Erdbeere ~苺~ ★48.情けない自分 忍者ブログ
2025.03│ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31
いらっしゃいませ!
名前変更所
2025年03月09日 (Sun)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2015年06月09日 (Tue)
48話/シリアス/※ピッコロ視点

拍手




精神と時の部屋の扉を壊した時、ブゥだけが外に出てしまった。

あの時俺がもう少しきちんとした判断をしていれば。
いや、そうじゃない。


アイツを守ると誓って、ちゃんと連れてくれば良かったんだ。

俺がゆえを連れて来なかったのは、守れる自信が無かったから。
ただそれだけだ。


ゆえ・・・・?」


そんな弱気な俺を出迎えた現実は、本当の悪夢だった。


ブゥを追いかけて外に出た俺の目の前に広がった、血の海。
誰の気配も感じない神殿。

そしてただ一人そこにポツンといる、魔人ブゥ。


「おい」


震える声でブゥに声を掛けた。

聞きたくない。
だが、聞くしか無い。


「・・・・ここにいたやつらは、どうした・・・」


俺の言葉に、ブゥがニタリと笑う。


「あぁ、皆食っちまった。美味しかったぞ?」
「・・・・尻尾が生えた、女もか」
「ん?あぁ・・・あいつか。あいつは・・・・」


ただ食われただけなら、こんな血の海は出来上がっていないはずだ。
俺は自分自身の足を汚す血を、ぐっと踏みしめる。


嫌な予感が、した。

とても嫌な予感が。


その嫌な予感と悪夢は――――ブゥの言葉によって現実になる。


「あいつなら、俺が殺した」
「てめぇ・・・!!絶対にゆるさないぞ!!!!」


俺が血の海に膝をつくのと同時に、超サイヤ人3に変身したゴテンクスが魔人ブゥとの交戦を始めた。


だが俺は。
その場から、動くことすら出来なかった。

声すらも出ない。


何も、出来ない。


「・・・・ゆえ・・・・」


頭が追いつかなかった。


ゆえが殺された?
生き返れないのに、死んだ?


もう二度と、アイツに・・・会えないのか?

二度と触れられないのか?


「・・・・っ」


声にならない悲鳴。
震えが止まらない、身体。

まるで俺が、俺じゃないようだった。


悟飯が死んだと聞いた時も同じ感情に襲われた、だが。

この感情はそれ以上だ。


この感情に、殺されてしまいそうなほど。


苦しくてのたうち回りたいほどの。


悲しみ。
絶望。
苦しみ。
痛み。


「俺が・・・ッ!!」


守ってやると決めて、連れて行けばよかったんだ。

守る自信がなくて置いていった。
必ずあの精神と時の部屋だけで全てを終わらせると決めた。


それすら出来なくて。

この、ザマだ。


「許してくれ、俺は、お前を・・・っ」


守れなかった。

ただ、殺しただけだ。


俺が絶望に浸っている間、ゴテンクスは戦いを続けていた。
ふらつきながらもゴテンクスが戦っている場所まで飛び、戦いを見守る。


まるで、その光景は夢のようだった。


何も頭に入ってこない。

ゴテンクスがブゥを追い詰めるのも。
追い詰めたところで変身が解けたのも。


絶体絶命の危機に、生きていた悟飯が助けに来たのも。


まるで、夢。


「・・・さん、ピッコロさん!!」
「・・・・っ!」


悟飯の声に引き戻された俺は、周りを見回してからゆっくり地面に腰を落とした。


魔人ブゥの気配は感じない。
だがまだ倒してはいないと、悟飯が言う。


まるで悟空のような気を持っている悟飯に、俺は正直驚いていた。


悟飯特有の、優しさや甘さが無くなっている。

そして悟飯が生きてくれていたということに、少しだけ俺の悪夢が覚めた。


「悟飯・・・・」
「ピッコロさん・・・・」


悟飯が心配そうに俺の顔を覗きこむ。


「ピッコロさん、その」


言いづらそうに口を閉ざした後、少しだけ考える素振りを見せた悟飯が顔を歪めた。
俺の周りを確認するように視線を動かし、静かに口を開く。


ゆえ、さんは。どうしたんですか?」


震えた声。
あぁ、お前も、気づいていたのか?


