いらっしゃいませ!
名前変更所
ついにフュージョン本番の日。
今まで2~3日かけて修業した分、彼らはスムーズに気の調整などが出来るようになっていた。
あとはそのフュージョンができればいいのだが・・・これが難しい。
ちょっとでもポージングが対称じゃなくなったりズレたりすると、弱体化してしまうのだ。
「意外と上手くいかないもんだね・・・・」
「・・・・あぁ」
神殿の入り口に腰掛け、フュージョンに失敗した2人を見る。
フュージョンに失敗した2人の姿は、まるでヨボヨボのおじいさんのようになっていた。
ちなみに、この失敗は二度目。
一度目はデブになった。
ふざけたポージングの技だけど、ほんと少しのズレがいろんな影響を及ぼす危険な技だと、改めて感じた。
「フュージョンの解除方法も教えてもらえばよかったね」
「まったくだ・・・・」
フュージョンが解けるのは30分後。
失敗した場合でもそれを待たなくてはならず、こうやってのんびりしているというわけだ。
「うっ・・・げほっげほっ」
フュージョンしてすっかりヨボヨボになったゴテンクスが、咳き込んでしゃがみ込む。
そうそう、2人のフュージョン後の名前はゴテンクスって言うらしい。
かっこいいよね。
名前からも強さを感じる。
・・・なんて、ちょっと単純かな?
「お前らしい考えだな」
「・・・・最近プライバシーの侵害が酷い気がする」
「そんなの、いまさら始まったことなんじゃないんだろ?ピッコロだもんなー」
「っさいなクリリン!!」
からかうようにクリリンに野次を入れられ、恥ずかしくなる。
ピッコロは怒るどころかそんな私を見て笑っていた。
こいつ、やっぱり性格悪い。
「今更だな」
「っ・・・・この!!」
むかついて殴ろうと立ち上がった瞬間、ゴテンクスから光が放たれた。
どうやら30分が過ぎたらしい。
ポン!と可愛らしい音を立てて2人が分裂する。
ほんと、どんな仕組みになってんだか。
ちょっと疲れた表情の2人を目の前に、ピッコロは容赦することなくもう一度フュージョンするようにと声を上げた。
「よし、始めるぞ。気を同じにしろ」
「・・・・」
ごめんね。
無理をさせて、本当にごめん。
でもトランクスは、悟天は、皆の希望なんだ。
「気が同じになったな・・・さぁ、フュージョンを始めろ!」
「・・・・いくぞ、悟天」
「うん!」
まったく同じになった気。
真剣な表情。
2人の表情は偉大な父親たちにソックリだった。
彼らならきっと出来る。
そう信じて見守った3回めのフュージョンは、流れるように進む。
そして。
重なる。
「ッ・・・・!!」
フュージョンが終わって指が触れた瞬間、トランクスと悟天の気が大きく乱れた。
2人の気が混ざり合い、すごい速度で跳ね上がっていく。
思わず、息を呑んだ。
フュージョンの光で2人の姿は見えないが、悟天でもトランクスでもない存在になっているのは確かだろう。
混ざり合った気が落ち着いて、その姿を私達の前に見せる。
「・・・・っ!」
「す、すご・・・い」
「これが・・・」
トランクスと悟天のフュージョンした姿。
その名も、ゴテンクス。
光の中から現れたゴテンクスは、子供っぽいやんちゃな表情はそのままに、有り無いほどの気を放出していた。
この場にいる誰もが驚くほどの気。
そして凛々しい姿。
私もまた、その姿に息を呑んだ。
「おお・・・フュージョンは成功したな。次は超サイヤ人状態でのフュージョンだ」
「・・・・・」
ピッコロの言葉にゴテンクスが大きなため息を吐く。
それから私達の方に人差し指を見せ、チッチッチッと舌を鳴らしながら不敵に笑った。
「俺たちをナメてもらっちゃこまるぜ」
なんだか、嫌な予感。
ちょっと生意気な感じのゴテンクスに、私達は顔を見合わせた。
そんな私達の気など知らず、ゴテンクスは宙に浮いて私達の傍を離れようとする。
慌ててピッコロが止めようとするが、ゴテンクスにその声は届いていない。
「超サイヤ人にならなくたって、このままで魔人ブゥをけちょんけちょんにしてやるぜ!」
「ま、待て!!戻れゴテンクスーーー!!!!」
あーあ。
嫌な予感は的中し、ゴテンクスは一瞬で神殿の下に姿を消した。
取り残された私達の微妙な空気。
そして私の隣でブチギレてる旦那。
