Erdbeere ~苺~ 悪人の愛情は狂気にも似て 忍者ブログ
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2015年04月22日 (Wed)
フリーザ夢/Fネタバレ有り/短編ヒロイン/ギャグ/ダーク甘/※ヒロイン視点

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フリーザは毎日私に言っていた。
私がどこにいようと、ありえないことですが死のうと、その首輪は着けていろと。


私はフリーザの恋人だった・・・と思う。

ただ彼の愛情はちょっと歪んでいて、わかりづらかった。


そっと首もとを撫でる。
彼の所有物だという証の首輪が、まだそこに着けられている。


しょうがないでしょ、これ。外れないんだもん。

酷いよね、フリーザも。
独占欲強すぎるんだからさ。


それ言ったら、私が自由すぎるのがいけないんだって怒ってたっけ。


でもつけたまま勝手に死ぬなんて酷くない?
おかげで私、ここ数十年ずっとお一人様。

だから恨みを込めて、目の前の恋人をからかうことにした。


「やっと帰ってきたね、ゴシュジンサマ」


ケラケラと笑いながらフリーザに言う。
生き返ったフリーザは昔とまったく同じ、冷たい目をしていた。


「遅いんですよ、生きかえらせるのが」
「文句言わないでよー!生き返らせてあげたんだから、感謝してほしいぐらいですーっ」


べーっと舌を出せば、苛ついたフリーザが舌打ちをする。

そして強めに私の頬を尻尾で撫でた。


久しぶりに感じるフリーザの感触。
それだけで身体が震えるのが分かる。


分かりにくい愛情でも、私はフリーザのことが好きだったから。


「いい子にしてましたか?」
「ペットじゃないんだから」
「ペットでしょう、貴方は、私の」
「えー?人権侵害ー!」


冗談めいた私の叫びに、フリーザが笑った。

その笑い方は悪どいのに上品で―――思わずドキッとしてしまう。


「いい子にしていたようですね」
「誰かさんのせいでずーっとお一人様だったよ」
「・・・その言い方だとまるで、別な人のところに行きたかったような言い方ですねぇ」


ゾクリとさせる殺気が放たれた。
思わず顔を引き攣らせれば、頬をなぞっていた尻尾が私の右腕を強く引く。


引き寄せられた身体。

今となっては私でも振りほどける力。


なのに解けない。
捉えて、離さない。

フリーザという存在が。


「どうしました?他のところへ行けばいいでしょう?首輪も外してさしあげましょうか?」
「・・・そんな殺気放ちながら言われてもねー・・・」
「おやおや、私に殺されるのを恐れるような貴方じゃないでしょう」
「やだなー。もー、本当にどっか行っちゃうけど?」


少しツンとして。

フリーザに背を向けて腕を振り払おうとした私を、フリーザは許さなかった。

ほらやっぱり。
許してくれないじゃん。


強まるフリーザの力。

腕が折れるんじゃないかってほど強く引っ張られて、再びフリーザの方に引き寄せられる。


「わっ」


次は引き寄せられるだけじゃなかった。
目の前に広がった、フリーザの顔。


フリーザに抱きしめられている。

ドキドキして離れようとしても、フリーザの尻尾が私の腰を掴んでいて動けない。


「どこかへ行くというのなら、私がその足を・・・腕を、折ってさしあげますよ」


怖いほど真っ直ぐな愛情。
突き刺さるような冷たい声に、身体が震えた。


「十数年も恋人を放置するやつにそんなこと言われたくないんですけどー」
「何を言ってるんです?・・・貴方がついてこなかったからでしょう」
「え、私も死ねって?やだよー」
「酷い人ですね」
「じゃあフリーザは私が死んだら死んでくれるんですかね!」


冗談で言ったその言葉にフリーザの力が強まる。

絞め殺されるんじゃないかってぐらい抱きしめられて、私はしゃべるのを止めた。


「馬鹿言うんじゃありませんよ、貴方が死ぬわけ無いでしょう」
「んえ?」
「・・・私の傍にいるんです。貴方が死ぬことはありません」


狂気に満ちていて。

それでいて、優しい。

不思議な感覚の愛。
これが正常な愛かは、私にも分からない。


「わかったのなら、さっさと私に誠意を見せなさい」
「おかえりなさいませ、ご主人様」
「心がこもってませんねぇ・・・」
「抱きしめられてるんだもん。誠意なんてどうやって見せるのさ?」
「簡単でしょう?こうするんです」


口唇を、塞がれた。
フリーザの少し冷たい口唇が、私の全てを奪う。


これが誠意?

