いらっしゃいませ!
名前変更所
5月9日。
私の主であり師匠であるピッコロの誕生日。
彼は水以外を必要としない。
服とか欲しいものは、私と似たような魔術とやらでピピッと出してしまう。
つまり何が言いたいかというと。
めんどくさいってことである。
「難易度高すぎでしょ・・・・」
元々お祝いごとに疎い私が、こんな難易度高いお祝いをしなくちゃいけないなんて。
でも、しないという選択肢は浮かばなかった。
必死に考えを絞りだす。
ピッコロが欲しそうなモノ・・・喜びそうなモノ・・・。
「ねー、ごはーん」
「はい?」
ピッコロが別な場所で瞑想している中、私は目の前で修行する悟飯を呼んだ。
呼ばれた悟飯は気を弱め、楽しそうに走ってくる。
「ね、ごは・・・」
私は普通に話そうとして、一旦止めた。
そういえばピッコロって耳良いんだったよね。
このまま話せばピッコロに聞こえちゃうかもしれない。
慌てて魔法で防音壁をはり、その中に悟飯を呼ぶ。
これは重大な任務に近いのだ。ピッコロにバレて失敗は許されない。
というより私のプライドが許さない。
あのむっつり顔を、喜ばせてやるんだから。
「ね、悟飯。明日ピッコロの誕生日でしょ」
「そうですけど・・・」
「悟飯は何あげるの?」
「僕ですか?僕は修行です!」
「・・・・はっ?」
修行?
え、修行っていつもしてるよね?
悟飯の回答に納得出来ない私を置き去りにし、嬉しそうな悟飯が話を続ける。
「ピッコロさんに、遠慮なく修行してもらおうってのが僕のプレゼントです」
「え?う、うん・・・?」
「いつもピッコロさんの修行の邪魔してるから、僕だってピッコロさんの力になろうと思って・・・・」
「そ、そか、喜んでくれそう・・・だね、うん」
まぁ、あの修行バカになら通用する気もするが。
なんか違う気がした私は、悟飯を修行に戻して防音壁を戻した。
違うんだ。私がしたいお祝いのはそういうのじゃなくて。
少しでも良いからいつもと違う何かを感じて欲しいのだ。
「ううーん・・・」
お祝いって、感じを。
ここで悩んでるだけじゃ先に進めないと感じた私は、悟飯とピッコロの目を盗んでその場を抜けだした。
お祝いごと、イベントごとって言ったらやっぱりここ。
私は迷わずブルマの家に着地し、玄関のベルを鳴らした。
「はいはーい!あら、どうしたの?ゆえ」
白衣を着たブルマが、ゴーグルを外して微笑む。
「ごめん、仕事中だった?」
「いいわよ。アナタが来るってことは、何か相談でしょ?」
ブルマの言葉に、肩がびくっと跳ねた。
それもそうか。そういえば招待以外でブルマの家に来たことなんてなかったもんな。
無駄にここを通れば、ベジータの修行に捕まるからってのもあるが。
苦笑いで頭をかけば、呆れ顔のブルマが私を手招きする。
「とりあえず、中に入って」
相変わらず豪邸だ。
中に入ってすぐ広さが分かるその部屋に、思わず声を洩らす。
「それで、どうしたの今日は」
ブルマは手早く着ていた白衣を脱ぎ、近くにあったソファに腰掛けた。
改まって聞かれると、すごく相談しにくい。
でも、恥ずかしさに負けたら駄目だ。
「いや、さ、あのー。明日、ピッコロが誕生日なんだよね」
促されたソファに腰掛け、ココを尋ねた理由を説明する。
「ほら、アイツ全部魔術で出すし、水しか飲まないでしょ?だから・・・どうしようって」
「なるほどねー。アンタも魔法で何でも出せるのにここまで相談にきてるってことは、そうとう真面目に考えてんのねぇ?」
ニヤリ。
ブルマの意地悪い笑顔とぶつかり、思わず目を逸らした。
何でだろう、ピッコロのために考えてるだけなのに。
なんだかそれを伝えるのが恥ずかしい。
いやほら、ピッコロは私の師匠だし、主なんだよ?