出たのは、ため息だった。
「つよいけど・・・ちょっと、あれだね、うん」
「あの、クソガキ共が・・・っ!!!」
数分後。
ヒュッと風を切る音が響いて、ボロボロのゴテンクスが姿を現した。
「や、やられちゃったぜ・・・・」
その言葉に全員がずっこける。
だが、ピッコロだけは厳しい表情のまま、腕組みをしてゴテンクスを睨みつけた。
同時にフュージョンが解け、傷だらけの悟天とトランクスに分裂する。
「トランクス!こっちにきなさい!」
「悟天もだ!」
「わわわっ!?」
分裂した二人はそれぞれの母親に連れて行かれ、傷の手当を受けた。
悟天なんかお仕置きされてる。
・・・・痛そう。
まぁでも、今回のはあまりにも無謀な行動だ。
生きて帰ってこれたのも奇跡かもしれない。
「いいか!?お前たちは地球に残された最後の希望なんだ。軽率な行動は今後一切許さんぞ!」
ピッコロの怒声にトランクスが悔しそうに俯いた。
あの表情、すごくベジータに似てる。
「・・・ねぇ、ピッコロさん。俺のパパ、強かったんでしょ?」
悔しそうな表情のまま顔を上げたトランクスは、目に涙を浮かべていた。
泣き出さないように唇を噛んで、拳を震わせている。
悔しさが見ているだけで分かった。
それと、父を――――ベジータを失った悲しみが。
「俺、パパみたいに強くなれるかな?俺・・・パパが守った地球を・・・・」
トランクスの言葉が終わる前にピッコロが手を伸ばした。
その手は優しく悟天とトランクスの頭を包む。
あ、すごく優しい表情。
こうやってみると、まるでお父さんみたいだ。
「お前たち二人の体には、これまで多くの不可能を可能にしてきた戦士の血が流れているんだ」
超サイヤ人の息子達。
生まれてきて、修業なんてせずにその能力を発揮した戦士。
「お前たちなら・・・・出来る」
そう言ってピッコロは二人に治療の魔術をかけた。
ボロボロだった二人の身体が、見る見るうちに元通りになっていく。
そんなピッコロを見て、私達は後ろでバレないように笑っていた。
悟飯の時の噂ばっかり聞いてるから、こういうのを見るといい師匠になったなって。
「・・・・すぐに修業に戻るぞ。さっさと準備をしろ」
優しさの後に厳しい言葉。
もう一度私達が漏らすのは、からかうような笑み。
「・・・・・・・・・貴様ら、なんだその顔は」
振り返ったピッコロにその顔を見られた私達は、その場に固まった。
心配する母親たちにお叱りの続きを受けている悟天とトランクス以外は、今、ピッコロに睨まれている。
ジロリと目を細めるピッコロが言わんとすることは分かった。
人が真面目に話してんのに何ニヤけてんだって感じの顔してますね、うん。
たぶん大体あってる。
「・・・・」
「・・・・・・・」
支配する無言。
そっと横目で後ろを見た私は、ヤムチャ達が全力でごまかしながら逃げていくのを見つけて止めようとした。
でもそれは。
ピッコロの手によって逆に止められる。
いやまって。
なんで、なんで私だけ。
「ピ、ピッコロ、さん?」
「なんだ?何をそんなに怖がる必要がある。お前の修業の準備をしろ。あいつらの相手だけじゃないんだからな」
それはつまり。
もう一度助けを求めるように後ろを見ても、皆は私を見捨てて遠くでトランプを始めていて。
ゆっくりと前を見れば恐ろしいほど無表情なピッコロと目が合う。
無言の、命令と、殺気。
「・・・・ゆえ?」
「イエッサー、準備しまっす!!!!」
「やけに素直だな?」
「だってそんな、明らかに修業と題して人を殺してやろうみたいな表情されたら・・・・」
「そんなつもりはなかったが」
”望むならそうしてやる”と。
更なる地雷を踏んだ私は、何故か二人よりも厳しい修業を受けることになった。
二人から放たれる攻撃はベジータや悟空の相手をした時とさほど変わらない。
それほど二人の攻撃は強くて、重たくて――――真剣だった。
「っぐ!!」
「何をしているゆえ!!防御ばかりに気を取られるな!!」
「どっちの修業なんだよこれは・・・っ!!」
暴言を吐きながら相手にしているのは、ピッコロとトランクスと悟天の三人。
体力がネックだった私へのだいぶキツイ修業内容で、なんだか可笑しさを感じる。
いやだってこれ、トランクスと悟天の修業のはずでしょ?
