Erdbeere ~苺~ 54.全てが平和になった世界で(終) 忍者ブログ
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2015年06月30日 (Tue)
54話/一応原作沿い完結/※ヒロイン視点

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あれから半年後。
ドラゴンボールが回復してブゥの記憶が人々から消えた後、私達はブゥと買い物に来ていた。


一応いい子になったブゥ。
でもさすがに一人で外に出すのは怖いからって、もしもの時に制御出来る私達が呼ばれたわけだ。


私の隣に並ぶピッコロは物凄い不機嫌そうだけど。

前を歩くブゥはご機嫌だった。


「おっかしーおっかしー」


見てる限りだと本当に危険要素は感じない。

子供のようにニコニコして歩いて、買い物を楽しんでいるだけだ。


あんなに憎かったブゥが、こんな可愛らしい存在になるなんてちょっと複雑だけど。
そんなことを考えていた私にブゥの笑みが映る。


「なぁ、ゆえ
「んー?」
「あれ、なんだ?食べれるのか?」


ブゥが指さしていたのは宝石店だった。
キラキラ光る宝石が、お菓子のそれに見えたのだろう。


「違うよ、あれは宝石。飾ったり贈ったりするやつだね」


私の説明に、ブゥが首を傾げた。


「贈る?もらうと嬉しいのか、あれ」
「うん、女性は特に喜ぶよ」
「ふぅーん。美味しく無さそうなのに」
「全部食べるもので考えないの!」


こうやって話してると、以前のブゥよりだいぶ知識が身についてるように感じる。
大体の単語は分かってるみたいだし、良いことと悪いことの区別が着いてきてるし。


お菓子屋さんを見ても、きちんと貰ったお金を払って買ったり。

泣いてる人がいたらその人を助けようと魔術を使ったり・・・本当に、良い子だ。


「フン・・・間抜けなツラだな」
「平和な顔って言って下さい」
「緩みきった間抜けなツラだ」


ブゥばかり見ていたのが気に食わなかったのか。

ブゥがケーキを買ってる隙をついて、ピッコロが私の頬を引っ張った。


「いひゃいいひゃい!」


地味に痛い。
抗議の声を上げながらピッコロの手を殴れば、嬉しそうに笑われる。


そんな風に笑われると、怒るに怒れないじゃん。


「・・・・ずるい」
「何がだ」
「その顔」
「元からだ」
「むぐぐ・・・・」
ゆえ、ピッコロ!」
「ん?」
「なんだ?」


買い物していたブゥが戻ってきて、喧嘩する私達の間に何かを差し出した。


「遊んでくれたやつにはお礼しろって、サタン言ってた!だからそれ、やる!」


差し出されたのは小さなケーキ。

どうやらブゥが私達のために買ってきてくれたらしい。


断る理由もないので戸惑いがちに受け取る。
ふんわりと甘い香りが漂ってきて、食欲を誘った。


「美味しそう!」
「ブゥ、それ好き。お前たちのことも好きだから、お前たちにやるぞ!」
「ありがとね、ブゥ」
「・・・・ありがとうな」


ピッコロもぎこちなくお礼を言って。
せっかくだから、その場でケーキを頬張った。


「ん、おいしーー!!」
「・・・甘い」


ブゥが買ってくれたってのと。
ケーキ屋さんのおしゃれなテラスで食べてるってのと。


色々重なりあって、美味しいケーキが更に美味しく感じた。


「ふふっ」


思わず零れる笑み。


平和な時間の中。
ピッコロと、ブゥと、町の中で地球人と変わらなく過ごしてる。

ブゥはいるけどある意味デートだよね?これ。


ニヤけちゃうなぁ。


「気持ち悪い顔してるぞ?」
「この際その暴言も許してあげるよ。ブゥ、半分あげる」
「食べないのか?」
「ピッコロがあんまり食べれないから、ピッコロから貰うね?だからこれはあげる」
「お前、いいやつだな!あむ、もぐもぐ・・・・」


一口で食べたよ。

そのままブゥは自分が買ってきたケーキも食べ始めた。


その食欲に驚きながらも、ピッコロがちみちみと食べていたケーキを半分こする。
完全に食べれない身体じゃないとはいえ、水だけで大丈夫な種族のピッコロにはこのケーキはキツイだろう。


「・・・・甘いな」
「それさっきも言ってた」
「見てるだけでお腹が膨れるぐらいだ」
「なんか意見が親父くさ・・・・」


―――――パァン!!


「え?」


店内から銃声が聞こえた。
同時に耳を劈く、お客さんたちの悲鳴。


「なんだ?」
「いこう」
「おれもいくぞ!」
「よし、皆で行こう」


明らかに悪い予感しかしない。

でも、怖くはなかった。


当たり前だ。
私達に・・・主にブゥやピッコロに、銃が効くわけないでしょ?


