いらっしゃいませ!
名前変更所
続く修業の日々。
「ほらぁ・・・トランクス、悟天、おきなよ・・・・」
白い大きなベッド。
可愛らしい寝顔。
「おきろー」
修業の疲れからか、悟天とトランクスはベッドの上で爆睡していた。
「まぁ、疲れてるよなぁ・・・皆も・・・精神的に参っちゃってるみたいだし・・・」
ブゥに日々破壊されていく地球。
お菓子にされ、減っていく人々。
地球を見守るデンデやピッコロも、修業の合間で地球の様子を見ては表情を歪めていた。
「ピッコロも、疲れてるだろうにな・・・」
あれからブゥはバビディを裏切り、自由になって地球を破壊して楽しんでいるらしい。
幸いなのは、ブゥが気を探る能力をもっていない・・・ということだろうか。
おかげでこうやって、神殿で時間がある限りの修業を続けられている。
まだフュージョンは成功の領域に達していない。
だがその成功の日も、かなり近くなっているはずだ。
それぐらい、彼らは凄い。
「ほら、ふたりとも起きて・・・じゃないと、鬼のピッコロが殴りにくるぞー」
そう言いながら寝相の悪い2人を抱きしめるように寝転がる。
寝転がると、温かいベッドが私を優しく包み込んだ。
あ、なにこのベッド。
子供用なのかな?
いつも私達が寝てるベッドより柔らかくて気持ちいい。
「ふぁう・・・・」
2人を起こすつもりだったのに、段々と瞼が落ちていく。
両脇に抱えてる2人も暖かくて心地が良い。
このまま、もう少し、あと5分ぐらい―――――
「貴様らぁあぁあ!!!!」
「っ~~~~!!!」
「うわ!?」
「んう・・・?」
頭上から鋭い怒声。
眠りかけてて気配を読み取れなかった私は、声にならない悲鳴を上げて飛び起きた。
両側の2人はのんびりと目をこすり、眠たそうに顔を上げる。
「いつまで寝てやがる!!貴様もだ!!起こしに行くように行った奴が寝るな!!」
「す、すみません・・・・」
「起きろ。飯を食べたらすぐに修業だ」
「・・・はーい」
「はーい・・・」
お、珍しく2人が返事して・・・。
「・・・すぅ」
「ぐぅ・・・・」
関心してたところに聞こえてきた可愛い寝息にため息が出る。
そういうことか。
ピッコロがいなくなった瞬間に二度寝とは、こいつらやるな。
でも、ピッコロはそんなの逃すやつじゃないよ?
だって私もそれしたことあったけど、すぐに。
「貴様ら~~~~~!!!」
ほら。
「この・・・・っ!!!」
バチン!と痛そうな音が2回響く。
同時に2人が悲鳴を上げ、頭を押さえながら起きた。
あーあ、痛そう。
ピッコロってば容赦ない。
なんて人事みたいに考えてたら、私の頭にもげんこつが落ちてきた。
「ッ~~~~!!!いったぁああああ!!!」
「貴様もなに呑気に寝てやがる!お前はすぐにこの俺との修業だ!!」
「ええーーーー!?」
「文句があるなら永遠の眠りにつかせてやってもいいぞ?」
その言葉を聞いて、後ろの寝ぼけていた2人がすごい勢いで部屋から逃げ出す。
う、裏切り者!!
咄嗟に手を伸ばして捕まえようとしたけど、その手はピッコロに捕まえられて止まる。
「ゆえ?」
「い、いきます・・・・」
立ち上がり、伸ばされた手を掴んだ。
そのままグイッと腕を引っ張られ、表に連れて行かれる。
寝起きなんだからもうちょっと優しくしてよねー。
心の中でそう毒づきながらも、素直についていく。
「優しくしてるだろうが」
「ぶわふっ!?・・・い、いや、今投げたよね。全然優しくないよね・・・」
「さっさと構えろ。あいつらばかりに修業させるわけにもいかんだろう」
「はいはい!」
私達は戦わないことを約束した。
でもそれは、あくまで自分から戦わないという約束。
彼らに戦いを任せる以上、もし彼らが負けそうになったら私達だって戦わなくちゃいけない。
避けられない戦いから逃げるなんて選択肢は―――ない。
そのために私達も修業をすることにしたのだ。
「さぁて・・・厳しくいくぞ」
「こっちこそ、本気で行くからね?」
いつも以上に、厳しく。
最近は私達が修業していると、最初は駄々をこねていた2人も刺激されて自主的に修業してくれるようになった。
だからもっと止めれない。
地球のために。彼らの手本になるために。
「下界の観察は?」
「デンデがやっている。昼からは俺だ」
「りょーかい。じゃあデンデもいるし、思いっきりしよ!」
「・・・最初からデンデの回復に頼るつもりはお前は」
「殺す気でくるのはピッコロじゃないか」
軽口を叩きながらお互いに重いマントを脱いで構える。
雰囲気が変わったことに気づいたのか、神殿内でトランプをしていた18号夫婦が見学に来た。
夫婦の間でひょこひょこ歩くマーロンが可愛い。
「修業か。頑張るな」
「ピッコロが師匠なんて大変だなぁ、ゆえも」
「がんばってー、おねえちゃん!」
「やーだー!応援されたら照れちゃ・・・ぐふっ!?」
18号夫婦とマーロンに応援されて舞い上がってたところに、ピッコロの伸びた腕が襲いかかって私を吹き飛ばした。