確かに私が全力で戦ってるからトランクスや悟天もだいぶ本気出せてるみたいだけど・・・正直私と本気で戦うなら、悟天とトランクスが超サイヤ人になるだけで十分だ。
「は、ぁっ・・・!!!」
「トランクス、悟天、こういう場合の狙いは裏だ!!」
「「はい!!」」
「ッ・・・・!!ったく、なめんなよ・・・・!とう!!」
「っぎゃ!!いったーー!!ねーちゃん本気出しすぎだぜ!!」
「修業に手加減はなしだよトランクス!!」
ピッコロが戦いを通して何を教えたいのか。
それは力だけじゃなく。
戦術や、根性。
そして判断力。
やっぱりピッコロは素晴らしい師匠だと心の底から思う。
いつも怖いとか何とか、からかっちゃうけど。
「へぶっ!?」
「隙ありだぜ、ゆえねーちゃん」
「へへ、僕達の勝ちー!」
「・・・・情けないな」
「え、ひど・・・頑張ったとか言ってください・・・」
「気が向いたらな。今日の修業はここまでにする。お前たちはしっかり休め」
「「はーい!」」
「ピッコロ、私しにそー・・・て、手貸して・・・・」
力尽き、二人に馬乗りになられてる私にかけられるピッコロの冷たい言葉。
立ち上がるためにピッコロに手を伸ばせば、その手をピッコロが取る前にトランクスが私の手を取った。
そして何故か、挑発的に笑ってピッコロを見る。
「いつもピッコロさんばっかりゆえねーちゃんと一緒に居てずるいぜ!ほら、ねーちゃん起きて」
「あ、ありがと・・・」
私を起こすその力は、子どもとは思えないぐらい強かった。
座ったまま荒い息を吐く私の傍に、トランクスが近づいてきてにこっと笑う。
ああもう、本当に可愛いな!!
その隣でニコニコしてる悟天も可愛い。
こんな子達を戦わせるなんて、本当に辛い。
未来のある戦士。
未来のある子供達なのに。
「トランクス、悟天。ゆっくり休むんだよ?」
労るようにトランクスと悟天の頭を撫でる。
トランクスに挑発的に起こす役を取られたピッコロは、自惚れかもしれないけど少し不機嫌そうだ。
でも、それにトドメを刺すかのように。
トランクスが私に近づいてきて、私の頬にキスをした。
「っ!?」
ちゅっと音を立てて離れる唇。
照れくさそうに笑うトランクスの、してやったり顔。
あ、待って。
ピッコロさん、子供相手にそんな殺気出さないで。
トランクスも挑発するようにピッコロを見ないの!!
てかどうしたのこの二人。
仲悪いの?
「トランクス君駄目だよ、ゆえお姉ちゃんはピッコロさんの奥さんって言ってたよ?」
悟天の言葉に、トランクスがむすっとする。
「俺もゆえねーちゃんのこと好きだもん!」
「トランクス・・・・」
「ほら、ねーちゃん!今日俺たち修業頑張ったんだし、一緒に遊ぼうぜ!」
「あ、待って、私もう疲れて・・・あぁああぁあ引っ張るなぁあぁあぁあ」
子供の体力は無限なんだと思い知りつつ、私はトランクスに引きずられていった。
後ろで、子供相手に本気の殺気を放つピッコロを見ながら。
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