちまうんだから」
「大丈夫大丈夫。私がいるんだからピッコロは死なせないよ?」
「あぁ、そうだったな」
「・・・馬鹿者が。お前が俺に守られる方だろう」
「え?守ってくれるの?」
「誰が守るか。勝手に死んでろ」
「どっちだよ!!」
険しい表情のままだけど、いつもの言い争いが出来て少し安心する。
「あ、クリリンさんだ」
目の前を飛んでいた悟飯がクリリンを見つけ、スピードを上げた。
声をかけられたクリリンは、浮かない表情で挨拶をする。
「どうしたんだよ、クリリン。うかねぇ表情だなぁ?」
「・・・当たり前だろ。これからバケモノと一戦やらかそうってんだぞ?」
バケモノ、か。
確かに地球人であるクリリンには、規格外の戦いになる可能性は高い。
でも、それでも、ここに来てるクリリンは凄いなって思った。
私だったらきっと、どうせ無駄だって逃げることを選んだはずだ。
「やばくなったら逃げてもいいんだよ。クリリンは、来てるだけでもすごいんだから」
「慰めになってねぇよ~・・・」
「慰めじゃないけどなー?私が本当に普通の人間だったら、絶対来ないもん。クリリンのその強さってすごいよ?」
「・・・・ははっ、ゆえ、ありがとな」
ぎこちない笑みに、笑みを返す。
少しでも緊張が解ければいいけど・・・。
なんて思っていた矢先、目の前に島が現れた。
南の都の南西9キロ。
思ったよりも大きな都市のある島が見えてくる。
「結構大きいな」
「これだと町の人を巻き込んじゃいそうだね・・・」
「あの山の方から気を感じるけど・・・たぶん、ヤムチャさん達だな」
クリリンの指差す方向に、大きな山が一つ。
そこから感じられる懐かしい気は、ヤムチャと天津飯のものだ。
私達は急いで方向を切り返し、その山を目指した。
近づいてくる山の上に、手を振るヤムチャの姿が見える。
「おーい、お前たち、ちょっと遅刻だぞー?」
ヤムチャと天津飯、までは分かっていた。
でもそこには、予期せぬ人物がいて。
「ブ、ブルマ?」
見慣れた青い髪が風に揺れる。
私が驚いて声を掛ければ、見たことのない赤ん坊を抱えたブルマが居た。
え、もしかして、それ。
「あ、やっほー」
「やっほーじゃないよブルマさん、なにしてるんですかこんなところで」
「見学よ!大丈夫よ、人造人間ってのを一目見たらすぐ帰るから」
いや、それよりも。
抱えている赤ん坊が気になった私は、勢い良くその赤ん坊に近づいた。
顔の感じや雰囲気はベジータに似てる。
頭の中で、ピッコロの記憶から見た”未来のイケメン”を思い出し、今その目の前に居る赤ん坊と見比べた。
・・・間違いない。トランクスだ。
ピッコロに私を呼ぶキッカケを作らせた、未来のあの子。
「結婚したんですね、ヤムチャさんと」
「俺の子じゃねーの・・・・」
「はははっ!父ちゃんはベジータだよなぁ?トランクス!」
「な、なんで知ってるのよ?」
ブルマは悟空から出た言葉に驚き、トランクスを抱え直した。
うっかり口を滑らせたことに気づいた悟空が、あははと苦笑いを浮かべる。
「驚かそうと思って誰にも言ってなかったのにー!?しかも名前まで・・・」
「あ、いや、そんな気がしたんだよ。な、トランクス?」
適当な誤魔化しに、私とピッコロはため息を吐いた。
「それで、そのベジータはどこにいるんだ?姿が見えないようだが」
「私知らないわよ?そのうちくるんじゃ無いかしら」
意外とそっけないんだな。
まぁ確かに、ベタベタしてるカップルって感じじゃないけど。
島の様子はまだ変わらない。
静かに風が吹き、人々が平和に暮らしてる様子が見える。
「ブルマさん、いま何時ですか?」
「え?今・・・9時半ね」
人造人間が現れるまで、あと30分。
未来のトランクスは10時って言ってたけど、それがきっかり起こるわけじゃ無さそうだ。
悟空の病気とやらも、まだ起こってないらしいし。
ちょっとずつ、ずれてる可能性だってある。
気を緩めるわけには、いかない。
「っ・・・・」
「どうした。珍しく緊張してるのか?」
崖のギリギリのところで街を見下ろしていると、後ろからピッコロが話しかけてきた。
