いらっしゃいませ!
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腰の激痛に目が覚めた。
あの激闘から1夜明けて。
まるであの戦いが夢だったかのような気分にさせられる朝。
夢だったのかな?なんて。
そう思ったのは一瞬。
隣でぐっすり寝てる旦那さんまで見れば、さすがに目が覚めてくる。
「・・・・こいつ」
腰の痛みに少しだけ苛立った。
むかつくからぐっすり寝てる旦那の顔を摘んでやる。
反応は、無い。
「・・・・・」
ピッコロは分かんないんだよなぁ。
こう見えて、起きてたりするから。
ポーカーフェイスっていうの?
分からないから、こうやって触れたくなった時に困る。
「・・・・・おはよ」
ピッコロの頬に触れて。
そっとキスを落とす。
ピッコロの香り。
心地良い。
「起きてる?」
「・・・・」
聞こえてくる規則的な寝息。
もう一度、口付ける。
「ピッコロ」
この時を待ってた。
ずっと、ずっと。
ブゥが現れて、死を覚悟した時から、ずっと。
「ピッコロ・・・大好き、愛してるよ・・・・」
感じた、微かな気の揺らぎ。
「起きてる」
「・・・・チッ」
「第一声舌打ちとか酷いなぁ・・・」
「フン・・・お前がいつもみたいに騙されないのが悪いんだろうが」
「んっ・・・」
毒づきながらも引き寄せられて、唇が重なる。
朝には似つかわしくないほどの深い口づけに身体が震えた。
ピッコロの香りが私を惑わせる。
「ん、はっ・・・・」
「・・・おはよう」
「おはよー」
労るように腰を撫でられた。
くすぐったくて身を捩れば、チクリとした鋭い痛み。
ベッドに腰掛けている私を寝転がりながら腰を抱いている彼は、私の腰に唇を当てて楽しんでいる。
「こら、何噛み付いてんの」
「見える場所じゃないんだから良いだろう?」
「っ・・・ん、もういっぱいつけてるじゃんか・・・・」
魔法で鏡を出し、下着だけの自分の身体を映した。
そこに映るのは点々と赤い花を散らした肌。
ぎりぎりピッコロの道着を着ても見えない場所に、びっしり付いている。
見える場所じゃなきゃ良いとは言ったけど、やりすぎも考えものだ。
「変態」
「なんとでも言え」
「っ!言いながら噛むな!」
「付けてもいいと言ったのはお前だろうが・・・気に食わないならやり返せばいいだろうが」
「ピッコロにやり返しても喜ばれるだけだし・・・」
ちらりと見たピッコロの肌に映る、いくつかの紫の証。
昨日仕返しとして噛んだ跡だが、噛んでも彼を煽っただけで仕返しにはならなかった。
諦めてピッコロの好きにさせる。
何だかんだ、悔しいけど嫌ではないから。
「ゆえ・・・」
「ん・・・・」
いつの間にかピッコロが起き上がっていて、後ろから抱きしめられた。
耳元に熱い息が掛かり、変な声を上げそうになるのを堪える。
「・・・・こんなのんびりした朝も久しぶりだな」
「ほんとだね・・・毎朝修業だ!!っていって叩き起こされてたもんなぁ」
「だらだらするより良い」
「でもこういうだらだらも良いモンじゃない?たまには」
朝の空気を感じて。
ゆっくりと肌を触れ合わせるだけ。
こんなのんびりした1日が、あっただろうか。
後ろのピッコロに身体を委ねる。
すると後ろ髪をぐいっと引っ張られた。
「うえ!?」
「じっとしてろ。結ぶ」
「え?いいよ、今日は」
毎朝ピッコロにやってもらってる、腰まで伸びた長い髪をポニーテールにする作業。
でもそれが必要なのは、戦いがあったり修業があったりするときだ・・・け・・・。
「まさか」
「修業を止めると言った覚えはないが?」
「ええーーー!?」
「平和になったからといってだらけるのは許さんぞ」
「いいっ!!いたたた!!分かった分かった!分かったら優しく結んで!!」
抵抗するのを止めると、ピッコロの手がゆっくり私の髪を梳いた。
それから手慣れた手つきで髪を結ばれる。
あーあ。
今日ぐらいのんびり出来ると思ったのに。
「俺達に平和すぎるのも合わないだろう?」
心を読んだらしいピッコロが笑いながら言う。
「んー、でもせっかくだからデートと一緒ならいいよ」
「・・・どこに行きたい」
「前に修業してた川のところとかどう?」
「そんなところでいいのか?」
「あれ、無茶な要求してもいいのー??」
ワザとらしく言いながら首を上げてピッコロの顔を見上げた。
そんな私を見るピッコロの目は、意地悪く細められている。
「その分俺のワガママも聞いてくれるんだろうな?」
「むぐ・・・怖いからやめとく」
会話の最中でぱぱっと結ばれた髪の毛。