真剣に考えて悪いわけ・・・むしろ当たり前なはず。
「ま、まぁそういうわけで、真剣に悩んでるの!なんかアイデアください!」
「・・・念のため聞くけど・・・一応何がほしいかは聞いたのよね?」
「うん」
返事だけすると、ブルマはその先を聞かないまま頷いた。
きっと察してくれたんだろう。まともな答えが返ってこなかったと。
「そうねー。別に物に執着する必要ないんじゃないかしら?」
ブルマの一言に驚いて目を見開く。
得意気に笑うブルマは、私の真正面にある綺麗な森の絵を指さした。
「ああいう場所とかに連れてってあげるとかでもいいと思うのよ。アイツの記憶見たんでしょう?アイツが記憶に深く刻んでた場所を魔法で再現するとか・・・」
確かに、何か物をあげる必要はないんだ。
悟飯があげてるプレゼントも、形は見えないけどその気持ちをあげてる意味では立派なプレゼント。
私もこの気持ちと、特別な日ってのが伝わればそれでいい。
「ブルマ天才!!」
「でしょー?」
記憶の中を一生懸命探る。
あの時ピッコロから見た記憶の中で、一番染み付いてる記憶を。
ピッコロの記憶の中でそこまで景色は見えなかった。
いつも荒野か川の傍か。
その中でも強く私の脳裏に浮かんだのは、彼の故郷”ナメック星”だった。
「いいの浮かんだ?」
「うん!!早速魔法を作りこんでくる!!」
ただ幻想を見せるだけじゃつまらない。
荒野全体に魔法をかけて、ナメック星の空気や空を感じてもらえるようにしよう。
「よおおし!!やる気出てきた!!ブルマ、今度お礼するね!それじゃ」
「おい。そうはさせんぞ」
「ごふ!?」
やる気満々に踵を返した私は、仁王立ちしていたベジータに真正面からぶつかった。
結構な勢いでぶつかったのに、びくともしないこいつは何なのか。
痛む顔を押さえながら睨みつければ、ベジータが楽しそうに腕を鳴らした。
「貴様、強くなったら俺と勝負すると言っただろうが」
「ううぐ・・・ま、まだ強くなってないし、それにこれから私は・・・」
座り込んでいる私に近づき、がしっと首元を掴む。
その直後、ふわりと身体が浮く感覚がして、私は顔を引き攣らせた。
「ま、まってって!!これから広い場所探しとか色々やらなきゃなんだから!」
「さっき話していたピッコロへのプレゼントのためか?」
「聞いてたなら離してよーー!!」
どんだけもがいても、ベジータの手が離されることはない。
それどころか私を持ったまま窓を開け、勢い良く外に飛び出した。
ああ、飛んでる。拉致されてる私。
これじゃあ離してもらうのは無理そうだなと、がっくり肩を落とす。
「諦めたか」
「逃がす気ないじゃん・・・」
「あぁ」
「忙しいんだけどー!?」
「うるさいやつだな・・・」
ベジータはどこに行くつもりなんだろう。
飛んでいる方向は、あまり私達が行かない方向だ。
「あっちの方に荒野がある」
「そうなんだ。そこでやる?」
「あぁ。お前たちが使ってる、森の近くにある荒野とは違って本当に誰も来ないような場所だ。お前が魔法を使うにもいい場所だと思うぜ」
え、それって。
「ベジータってば優しー!」
「な!?違うぞ!!俺は貴様と戦う場所に連れて行くだけだ!その後は好きにしろと言ったまでだ!!」
「てれなくてもいいのにー!」
「貴様・・・ッ!」
ぶんっと音を立てて空中に放り投げられる。
私はゆっくり翼を広げ、体勢を立て直した。
人のことを投げておきながら、ベジータは一切私を待とうとしない。
むかついて追いかけると、投げた張本人は楽しそうに笑っていた。
「なんだ、地面には落ちなかったか」
「落ちるわけないでしょ。翼ついてんだから」
「落ちれば傑作だったのになぁ」
「・・・んのやろう・・・絶対殴ってやる・・・・」
