いらっしゃいませ!
名前変更所
空を飛んで遠くへと駆け抜ける。
人がいない、生き物もいなさそうな荒れた大地へ。
人造人間が痺れを切らし降りた先は、岩山が目立つ高原だった。
相手は人造人間。
気や気配が探れない奴らにとっては最高の隠れ場所。
「あいつら、考えてるな」
今はそのピッコロの言葉も、私の耳には入っていなかった。
私が気にしてるのは、悟空の状態。
ただ飛んできただけで息切れしてる上に、気や魂の状態が異常に不安定だ。
嫌な予感が、頭をよぎる。
トランクスの話は全部現実になった。
その中で一つだけ、まだ起こってないことがある。
・・・もしかして、もしかすると。
「・・・・」
「おい、どうした?ゆえ」
話も聞かず、悟空たちを睨みつけていた私を心配したのだろう。
ピッコロが私の肩を叩き、確かめるように揺らした。
私はそれすらも無視して、今にも人造人間19号に飛びかかりそうな悟空に近づく。
「お、おい・・・?」
悟空から放たれる超サイヤ人の気。
ピリピリと地面を震わせる気が、私の身体にまとわりついた。
この気は、何度か修行で味わったことがある。
だからこそ、その小さな変化に気づいたのかもしれない。
「お前たちがどれだけパワーアップしていても、19号で十分だ」
「なら、その力とやらを早速見せてもらおうか・・・・!!」
更に戦的に変化した悟空と、憎たらしい笑顔のままの19号。
ぶつかり合いを始めかけたその二人の間に飛び込んだ私は、軽く悟空の方に拳を向けた。
魔力も何も込めずに放った弱い一撃。
その一撃に、悟空が強く怯む。
やっぱり。
「な、なにすんだよいきなり!」
「・・・邪魔する気か?この女」
「白いのはちょっと黙ってて」
「・・・・・」
19号にも精神的な一撃を入れ、そのまま悟空を引きずった。
突然の行動にピッコロと天津飯が私を怒鳴りつける。
「なんのまねだ、ゆえ!」
「そうだ、お前悟空に一体なにを・・・!」
話すよりも見せたほうが早いと、私は自分の一撃にふらつく悟空を見せつけるように地面に投げた。
苦しそうな表情の悟空が、ぎりぎりのところで受け身を取る。
その額に浮かぶ、大きな汗。荒い息。
どんどん乱れていく気。
「ゆえ、おめぇ・・・」
「私のことごまかせると思ったの?悟空ってば」
「・・・・っ、でも」
「戦闘を始めればクリリン達が来ると思うから、連れて帰ってもらった方がいいよ。心臓の薬、飲まないと」
私の一言に、ようやく状況を理解したピッコロ達が悟空を支えた。
「孫、お前・・・!」
「へへ、ばれっちまったかぁ・・・でもあの相手、お前たちじゃちぃとキツイんじゃねぇのか・・・?」
人造人間、19号と20号。
気が探れない以上、相手の実力も分からないが・・・。
超サイヤ人の悟空を見ても怯まなかったんだ。
それなりに強いことは想像がつく。
「馬鹿言うな。俺達でも十分だ」
「そうそう。・・・あ、でも今回はピッコロの出番なしだから!」
「何!?」
私はニコっと笑って飛び上がり、待ちぼうけを食らっている19号の前に着地した。
「ねぇ、アンタたち」
「なんだ」
「悟空を殺すんだよね」
「あぁ、そうだ」
「ピッコロ達も殺すの?」
「・・・・あぁ、そうだな。どうせ邪魔するのだろう」
「そっかー」
それを聞いて、安心した。
全身の緊張していた筋肉がほぐれ、代わりにゾクゾクとした何かが私の身体を震わせる。