誤魔化すように笑い、ピッコロを見上げる。
「やだなー、私が緊張するタイプに見える?」
正直、緊張はしてない。
私が感じているのは、恐怖だった。
未来のトランクスは、トランクスとブルマ以外は”死んでる”と言っていた。
ヘタすればこの今の時間軸も、その未来と同じ道を歩む可能性だってある。
失いたくない。
誰も。
特に・・・ピッコロは。
「あだっ!?」
考えこんでいると、見上げていた私の額にピッコロのチョップがささった。
ガッ!という良い音と共に、激痛が私を襲う。
「余計なことを考えるな」
「心読むなよーう」
「・・・俺は死なん」
「簡単に死んでもらっちゃ困るよ」
「それは俺のセリフだ」
ピッコロの真剣な表情。
思わずどきっとして目を逸そうとすれば、許さないとばかりに頭を掴まれた。
そのまま、触れ合ってしまうんじゃないかってほど顔を近づけられる。
心臓が口から出そうな思いをしつつ、私は必死に平常心を保った。
「・・・・死ぬなよ。まだお前には教えなければならんことがある」
「し、死ぬわけないでしょ。それに、さっき守ってくれるって・・・」
「守らん。死んだときはあざ笑うだけだ」
「相変わらず酷いなー。でも・・・」
”私はピッコロのこと、死んでも守るよ”
そう言いかけて、口を閉ざした。
こんなこと言えば、怒られるのは目に見えているから。
「・・・お前にとってはある意味初めての実戦だ」
「うん」
「もう一度言う。俺の許可なしに死ぬことは許さん」
「死なないよ。私ももっとピッコロに修行つけてもらいたいからね」
不器用なりの配、なのかな。
いつもは死ねだのくたばれだのいう癖に。
私はその心配に嬉しさを感じ、ゆっくり笑った。
そして心のなかで決意を固める。
必ず、誰も死なせず、生きて帰ると。
10時17分。
ヤジロベーが千豆を渡して帰ろうとしたその時に、戦いは動き出した。
目の前のヤジロベーの飛行機が、何者かの攻撃を受けて海に落ちていく。
空を見上げると、そこには小さな人影が二つ浮いていた。
目を凝らしてよく見るが、その姿はすぐに町の方へ降りてしまい、見失う。
あの二人からは気配や気はおろか、魂すらも感じられなかった。
「まさに、人造人間、だな」
「・・・・気で分からんのなら、目で探すしかなかろう」
ピッコロの言葉に、悟空が頷く。
手に持っていた千豆をブルマに預けると、それぞれに指示を飛ばした。
「それぞれ散って探すぞ。見つけたら深追いせずに連絡するんだ。・・・悟飯はヤジロベーを見てやってくれ」
緊張が、走る。
ゴクリと唾を飲み込み、私は崖の側に構えた。
「行くぞ!!!」
ピッコロの合図を掛け声に、一斉に舞空術で散る。
ヤムチャは町の東側、クリリンはその近くの商業区へ姿を消す。
ピッコロはあっという間に町の奥に姿を消した。
悟空もだいぶ向こうまで行っちゃってるし、私はどうしよう。
「・・・・ここらへん、かな」
一番近いところが、誰もいないようだ。
崖の直ぐ側にあった建物へ降り、ゆっくりと辺りを見回す。
本当に大きな街だ。
こんなところに紛れられたら、うかつに尋ねて回れない。
「・・・・どこだろ」
ううーん。
ピッコロの記憶を思い出しても、”特徴”らしいものはない。
写真とか、特徴とか聞いておけば良かったのに。
人造人間。名前の通り、人間にそっくりな可能性が高い。
・・・・だいぶ厄介だ。
「まぁ、これだけ分散してれば、誰かが見つけれると思うけど」
最悪、あの人造人間達が騒ぎを起こせば分かる。
とりあえず気配も分からない以上、私達だって危ない。
いつ背後を取られてもおかしくないと警戒しながら、私はひたすら足を進めた。
「・・・・・怖いなぁ」
ちょっと、怖い。
得体のしれない敵がいると思うと、身体がゾクリと震える。
強くなるのは楽しかった。
でも、戦いは別。
「困っちゃうなぁ」
―――――ドオン
「ッ!?」
情けない呟きは、遠くからの爆音にかき消された。
この状況での爆音なんて嫌な予感しかしないと、慌ててその方向に切り返す。
「大丈夫かな・・・?」
方角的に、音のする方向に行ったのはヤムチャだ。
気は乱れてないから戦っては無いみたいだけど、急がなくちゃ。