もはやこの世に・・・彼女の魔力が、存在しないことを。


「・・・・ゆえは」
「・・・・・」
「もう、いない」
「っ・・・・なんで、ですか。どうして・・・」
「・・・・俺の・・・せいだ」
「・・・・ピッコロさん」


何もかも俺が。

また、手が震える。
声がでなくなるほど呼吸が苦しくなって。


思わず咳き込んだ俺を、悟飯が支えた。


「ごめんなさい、ピッコロさん・・・・」


地面についていた手に雫が落ちる。
それが悟飯の涙だと気づくまでに、そう長くは掛からなかった。


ぽたり。

大粒の涙が、俺の手を濡らす。


ぽたり。


「すまない・・・俺が・・・・」
「・・・ゆえさんは、いつも、ピッコロさんの傍にいられるのを・・・幸せだって言ってました。だから、ピッコロさんのせいだなんて思ってないですよ」
「違う、それは・・・!!」
「ピッコロさん。・・・自分をそんなに責めないでください」


悟飯の手が俺の手を掴む。

そこには気づかない内に力を入れすぎて切れた跡があり、手のひらは紫色に染まっていた。


悟飯の手が俺の手をゆっくりと撫でる。
痛みなど、もはや感じなかった。


「・・・・まだブゥは死んでない。でも、ピッコロさんは見ててください」


気遣うような笑み。


「僕がすべて、終わらせて見せますから」


細めた瞳の先に見えた、静かな怒り。
あんな悟飯の瞳を見たのはいつぶりだろうか。


セル以来、だな。

あの時もあんな冷たい目をしていた。


「・・・・あぁ」


俺はなんて無力なんだろう。

目の前でこうやって悟飯が、ゴテンクスが、戦おうとしているというのに。


俺はただ、復活したブゥを見ても呆然として立ち尽くすことしか出来なかった。
怖いとかではなく、ただ、なんの気力も起きなかったのだ。

ここまで虚しさを感じたことがあるだろうか。


こんなにも、何も感じないなんて、あるのだろうか。


「・・・・・」


悟飯が助けに来た後、一度逃げたブゥが再び姿を現したのは30分後だった。

俺の目の前で、悟天とトランクスと悟飯がブゥと対峙している。


いつもの俺なら、ここで何故ブゥが姿を消したのかなど色々考えたんだろう。
でも今の俺はただその光景を見ているだけのバカに過ぎなかった。


―――――だから、こうなるんだ。


「ッ!!ピッコロさん!!!!」
「っな・・・・!?」


気づけば戦う準備を始めていたゴテンクスがピンクの気持ち悪い物体に飲み込まれていた。

そして、振り返った俺にも。


「っ・・・・!!!!」


目の前がピンク色から闇に落ちる。
もがいてもその物体は離れず、やがて俺の感覚と意識を奪った。

最後に聞こえたのは、悟飯の悲痛な叫びと。


気持ち悪い、消化されるような液体音だった。

























夢を見た。

暗闇の中。
ゆえが一人、苦しそうにのたうち回っている夢だった。


「・・・・」


悲鳴を上げ、嘔吐するように咳き込み、崩れ落ちるゆえの身体。
助けに行こうとしても、俺の身体は動かない。


「あ・・・・あぁあぁあぁあああッ!!!!」


本当に夢なのだろうか。
そう思うほど耳に響く悲鳴は、リアルだった。


地面に転がり、背中の黒い翼が痛むのか必死に背中を引っ掻こうと手を伸ばす。


「は、ぁぁぁあああぁあ、いたい、いたいよぉ、いたいぃいぃいい!!!!」


声も出せないまま、俺はただその光景を見つめていた。


これは罰だろうか。
彼女を守れなかった、俺への。


きっとこれだけの痛みや苦しみを受け、消えていったんだろう・・・ゆえは。

二度と生き返れない、消えてしまうという恐怖を目の前にしながら。


「ぁ」


小さく呻いたゆえが、俺の方を見る。

