Erdbeere ~苺~ 10日間の玩具 忍者ブログ
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2024年11月15日 (Fri)
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2015年06月19日 (Fri)
セル夢/ダーク/甘/過度な流血表現あり/若干下劣表現あり/※キャラ視点

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ふらりと立ち寄った町で、男に追われている女を見た。
どうせ10日後には無くなるこの地球で、どんなことが起ころうが知ったことじゃない。


私はただそれを見ただけ。

何事も無かったように立ち去ろうとして――――突如響いた悲鳴に思わず振り返った。


「・・・・あ、がっ・・・・」


響いた悲鳴は女のものではなかった。

この混乱状況の中、男が女を追いかけて何をしようとしているのかぐらい私でも分かる。


だがそれは行われなかった。
混沌としたこの空気の中、香ったのは血の匂い。

ぐちゃりと。


何かを潰すような音。


「ひ、ぁ・・・!!」
「やっと人気の無いところまで来てくれたね、おにーさん」


甘い声。
私はそれに惹かれるように二人の様子を見つめた。


黒髪の女が一人、追いかけていた男の膝を思いっきり踏み潰している。

異様な光景だが誰も助けない。
当たり前だ、私以外の他の人間の気配は感じない場所なのだから。


惨めな男だ。

泣き叫び、許しを請うように震えている。


「え?何?聞こえない。だってさっきまで私のことヤろうとか言ってたでしょ?」
「っちが、う・・・」
「ヤればいいじゃん。ヤれるならね。その前に私が殺っちゃうかもしれないけど・・・」


女の手には何も無い。

だが女はそっと右手を男の顔に近づけ――――。


「がっあぁああああああああ!!!」
「!!」


一瞬だった。

男の頭が、弾け飛んだのだ。


原理は分かる。
私だからこそ、よく分かる。

気、だ。


あの女。気を使っていた。
強く練り込んだ気で、頭を吹き飛ばしたのだ。


「やぁ、お嬢さん」


気づいたら声をかけていた。
血の中佇む異様な女に。


だがゾクゾクするのだ。

この女を見ると。


「・・・・・」


私を見ても一切怯えない目。

冷たいままの、瞳。


血すら彼女の一部なのではないかと思うほど、似合っていた。
そして眠っている強い力。

・・・あぁ、良い。良いぞ。


「なんの用、セル」
「おや、私のことをご存知だったか?」
「あれだけ有名ならね」
「ほう。それはそれは」


そのまま歩いて行こうとする彼女の行き先を塞ぐ。


「邪魔」
「お前は私が怖くないのか?」
「コワイわけないでしょ?」


彼女は嘘を吐いていなかった。
真っ直ぐな瞳が、私を見ている。

彼女なら私の力を分かっていないはずがない。


それでも彼女は、俺から逃げようとしない。

震えてすら、ない。


「なら今ここで私がお前を殺すと言ったら?」
「どーぞ。どうせ10日後にアンタが勝ったら殺すんでしょ?」
「・・・少しは怯えたりしないのか」
「怯えて欲しいの?そういうのってむかつくんじゃないの?そんなことしてすぐに殺されちゃったら嫌じゃない」


平然と言う彼女に思わず笑ってしまった。


「くくっ・・・そういうのは怯えるやつがいうことのセリフだと思うがね」
「そう?じゃあ怯えてるのかも」
「ならその表情を見せてほしいものだな」


私にとって彼女一人など、ただの玩具にすぎない。

だからその表情を歪めてやろうと女の首を片手で掴んだ。


ぎりぎりと骨の音がする。
女はただ苦しむように咳き込んで・・・何故か、私を真っ直ぐ見ていた。


「・・・・・」
「・・・けほっ」


何故だ。
何故、恐れない。


むしろ初めてだ。

こんなにも真っ直ぐ、私を見る者は。


「けほ!!っは・・・何?どーしたの?」


彼女の瞳は私を見続けている。

ひどく、冷静な目で。


「何故、私をそんな目で見る」
「え?どんな目?」
「何故私を恐れない」
「そればっか。悪いけど私、悪人に悲鳴あげて逃げるほどいい子じゃないの。私だって悪人だから、ほら」


そう言って彼女は手からお金を取り出した。

女物にしては酷く雑な造りの財布。
持ち主は彼女ではなく、先ほど殺した男だろう。


「色でひっかけて、おびき寄せて、殺す。そうじゃないと私は生きていけないわけ」
「お前も悪人だから私を恐れない・・・か?」
「ま、死ぬときは死ぬでしょ?」


私は人が恐怖に震え、怯える瞬間が好きだ。

だがそれ以上に、この女の違う顔が見たいと思った。


いつもとは違う欲望。
こんな人間に会うのは初めてからかも知れない。


おかしな話だ。

私にもこんな感情が宿っているとはな。


「フッ・・・」
「何笑ってんの?」
「いや・・・」


その割には少し、歪んでいるような気もするが。


「殺されたくなければついてこい」
「いやっていったら?」
「引きずってでも連れて行こう」


伸ばされてもいない手を掴んで。
私は名前も知らない女の腰を抱き寄せ、そのまま抱え込んで歩き始めた。

抵抗は、見えない。


「引きずってって言ってる割には紳士な感じで運ぶんだね」
「引きずって欲しかったか?」
「いいえ。にしても、私だけ殺さないの?他の奴らは殺してたみたいだけど?」
「あぁ。お前は特別だ」


私の言葉に少しだけ彼女の表情が変わった。


ぞくり。
戸惑うような表情に背筋が震える。


「・・・・っなにそれ、悪人も口説き文句使うのね」
「そうだな。・・・ならこの運命の出会いを祝して、お前の名前を聞こうか」
「名前も知らない女を口説くなんて、ありえないほどプレイボーイよ」
「安心しろ。お前だけだ」


また、表情が揺れた。
彼女は悔しそうに唇を噛むと、私から顔を逸らす。


ゆえ、よ」
「そうか。では、ゆえ。これからゲームが始まるまで、私と共に居てもらおうか」
「10日後、ゲームが終わったらどうするの?」
「さぁ・・・どうするかな」
「口説いたんだから、永遠に貰ってくれるぐらいじゃないと困るんだけど?」


挑発的な、笑み。

私は吸い込まれるようにゆえの唇を奪い、仕返しの笑みを浮かべた。


「後悔するがいい。殺されてたほうが良かったと思うほど・・・永遠に私に付きあわせてやる」











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