いらっしゃいませ!
名前変更所
「よし、こんなもんかな・・・・」
魔法を練り始めて数分後。
やっとダーブラの液体の正体がつかめた私は、それを解除するための魔法を作り出していた。
その間で進行が進んでしまい、2人は完全に石化してしまったけれど。
これで治せるんだから大丈夫だろう。
・・・たぶん。
「・・・・?」
立ち上がって周りを見た私は、ぱちくりと目を瞬かせた。
なにこれ。
さっきよりも周りが荒れてる?
「うあっ!?」
慌てて防壁を解けば、私の身体を強い気が襲った。
しかも一つじゃない。
複数だ。
遠くで一つ。これは感じ覚えのある気。
でも、もう一つ感じる気もする。
小さいけど確かに、悟空のような気が。
そして物凄く近くで2つの気。
一つは悟飯。
一つは・・・感じたことがないけど、これは。
「魔人、ブゥ」
魔人の力は私達の力に似てる。
会ったことはないけど、この異様な力が魔人のはずだ。
なんで復活してんのさ?
復活を止めに行った悟空たちは?
なんで、どうして。
「・・・・っ」
慌てて岩陰に隠れて宇宙船の方を見れば、魔人ブゥと思われるピンクの生き物が界王神と対峙していた。
バビディの側近だったはずのダーブラがいない。
いるのは魔人ブゥと、バビディと、界王神と悟飯だけ。
一体何が起きてるのか理解できないまま、魔人ブゥに吹き飛ばされた悟飯を目で追うことしか出来なかった。
一瞬膨れ上がった気は想像以上に――――バケモノじみている。
あんなの食らったら、悟飯は。
界王神も死んじゃう。
助けにいかないと・・・!
「くそっ・・・!」
「お姉ちゃん!」
「!?」
聞き覚えのある声が聞こえて振り向いた。
特徴的なツンツン頭とさらさら頭が、私を見つけて近づいてくる。
馬鹿、なんでこんな時に。
「悟天、トランクス、なんで・・・・」
戦わなきゃ界王神や悟飯が死んじゃう。
だ、だけど、この2人がここにいたんじゃ・・・・あの戦いに手は出せない。
この2人のことだ、絶対私に着いてくるに決まってる。
そして無茶するんだ。
そんなことされたら、あの煩いお母さん達に怒られるのは私なんだ。
余裕がある時ならまだしも、今はそんな余裕無い。
「ね、どいつが魔人ブゥ?」
「っそ、その話どこで・・・あ、こら、頭出さない!バレたらどうすんの!」
「いでっ!いてーよねーちゃんっ」
思いっきり頭を出して見ようとする悟天とトランクスを押さえつける。
こうしてる間にも、悟飯の気は感じられなくなっていた。
界王神はギリギリ虫の息だろうか。
助けにいくとしてもこの2人を守れるか微妙だ。
「気を出しちゃだめだよ」
「分かってるよ、な?悟天」
「うん!」
幸いだったのは、2人が気のコントロールが出来ること。
おかげで近くでもバレずにこうやって魔人を見れてる。
ほんとは、見てるだけじゃ駄目なんだろうけど。
ギリッと口唇を噛んだ私の目の前で、ダーブラが魔人と戦闘を始めた。
どうやら見た感じ、魔人を蘇らせたバビディに裏切られたようだ。
「ね、あいつ強そうだな!」
「どっちが勝つかな?」
「・・・そんなの、見なくても分かるよ」
ダーブラの槍が魔人に刺さる。
でも、勝敗はもう決まっていた。
この勝負、ブゥの勝ちだ。
ダーブラに勝ち目なんて無い。
槍が刺さってもブゥの気は一つも落ちてないんだから。
それどころか、余裕の表情で槍をぐぐぐっと抜こうとしている。
「うええ、なんだよあれ!?」
「トランクス君、静かにしないと!」
ダーブラの攻撃は一切通用していない。
ただ魔人を怒らせる材料になって――――そして。
「!!」
「クッキーになっちゃえ!」
可愛い声でそう聞こえたかと思うと、一瞬でダーブラが巨大なクッキーに変わった。
その瞬間、後ろで忘れていたピッコロとクリリンが元の姿に戻る。
「っ!ピッコロ、クリリン!」
「あれ?さっきまで石だったのに・・・?」