「おらおらぁ!!てめぇら全員手を上げろ!!壁によれ!!」
「きゃぁあぁあ!!」
「うるせぇよ!叫んでる暇あったらさっさといけ!!」


テラスから店内に戻ると、店内の客が銃を突きつけられて壁際に追い込まれていた。


強盗、だ。
銃を持った男たちが4人、店内の金を漁ろうとしてる。

金を漁る奴、それを袋にいれる奴。


人質を見はる奴。

映画で見るような、古典的な流れ。


そして。


「おい、なんだおめぇら!殺されたくなければさっさと手ぇあげて壁に寄れ!!」


――――私達に食って掛かる奴が、一人。


「なんだ、こいつら?ゆえ、知ってるのか?」
「知らない。悪いやつだよ悪いやつ」
「悪いやつ・・・・」


ブゥの表情が変わった。

あーあ。
私は知らないよ。


「お、おい!?ピンクのお前!聞いてんのか!?」
「言うこときかねぇと撃つぞ!!」


脅しにかかる二人の男。
もちろん、ブゥはそんなこと聞いてない。


私達も男のことは無視して様子を見守った。


「こ、こいつら・・・・!」
「見せしめにやっちまえ!!」
「おらぁ!!」


もう一発、銃声。

確実にブゥを捉えたはずのその銃弾は、ブゥの柔らかい皮膚に食い込んだまま。


男たちの怒声が、その光景のせいで一瞬で止まった。
ブゥは痒そうにしながら食い込んだ銃弾を見つめている。


「ブゥ、大丈夫?」
「全然平気だぞ!」
「さすがは魔人だな」
「さーってと・・・・」


この状況、どうするか。

とりあえず周りを見回して大体の状況を把握した私は、壁際の人質全員を守るバリアを張った。
あとついでにレジにも。


するとレジを漁っていた男たちも私達の方に向かってきた。

お得意の銃を突きつけながら。


「おい、煽ってどうするゆえ
「え?決まってるじゃん」
「ん?」


私の視線の先にある、ブゥに食い込んだ銃弾。
私が何を考えているのか分かったらしいピッコロが、苦笑を漏らす。


「なるほどな」
「でしょ?・・・よし、ブゥ」
「ん?なんだ?」
「その銃弾、弾き飛ばしちゃっていいよ」
「わかった!!」


笑顔のブゥがすぅーっと息を吸うと、食い込んでいた銃弾が思いっきり弾けた。

それは拳銃なんかで撃つよりも早く鋭い弾丸となり、強盗達の足元に穴を開ける。


訪れた静寂。


「っひ・・・ぃ」
「に、人間じゃ、ねぇ・・・!!」


満足気なブゥとは真反対な表情に染まっていく強盗たち。
そして強盗たちはその場に銃を置き去りにすると、聞こえ始めたサイレンの方向に、まるで助けを求めるかのように走っていった。


























「ってのがあったんだー」


今日昼あった出来事を全て話していた私は、話を聞きたいと言ってきた可愛らしい神様――――デンデの方を向いて笑った。


あれからデンデは更に地球の神様として仕事をこなすようになった。
その関係で、中々下界を見れなくなったらしい。

だからこうやって私から話を聞くことが多くなったんだけど・・・。


「ごめんね、いっつもピッコロとの話ばっかりで」


そう。
私もさほど下界に降りるわけじゃないので、ネタが必然的にピッコロとのデート中に起こったことになるのだ。


私の謝罪を聞いたデンデが、優しく笑う。


「いいですよ、いつもは見れないピッコロさんを教えてもらってる気がして楽しいです」
「それピッコロの前で言っちゃだめだよ?殺されちゃう・・・私が」
「ふふっ。でも、本当に仲が良くて、僕は見てて幸せです」
「やだなー。照れちゃう」


あの後、壊された神殿も私達の力で元に戻した。

もう戦いの痕を残したものは、何もない。


本当の平和を私達は過ごしているのだ。
刺激といえばデートとか、修業とか、そこぐらい。

物足りないなんて思わない。


私はこっちの方が、好きだから。


「そういえば、ゆえさんはいつもどうやってピッコロさんを下界に連れて行ってるんですか?」
「んー?」
「ほら、ピッコロさんってあんまり下界に降りたがらないから」
「何言ってんのさ。悟飯が呼べば一発で・・・・っだ!!??」
「・・・・・・・・」
「あ、ピッコロさん!」
「デンデ。こんな奴の話を聞いてると耳が腐るぞ」
「ひっどくない!?」


会話の途中で入り込んできた鉄拳。
一発思いっきり殴られた私は、痛む頭を押さえながら見下げるピッコロを睨みつけた。


「すぐそうやって暴力するんだから・・・・」
「ピッコロさん、ゆえさんを怒らないで下さい。僕がお話を聞きたいって言ったんです」
「何・・・?」
「デンデは私達よりもずっと下界に降りれないんだから、この優しい私が下界のありとあらゆる話をデンデに・・・待って。すぐそうやって攻撃構えないで!!」