これは緊張じゃない。
そう、殺気。自分自身の殺気。
誰かを殺すのなら、私の大切な人を殺すのなら。
容赦なく出来る。
――――悪魔の一面が、牙を向く。
「見てなよ悟空。アンタが安心出来るぐらいに、ボコボコにするところ見せてあげるから」
向き合った19号は、私を見ても何も言わない。
私も何も言わず、静かに鎌を振り上げて・・・そのまま、「あ」とマヌケな声を上げた。
戦闘が始まると思い込んでいたピッコロ達は、再び私にキツイ目を向ける。
「貴様、何がしたいんだ!!」
「いやー、初実戦だから不安になっちゃって?」
「だから俺が戦うと・・・」
「だめだめ!データ取られてるんでしょ?だったらデータの無い私が、デビュー戦をするべきでしょ!」
本当は、嫌な予感がしたからだった。
何度言い聞かせても離れない。
トランクスが話した、違う未来の行く末が。
ピッコロ達が、死んでいる未来が。
そうならないよう、私が出ることぐらい許されるはずだ。
「ピッコロ、マント借りるね」
「な!?あ、おい!」
ピッコロから魔法でマントを奪い、そのマントを自分につけた。
そのまま鎌を大きく振り上げ、一気に19号に斬りかかる。
戦闘は、始まった。
でも、怖くなかった。
後ろで香るピッコロの香りが、私を落ち着かせてくれる。
マントの温もりが、私の力になる。
「ったぁ!!」
「っ!・・・なかなか、早いな」
「そりゃどーも?」
表情が読みにくくて困るな、こいつ。
何撃か入れたはずなのに、表情一つ変わらない。
相手の攻撃を避けるたび、ふわりと舞う白いマント。
それだけで自分が強くなったような気がして、私はスピードを上げて鎌を振るった。
「よっ!!!」
「遅い」
振り上げた鎌が19号の手に弾かれ、私の身体がふわりと浮く。
その隙を狙って突き上げられた拳を受け流し、瞬時に相手の懐に飛び込んだ。
腹を狙って蹴り上げれば、一瞬で消える19号の姿。
気配は感じない。気も見えない、でも。
「よくそういうの、ピッコロにされたから・・・・さ!!」
「ッ!」
勢い良く後ろを振り返り、私を攻撃しようとしていたその腕を掴んだ。
振りほどかれる前に魔力を溜め、手を離すと同時に魔弾を撃ち込む。
少しだけ驚いた表情。
食らってるくせに、余裕そうでムカつく。
人造人間だから、心臓とかないのかな。どこが弱点なんだろ?
「ま、ぶっ壊しちゃえばいっか!」
単純明快。
考えこむなんて、やってるだけ無駄。
そうこうしている内に、後ろから感じ慣れた気が3つ近づく。
この気は・・・間違いない。ヤムチャ、悟飯、クリリンものだ。
良かった、これで悟空を帰すことが出来る。
「おーいヤムチャ!ちょっと悟空を連れて帰」
「よそ見をしてる場合か?」
「・・・まだ人が話してる最中でしょ!!!」
背後から近づいてきた19号を、容赦なく蹴り飛ばす。
素早い蹴りは思いっきり19号の腹を抉り、機械らしい重みが私の膝に跳ね返る。
鉄を蹴ったような、地味に痛さ。
私は痛むを撫でながら、空いてる方の腕に思いっきり魔力を込めた。
「プレゼント」
魔力を1点に集中させて。
それから、貫くイメージを浮かべ。
「魔貫光殺砲!!」
19号に向かう強い魔弾。
確実に捉えたと思われたそれは、19号に当たる寸前で分散する。
――――いや、違う。