そして小さく呟いた。


「ピッコロ」


その声すらも。
俺は嬉しく感じてしまった。


狂っているのだろうか。

二度と呼ばれないと思っていた名前を、呼ばれて。


嬉しいと、感じたのは。


たとえ夢でも。
構わないと。


「ピッコロ・・・っ」


もがき苦しみながら、俺を呼んで。
俺の方へ手を伸ばしてくる。

触れたいと願って手を伸ばそうにも動かない身体。


ゆえ


ただ、出来るのは名前を呼ぶことだけ。
本当に声になっているのかも分からないまま。


呼び続ける。

愛しい、アイツの名を。


ゆえ・・・・」


傍にいるのが当たり前だと思っていた。

アイツが傍にいて、アイツが俺の名を呼ぶのが当たり前だと思っていた。


「・・・・・すまなかった・・・!!」


夢の中でも、お前が聞いてくれるのなら謝ろう。
お前の最後の時まで共にいられなかったことを、お前を守ることから逃げたことを。


二度と生き返れないことを分かってて、戦って。

怖かっただろう?
怖くないはずが、ない。


「・・・・っ」


俺に対する戒めだ。

この、夢は。


「ぁ・・・・あ・・・ピッコロ・・・」


頭が痛い。
引き裂かれそうなほど、ぐらぐらする。

これは、一体――――――。


























目を開けたらそこは見慣れた光景に戻っていた。

俺の腕の中にはフュージョンが解けたトランクスと悟天がしがみついている。


「ピッコロさん!」
「お、れは・・・?」


一体どうなっているんだ?
俺はブゥに飲み込まれて、それで・・・。


ゆっくりと周りを見回すと、そこには何故か悟空とベジータも居た。

何故お前らがいると声を上げようとした瞬間、悟空が一気にスピードを上げて俺から遠ざかる。


「なっ・・・・!」


俺達の頭上から強く感じる、気。
咄嗟に悟天とトランクスを庇った。


頭上に見える、魔人ブゥに似た・・・いや、あれは魔人ブゥか。

妙に小さくなっているが、気の質がもっと邪悪なものになっているのが分かる。


そしてそのブゥが放出しようとしている気は――――。


「ッ・・・・!!」


後ろを見れば、悟空がデンデ達を助けて瞬間移動するのが目に入った。

助からない。
ただそれだけを、俺はこの瞬間で理解した。


ブゥが放出しようとしている気は、俺達でどうこう出来るものじゃない。

それは地球を吹き飛ばし、粉々に砕くほどの威力を持っているだろう。


俺は出来るだけ悟天とトランクスの視界をマントで塞いだ。


「死んだら、お前の場所へ・・・いけるか?」


小さく呟くのと同時に、俺の視界は真っ白に染まった。


無音の、世界。
何もかも感じなくなっていく感覚に、俺は恐怖すら覚えなかった。



PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
←No.370No.369No.368No.367No.366No.365No.364No.363No.362No.361No.360
サイト紹介

※転載禁止
 公式とは無関係
 晒し迷惑行為等あり次第閉鎖
 検索避け済

◆管理人
 きつつき
◆サイト傾向
 ギャグ甘
 裏系グロ系は注意書放置
◆取り扱い
 夢小説
 ・龍如(桐生・峯・オール)
 ・海賊(ゾロ)
 ・DB(ベジータ・ピッコロ)
 ・テイルズ
 ・気まぐれ

◆Thanks!
見に来てくださってありがとうございます。拍手、コメント読ませていただいております。
現在お熱なジャンルに関しては、リクエスト等あれば優先的に反映することが多いのでよろしければ拍手コメント等いただけるとやる気出ます。
(龍如/オール・海賊/剣豪)