Erdbeere ~苺~ ★50.やっぱり天使とは思えない 忍者ブログ
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2015年06月15日 (Mon)
50話/ギャグ/甘/戦闘/※ピッコロ視点

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ゆえが青い髪を揺らしながらブゥと戦っている。
凄い魔力と気がぶつかり合っているが、ゆえは余裕の表情だ。


「じゃあとりあえず、なんで生きてるか・・・からですかね?」
「さっさと話せ」
「せっかちですねぇ?」


神の記憶によってサリエル様達の偉大さを知っている俺は、ベジータの発言にヒヤヒヤしつつサリエル様の話を聞くことにした。


「簡単ですよ、逃げたんです」
「逃げた?だが、ブゥはアイツを殺したと・・・・」
「確かに死んだに近いほどダメージを負っていました・・・ですが彼女は、死への恐怖と、貴方にもう一度会いたいという気持ちで何とか下界に逃げたんです」
「・・・・・そうだったのか」
「私が助けに行った時にはほとんど意識を失ってましたからね。魔力や気配が感じられず、死んだと思っても無理はないです」


正直、生きていると知れただけで良い。
俺はベジータと違い、その事実だけで満足していた。


話を聞きながらも、俺の目はずっとゆえを捉えている。

それに気づいたサリエル様が苦笑しながら不満気なベジータに話を続けた。


「ベジータさん、そんなコワイ顔しないでくださいよ。天使になった理由もお話しますから」
「・・・・フン」


どこか平和な雰囲気の俺達と、戦うゆえ達のギャップにまだどこか俺の思考は追い付いていない。


「まぁ、簡単な話なんですけどね。ゆえが悪を抑えこむ力を持っていただけのことです」
「・・・・悪魔になった奴が、神聖なる存在と言われてる天使に戻ることが、ありえるのか?」
「彼女はそれを可能にした。ただそれだけの話しです」


天使。
神聖なる、存在。

悪に落ちた存在は1ミリ足りとも触れることは許されない。


いやむしろ、悪に落ちたものがその存在に近づけば、消されてしまうだけだろう。


「とはいえ、戻ってられるのは一時的なものです。やがて体力と魔力の消耗が悪を押さえ込めなくなり、元に戻ります。ベジータさん達の超サイヤ人状態だと思ってください」
「時間はどのぐらいもつんだ?」


ベジータがちらりとゆえの方を見て尋ねた。


「そうですね、いまのところ5分ぐらいでしょうか」
「5分!?」


戦っているゆえからは体力の消耗も、魔力も、感じられない。


それどころか、俺達には彼女の戦闘力を感じることが出来なかった。
ある一定の戦闘力を超えた存在の力は感じ取れないと聞いたことがある。

今のゆえは、まさにその状態ということか。


「えぇ。あ、でも今後修業をつめばまだまだ伸びると思いますよ」
「そ、そういう問題じゃないだろうが!おい、ピッコロ。そっちは任せたぞ。俺はカカロットの野郎を急がせてくる」


そう言ってベジータは悟空の方に走って行った。


5分。
たったの、5分。

そんなにあの姿を維持するのはキツイのか?


ごくりと喉を鳴らし、戦いを見守ることしか出来ない俺に、サリエル様が笑いかける。


「見守ることしか出来ない、力がないなんて・・・思わないでください」
「ッ・・・・」


見ぬかれた、一言だった。
何も言えずに固まる俺を頬を、白く冷たい手が撫でる。


「ベジータさんの言ったとおり、本来悪を抱えた存在が神聖なる存在になることはありえません。たとえ元が天使だったとしても、前例がない奇跡です」
「・・・・・」
「それをさせたのは、貴方の力なんですよ、ピッコロさん」
「・・・・お、れだと・・・?」


突然出てきた俺の名前に戸惑った。

俺が何をした?
なんの力にも、なれていないはずだ。


「たとえそれが偶然や運命だったとしても、貴方は悪に落ちかけていたゆえに、成長する喜びを与え、楽しみを教え、そして・・・愛を芽生えさせた」


”それは全て、悪魔には本来宿るはずのない感情なんですよ?”