ピッコロとクリリンは不思議そうに周りを見渡した。
そしてすぐ、状況を悟ったのか私達と同じように身を伏せる。
皆の視線の先にいるのは、凶悪な魔人。
ピッコロがごくりと喉を鳴らし、私の方をチラリと見た。
「(どうなってやがるんだ、今・・・・)」
心の中に直接聞こえる声。
「(ごめん、分からない・・・防壁を解いたらもうこうなってて・・・・)」
「(なんで魔人が復活してやがる。悟空やベジータ・・・悟飯はどうした)」
「(悟飯は・・・・)」
魔人にやられてしまったかも、しれない。
覚悟を決めて伝えようとした私を、巨大な爆音が襲う。
爆音の方向には、バビディの宇宙船があった。
それは爆音と共に粉々になり、原型すら分からないゴミになる。
「な、なんだ?」
「何か出てきたのか?」
緊張感のない2人と、緊張感しか無い私達。
宇宙船から上がる煙の中、感じ覚えのある気を見つけて目を見開いた。
「ベジータだ」
「パパ!」
「・・・・・」
確かに感じ覚えのある気。
だけど、何か、何かが・・・違う。
違和感に気づいたのは私だけじゃないらしい。
ベジータが魔人を挑発するのを、耳の良いピッコロは聞いているんだろう。
私には、かすかな口の動きしか分からない。
「ッ・・・!!」
「ピッコロ?」
ベジータとブゥのにらみ合いの中、突然ピッコロが小さな声で呻いた。
心配になって覗きこめば、ピッコロの瞳が揺れている。
「・・・ピッコ、ロ」
「悟飯が・・・・死んだというのは、本当か・・・・」
「ッ・・・・!!」
トランクス達に聞こえないよう囁かれた言葉に、次は私が呻く番だった。
うそ、だ。
そんなはず。だってたった一撃だった。
あの悟飯が、たとえ魔人ブゥとはいえあれだけで死ぬなんて、そんな。
私があの時・・・助けに行けば。
ダメだ。
後悔したって遅い。
あの時飛び出していたら、私も、トランクスや悟天も死んでいたかもしれない。
「・・・・悟飯・・・」
戦いの中、あのベジータが押されている姿が滲んだ。
駄目、ダメダメ!
今目の前のことを、まず片付けなきゃ。
これ以上、犠牲者を増やす前に。
大丈夫。悟飯ならきっと生きてるよ。
最悪ドラゴンボールで・・・。
「ベジータ・・・!」
「パパ・・・!!」
「どうなってやがる、あいつらの気は・・・バケモノじみているぞ・・・!!」
どうなってるのかは知らないけど、ベジータの力は前よりだいぶ跳ね上がってる。
それなのにベジータの力はブゥに押され、次第に体力を消耗したベジータが遊ばれるようになっていった。
無邪気な顔で、容赦無い技を撃つブゥ。
ブゥだってベジータの攻撃を相当食らってるはずなのに、ビクともしない。
それどころか、ベジータの攻撃に怒りを覚えて本領発揮してしまっている感じがある。
――――あのままじゃ、死ぬ!!
「ベジータッ!!!」
「パパッ・・・!!!」
「こらえろ、トランクス!!お前がいけば、かえってベジータを苦しめるぞ!!・・・っておい!?ゆえ!!!!!」
ピッコロの言葉と同時に私は飛び出していた。
「ベジータぁぁああ!!」
「たぁああぁーーー!!!」
「こら貴様らーーー!!!!」
「僕も行くよ!!!」
「待て、悟天ッ!!おい!!!!」
もうこれ以上失うのは嫌だ。
悟飯の時みたいに戸惑ってちゃ、全てがおしまいになる。
「ベジータから手を離せこのピンク野郎が!!!!」
「そうだぞこの馬鹿!!!!」
私はトランクスを押し帰すこと無くそのまま突撃し、トランクスと同時に魔人ブゥを蹴り飛ばした。
魔人ブゥに殴られ続けていたベジータが、微かな息をしながら転がる。
ブゥの身体の一部らしき部分をベジータから剥ぎとった私は、悟天が合流するのを見ながらベジータの回復を急いだ。
「パパ!!」
「おじさん!!」
「ベジータ、お願い、起きて・・・!!」
治療の魔法をかけても、ベジータはビクともしない。
また、悟飯みたいに手遅れになったの?