私はベッドから立ち上がり、その髪をわざと揺らすように頭を振った。
長い黒髪が、ピッコロが好きだって言ってくれた髪が揺れる。
思わず嬉しくなってひとりでに微笑めば、ピッコロに頭を撫でられた。
「・・・・行くか?」
「うん!」
「お、おい!?そんなに走るな!」
手を引っ張って神殿から飛び出す。
いつもの賑やかさにデンデ達も目を覚ましたのか、私達を見つけて挨拶してくれた。
「おはようございます、ゆえさん、ピッコロさん!」
「おはよう、ゆえ、ピッコロ」
「おはよー!」
「おはよう。今から出かけてくるが、大丈夫か?」
手を繋いだ私達を見るデンデの表情は優しい。
「はい、大丈夫ですよ!お出かけ楽しんできてくださいね!」
「デンデ、これはお出かけなんて甘いものじゃないよ。修業なんだよ、鬼じゃない?」
「・・・・・・」
「いだ!?いだぁあぁああ!!もげる!!手がもげるぅううう!!」
悪口まがいのことを言ったら、すごい勢いで手を引っ張られてそのまま神殿から飛び立った。
抱えられているせいで自分で飛べない。
・・・けど、これはこれでちょっと良いかも。
なんて思ってたら急に手を離された。
慌てて翼を広げ、自力で飛ぶ。
「っあ、あぶなー・・・」
「自分で飛べ」
「抱えて飛んだのはピッコロなのにー」
ぶつくさ言いながらも隣を飛ぶのは変わらない。
ほとんどくっついた状態で、手を繋いで、ゆっくりと空を飛ぶ。
誰にも見られないような、高い位置を。
「これだけでもデートみたいで嬉しいなぁ」
ぽつりと本音を漏らすと、ピッコロが少し驚いた表情を浮かべた。
「・・・・お前にしては女らしいことを言ったな」
「ひっどいな」
「お互い様だろう?」
「私はもっと優しいですー!」
こんなくだらない会話も、私達の中では日常の一つ。
だから本気で怒ることはしない。
繋いだ手も、離れない。
「久しぶりにお前と修業する気がするな」
「確かに、この前まではトランクスや悟天と修業してたからねー」
「久しぶりだから厳しめにいってやろう」
「よくわかんないその理屈」
「分からなくてもするだけだ」
「鬼」
「フッ・・・悪魔に言われたくないな」
「んのやろ・・・ん?」
しばらく飛んでいると、覚えのある気を感じてスピードを更に緩めた。
そんな私に気づいたピッコロも、私にスピードを合わせながら辺りを見回す。
「悟飯の気か?」
「ビーデルもいるね。あー、デートかなぁ?」
ニヤニヤしながらピッコロを見上げれば、すごい顔で見下された。
この状況に文句があるのか?と言いたげな鋭い視線と。
悟飯がデートしてるってことへ少しそわそわ感を見せている顔。
思わず、笑ってしまった。
「気になるのー??」
「うるさいぞ」
「行ってみる?」
「は?」
「せっかくだしダブルデートと行こうよ。ちょうど私達が行こうとしてた場所の近くだし」
「お、おい!?」
本当なら二人きりにさせてあげたかったけど、悟飯には昨日の借りがある。
仕返し的な意味でも、私は二人のデート・・・もとい修業に混ざることにした。
戸惑うピッコロを引っ張って1~2分。
飛んだ先にひらけた草原があり、そのど真ん中で小さな気がぶつかり合っているのが見えた。
っていうかあれ、デートっていうか・・・。
「うーん。あの二人も似たようなデートですね・・・・」
修業してた。
まぁたぶん、ビーデルが頼んだんだろう。
ビーデルは悟飯よりもちょっと好戦的で、強くありたいって思う気持ちが強い感じがするから。
「フン。いいデートだな?」
「お互い苦労するね悟飯と私は」
「どういう意味だ・・・?」
「いだだだだ!!」
強く手を摘まれて。
思わず叫んだ私の声に、戦っていた二人が気づいて近づいてきた。
「ピッコロさん、ゆえさん!」
「こんにちはピッコロさん、ゆえさん」
「あぁ」
仲良く声掛けてきた二人を、ちょっとした意地悪心でからかう。
「デート邪魔しちゃってごめんねぇ?」
「っそ、そんな・・・ね?悟飯君」
「う、うん・・・」
「デートっていうより、その、修業ですよ、ね?」
「うん・・・そうだよね?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・そ、そう」
あ、なにこの初々しい反応。
からかった私が恥ずかしくなってきちゃう反応に、思わず目をそらす。
「さ、さー。私達もデートしよっかピッコロ」
「・・・・あぁ」
呆れ顔のピッコロからも目を逸らして拳を構えた。
これがデートだなんておかしな話だ。
ラブラブなビーデル達を見せつけて、ほらあれがデートだよ!って言おうと思った私の作戦を返せ悟飯・・・・ッ!!!