「嘘、だ」
「何故そう思うんです?」
「俺は恋愛なんてものは知らなかった。アイツが勝手に俺を好きになり、勝手に俺に・・・こんな感情を植えつけたんだ。与えたのは、アイツの方だ」
「ふふっ。だから言ってるじゃありませんか」


柔らかく笑い続けるサリエル様は、息を呑むほど美しかった。
人間離れしたその雰囲気は奥で戦っているゆえも同じ。


「偶然でも運命でも、貴方があの子に出会った時点で・・・結果的に夫婦になったことで、それで貴方は力になってるんです。あの子は貴方のために、もがき苦しんででも天使に戻る力を身につけた」


もがき苦しむ。
その単語で、俺はブゥに取り込まれた時に見た夢のことを思い出した。


―――――まさか、あれは。


「ええ、あれは夢ではありません」


心を読まれるというのはこんなにも気持ち悪いものなのか。

俺が言葉を発する前に答えを返すサリエル様を見て、苦笑するしかなかった。


「貴方が好きだから、貴方を守るために、そして貴方が大事にしている周りを守るために、地球を守るために・・・・」
「・・・・・ゆえ
「ほら、力になっているじゃありませんか。貴方の”存在”が、力なんですよ」


”ピッコロ、生まれてきてくれてありがとう!”
そう言っていつも俺の誕生日を祝ってくれた彼女の笑みが浮かぶ。


そうか、俺は。

アイツの力になれてたんだな。

俺も同じだ。
お前がいるだけで、俺も強くなれる。


「それでいいんです。・・・・あ、それではそろそろ私は戻りますね」
「・・・は?」


いきなり現実に引き戻すような言葉に、思わず素の反応を出してしまった。
慌てて撤回しようとするが、サリエル様は気づいてすらないような表情で魔法を唱え始める。


「私も忙しいんです。それじゃあ、あとは任せました」
「お、おい・・・!?」


瞬きをした瞬間には、もう消えていた。

頭が痛くなるのを感じながらも、ただその場に呆然と立ち尽くす。


何なんだ、あの人達は。
神聖なる天使は、神は、俺のイメージや記憶の中の存在とは少し違うようだ。

ゆえも、その一人。


「へぶっ!!」


サリエル様が消えるのと同時に俺の足元にゆえが転がってきた。

慌てて抱き起こそうとすれば、その手を払われる。


払われた手を呆然と見ていた俺の目の前に、ニタニタと笑うブゥが現れた。
ゆえが手を払った理由はこれかと気づいた瞬間には、ブゥの口からエネルギー弾が放たれていて。


「っ・・・・!!」


俺は思わず目を瞑った。
だが、痛みは来ない。


「・・・・っ?」
「ピッコロー?大丈夫?目を瞑ってるとキスしちゃうよ?」


目を開けると、ゆえの大人っぽい表情が映った。


「ッ・・・な、お前・・・・ブゥは・・・」
「ん?ブゥならあそこ」


ゆえが指さした先に、先ほど俺に近づいたブゥが転がっている。
相当ボロボロな姿で転がっているが、その気は未だ減っていない。


ゆえ、お前は大丈夫か・・・?」


聞いてから気づいた。

ゆえの身体には、傷一つ付いていないことに。


戸惑いがちに口を閉ざした俺を見て、ゆえがまた笑った。
俺の手を取って立ち上がらせ、それからべっと舌を出す。


「余裕よ余裕。この私の華麗な戦い、見といてよ?」


この生意気な感じは、やはり変わっていない。


再びブゥのところに飛んで行くゆえを見送りながら、俺は自然を頬を緩ませた。


あれが天使。
背中に生えている白い翼や、人間離れした雰囲気はそれを感じさせるが・・・。


「やーいブゥ!そんなもんかー?」
「キィ・・・!!!」
「っおわ!あぶなっ!!」
「キキキ!!」
「んぎゃーーー!!尻尾伸ばすな気持ち悪いぃいいい!!」
「ギ!?ギッ・・・!!」