よく見るとそれは、分散しているように見えて19号の方に吸い込まれていた。
ピッコロ達からも驚きの声が上がり、それが幻じゃないことを知る。
「ゆえ!!」
「うん?」
「今見ただろう。こいつらは手からエネルギーを吸収するらしい!!気功波の類は撃つな。もちろん手に掴まれても危険だ。分かったな!?」
「おっけー、任せてよ!あ、それよりも早く悟空連れてってあげてね?苦しそうだから」
早く悟空を帰らせるよう促した後、私はもう一度19号に向き直った。
確かに、エネルギーを吸い取ってるみたいだ。
さっきフラフラになるぐらい撃ち込んだ傷も、ほとんど目立たなくなっている。
自動修復的なのが掛かってるんだろうか。
だとしたら・・・長期戦は厄介だ。
「ちゃっちゃと決めちゃうか」
魔力を撃っちゃいけないのなら。
”魔法”として使えばいい。
「私の得意分野、いっちゃいますよーっと」
にんまりと笑って、後ろを振り返る。
ヤムチャが悟空を抱えて飛び立つのを見送り、そのままピッコロに手を振った。
もちろんのこと、念で「ちゃんとやれ!!」と怒られたが。
「じゃあ・・・もう一度、いくよ」
「いまのでお前は終わったぞ」
魔力を吸い取ったからか、19号が余裕の表情べながら私に近づいてくる。
「私の魔力吸い取ったぐらいでそれじゃ、いい気なもんだね?」
「試してみるか?」
「・・・・もちろん」
言葉とほぼ同時に私の目の前に19号が飛び込んできた。
それを予想していた私は鎌を振り上げ、振り下ろされた拳とぶつける。
重たい攻撃だが、怯むほどじゃない。
私はその鎌を捨てて両手を19号に伸ばし、魔法を使った。
「ぐっ!?」
「な、なんだあれ!?か、勝手に土が動いてるぞ!?」
私の魔法を見て、クリリンが驚きの声を上げる。
魔法は蟻地獄のように土を溶かし、19号の身体下半分を飲み込んだ。
「お前は初めてか、アイツのあれを見るのは」
「なんだよピッコロ!見たことあんのかよ!?」
「最初に見ただろう。飴やらお菓子やら出すこいつの術を。それと同じだ」
「こ、これが、魔法」
蟻地獄から何とか抜けだした19号を、蹴りで追撃する。
当たり前のようにガードされたが、別に構わない。
19号の足場は蟻地獄のように溶けたまま。
飛ぶことを許さなければ、いずれ体勢的に勝つのは私。
「・・・・成長したもんだな」
後ろから聞こえたピッコロの声。
その言葉が嬉しくて思わず力を込めれば、19号が蟻地獄の中に沈んでいった。
あ、大丈夫かな。
このまま地面の中で死なれてもちょっとイヤなんだけど。
「ゆえ、後ろだ!!」
「ッ!」
声を聞いて振り返れば、後ろから19号が土を吹き飛ばして飛びかかってきていた。
反応が遅れ、私の右腕がその手に捕まる。
「しまっ・・・・」
吸い取られる!!
私は急いで置いていた鎌を魔法で引き寄せ、19号の腕を切ろうとした。
だが、とある違和感を感じてその手を止める。
「ゆえ!!」
「・・・・」
「・・・・?」
「・・・ゆえ?」
心配そうな声を上げる皆と、見つめ合う19号と私。
相手もその違和感に気づいたのか、らしくない表情を浮かべて私と手を交互に見た。
手は確かに私の手を掴んでいる。
でも、いつまでたっても、その力が吸い取られる気配は無い。
もしかして。
魔弾は気弾と同じでエネルギーを放出してるから吸い取れたけど、元々の魔力はエネルギーとして吸い取れない?
