いらっしゃいませ!
名前変更所
「・・・はー・・・」
ため息しか出てこない。
だって目の前で起きてる戦いが、ありえないんだもん。
悟空の開放した気は想像以上だし。
それに、超サイヤ人3とかいうのに変身までしちゃって。
だけど魔人ブゥも魔人ブゥでその化け物じみた悟空の力とほぼ対等という事実。
ここまで見せられて、ため息が出ないほうが可笑しい。
「いつかサイヤ人ってバケモノになりそうだよねぇ・・・」
これが戦闘民族か。
私だってそれなりに修業して今の力を得たつもりだったんだけどな。
こんなの隠し持ってたなんて、ちょっと悔しい。
いっそ私も変身みたいなの編み出してみる?
そんなふざけたことを考えていると、悟空が気弾で魔人ブゥを吹き飛ばした。
「やるぅ」
「・・・・・」
「痛い・・・もう、怒ったぞーー!!」
ブゥの力は確かに恐ろしい。
でも無邪気で、どこか未熟だ。
私が昔噂に聞いたブゥは、冷酷で残酷で”理性”が無かったって聞いてたんだけど。
今私達が戦ってるやつは冷酷であれど、”理性”はあるように見える。
「はぁああぁあ!!!」
にしても、厄介だね魔人って。
どれだけ攻撃を食らってもすぐに回復しちゃう。
それが魔人の特性らしい。
倒す方法で思い浮かぶのは、二度と再生出来ないぐらいの気で吹き飛ばすことぐらいだろうか。
今の悟空の気なら出来そうなんだけど――――ギリギリのところで押しきれてない。
「・・・・」
悟空のことだ。
自分の残りの時間を気にして、なんてことはないだろう。
それに今倒しきれれば、残りの時間なんて気にしなくて良いわけだし。
「(あ、そういえば・・・・)」
目の前の戦いを見届けつつ、私はトランクスが飛んでいった方に意識を集中させた。
えーっと、確かカプセルコーポレーションだったよね。
あのでっかい屋敷。
あそこから一つのものを見つけるのは大変だろうなぁ・・・って思ってたら。
案の定、トランクスの気はまだカプセルコーポレーションにあった。
「ゆえ、トランクスは?」
「んー・・・まだ」
「何やって・・・ぶふっ!?」
悟空も闘いながらトランクスのことを気にしていたらしい。
よそ見をして私に聞いてきたせいで、ブゥの攻撃を真正面から受けて私にぶつかった。
「へぶっ!?」
もちろん、私ごと吹き飛ぶ。
慌てて力を込めて踏ん張り、悟空を立て直させた。
なんて、気だ。
悟空に少し触れた手が、ピリピリと痺れている。
「わりぃわりぃ!」
「乙女の顔にぶち当たるとか酷い・・・」
「ま、ブルマ達より頑丈だから大丈夫だろ」
「本当に酷いな!!」
痛む顔を押さえながら悟空が戦いに戻るのを見送った。
凄い力。
でも段々と気の量の減り方が早くなってきている。
あの形態にはまだ慣れてないんだっけ。
ヘタすると悟空の限界が割りと早いかもしれないと、緊張しながらトランクスを見守った。
「・・・・トランクス・・・」
これ、私もトランクスの方に行ったほうが良かったかな。
もしくはブルマを連れてって上げたら良かったかもしれない。
中々動きださないトランクスの気。
段々と激しくなっていく、悟空たちの戦い。
見守ることしか出来ない私はゴクリと唾を飲み込んだ。
――――その瞬間、だった。
「ッがは!」
「そーれー!」
魔人ブゥの楽しそうな声と共に響いた、悟空の苦しげな悲鳴。
吹き飛ばされた悟空の気が、驚くほど急激に落ちていく。
ああ、これは。
「悟空」
「・・・・っ、なんだ?」
「バトンタッチ」
「!?なんでだ。まだ俺はやれるぜ?」
挑発的に笑った彼を、近づいて軽く叩いた。
「いだっ!」
「やれるやれないじゃなくて!・・・そのままじゃ、フュージョンっての教えられないでこの世から消えることになるよ?その形態で戦い続ければ・・・ヘタするとトランクスが戻ってくるのを待てないかも」
「ッ・・・・!」
下界に存在するには、身体と魂とエネルギーが必要になる。
そのどれかが欠ければこの世にいられなくなるのは、この世のルール。
占いババがそれらを提供して悟空をこの世に戻してくれてる今の状態。
無理をしすぎれば限界を越えて、悟空の最後の時間が無くなるのは考えれば分かることだった。
「・・・・分かった」