その戦い方や言葉には、天使という神聖さをまったく感じないのがゆえらしい。
天使になったからといって俺の知らないゆえになってないのが分かって、少し安心した。


戦うゆえと、その奥で着々と元気玉を準備する悟空たち。

少しずつ希望の光が強まっていくのを感じて、俺は見守った。


ゆえ


お前が、俺達の希望だ。
そして俺がお前の力になろう。


ここにいるだけで、存在するだけで良いのなら。


俺は永遠、お前の傍にいることを誓う。


「っふふ。私もだよ、ピッコロ」


戦いながら俺の方を振り返り、ゆえがそう呟く。

不覚にもその一言に心臓が大きく跳ねた。


釘付けられるようにゆえを見ていた俺は、気まずさを感じて目を逸らす。


アイツ、心を読めるようになったのか。

サリエル様もそうだった。
天使は心を読めるのか?


「そうだよ。界王神も心読んでたでしょ?」
「お、おい、ゆえ。戦闘に集中しろ!!」
「えー?だっていつも心読まれてるんだし、たまには仕返しだって・・・」
「前を見ろ!!」
「っさいなー。見えてるってば」


なんてふざけた奴だ。
まるでいつもと変わらない。

楽しそうに戦って、よそ見までしやがって。


「ピッコロがいるからだよ」


戦いの音でうるさいはずなのに、ゆえの声は良く俺の耳に通った。


「ピッコロに見てもらえるから。ピッコロを、皆を、これで助けれるから・・・・」


ゆえの拳がブゥの腹部を捉える。
苦しそうに呻いたブゥが反撃の気弾を放つが、それは一つ残らずゆえの翼に打ち消された。


圧倒的、だ。

次元の違う強さ。

このままゆえがブゥを押さえこんで、悟空がトドメを刺すことができれば。
全てが終わる。


―――――やっと、全てが・・・・。


「がっ!!!」
「っ!?」


安心し始めていた俺の足元に、再びゆえが転がってきた。

先ほどと同様に手を伸ばそうとして、止まる。


また邪魔になるだけじゃないのか?
そう思って手を引っ込めようとした俺は、ゆえの様子が可笑しいことに気づいた。


「っ・・・う、ぁ」
ゆえ・・・?」


青く長い髪が、徐々に黒色へと持っていく。

白く光り輝いていた翼は抜け落ち、見覚えのある黒い翼が姿を現した。


何も無かったお尻にも、悪魔特有の尻尾が生えている。


これは、まさか。
慌てて太陽の位置を見れば、先ほどよりも随分と角度のついた太陽が見えた。


「っ・・・く、そ。やっぱり、あんまり長くもたないね・・・・」
「キキーーーー!!」
「あがっ!?」
「ぐっ!!・・・・っ、ゆえッ!!!」


ブゥの攻撃で俺たちは吹き飛ばされる。

吹き飛ばされながらも、俺はゆえの方に手を伸ばした。


届きそうで届かない手。
するりと俺の手をかわすように別方向へ吹き飛ばされたゆえを見て、唇を噛んだ。


ゆえっ・・・!」
ゆえ、でぇじょうぶか?!そっから動けるか!?」
「っ・・・むり、かも」
「キキ・・・!」
「てめぇ・・・!」


ゆえが吹き飛ばされたのは、ちょうど完成した元気玉を投げようとしていた悟空のところだった。

最初は元気玉に怯えていたブゥだったが、ゆえがいるせいで撃てないことに気づいたらしい。
倒れていたゆえを無理やり起こし、盾にする。


「っ・・・俺が助ける、カカロット、貴様は油断するなよ!!」


そう言って飛び出したベジータも一瞬でブゥに吹き飛ばされた。

盾としてブゥに掴まれたままのゆえが、ゆっくり顔を上げて悟空に笑いかける。


「いいよ悟空。撃っちゃって・・・・」


ダメだ。

そんなこと、俺が許さない。


何故だ。
どうしてこんな時に俺はいつも動けない・・・ッ!!


