Erdbeere ~苺~ ★6.苛立ちの理由は分からない 忍者ブログ
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2015年01月18日 (Sun)
6話/ギャグ/※ピッコロ視点

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修行をつけて数年。

もうこいつは俺よりも強い。
それは修行をつけている俺が、一番よく知っている。

それでも俺に負けてるのは、こいつが本気を出せないでいるからだ。


「いだぁい・・・・」
「だから本気でやれと言ったんだ」


血だらけで横たわるゆえに、そっと手を貸す。
ゆえは戸惑いがちにその手を取り、勢い良く立ち上がった。

そして痛みに悶絶し、座り込む。

・・・馬鹿かこいつは。


「ううぐ・・・・」
「今日の修行はこれで終いだ」
「ふへぇ・・・身体が痛い・・・」


修行が終わると、ゆえはいつも水浴びに行く。

身体についた血や汚れを流したいから、らしい。

そんなもの、魔法で落とせばいいのではないか?と毎回思うが。
気持ち悪いのは魔法じゃ落とせない!と怒られてから言うのは止めた。


「・・・・」
「・・・?どうした?」
「へ?なにが?」
「水浴びに行かんのか?」


動けないほどに疲れてる時は、俺に連れて行けと強請るほど水浴びが好きだったはずだ。
なのに動かない。まさか魔力を使いきったのか?

少し心配になって近づけば、ゆえがへらっと笑う。


「今日はまだ修行するんだー」


俺を見上げる瞳が、亀ハウスの方角を向いた。
その方向から、感じたことのある気が高速で近づいてくる。

この気は・・・クリリンだ。
やがて岩の影から姿を現したクリリンが、俺達を見つけて手を振る。


「やっほー!クリリン!」
「おう!ってゆえ、お前、血ついてるけど大丈夫なのか・・・?」
「厳しいお師匠様の修行のあとだったからね!大丈夫、これ終わったらピッコロに水浴び連れてってもらうから」
「誰が行くか」
「あだっ!」


生意気なことを言うゆえを後ろから引っ叩いた。
パシッ!といい音が響き、何故かクリリンが頭を押さえる。


「うわぁー、やめろよなピッコロ。見てて痛いぜ・・・」
「フン。こいつの頭は石頭だからな。このぐらいではビクともせん」
「ひど!!」


涙目で睨み上げるゆえは、怖くもなんともない。

馬鹿にするようにもう一度笑うと、顔を真っ赤にしたゆえがそっぽを向いた。

それにしても、クリリンと修行とは珍しいな。
戦いの修行であれば、もう勝負にもならないはずだ。


「よし、じゃあクリリン・・・教えてください!」
「こっちこそ・・・よろしくな」


ゆえは物心ついた時から毎日俺と修行をしていた。
そのせいか、他の者と修行しているのに、違和感を感じる。

帰ろうと思ったが止め、俺は二人の修行を見ることにした。

他の修行を見るのもまた刺激になるだろう。


「じゃあ、まず手本だな」


クリリンは地球人の中でも器用だ。
その手から作られる気円斬は、他の奴らも応用して使うほど。

どうやら今回、ゆえもそれを習うようだ。

クリリンが手慣れた様子で気円斬を創りだすのを見ながら、ゆえが真剣に魔力を練る。


「なるほど、気円斬か」
「そうそう。ほら、魔法だとワンテンポ遅れて発動するから隙が出るって言ったでしょ?」


ゆえの魔法は、使いたい武器や能力を想像して創りだす術。

それを頭の中で考えるものの数秒が、戦闘では大きな隙になる。
俺がゆえに魔法ではなく気弾と同じ技――――魔閃光や魔貫光殺砲を教えたのは、それが理由だった。


「だから、すぐに使える技を増やしとこうと思って!」


放たれた気円斬が岩を切り裂く。
おお!というゆえの歓声が聞こえ、クリリンが照れくさそうに頭をかいた。


「すごーい!」
ゆえならすぐに出来るだろ?」
「こういうのは苦手なんだよね。ちょっとやってみる」


魔法は力を具現化するものだ。
そのまま魔力を武器として使うことは無く、ただの魔法よりコントロールが難しいらしい。

まぁ、戦うことが無いと言っていたから、当たり前なのかもしれないが。

俺達の攻撃を気弾というのなら。
ゆえの攻撃は、魔弾。


「はぁぁ・・・・・」


ピリピリと、魔力が空気を揺らす。

ゆえの指先がぐるんと円を描くと、その場に円形状の魔弾が浮いた。
だが、それは維持されず段々と球上になって膨れ上がってしまう。


「あれ・・・・」


放つ頃にはただの球になり、ゆえの手の上に浮いていた。


「うーん・・・・」
「ちょっと力を強めすぎだなぁ。こう、ピザ焼くみたいな感じ」
「クリリン料理しないくせにー」
「例えで言っただけだろー!!ほら、もう一回だッ!」
「はーい!!」


怒られたゆえがもう一度魔力を練り始める。

なんだろうか。
クリリンに笑顔で話すゆえが、二人の距離が。


・・・すごく苛つくのは、何故だ?