それを見た18号がやれやれと首を振る。
おいこらクリリン。
これもピッコロの愛情表現か、とかコワイこと言ってんの聞こえてるぞ。
「よそ見をするな。始まってるぞ!!」
「ったいな!!乙女の顔殴るな!!」
「ハッ。油断してるのが悪いんだろう?」
「隙ありぃ!」
「甘い!!」
会話から一気に本気の戦いになる私達の修業。
18号達に砂埃が被るのも気にせず、私達は拳をぶつけあった。
数分後。
最初はピッコロを押してた私が、体力切れで押されてきたあたりで悟天とトランクスも修業に参加する。
フュージョンの掛け声と、拳がぶつかり合う音。
異様な光景だと思い少しよそ見した私を、ピッコロの気弾が襲う。
もちろん、もう当たりはしないけど。
「あぶなー」
「はっ・・・集中しろ・・・!」
「だって疲れ・・・っは!!!」
「ぐっ・・・!!」
向かってきたピッコロに回し蹴りを叩き込む。
こうやって修業をしてると世界の危機を忘れてしまう。
結婚してからずっとこの状態だったから、いつもどおりだって思ってしまう。
でも実際は地球が壊滅の危機を迎えていて。
この時間さえも大切にしたいと思えるのは、そのせいだろうか。
来なければ良い。
戦う時なんて、来なければ。
臆病になってしまっている自分に気づいて、私は見えないように苦笑した。
「今日の修業は終わりだ」
「・・・・ありがとうございました!」
「・・・!あぁ・・・」
日が暮れた修業の終わり。
響いたトランクスと悟天のお礼の声。
上手くいかない修業に焦れる2人を優しく導くピッコロに、2人も懐き始めたんだろう。
思わず、頬が緩んだ。
「いやー。荒野に放置とか、死ぬ寸前までボコボコとかそういう修業が懐かしいねー」
「ほう。そういうのがお前の望みか?」
「今も死にそうなんでやめてください」
「ハッ。それはこっちのセリフだ」
言いながらピッコロがボロボロになった服を元に戻してくれた。
ピッコロと全部お揃いの道着とマントが私の身を包む。
「おー、ありがと!」
「・・・・少しは気をつけろ」
「ん?」
「その胴着はそこまで耐久性に優れているわけじゃない。ボロボロのままでいるな。見えるぞ」
「やだー、心配してくれてるの?うれし・・・・いっ!?」
言葉の途中で走る激痛。
足元を見れば、大きなピッコロの足に自分の足が踏まれていた。
容赦なく。
しかも、グリグリしてる。ぐりぐり。
「い、いたい!いたい!!」
「痛くしてるんだ」
「酷い発言だな!!うあああー!!謝るからやめてごめんなさい・・・っ!」
「ふっ・・・・」
半泣きで謝ると、ピッコロが満足そうな笑みを浮かべて足を離した。
やっぱりサディストだと思う彼は。
彼の魔族の血がそうしてるとか何とか言われてるけど、たぶん元からコレ。
「もう一度踏んでやってもいいぞ?」
「や、やめて。足砕ける・・・・」
ふざけ合いながらも、皆がご飯を食べてる場所から離れる。
そして2人だけになった場所で、そっと手を繋いだ。
最近、っていってもほんの数日だけど。
彼らが避難してきてから、2人で愛しあうってことはしてないから、こういう時間がとても貴重でドキドキしてしまう。
特にほら、今回は子どもたちも避難してきてるからね?
さすがのピッコロも変態なことは出来なくなったわけで。
「お望みならしてやってもいいぞ?俺は別に困らん」
「っあ!こら!!だめ・・・!!」
心の中を読まれ、繋いだ手を引き寄せられた。
腰を撫でる手が厭らしく、嫌でも意識してしまう。
「だめだってば!」
「・・・分かってる」
え、そんなしょげなくても。
「・・・・・すべてが終わったら」
誰も居ないことを確認する。
それからゆっくりピッコロの手を引いて、触れるだけのキスをした。
「ピッコロの好きにさせてあげるよ、約束」
「くくっ・・・忘れるなよ?」
「忘れないよ!・・・まったく、ピッコロも好きだなぁ。へんたーい」
「・・・・・」
クスクスと笑いながらからかってやる。
するとピッコロが急に真剣な表情を浮かべ、私の頭を撫でた。
「何故だろうな。いつの間にか、お前を求めたくて仕方が無くなったんだ・・・」
「・・・・・っ」
バカ。
人が冗談で言った時に、真剣に返すなよ。
おかげで何も返せなくなって、私は真っ赤になったまま固まってしまった。
それを見たピッコロが、楽しそうに笑う。
「・・・・あと1日で、あいつらのフュージョンは完成する。俺達も全力で全てを終わらせて・・・今日の続きをしよう」
「ばーか」
「なんとでも言え」
「ハゲ」
「・・・・」
「っだ!!なんとでも言えって言ったじゃんか!!!」
こうやってまた日が過ぎていく。
明日はついに悟天とトランクスがフュージョンを試すらしい。
世界の希望。
地球に残された希望の戦士たち。
きっと大丈夫だと、そう思えた。
だってベジータや悟空の・・・子供だから。
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