「でも・・・!」
「お願い、悟空・・・」
「っく・・・・」


悟空が諦めかけて元気玉を放とうとした瞬間だった。
寸前のところで悟空が手を止め目を見開く。

岩場からデブブゥが飛び出し、ブゥを押さえこんだのだ。


最初で最後の、大きなチャンス。

そこでデブブゥがサタンの方を振り返り、叫んだ。


「サタン!!!」
「っ!!!」


サタンを呼んだデデブゥも、ベジータと同じように一瞬で吹き飛ばされる。

だが、たった数秒でも押さえ込んだ時間は大きく。


「やれ、やっちまえーーー!!」


ゆえとベジータを救出したサタンが遠ざかると同時に、悟空の手から大きな光が放たれた。


「キ・・・!?キ・・・!!!キキキ・・・・ッ!!」
「アイツは本当に、救世主かもな・・・」


俺の呟きと、ブゥの断末魔。
そして―――――静寂が訪れた。


























長かった。
いや、実際は短かったのかもしれないが、長く感じた。

全てが終わった俺達は、界王神界でデンデに傷を癒してもらっていた。


自分の治療は一番最後でいいと言ったゆえは、ベジータと喧嘩しながらデブブゥの治療をしている。


「そのブゥがまたあのブゥを生むかもしれんのだぞ!!」
「その時は私がやっつけてあげるから」
「貴様はまだ5分しか勝てないんだろうが!!」
「失礼な!!修業したらもっと出来るようになりますーーー!!!」
「いいから退け!!そいつは殺す!」
「いーやーーだーーー!!」
「貴様から殺すぞ!!」
「やれるものならやってみろー!!」


オロオロするサタンを完全に放置した二人の喧嘩。

そんな二人を見て、デンデが嬉しそうに笑った。


「フッ・・・どうした、デンデ。笑ってるぞ」
「いえ・・・やっぱりゆえさんがいると、賑やかでいいなって」
「・・・・そうだな」
ゆえさんが、居なくなってたらと思うと・・・本当に、怖かったです。だから・・・今、凄く嬉しいんです。また毎日皆で神殿で暮らせると思うと」