ベジータが案内してくれた荒野は、本当に何もなくだだっ広い場所だった。
邪魔な岩などもなく、どちらかといえば砂漠のような場所。
このために案内してくれた、なんて感じじゃ無さそうだけど。
ついでだったから教えてくれたっていう優しさは感じた。
その優しさの持ち主は、私を睨んでものすごく楽しそうな笑みを浮かべている。
顔が引き攣ってしまうほどの殺気を感じ、思わずため息を吐いた。
「そ、そんな本気でやろうとしないでよ?」
「本気でやらねぇんなら意味ないだろうが。強くなったって聞いたぜ?・・・来やがれ」
気合十分のベジータと睨み合い、思いっきり魔力を放出する。
ベジータもその気を開放し、一瞬で私の懐に飛び込んだ。
――――早い。
瞬時に反応して魔力を込めた拳を突き出す。
ピッコロに教わった、私の力の弱さをカバーする戦い方。
全身に魔力を纏い、攻撃する場所や防御する場所にそれを集中させ、威力を高める。
「甘い!!」
「ッ!おわっ!?」
捉えたと思った私の腕はかわされ、代わりに上空から声がした。
慌てて後方に舞空術で下がれば、私が立っていた場所に大穴が空く。
「・・・・っ」
それを見て、何故か少し足がすくんだ。
ベジータは本気だ。本当の、本気。
殺したって構わないレベルで私に来てる。
ピッコロの修行も容赦ないが、ピッコロはあくまで修行なのだと今感じさせられた。
殺されてしまうかもしれないという恐怖感を感じたことは、今まで無かったから。
「ッ・・・・」
「どうした?怖気づいたか?」
「そんなそんな。こんなんで怖気づく私じゃないよ?」
頭の上に手を重ね、魔力を”弾”に変えて放つ。
「魔閃光!!」
「なっ!」
悟飯から教えてもらった、私が初めて覚えた技。
それは一瞬にしてベジータの足元を抉り、地面を揺らした。
「なんて威力と早さだ・・・そうこないとな」
私の攻撃を見ても、ベジータは恐れるどころか楽しそうに構える。
これが戦闘種族か。ちょっと羨ましい。
私はこんなにも、本気の殺気を浴びて震えているのに。
また自分に弱点が見つかって、苛立っているのに。
「ぼけっとするな・・・行くぜ!!」
「ぼけっとなんかしてないよっ!と!!」
撃ちだされた気弾を跳び箱のように避け、私は空高く飛び上がった。
少しあいた距離を利用し、頭の中で魔法を完成させる。
想像したのは、彼を捉える長い鎖。
目の前にベジータが来たのを感じて魔法を発動させる。
「ッ!?」
現れた鎖がベジータの手足を捉えた。
ここで調子に乗れるほど余裕のない私は、動けないベジータに全力で魔弾を撃つ。
「魔閃光!!」
目の前で、爆発する。
・・・まだだ。全然、食らってない。
「ハッ!お前もあのカカロットのガキと同じか!攻撃を緩めたな?バカヤロウが」
「そんなつもりはないけど、ね・・・・」
全力で撃ったつもりだった。
でも、目の前のベジータはかすり傷しか負ってない。
さすがの私でも、全力を出せばベジータを再起不能にするぐらいは出来るはずだ。
そう、ベジータ自身が前に言っていたから。
無意識に威力を弱めちゃうなんて。甘ったれといわれてもしょうがない。
「貴様がそのつもりでも、俺は容赦しない」
ヒュンッと音がして、いつの間にかベジータが私の後ろに居た。
「しまっ・・・・」
意識が飛ぶような痛みと、衝撃。
気づいた時には身体が地面に叩きつけられ、息が止まる。
痛い。身体が、動かない。
おかしい。こんな攻撃いつだって食らってた。
なのに身体は痛みに怯え、震え、動かない。
「おい、もう終わりか?」
そんなはずない、と。
反撃するはずの声は、ただひゅっと空気を吐き出しただけだった。
「・・・・っ」
「・・・?」
「いたい・・・」