気づいたら身体はボロボロで。
久しぶりの長時間の修業に体力は無くなり、私はピッコロに抱きかかえられて神殿に帰ってきていた。
星空が見え始める頃。
神殿の床に乱暴に投げ捨てられた私は、素早くピッコロのマントを引いてピッコロも巻き込んで床に転がった。
「っなにしやがる」
「修業頑張ったんだから、ご褒美もらおうと思って」
「・・・・これがご褒美か?」
「一緒に星見るの、ロマンチックでしょー??」
わざとらしく言えばピッコロが鼻で笑う。
「何がロマンチックだ」
「いいじゃん」
「・・・・フン」
文句言いつつ、私の手を握ってくる彼は相変わらずだ。
でも、そんなピッコロが好きな私も私だから何も言えない。
無言で空を見て、星を数える。
キラキラと宝石のように輝き始めた星が、とても綺麗だった。
「・・・・・」
何も言わない。
「・・・・・」
聞こえるのはお互いの呼吸音だけ。
それが幸せで仕方がない。
ねぇ、ピッコロ。
私の心、覗いてるんでしょ?
大好きだよ。
こうやってまた、二人で一緒にいられる時を待ってた。
「・・・・俺もだ」
ほら、やっぱり覗いてた。
だけどこういう時ほど、お互いに素直になれる時だってこと、私達は分かってる。
照れ屋で中々真正面からは素直になれない私と。
正真正銘、ひねくれ者の彼。
こういう時にしか、伝えれない。
「ピッコロ」
昨日の戦いなんて夢のような。
でも夢じゃなくてよかったって、どこかで思ってる自分もいる。
だってピッコロに全てを見せれたから。
全てを見せた上で、ピッコロが私を愛してくれたから。
「天使のお前も、悪魔のお前も、全ては俺のものだ」
分かってるよ。
全部、ピッコロのもの。
「お前に拒否権などない」
俺様、だね。
それが好きなんだから、何も言えない。
何も言わない。
ただ応えるように、ピッコロの頬にキスを落とす。
「刺激も好きだけど、やっぱりこういう時間が一番好き」
顔を見られるのが恥ずかしくて、言葉の後にすぐ顔を隠した。
もちろん、それをピッコロが許すわけもなく。
顎を掴まれ、無理やり横を向かされる。
ピッコロの真剣な視線とかち合い、顔が熱くなるのを感じた。
「ピッコロ」
「・・・・ゆえ」
低い声で名前を呼ばれる。
「・・・・そんな顔で見るな」
「どんな、顔してる?」
「物欲しそうな顔だ」
「っそんなの、してな・・・・」
口付け。
幸せが広がる瞬間。
愛なんて知らなかった私達が。
悪魔と、魔族という、愛から程遠い種族が。
こうやって熱と愛を交わすこの空間。
どんなに異様な光景だろう?
でも、構わない。
「俺はお前となら、どこへでも堕ちてやる」
「お熱い言葉で?」
「余裕に見せたつもりか?顔が赤いぞ」
「・・・・む」
言われて意識するともっと赤くなる。
逃げるように顔を逸そうとすれば、また無理やり向かされた。
「ゆえ」
ああ、もう。
「ゆえ」
逃げれない。
「ゆえ」
「大好き」
「・・・・あぁ」
「大好き、だよ。大好き・・・っ」
「ふっ・・・普段からそのぐらい可愛げがあればいいがな」
「んっ・・・・」
お互い様なくせに。
悪態を吐くための口は塞がれて、私はただその不器用な愛を受け取り続けた。
愛知らぬ私達が、愛を知ったが故の結末。
――――それがこの、不器用な愛。
「ピッコロ、これからも、よろしくね」
「これからも覚悟しておけよ」
「・・・・しょうがないなぁ」
永遠に続く、愛。
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