デンデに釣られ、俺も笑う。


「俺も、同じだ」


またゆえと共に過ごすことが出来る。
こんな当たり前なことに、ここまで喜びを覚えるとは思っていなかった。


数年連れ添い。

ずっとそばに居て。


お前が傍にいるのが当たり前だと。
俺から離れるわけがないと。


横暴に近い、慢心。


麻痺しかけていた感情。


「俺は・・・アイツがいなきゃ、駄目なんだな」


小さくそう呟けば、デンデが不思議そうに首を傾げた。

聞かれたくもない本音だ。
誰にも言わず、ただ俺の心の中だけにしまっておこう。


ゆえ


喧嘩が落ち着いた頃を見計らい、俺はゆえを自分の腕の中に引っ張った。
ベジータ達は界王神様達と話し込んでおり、こちらに気づいていない。


「わわ、どうしたの?」
「・・・こっちだ」


皆に気付かれないようゆえを連れだし、岩陰に隠れたところで有無をいわさず口付けた。

突然のことにゆえが暴れだすが、それすらも押さえこんで口づけを深める。


甘い。
そして、満たされる。

貪るような欲求とは何かが違う。


ただ彼女に触れたくて、味わいたい欲望。


「っは・・・!ちょっと、がっつきすぎ」
「ふ・・・お前もこうしたかったんだろう?」
「ピッコロの方がしたかったんでしょ?心読めたら見てやったのに」


悪魔に戻っている彼女の身体をするりと撫でる。
ぴくりと跳ねた身体に気づかないふりして、その熱を確かめるように触れ続けた。


手も、腕も、その頬も。

天使の時とは違い、少し小さい。


「天使の方が少し大人なんだな」


俺の言葉にゆえがキッと鋭い視線を上げた。


「天使のほうが大人なんじゃなくて、アレが本当の私なの!!失礼だな!!」
「だがお前にはあまりあの姿は似合わん」
「似合わないじゃなくてアレが本当なんだってば!!」
「俺は最初に出会ったこの姿の方が好きだ」
「っ・・・・そ、そう?」


天使の姿が嫌いなわけじゃない。

俺は、最初に出会った・・・記憶に多く残る彼女の姿が好きなだけだ。


「まぁ、どんな姿でもお前はお前だ。俺がお前を・・・愛しているのは、どんな姿でも、どんな時でも変わらん」


見る見るうちにゆえの顔が赤く染まっていく。
その表情を見ていると俺も恥ずかしくなってきて、顔を見られないようにもう一度抱きしめた。


苦しいのか、腕の中でゆえがもぞもぞと動いている。

手に当たる翼と尻尾の感触を味わうように手を動かすと、甘い声が耳に響いた。


「っ・・・やめてよ、くすぐったい」
「・・・あの天使の翼はどうなっているんだ?」


純粋な疑問を口にする。

突然の質問に驚いたのか、ゆえは一瞬止まってから困ったように笑った。


「どうなってるって・・・いわれても」
「この翼や尻尾はちゃんと体に生えているものなんだろう?」
「っいあ!こ、こら!痛い!!」


尻尾を引っ張ると皮膚も一緒についてくる。
どんなに強く引っ張っても、悟飯の尻尾のように引き抜けそうにはない。


翼も同じだった。

根元に触れてみると、骨のような感触が伝わる。


「生えてる!!生えてるから痛いから!!!」
「天使の時はどうなってるんだ?体自体が変わっているのか?」
「へ、変なところで好奇心旺盛になるんだから・・・天使の時は骨格が変わってるだけ」
「骨格?」
「そうそう。こう、ばきばきーっと骨が成長したりして、元の姿に戻ってる感じ」
「・・・・・」