「当たり前だろうが、俺様の攻撃がそんなに甘いもんだと思ったのか?」
そうか、やっぱり。
容赦無い修行だって言いつつ、ピッコロは加減してたんだ。
ギリギリで死なないレベルの攻撃。
だから殺気を感じなかった。
食らっても動けるレベルの痛みで、恐怖も感じなかった。
「・・・・ベジータ」
ふらふらと立ち上がり、ゆっくり微笑む。
「ごめん。やっぱりもうちょっと強くなってくる」
私は甘えさせられていた。
最初はピッコロを倒すために始めた修行だったけど、今ではそんなのどうでもよかった。
ただ強くなりたい。
強くなって、この居心地の良い環境をいつまでも楽しみたい。
「なんだ?一撃でギブアップか」
「うん・・・思ったより、ちょっと、やばかった」
足がガクガクと震える。
耐え切れず倒れ込めば、ベジータが鼻で笑う。
「フン。期待外れだな・・・・だが」
「う?」
ベジータは私の隣に座り込み、右腕を見せた。
そこにあったのは、大きな傷跡。
場所的に、私がさっき撃った魔閃光の傷だ。
「俺様にこの短時間でここまでダメージを与えたんだ。・・・これからを楽しみにしといてやる」
そう言って私に背を向けたベジータは、カプセルコーポレーションの方に姿を消した。
静かな風が吹き、未だに痛みを覚える身体を冷やす。
「まいったなぁ・・・・」
もっと、もっともっと。
強くなってそれから。
「ま、そのためにはちゃちゃっとしなきゃね」
痛みを魔法で癒やし、勢い良く立ち上がる。
広い荒野はどこまで見渡しても邪魔なものが無い。
さっきの勝負で開けてしまった穴は気になるが、そこまで影響しないだろう。
「よし・・・作りますか」
荒野全体に結界を張り、誰も立ち入れないようにしてから魔法を唱えた。
喜ぶ表情が見れるかは微妙だけど、彼の誕生日を祝うために。
ピッコロの頭の中のナメック星を描くように、私はその地域一帯を魔法で埋めていった。
ただの幻想では感動が少ない。
だから私が掛けた魔法は、レプリカを創りだすような魔法。
それ故に、力を半端無く消費する。
「へ・・・・?あれ?」
目を覚ますと、私はいつの間にか自分が創りだしたナメック星の湖の上に居た。
少し緑に濁った水が、地球とは違う雰囲気を醸し出している。
「あー・・・・」
空を見上げれば、太陽が二つ。
ああ、そっか。
魔力の消費が激しいのに、ベジータとも戦って力を消費してたから。
作り終わった後、意識を飛ばしてしまったんだ。
「やばいな・・・今何時だろ?」
周りを見回し、レプリカのナメック星が出来上がっているのを確認する。
そして私は遮断壁から外に飛び出した。
遮断癖の外は、ただの荒野。
見上げた太陽は一つ。でも。
「あれ・・・・?」
太陽が、真上にいる。
おかしいな。私がこれを作り始めた頃には傾いてたはず。
つまり。
ゴクリと喉を鳴らせば、すごい勢いで近づいてくる気を感じて更に肩を震わせる。
「つまり今日がピッコロの誕生日ってわけ・・・・」
「ゆえ――――ッ!!!!」
「ごはぁっ!?」
勢い良く近づいてきた気が、私に容赦なく気弾を放った。
寝てしまったことにガックリしていた私は、それを避けれず吹き飛ぶ。
「いだぁあぁあぁ!!」
「貴様!!昨日は修行をさぼって好き勝手していたようだな?ん?」
「いひゃい!いひゃいぃぃいい!!」
そうだ。抜けだした後何も言わずに防壁の中で寝てたんだ。
怒られて当然なのは分かっていながらも、鋭い痛みにじたばたともがく。
やっと離してくれたのは、1分ほど私に説教した後だった。
伸びきった頬を労るように冷やせば、ピッコロが防壁の方を見て首を傾げる。
「・・・なんだ、これは?」
「へ?」
「ここに力を感じる。何もないようにも見えるが・・・・」