・・・そっか、そうだよね。だって。
「魔力を使うのは、ほんの一握りの存在だけ。さすがに扱い方が分からなかったみたいだね」
「ッ!!」
同じエネルギーでも違うエネルギー。
その扱い方が分からなければ、エネルギーとして放出された時しか吸収出来ない。
つまり私が、それを”魔弾”という形で打ち出さなければ。
こいつらは私の魔力をエネルギーとして感知することが出来ないわけだ。
「なーんだ、吸い取れないんだ」
一度振り下ろすのを止めた鎌を、もう一度振り上げる。
それに気づいた19号が慌てて手を離そうとするが、私はそれを許さなかった。
逆に手を掴み、相手の肩を狙って鎌を振り下ろす。
ギリギリのところで19号が目からビームを放ち、鎌は弧を描いて吹き飛んだ。
「吸い取れない・・・何故だ」
「ナイショ!」
やれる。
やっぱり、私、強くなれたんだ。
・・・良かった。
正直、ただ戦うために今回の戦いに名乗りを上げたわけじゃなかった。
データが取られてないってことが一つ、嫌な予感がしたってのが一つ。
そして一番最後の目的が、”本当に私が強くなったのか”を知るため。
いっつも修行じゃピッコロに勝てない。
ピッコロいわく、無意識に手加減してるから、らしいけど。
私にはそれが分からなかったから。
だから確かめたかった。
この、戦いで。
「がんばれ、ゆえー!」
「さんきゅークリリン!」
「調子に乗るなよ?」
声の抑揚はあんまり無いけど、19号が少し苛立ちを見せた。
でも私は冷静を貫く。
ピッコロに教わったんだ。
あまり戦いで感情に流されてはいけないと。
「行くぞ」
「のわっ!?」
また、目からビームが放たれる。
急いで左側に移動すれば、それを追いかけてまたビームが地面を抉った。
早い。そして威力も高い。
さっきまで自分が居た地面が、ビームのせいで削れている。
「おー、こわ。まるでピッコロのビームみたい」
「なんだと!?俺をあんな人形まがいと一緒にするな!!違いが味わいたいなら食らわせてやるぞ」
「どっちの味方だよ!!」
19号の攻撃を避けながら、攻撃してみせようとしたピッコロに舌を出した。
怒りに震えるピッコロの姿が目に入るが、気にせず19号に向き直る。
「ハァッ!!」
大きく右足を振り上げ、19号の首元を狙って蹴りを放った。
19号の手によって防がれるのは計算済みのことで、防がれた後すぐに逆側の足を振り下ろす。
一瞬の油断が命取りになる、早さと重さ。
私達はお互いにほとんど対等の勝負をし、お互いの攻撃を防ぎ続けた。
「(でも、もうそろそろ)」
長く続く戦いは、体力の少ない私にとっては不利。
ちゃっちゃと強い一撃を与えるため、私はある作戦を使うことにした。
それはとっても単純で、でも騙されやすいコト。
「っあ!」
私はわざと19号の攻撃を食らい、地面に叩きつけられたフリをした。
「ゆえ!!」
「・・・行く必要はない、クリリン」
「ピッコロ!?お前、ゆえは弟子だろ!?」
「・・・・だからこそ、だ」
あぁ、ピッコロにはこれやったっけ。
勝てなくてむかついて、食らったふりして相手を魔法の範囲に引きつける作戦。
相手が余裕の表情を見せても、畳み掛けようとしてきても、同じ。
必ず出来る一瞬の隙に、強力な魔法を練る。
「もらったな」
「・・・くっ」
相手を、引きつけるだけ引きつけて。
その相手が私の目を真っ直ぐ見たら最後。
ギリギリまで魔力を高め、目が合った相手を一時的に支配する。
こういう時は反撃や邪魔に目が行きがちだから。
意外と単純な方法で発動する魔法が、当たりやすい。
普通の戦闘じゃ、真っ直ぐ近距離で目を合わせるなんて難しくて使えないけど。
(もう少し、かな)
「ふふ」
「ちっ・・・くるな」
怯えるふりしてずるずると下がる。
それを追い詰めるように、ゆっくりと歩いてくる19号。
もう少し、もう少し。
「終わりだ!」
「終わるのは」
――――お前だ!!