戦い好きの悟空でも、それを理解してくれたらしい。
超サイヤ人3の状態から通常に戻った悟空を、バビディがニタニタと笑いながら見つめる。
「おめぇ、やるのか?」
「もちろん」
「・・・いける、か?」
「・・・やってみなきゃ分からない」
その視線を断ち切るように前に出て。
思いっきり魔力を開放する。
あれから修業を積み重ねてきた。
強くなるため、守るものを守るため、未来のため。
自分の中にある”悪”
それすらも、戦いの興奮剤として受け入れれるように。
「はぁあぁああ・・・・ッ!!!」
「おわわ・・・!?」
魔力の風でブゥの頬がぷるぷると揺れる。
「・・・・ゆえ、おめぇ、そんなに魔力を出してでぇじょうぶなんか・・・?」
無理をしすぎれば完全な悪魔に墜ちる。
それは前と変わってない。
変わったのは私の覚悟。
たとえそのハンデを負ってでも全力で戦えるようになろうとした、決意。
「大丈夫。私はこのために強くなったんだから」
魔人ブゥが迫ってくる気配を感じて悟空から視線を逸らした。
そのまま、腕をブゥの方向に突き出す。
「ハァッ!!」
「ぶぅ~~~!」
攻撃と防御。
たった1回だけの行動。
ただそれだけで真下の海の水がはじけ飛び、渦潮を作り出した。
「っ・・・・」
ひしひしと感じるブゥの強さ。
実際に拳を交えたら、見てた時よりも鮮明に相手の強さが感じ取れた。
こんな奴と戦ってたなんて、悟空は化け物ね。
もちろん私だって負けるつもりはないけど。
「お前、邪魔するな!俺はアイツをお菓子にして食うんだ!」
「だめだめ、悟空は美味しくないよ?」
「ならお前を食ってやる」
「やだなー。それならお菓子出せばいいじゃない?ほら」
殴りかかってくるブゥの攻撃を避けつつ、パン!と手を叩いてシュークリームを出して見せる。
するとそれを見たブゥが、攻撃を止めてダラリとヨダレを垂らした。
・・・・こ、こいつ、まさか。
「・・・食べたいの?」
「くれるのか?」
「・・・・・え、えっと」
子供みたいにキラキラした目が私を見つめる。
仕方なく魔法で出したシュークリームを手渡せば、大きな口で一気にそれを平らげた。
少しは時間稼ぎになると思って渡したのに、たった一瞬の出来事。
こりゃムダだったかな?って首を傾げてたら、満足気な笑顔を浮かべたブゥが私に近づいた。
ブゥの表情が、さっきよりも柔らかい。
「お前、さっきのどうやったんだ?何かお菓子に変えたのか?」
「え?こ、これは魔法で・・・・」
「魔法?俺のとは違うのか?」
「まぁ・・・・」
「俺じゃ出来ないのかー!?」
私の話を聞いてそのままジタバタと暴れ始めるブゥ。
な、なんというか。
本当にやりにくい。
無邪気な子供を相手にしてるようだ。
助けを求めるようにチラッと悟空の方を見れば、呑気に笑ってる。
「俺にも教えろ!!」
「いや、で、出来ないんだって・・・」
「なんでだ!?」
「私達以外には使えないの!」
「ぶぅーー!!ケチ!!」
「ケチじゃないってば!!」
もはや戦いじゃなく言い争い。
まだ駄々をこねるブゥを見ながら、ふと”今なら倒せるのでは?”と冷静になった。
ブゥを消すのに必要なのはありったけの力。
二度と再生出来なくなるぐらいの破壊力があれば良い。
戦いながらその力を練るとなると時間が掛かるけど、今なら・・・チャンスだ。
「しょうがないなぁ、ほら、たくさんあげるから」
「ほんとか!?俺わたがしが食べたいぞ!!」
「こらー!ブゥ!何遊んでるんだー!!」
後ろからのバビディの声を無視して、ブゥが私に両手を差し出す。
私もにっこりと笑いながらその手に綿菓子を出してあげた。
今のうちだ。
思いっきり、私の中の魔力を溜めて。
それからぶつける。
もう少し。
まだ、あと少し。
「お前すごいな!天才だぞ!!」
「次は何が食べたいー?」
「そうだなぁ・・・次は・・・・」
ベジータ。
やっぱりあの時一緒に戦ってれば勝てたよ。
私はバレないようにギリッと唇を噛みながらブゥを睨んだ。
仇は、討つから。
「うまいぞっ!次は何がいいかなー!」
無邪気に笑うブゥに向かって手を伸ばした。
お菓子に夢中になっているブゥは、私が力を込めていることに気づいてない。
――――これなら、やれる!!