ピッコロが言ってたっけ。
魔力も気も似たようなもんだって。
だからピッコロには、私の術が気のようなものとして見えるのだろう。
もうここまで来たんだからサプライズしちゃおうと、私は手を叩いてピッコロの目を目隠しで覆った。
「お、おい!?」
「とっちゃ駄目。何もしないから!ちょっと見せたいものがあるの!」
「何なんだ一体・・・!!」
ピッコロの手を引き、防壁の中に潜る。
一瞬ピッコロの身体が緊張し、私の手を強く握った。
なんだかそれが嬉しくて、私も握り返す。
鼻をくすぐるナメック星独特な香りを感じつつ、私はピッコロの目隠しを取った。
「だだーん!」
「これ、は」
「ハッピーバスデー!!ピッコロ!!」
エメラルド色の空。
戸惑いながらも湖に手を入れたピッコロは、触れられる湖に目を見開く。
そう、これは幻想じゃない。
私が創りだした、ある意味”本物の”ナメック星。
風に揺らぐアジッサの樹木。
香りも、色合いも、空さえも、全て。
「ナメック星、だ」
呟かれた言葉に、私はほっと胸を撫で下ろす。
喜んでもらう以前に「ナメック星と似てない」なんて言われたら、ね。
「ゆえ」
「うん?」
「お前、昨日これを作ってたのか?」
「へへーん、すごいっしょ?」
ピッコロの隣に立ってナメック星を見渡した。
でも、私のプレゼントはこんなんじゃ終わらない。
舞空術でピッコロの頭の後ろまで飛び、もう一度その目を隠す。
ピッコロが文句を言う前に魔法を発動させ、静かに手を離した。
「・・・・!」
ナメック星に夜はない。
だからこれは、私が覚えて欲しくて勝手に作ったもの。
綺麗な夜空。
暗闇の中を舞う、無数の蛍。
幻想のような、だけど手を伸ばせば触れられる。
「これは新しい思い出として、プレゼント!」
元々寝る習慣が無いピッコロにとって、夜も朝も違いのないものらしい。
でもせっかくだからその違いを感じて欲しくて作ったのだ。
この、夜の―――夜でしか見られない景色を。
「お前は・・・」
ピッコロは少し苦しそうに私の頭を撫でた。
「なぜ、祝う?」
記憶の中を見た私は知ってる。
ピッコロが望まれて生まれてきたわけじゃないと思ってること。
生まれてから、孤独だったこと。
同情とかそんなんじゃない。
ただ
「嬉しいんだもん」
ピッコロがいなきゃ、私こんなに楽しい思い出来なかった。
悪魔として人々を弄び、魂を喰らうだけのバケモノだったに違いない。
「ピッコロは私に色んな事を教えてくれた」
戦う楽しみ。
ふざけ合う楽しみ。
「私、ピッコロといる時間が一番好きなんだ」
嘘なんて一つも無い。
真っ直ぐピッコロを見て、微笑む。
頭に添えられた手に、私の手を重ねて。
「だから、生まれてきてくれてありがとう、ピッコロ!」
恥ずかしい。
ここまで言ったけど、恥ずかしい。
反応のないピッコロの顔を、覗く勇気も出なかった。
顔が熱くなるのを感じて逃げようとすれば、頭を掴まれて止められる。
「ゆえ」
「なんでしょうかっ!?」
「お前はバカだな」
頭を押さえつけられて、顔を見ることは出来ない。
でもなんとなく、笑ってるような気がした。
意地悪い笑みじゃなくて微笑みのような。
「悟飯以上の、本物の大馬鹿者だ」
「なんでー」
「この俺に、そんなこと」
「いいじゃんか!嘘じゃないんだしっ」
「だから馬鹿だと言ってるんだ」
「ひどっ!」
わしゃわしゃと、私を撫でる手は暖かい。
小さく「ありがとな」って声が聞こえて、私はわざと聞こえないふりをした。
おめでとう、ピッコロ。
これで自分の生まれた日が、嬉しい日になってくれますように。
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