そう言って魔力を込めた目を開けた瞬間、私の目の前から19号の姿が消えた。
代わりに私の前に立つ、金色のオーラを纏った王子様。
そう、王子様。
「情けねぇやつだな」
まさに王子様。
悪い表情を浮かべて、19号をふっ飛ばしたらしい腕をボキボキと鳴らす。
後ろでベジータが超サイヤ人になっていることに文句が飛ぶが、今の私にはそんなことどうでも良かった。
超サイヤ人とか、どうでもいい。
今はそれよりも。
「ベジータ」
「なんだ?助けてやったんだ、礼ぐら「なに邪魔してくれてんのさ・・・こんのハゲ!!」
「・・・・なにぃ?」
倒れている19号など目もくれず、ベジータに掴みかかる。
「せっかく大技の魔法で、華麗に決めようとしたのに!!」
「何!?やられてるんじゃなかったのか・・・?」
「私がこいつらに負けるように見える?」
「あぁ、見える」
「へぇ?私とやるってんならこのまま相手するけど??」
「お、お前ら・・・・」
「いい度胸だな。いいぜ、お前のその挑発にのってやっても」
「怖気づいてもやめてあげないよ?さぁて、どんな魔法かけちゃおうかな?」
「そんなくだらない技、使う前にぶっ殺してやる」
「それはこっちのセリフ!私の獲物取るなんて、万死に値するってやつ!」
「無視するな!!!」
私達の言い争いを、19号の大きな声が止めた。
無視されたことを怒っているのか、今までで一番表情が歪んでいる。
それでも、私達はお互いに19号なんて見ていなかった。
「ね、ベジータ」
「あぁ?」
「今たぶん思ってること一緒なんじゃないかなーって思って」
「あぁ・・・そうだな」
睨み合うのは目の前のベジータ。目の前の私。
少しだけその目を19号の方に向ければ、ベジータがニヤリと悪い笑みを浮かべた。
ベジータとは修行ばっかりだったけど、こういうところで気が合う。
お互いに”悪いやつ”だからかもしれないが。
「すぐにエネルギーを貰ってやる」
19号が手を広げ、ベジータを狙って私達の方に飛び込んできた。
それを見たベジータは避けること無くその腕に捕まり、私の目の前で19号を止める。
「だ、だめベジータ!そいつは腕からエネルギーを・・・っ!」
「もう遅い・・・!」
ベジータは手からエネルギーを吸い取られることを知らないはず。
慌てて手を千切ろうとした私を、ベジータが足で制した。
そして意味ありげな視線を私に向ける。
「離さないぞ?」
「あぁ・・・いいぜ。絶対に・・・離すなよ?」
なんて、やつだ。
目に見えてベジータの気は吸われていってるはずなのに、それでもベジータの気はまだ落ちない。
ベジータはそのまま掴まれていない方の腕で19号の頭を掴み、私の方に19号の頭を突き出した。
それから、悪い声で私を呼ぶ。
「ゆえ・・・やれ」
「アイアイサー!」
「なっ・・・・!」
19号が慌てて手を離そうとするが、逆にベジータがそれを掴み返した。
私はゆっくりと19号に手を翳し、そして。
「”壊れろ”」
見開かれたその目から魔力を注ぎ、19号の中にある”核心”に触れた。
ぐいっと力を込めれば、バチバチと音を立てて19号が震え始める。
中の核を刺激したんだ。結末は、爆発。
「ベジータ」
「・・・・あぁ」
後ろで19号が爆発するのを感じながら、私達はピッコロ達がいる場所へ戻った。
唖然とする皆を目の前に、汚れた服を魔法で治す。
ベジータもまた平然とした表情で超化を解き、服の埃を払った。
「案外残酷なことをするもんだな、ゆえ。貴様もあのカカロットの息子と同じで甘ちゃんに育ったと思っていたが・・・」
「残念。私は使い分けるタイプなんですー。敵になったやつには・・・・」
ゆっくりと、殺気を込めて、後ろにいる20号の方を振り返る。
「容赦しないよぉ?」
わざとらしい、ねっとりとした悪い声。
ベジータもそれに合わせ、余裕の笑みを浮かべながら20号に歩み寄った。
「・・・たしかに、計算違いだったようだ。だが、まだお前たちが勝利する可能性は無い」
20号の表情は焦っているが、何かしらまだ作戦があるような物言いだ。
こちらも作戦がある、と言いたいところだけど・・・。
ちらりと横目に見たベジータの気が思った以上に減っていて、考えこんでしまう。
だがベジータは気にすること無く20号に近づき、挑発するように手を組んだ。
「やつにだいぶエネルギーを吸い取られちまった・・・俺を倒すなら、今がチャンスだぜ?」
「・・・・っ」
「かかってこいよ」
浮かべたままの笑み。
私にちらりと送られる視線。
良く分からないけど、作戦がなくても作戦があるように見せろってことかな?