ゆえが強くなるのは嬉しい事だ。
だからこうやって学んでくれてるのも嬉しい、はず。

なのに。


「・・・・・」


俺以外のやつに笑みを向けているのが、気に食わない。
ドロドロとした感情が俺の心を支配する。


「そうそう、できてるよゆえ!」
「よーし・・・もういっちょ!」


いつから俺は、こんな感情をゆえに抱くようになったんだ。

俺の隣にいるのが当たり前すぎて。
他の奴の傍にいるのが、気に食わなくなったのか。

俺はそんなに、執着心を持つようなやつだったか?


「ねぇ、クリリン、あのさ」
「ん?」


心に芽生えたのは執着心。
独占欲。

魔族としての汚い、欲。

俺しか見たことのない表情が見たいと、何かが牙を向く。


「・・・ロ?」


この感情は何だ?
勝負で相手をひれ伏せさせたいといったのとはまた違う。

汚い、征服欲。


「ピッコロ?」
「ッ・・・」
「どうしたの?考えこんで」
「い、いや・・・」


気づけばクリリンの姿は無く、辺りは暗くなっていた。

ゆえの笑顔が、真っ直ぐ俺の方を向く。
ドロドロとした感情を何とか抑えこみ、ゆえの頭を撫でた。


「出来るようになったのか?」
「ちょっとね。でもクリリンが時間無かったみたいで帰っちゃった」


ゆえは負けず嫌いだ。

きちんと出来なかったのが悔しいのだろう。
その表情は不満気に歪む。

本当に、飽きないやつだ。


「悔しそうだな」
「・・・ばれた?」


誤魔化せると思うのか?
心を読まなくても分かるその表情に、俺は意地悪く笑う。


「くくっ・・・本当にわかりやすいな、お前は」
「なんだよーー!!」
「覚えたいならいい方法があるだろう?」


言葉と同時に飛び退き、大きな気弾を手の上に浮かべた。
それをゆえの身長と同じぐらいに伸ばし、投げる構えをしてみせる。

ひくっと引きつるゆえの表情。

まさか?といった表情に、無言で気弾を放つ。


「うわぁああぁあでかい!!でかいってば!!!」
「当たり前だ。避けるんじゃない、気円斬で切れ」
「無理いうなーーー!!!」


爆発する気弾と、上がる悲鳴。

これが一番の成長薬なのだからしょうがない。


「こういうのは身体で覚えるのが一番だろう?」
「サディストかっ!!サディストなのかっ!?」
「大魔王だから仕方ないな」
「開き直るな!!って、うわぁあぁあっ!!」




































起きないゆえを仕方なく抱き寄せ、マントの中に入れた。
夜の冷たい風が俺たちを撫で、ゆえの体温を強く感じさせる。

俺の攻撃によって気絶したゆえは、目を覚まさない。

正直すまなかったとは思っているが、この体温を味わえたことが少し嬉しく感じた。


「・・・・」


この感情が何なのかは分からない。
気づいてしまったものは消えることを知らず、ただ俺の中で強くなり続ける。


所有欲、なのか。

それともまた別の何かなのか。


ただ俺はその感情を、嫌なものだとは思わなかった。
感情の名を知らないだけ。どうすればいいか分からないだけで。


ゆえ


俺の傍を離れないでくれ。
一人に、しないでくれ。


「・・・情けない話だな、俺も」


ゴミ箱から出てきた悪魔。

修行をつけ、冗談に付き合い、時に殴るような子どもじみた存在だったはずなのに。


いつの間にかその存在が俺の中で当たり前になっていた。
こいつがいなくなるところを、想像できなくなった弱い俺が。


「魔族なんだぞ、俺は」


真っ直ぐ俺を見る目。
嘘偽りの無い、純粋な言葉。

笑顔。


「・・・・・だからお前は馬鹿だと言ったんだ」


汚したくなる。
俺の魔族の血が、疼く。


「あの時俺を」


冷たく接した俺を


「受け入れたお前が悪いんだ」


嬉しそうに、楽しそうに見つめたお前が。


「・・・・っ」


悪いんだ。
そう、全てお前が悪い。


ゆえ
「ん・・・・」
「・・・・っ」
「あれ・・・ピッコロ・・・?」


マントの中で眠たそうに声をあげるゆえが、ゆっくりと俺の方を見た。
あどけない表情が月明かりに照らされ、一瞬何かを失いそうになる。


「っ・・・」
「ピッコロ、大丈夫?」
「お前が重たかったものでな」
「はぁ!?このマントの方が重いっての!」
「重いならさっさと出れば良かろう」


冷たく言い放つと、ゆえはマントから出ようとして・・・何故か逆にマントにくるまった。


「おい」
「寒い」
「・・・」
「はー、あったかい」
「おい、邪魔だ」
「何もしてないじゃん」


馬鹿者が。

俺はゆえを追い出すこと無く、静かに目を瞑った。

少し邪魔だがしょうがない。
今日はこのまま、寝てしまおう。


「・・・おやすみ、ピッコロ」
「あぁ・・・しっかりと休め。明日は更にきつい修行になるからな」
「しょうがないなー。がんばっ・・・て・・・あげ・・・」


滅多に寝ることをしない俺も、その温もりと声につられて目を閉じた。
良い夢が見れそうだと、俺らしくないことを考えながら。
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