確実にブゥを捉えて魔力を放出しようとした瞬間、後ろ髪を何者かに引っ張られてよろめいた。
よろめいた先に映ったのは悟空の顔と、歪んでいく視界。
「悟空!なん、で・・・・!」
声も遠のいた。
この感覚は、あれだ。
瞬間移動。
「ッ・・・!」
感覚や音が元に戻った時には、私は神殿に戻ってきていた。
なんで。
倒せたかもしれないのに、どうして!?
「悟空ッ!!!」
「”ゆえ”」
「ッ・・・・!」
どういうことなのかと問い詰めようとした私に、悟空の声がかかる。
でもそれは、耳に響く声ではなかった。
心の中に響く声。
テレパシー、だ。
「”わりぃ、ゆえ。邪魔したな”」
「”分かってたの?じゃあなんで・・・!!”」
「”おめぇの気持ちは分かる。でも・・・ここはトランクスや悟天にまかせてほしいんだ。あいつらが、地球を救えるようになるために”」
「”・・・・”」
悟飯の時と同じ。
彼は残される人に託そうとしてるんだ。
それも、正しいとは思うけど。
でも私には、そんな余裕無かった。
「”もしこの判断で・・・私の大切な人が一人でも死んだら”」
怖いのは失うこと。
その判断で、誰かが死ぬこと。
私は後ろから近づいてくるピッコロ達の気配を感じて、静かに悟空を睨んだ。
「”その時は悟空を・・・ゆるさないから”」
「”あぁ・・・でも、信じてやってくれ”」
「”・・・しょうがないね。一千万ゼニーで手をうってあげる”」
「”・・・・・・オラ、チチに殺されっちまうぞ・・・・”」
無言で頭をかく悟空を見て少し気が緩む。
後ろにもっと厄介な奴が迫ってきていたことを、忘れて。
「おい」
低い声に悟空がヒクッと顔を引き攣らせた。
そんな顔をしたいのは私だよ悟空。
私、振り返れないよ。ねぇ。
「おい」
「・・・は、はい」
後ろでトランクスが帰ってきた声がする。
悟空は逃げるようにそれを迎えにいって、ついに私は後ろの怒りオーラ全開の人と2人きりにされた。
「おい」
「な、なんで、しょうか」
「貴様、俺との約束を覚えてるか?」
「む・・・無茶は、してないと思いますが」
ガシッと肩を掴まれる。
逃げ場はないと悟った私は、両手を上げながらピッコロの方を振り返った。
その瞬間、塞がれる唇。
誰かが見てるかもしれないのにと思っても、抵抗出来ない。
やがて唇が離れて私に囁く。
ピッコロの掠れた低い声が、私を咎める。
「・・・・次はないぞ」
「うん・・・ごめんなさい。でも、あれは」
「悟空の残りの時間のため、だろう?今回は無茶な戦い方も見えなかったからな。特別だ」
「・・・うん」
「それにしても・・・本当に強くなったな、お前は」
そう言ってピッコロの手が私の髪を撫でた。
見上げた先に見えたピッコロの表情が優しげで、思わず顔が熱くなる。
ずるい。
そんな表情・・・ずるい。
「・・・ピッコロ・・・・」
「どうした?顔が赤いぞ?」
「っ・・・・う、うるさいな」
「フッ・・・ほら、さっさと来い。悟空の言うフュージョンとやらを見なければいかんからな」
「うん!」
伸ばされたピッコロの手を取って。
私達は急ぎ気味に悟空たちが修業している部屋へ向かった。
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