私も慌てて余裕の表情を作り、ベジータに合わせて挑発する。
「そうそう。ほら、私も戦ったばっかりでヘトヘトだしね?」
「今ほざいただろう?俺達の勝利する可能性はないと。とてもそうは思えんが、どういう意味だ」
「・・・・お前がどれだけ強くなろうと、人造人間には敵わないということだ!」
「ハッ。やっぱり単なる負け惜しみだったか」
怯まない。お互いに。
しばらく睨み合いを続けた後、最初に表情を変えたのは20号の方だった。
軽い舌打ちと共に、何も言わず猛スピードで岩山の方に飛んで行く。
「あいつ、逃げる気だ!!」
岩山に隠れれば向こうの勝ち。
・・・やっぱり、この場所を選んだのは向こうの作戦だったのか。
「おい、クリリン!千豆をよこせ!!」
「え?」
「さっさとしろ!!このままアイツを逃したいのか!!」
ベジータに言われ、千豆を取り出しながらも戸惑うクリリン。
ま、そうだよね。こんな凶悪顔に言われちゃ。
そう思ったのが口に出ていたのか、隣から物凄い殺気を浴びる。
「誰が凶悪顔だ・・・・?」
「クリリーン。早く千豆あげてー?気をだいぶ吸い取られてるか・・・あだっ!?」
「貴様、話を変えるな!!」
ぎゃあぎゃあ言いつつ、ベジータはクリリンからの千豆を受け取って飲み込んだ。
一瞬で元通りになったベジータは、再び超化して私達に背を向ける。
「お前たちは帰ってのんびりミルクでも飲んでやがれ。俺の邪魔をせんようにな」
ベジータは隣にいた私を吹き飛ばす勢いで浮かび上がり、20号が消えた岩山の方へ向かった。
私も追いかけようとしたけど、ピッコロ達が置き去りなのを思い出して足を止める。
私はあくまでもピッコロ達の味方として来たんだ。戦いたいわけじゃない。
「やはりベジータ。あいつは戦いの天才だ」
「あんのクソ王子のことどうでもいいじゃん。ったく、人の獲物取ってくれちゃって」
「・・・・お前も、だ」
「へ?」
「お前もだ。お前も・・・なんて恐ろしいやつだ」
そんなこと言われると思ってなくて、思わずキョトンとしてしまった。
ピッコロの手が、私の頭を優しく撫でる。
「・・・・素晴らしい戦いだった」
「ほんと、凄い戦いでしたよゆえさん!」
「いつの間にあんなに強くなったんだよゆえー」
「さすがはピッコロの弟子か」
口々に褒められ、むず痒くなった私は皆に背を向けた。
やっぱり皆は最高だ。この空気を、未来を、奪われたくない。
私は新たに未来を変えることを近い、飛び上がった。
「さ、ほら、追いかけるよ!」
目指すは未来が変わる瞬間。
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