拳を構え始めたピッコロを止め、わざとらしくデンデに抱きつく。


「デンデ、ピッコロがこわーい!」
「・・・・デンデ、そいつから離れろ」
「え!?ぼ、僕は何も・・・っ!?」


慌てるデンデが可愛そうだったから、しょうがなく離れた。
その一瞬で拳が飛んでくるが、読んでいた私は冷静に魔法で防御する。


慣れた手つきの攻防。

しょうがない。
実際慣れてるからね、誰かさんのせいで。


「いつでも攻撃に反応できるのはいいことだな」
「修業馬鹿と一緒にするな」
「ほう?まだ懲りてないようだな?」
「っ・・・」


声のトーンが変わる。

暴力も何も飛んでこない時のピッコロの低い声は、一番危険だ。


何が危ないって?
夫婦の時間が、ね。

ひくっと顔を引き攣らせて固まった私を、デンデが不思議そうに見つめる。


「どうしたんですか?ゆえさん」
「んっ?な、なんでもないよ。うん」
「・・・・・・?」


誤魔化すように笑って、それから差し込んできた月光に気づいて話を逸らした。


「お、今日は満月だねー」
「綺麗ですね」
「よし、どうよ?月見と行く?」
「え!?時期的に全然月見じゃ・・・」
「そういうこと言わないの」


さすがデンデ。
地球の知識はばっちり頭の中に入ってるらしい。

でもそんなことお構いなしに私は月見の準備を始めた。


ちょっとしたお菓子と、美味しい水と、軽いお酒。


そして目の前には大きな月。
隣にはピッコロ。


「最高の、月見だね」


デンデに水とお菓子を。

ピッコロにお酒を渡した私は、ポツリと呟いた。


ナメック星人の目の前ではまったく意味のない、呟き。
耳の良い彼らには普通の言葉と同じように拾われる。


「僕もこういうの好きです」
「ふっ・・・そうか。知ってはいるが、やったことはなかったからな、こういうのは」
「そうですね。僕が見た文献では9月だったので少し早い気がしますが・・・」
「そういうことは気にしない奴だからな、許してやれ」
「さり気なく貶すなよっ!」


でも、こんな贅沢な月見してるやつなんて居ないでしょ?


好きな人が隣に居て。
幸せを共有してくれる人も居て。

しかも神殿っていう、誰よりも高い場所で月を見れてる。


「たまには人を素直に褒めれないんですかねー?ロマンチックだねーとかさー!」
「ふふっ・・・僕はそう思いますよ」
「ありがとね、デンデ。デンデはいい子だなぁ」
「こいつをおだてるのはやめておけ。調子に乗るだけだ」
「っ~~~~」


いちいち突っかかってくるピッコロに、月見の空間が崩れていくのはすぐだった。


「いちいち馬鹿にするなばーか!!」
「くくっ・・・お前がらしくないことをしたがるからだろう?」
「らしくないとか言うな!」
「お前は黙って座ってろ」
「っむぐ」


ピッコロが何を考えてるのか分からない。
騒いでいた私の頭を押さえたピッコロは、後ろから抱きかかえるように私を座らせた。

デンデは少し恥ずかしそうに、でもどこか嬉しそうにそんな私達を見つめる。


――――そして静かに月を見た。


誰も喋らない。

無言の空間の中で。


ピッコロの吐息と暖かさを感じながら。


「・・・・」


何も聞こえない。

ううん、私には聞こえる。


後ろに座ってるピッコロの鼓動が。
心地よいリズムを刻んでいて、眠たくなる。


「・・・・寝るなよ」
「寝ないよー・・・・」
「眠そうですね」
「そんなことないよ・・・」


うつらうつら。


怒りながらも私の頭を撫で始めたピッコロの手。

それはゆっくり私を眠りへと誘っていく。


「ピッコロ・・・・」
「ねるな、重い」
「ならその手、とめ・・・て・・・・」


ぷつんと切れた意識。
その中で聞こえた声に、私はくすりと笑った。


「寝るなら部屋で寝ろ。寝顔を誰にでも晒すな・・・馬鹿が」


























ふと目を開けたら腰に圧迫感を感じた。

寝ちゃってたのか。
なんて呑気に思ってたら、腰の圧迫感が増した。


「うえっ!?」
「寝るなと言っただろうが・・・」
「んあ、ごめん。連れてきてくれたんだ?」


無言で降り注ぐ口付け。
それを受けながら寝返りをうってピッコロと向き合う。


「んふふふー」
「気持ち悪いな」
「なんとでも言えよー」
「ふっ・・・」
「もぐ!?」


包み込まれるように抱きしめられて。
また聞こえ始める、ピッコロの鼓動。


「いつまでもこうしてたい」


素直にそう言えば、ピッコロが笑った。


「俺もだ」






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