込める魔力を増やしながら様子を見ていると、隣でトランクスが涙を零した。
そんなトランクスを見て、悟天が戸惑いがちに口を開く。
「もしかして、おじさん、死んじゃって・・・」
「ふざけたこと言うな!!僕のパパは、誇り高い・・・サイヤ人の、王様なんだぞ!!」
「え、王子様!?」
「そうだ!!だからこんなところで・・・パパが、死ぬわけないんだ!!あんな奴になんて負けるはずないんだ!!」
そうだ。
ベジータはサイヤ人の王子。
それはベジータにしか務まらない、誇り高き血。
こんなことで死ぬなんて、許さないんだから。
「ねーちゃん、もっと急いで!!」
「っ・・・治癒の魔法っていうのは、デンデみたいに優秀じゃないんだから無茶言わないで・・・!!」
私が出来るのは骨をつなぐとか、微かな傷を治すとかそういうのだけ。
それに対してベジータの傷は全てが深い。
傷も、体力も、気も、全てが危険だ。
もしかして、本当にこのまま。
「ねーちゃん!!!パパのこと知ってるだろ!?パパはこんなことじゃ死なないだろ!?」
トランクスの強い声が弱気な私を起こした。
私が弱気になってどうするんだ。
弱気になる暇があるなら回復すればいい。
吹き飛んでいった魔人ブゥを気にしながらも、私は全力で魔力を注ぎ込んだ。
「う・・・・」
その時だった。
響いた、微かな声。
私達はゆっくりと顔を見合わせた後、もう一度ベジータの顔を見つめた。
「・・・・ぐ・・・」
「パパ!!」
「おじさん!!」
「ベジータ・・・良かった。まってて、もう少しだけ回復できるはず」
ゆっくりと目を開けたベジータがトランクスに支えながら身体を起こす。
傷はほとんど癒えてないが、内部的な部分はどうにか治せたんだろう。
とりあえず、一安心だ。
もっとも重要なのは、全然終わってないけど。
「・・・・トランクス、悟天・・・ゆえ」
「やっほ。目が覚めた?」
「・・・・お前たちはここから離れていろ・・・あいつとは、俺だけで戦う」
起きたベジータは傷だらけのままそう吐き捨てた。
いやいや、ちょっと待ってよ。
確かにトランクスや悟天に戻れっていうのは分かる。
でも、私にもそれって酷くない?
「ちょ、ちょっと待った。私が加わればいけるって!」
「そうだよパパ!俺達も超強いんだぜ!!」
「僕も頑張るよ!!」
「・・・・」
ベジータは私達の言葉を聞いてもその場を動こうとしなかった。
なん、だろう。
嫌な予感がする。
いつもよりベジータが、やけに落ち着いてるような気がして。
いつものベジータなら悔しがって、怒鳴って、私達の手など借りない!って言うでしょ?
なのに、今は違う。
ベジータから放たれた言葉は、ただただ”冷静”だった。
「ベジータ・・・?」
「トランクス・・・ブルマを、ママを・・・大切にしろよ」
「え・・・?パパ、どういう、意味?」
私と同じようにトランクスも違和感を感じたらしい。
だって、いつものベジータじゃない。
嫌な予感だけが、私の身体を支配する。
「・・・トランクス。そういえばお前が赤ん坊の時から抱いたことがなかったな」
「え」
「抱かせてくれ、トランクス」
「あわ、パ・・・パパ・・・!?」
傷だらけの身体で、ベジータがトランクスを抱きしめた。
抱きしめられたトランクスが恥ずかしそうに笑う。
それを見ていた悟天は、羨ましそうに指を噛んだ。
そうか・・・悟天はまだお父さんに、悟空に抱きしめられたことないんだっけ。
悟天が生まれた時には、死んでたもんね。
「パパ・・・」
「トランクス・・・」
ベジータも良いお父さんになったものだ。
ただぼーっとその微笑ましい光景を見ていた私は、次の瞬間起こったことを理解しきれなかった。
「がっ!?」
トランクスの悲鳴。
抱きしめられていたトランクスが、首筋に手刀を浴びて倒れた。
誰が?