人目を気にするのを止め、目指す方向に飛ぶ。
そして爆発の近くまで飛んできたその時、気が大きく乱れるのを感じた。
「ッ!ヤムチャ!!」
「・・・・・」
乱れた気の中心で、見たこともない奴らにお腹を刺されているヤムチャの姿。
ヤムチャは動く気配を見せず、時折ぴくぴくと痙攣しているだけだった。
あの様子じゃ、もう動けないはずだ。
私は他の皆の気が集まるのを感じ、無謀にもヤムチャを刺しているやつの――――人造人間の目の前に飛び出した。
「はぁあぁあああっ!!!」
「・・・・っ!」
魔法で鎌を召喚し、人造人間の腕を切り裂くように振り上げる。
だが、それは予想通り、軽々とかわされた。
「ヤムチャ!」
代わりに、血だらけのヤムチャが私の目の前に落ちる。
後ろに悟空たちが来たのを確認した後、ヤムチャを抱きかかえて一旦下がった。
「ゆえ!ヤムチャ!!」
「クリリン、ヤムチャはまだ生きてる。連れてって千豆を!!」
「・・・分かった!」
ヤムチャの出血を押さえる魔法を施し、クリリンに預ける。
クリリンは何も言わず頷くと、私からヤムチャを引き取ってブルマがいる方向へ飛んだ。
私はすぐに立ち上がり、鎌を人造人間に突きつける。
こうやって敵を目の前にしても、その強さや気は感じ取れなかった。
「・・・貴様らが人造人間か。やっとツラが拝めたぜ」
ピッコロの言葉に、老け顔の人造人間がぴくりと反応する。
「不思議だ。何故我々が人造人間だとわかった?それに・・・・この島に我々が現れるのもわかっていたようだ」
「・・・・」
「何故だ・・・答えろ!」
「さぁな、力づくで聞き出したらどうだ?」
もはや、挑発。
ピッコロの方をチラリと見た老け顔は、表情一つ変えず頷いた。
「そうか、ならばそうしよう」
緊張が走り、私達はそれぞれ戦闘準備に入る。
でもここは町中だ。ここで戦えば犠牲は大きい。
私が言わんとしていることに気づいた悟空は、私と目を合わせてから口を開いた。
「・・・誰もいないところに場所を移すぞ。お前らもいいな!?」
私達の方へ歩き出していた人造人間に聞けば、老け顔の方が足を止める。
「誰もいないところ、か。いいだろう」
あれ、案外物分かり良いじゃん。
なんて思ったのはつかの間。
一瞬にして、人造人間の空気が変わったのに気付き、私は鎌を強く握りしめた。
あいつ・・・何か、してくる気だ。
「だが、わざわざ移動する必要もあるまい?」
老け顔の目が、血の色に染まる。
嫌な機械音。放たれるレーザー。
それが建物にぶつかる寸前、私は魔力を高めて防壁を作った。
耳をつんざくような爆音が響き渡り、防壁への衝撃に蹲る。
「・・・・やめろーーーー!!!!」
ガイン!と金属を殴るような音が聞こえ、レーザーが止んだ。
土埃が舞う中、町にあまり被害が出ていないのを確認して胸を撫で下ろす。
その様子を、老け顔の横にいる白いやつがニヤケながら見ていた。
「なんだ。人がいない場所を作ってやろうと思ったのだが・・・ここは気に入らなかったようだな?」
なんて外道だ。
もしカバーしきれてなかったら、この爆発でどれだけの人が死んだか分かってるのか?
子供の泣き叫ぶ声を聞き、唇を噛みしめる。
「ありがとな、ゆえ。助かった」
「こんなのたやすい御用」
「いいか、ついてこい!!二人共ぶっ壊してやるぞ!!」
殺気立つ悟空に、老け顔が挑発じみた笑みを浮かべた。
「いいだろう。好きな死に場所を選べ・・・孫悟空」
「・・・!?な、なんで」
「お前たちも分かるぞ?ピッコロ、天津飯。だがお前だけは分からん・・・」
機械質な瞳が私を捉える。
緊張で一歩下がれば、それを支えるようにピッコロが背中を撫でてくれた。
「怯えるな」
「・・・あんがと」
ああ、たったその一言で震えが止まる。
何に怖がっていたのか分からなくなるほど。
まるで精神安定剤だ。
場所を移すために飛んだ悟空たちを追いかけ、私も翼を広げた。
「行くぞ」
ピッコロの手を、無意識に掴みながら。
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