魔法みたいなもので変身しているとばかり思っていた俺は、思ったよりも生々しい回答に翼から手を離した。


「いやー、翼の部分が一番痛いんだよね。一番最初は痛すぎて引っ掻いちゃったりして」
「・・・・・ん?」


ゆえの話に、少し前の記憶を探る。

確か俺はゆえが背中を引っ掻きながらのたうち回る夢を見たような。
いや、あれは夢じゃなかったとサリエル様が。


つまり。


「まさか、のたうち回って俺の名前を呼んでいたのは・・・」
「あ、見られてたの?いやねー。あんなに新しい部分に翼が生えるのが痛いとは思わなくってさ・・・・」


サリエル様の話を聞いて、”過酷な修業”を乗り越えていたのだと思っていた俺は深いため息を吐いた。


本当にコイツは無茶苦茶だ。
人を心配させるだけさせやがって、当の本人はケロッとしてやがる。


「・・・おい」
「ん?んっ!?」


むかついた俺はもう一度ゆえに口づけを落とした。


「ん、んんっ」


深く、舌を絡めて。
思わず離れようとする腰を引き寄せて逃がさない。


「っん、ふ・・・!!」
「ん・・・」


唇を離せば映る、潤んだ瞳。

体の全てが熱を持つのを感じ、俺は苦笑した。


余裕が無いのは確かに俺だ。
抱きしめ続けながら何度もゆえの名を呼び、存在を確かめる。


ゆえ
「うん」
「・・・・ゆえ
「ピッコロ」
「愛してる」
「・・・・っ。やだな、ピッコロのそういう素直なの、貴重」
ゆえ
「・・・・・・」


見なくても分かった。

彼女が、顔を真っ赤にして照れているのが。


「・・・・ゆえ
「私も、愛してる」
「あぁ」
「ん・・・・っ」


もう一度口付けて。
このまま溶けてしまいそうだと熱に浸っていた時、背後から小さな物音が聞こえ、反射的にゆえを思いっきり突き飛ばした。


岩場にぶつかる直前で体勢を立て直すゆえ

それと同時に、俺の背後からゾロゾロと見覚えのある顔が姿を現した。


「いやー、邪魔するのもわりぃと思ってよぉ」
「貴様ら戦いが終わったからといって気を抜きすぎだ」
「す、すみません、僕はやめようっていったんですが・・・」
「ふふ。幸せそうでいいことじゃありませんか」
「サタン、あいつら何してたんだ?」
「あ、あとで教えてあげますよ」


悟空にベジータ・・・更にサタンやブゥ、界王神まで。

怒りよりも見られたことによる羞恥が勝った俺は、皆の顔を見ないように俯いた。


「さ、帰りましょうか。僕が瞬間移動で送っていきますよ」
「いいのか?オラも出来るぞ?」
「いいんですよ。貴方は少し休んでください」


地球に瞬間移動するため、皆が界王神様の手を握る。
皆が繋いだのを確認してから俺もデンデと手を繋ぐ。

そしてゆえに手を繋ぐよう促せば、何故かゆえは首を横に振った。


「私、サリエルにお礼言ってこなくちゃ」
「・・・それは構わんが、どうやって地球に帰ってくるつもりだ?」
「え?転送装置で」
「転送装置?」


なんだそれは。

誰しもが感じたであろう疑問に、ゆえがとあるモノを指さしながら答える。


「あれ。あれが転送装置」


ゆえが指さしたのは、ゴミ箱だった。
確かにゆえが降ってくる時にはあれに入っていたが・・・・まさかあれがそんな高度な技術のモノだったとは。


てっきりただ魔法をかけて、ゴミ箱に入っているだけなのかと。

ベジータも同じことを思っていたのか、呆れ気味に鼻で笑った。


「お前たちの技術はヘンテコだな」
「うっさいな。場所移動だけは魔法よりこっちの方が早いの!!」
「だからといってゴミ箱である必要はないだろうが」
「ゴミ箱言うなよ!!鉄の筒なだけだよ!!」
「蓋がついてる時点でゴミ箱にしか見えん!!」
「なんだと!!!??天使の高度な技術馬鹿にすんのかベジータ!!」
「うるさいやつだ。俺達の技術よりマヌケなのは確かだろうが!!」


始まった喧嘩。
瞬間移動するタイミングを見失った界王神様が、顔を引きつかせながら笑う。


「あ、あなた達・・・」
「マヌケっていったな!!んのやろ、こいや!デコピンしてやるぞ!!」
「ほう?やれるものならやってみやがれ!!」


殴り合いを始めてしまいそうな二人を見て、俺は界王神様に瞬間移動するよう促した。


「え、いいんですか?」
「殴り合いを始める前に飛んでくれ・・・めんどくさいことになりそうだからな」
「分かりました・・・・では」


つかみ合い、本当に喧嘩になる前に俺たちは移動する。
最後に見えた光景はもみくちゃにされているゆえの姿で。

本来なら感動すべき瞬間だろうに、俺は呆れ気味にため息を吐くことしか出来なかった。
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 ・龍如(桐生・峯・オール)
 ・海賊(ゾロ)
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 ・テイルズ
 ・気まぐれ

◆Thanks!
見に来てくださってありがとうございます。拍手、コメント読ませていただいております。
現在お熱なジャンルに関しては、リクエスト等あれば優先的に反映することが多いのでよろしければ拍手コメント等いただけるとやる気出ます。
(龍如/オール・海賊/剣豪)