そんなの彼しかいない。
ベジータが、彼を殴ったのだ。
「っ!?どうして!おじさん!どうしてトランクス君を・・・あぐっ!?」
「悟天・・・!」
倒れたトランクスの代わりに抗議した悟天も、腹部に攻撃を浴びて倒れた。
この場で立っているのは私と、ベジータと・・・後ろから来たピッコロ。
ここでようやく私は気づいた。
彼が何をしようとしているのか。
この不安が、嫌な予感が、何なのかを。
「ピッコロ」
「・・・・」
「ゆえと、こいつらを連れて・・・遠くに離れてくれ。できるだけ遠くに」
「貴様・・・・」
「待った!!!」
私はベジータに近づいた。
その瞬間攻撃してくるのなんて分かっていたから、魔法で拳を受け止める。
「っ・・!!」
「そんな安っぽい手に引っかかると思う?」
ベジータは、死ぬ気だ。
死んでも、魔人ブゥを倒す気なんだ。
でも許さない。
そんなの、絶対に。
「ね、ベジータ。私の力を合わせれば勝てる」
「・・・・」
「私はベジータが何をしようとしてるのか分かるよ・・・でも、絶対に許さない」
ベジータは私の大切な人。
そしてブルマの、一番大切な愛する人。
もし私がピッコロを亡くしたら。
きっと狂っちゃう。
おかしくなっちゃう。
そんな思い、ブルマにさせたくない。
私も、したくない。
「ベジータ」
「・・・・」
「私と戦って。お願い」
「・・・お前じゃ足手まといだ。アイツは普通の戦い方じゃ倒せない」
「ふざけないで・・・私がなんのために修業したと思ってんのさ!!!!」
「ッ!?」
感情と共にあふれた魔力が地面を揺らした。
こっちに近づいてきていたブゥが、その揺れにコテッと倒れる。
「お、お前・・・・」
「ベジータ」
「・・・・チッ。分かった・・・・その代わり足引っ張るなよ」
ベジータが笑いながら私に手を伸ばした。
嬉しくなってその手を勢い良く掴めば、私の腹部に刺されるような痛みが走る。
――――え?
「がっ・・・・けほっ・・・!!」
身体から一気に力が抜けた。
倒れる私を、何も言わないピッコロが支える。
どうして。
どうして、ピッコロは何も言ってくれないの。
どうして・・・わかったような顔をしてるの。
「ベジー・・・タ・・・!!」
「頼んだぞ、ピッコロ」
「・・・・あぁ」
「・・・そうだ。最後に聞かせてくれ。俺は死んだら、カカロットたちと同じところへいけるか?」
やっぱり、ピッコロ達って似てるよね。
どこか理解しあってるって、そう思ってたの・・・間違ってなかったのかな。
間違っててほしかったよ、ねぇ。
「こんな時に慰めを言っても何にもならんだろうからハッキリ言おう。無理だ・・・お前は罪もない人を殺しすぎた」
昔の悪かったベジータがしてきたことは、許されることじゃない。
きっと彼は地獄に落ちて、浄化されて消える。
そして生み出された悪はまたいつか悪魔を生む。
ベジータ。
「・・・残念だな」
「・・・・・」
「さぁ、行け。頼んだぞ・・・ピッコロ」
ピッコロは放心状態の私とトランクス達を抱き寄せ、その場を飛び上がった。
ベジータの姿が段々小さくなる。
身体が、震えた。
これが見えなくなったら、彼はもう。
ああ、どうして。
なんで守れない・・・。
「ベジータ・・・!!!ベジータぁあぁああ・・・っ!!!」
「っ!暴れるな!!分かってやれ・・・あいつの、覚悟を・・・!!」
分かりたくもない。
生きなきゃ、意味が無いんだから。
「クリリン、逃げるぞ!!お前もここから離れるんだ!!急げ!!!」
「あ、あぁ・・・!?」
思いっきり気を上げて遠ざかる2人。
段々と遠ざかっていく風景。
そして見えなくなっていくベジータの姿。
その姿が完全に消えた瞬間、地球が壊れるのではないかと思うほどの爆発が起きた。
「あ・・・・・」
ベジータの、気が。
・・・・消えた。
魔力で魂の色を探る。
いくら探しても、彼の魂の色は見えなかった。
「う、そ・・・・」
ふわりとピッコロの腕を抜けだして、私はその爆発を見つめる。
「・・・・うそ」
「ゆえ・・・・!!」
そしてそのまま、私の意識は沈んだ。
涙と、共に。
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