心地よすぎて、壊れちゃいそうだよ。

もっとって。強請るようにフリーザの腰に手を回す。
するとフリーザは口唇を離し、目を細めた。


「随分と可愛らしいことをしてくれますね」
「でしょ?」
「・・・そういうところは、可愛らしくない」
「ひっどいな。その可愛らしくない人が、貴方の恋人なんですけど」
「えぇ、そうですよ」
「可愛くなくてもいいんですかーっ」
「はい」
「・・・・む」
「どうであろうと、私は貴方を所有物にしておかないと気がすまないんです。それで十分でしょう?それとも、これ以上を望むつもりで?」


逃げ出せば彼は私を殺すだろう。

噛み付けば彼はお仕置きだと言って、私を甚振るはずだ。


そんな狂気に満ちた、いわば「選択肢」のない愛情。
それでも私は満足していた。


好きなんだ、彼が。


歪んだ愛でさえも。


愛してるの言葉はない。
あるのは”所有”の意志。


「そうだね、私もフリーザの全部が欲しい!なーんて?」
「・・・私の全部、ですか」


私から身体を離して、考えるような素振りを見せる。
そして私の首輪を力強く引っ張り、顔を無理矢理上に向けさせた。


「んぐっ」
「こうやって貴方を所有している時点で、全てさしあげているじゃありませんか」
「っ・・・かは!」
「私の居ない間、貴方は誰にどんな表情を見せていたんでしょうね?それを考えるだけでも・・・貴方を殺してしまいそうですよ。殺されないだけ、ありがたいと思いなさい」


そのままベッドに放り投げられる。

自由になった喉が、新鮮な酸素を求めて開くのを感じた。
ぜぇはぁとうるさく呼吸をすれば、フリーザが満足気に笑う。


嗚呼。

狂ってるんだろうな、私。


狂気の中にある愛情。
見え隠れする不器用なそれに、私は恐怖すら感じなかった。


「・・・・おかえり、フリーザ」


ベッドの上に転がったままぽつりと呟く。
フリーザは少し嬉しそうにした後、私の上に跨った。































死ぬならつれてってと。
何がそこまで私を狂わせるんだろうか。


ただの部下だった私は、突然気に入られたフリーザに監禁されて愛された。


その頃は確かに彼が怖かったはずなのに。

そんな愛が異常だと、認識出来てたはずなのに。


いつからだろうか。
この愛も、また一つの愛なのだと思えるようになったのは。


「ベジータ」
「・・・っ!お、お前は・・・」
「久しぶり」
「ハッ。あのフリーザの野郎の女か。この俺にでも復讐か?」


復讐心に駆られたフリーザは、力の全てを出し尽くしてこいつらと戦った。

そして負けた。
命を、散らしたのだ。


もう一度生きかえらせることがどれだけ辛いことか解ってる。

私一人じゃ、無理なことも。


――――だから。


「ま、昔のよしみでさ」
「・・・・?」
「殺してくれない?」
「は?」
「殺して?」


狂ってしまったら戻れない。
青髪の彼を見据えて、私は1ミリたりとも恐怖を感じず笑っていた。

ベジータの目が、驚いたように見開かれる。


「お前・・・」
「悪いけど、私は復讐なんてことに興味ないし・・・勝てない勝負をするつもりもないんだよねー。アンタ達、強いしさ?」
「同じ戦闘民族の言うことか?お前もサイヤ人と同じ、戦闘民族の生まれだっただろうが」
「なら、何?」


戦って命を散らせって、いうの?

それとも罪悪感?
たとえ元敵の恋人でも、実害がなければ殺せない?


彼の視線の奥に、綺麗な青髪のお姉さんが見えた。
ああ、あの人が彼の愛する人?

フリーザよりも優しくて、温かい目をするんだね。


でもいいの。

私の彼の愛情は、あれなんだから。


「・・・ベジータ」
「誰が貴様なんぞの願いを叶えてやるか。死にたきゃ勝手に死ねばいいだろうが」
「・・・・・・」
「・・・驚きだぜ。あいつにも、お前みたいなやつが・・・いるとはな」
「・・・・そう?」


ベジータの言葉の意味はわからないまま。


「じゃあ、ベジータ」
「なんだ」
「ばいばい」
「っ!?」


血が、散った。

まさか本当に死ぬとは思わなかったのか、ベジータが私の身体を支えた。


胸に突き立てた自分の気弾。
きちんと急所を撃ちぬいたそれに、私は意識を奪われていく。


かすれゆく意識の中、ベジータがぼそりと呟いた。


「狂ってやがる・・・なんで、そこまでして・・・!」


私には、お似合いの言葉だ。

































「もう、寂しくないでしょー?あ、その格好似合ってるよ」
「・・・・死にたいのですか貴方は」
「もう死んでるしー!」


花畑。
舞う妖精たち。

お人形たちのパレード。


地球の地獄というのは、愉快な場所だった。

私にとっては別に苦痛じゃない。
そこまでの悪人じゃなかったってことで、私は力を奪われるだけで済んだし。


そんな私の上で、ミノムシみたいにされたフリーザが揺れている。

私はそれをのんびりと見上げ、笑った。


「ま、いつまでも付き合ってあげますよフリーザ様」
「ならまず私をおろしなさい」
「だってお人形たちがダメっていうんだもん」
「・・・貴方はどちらの味方なんです?」
「そんな怒んないでよー。しょうがないでしょ、私だって力奪われてるんだから」


ねぇ、フリーザ。
正直私はこんな場所でも、幸せだよ。


「ね、フリーザ」
「・・・・なんです」
「大好き」
「・・・は」
「大好き。そういえば私も、あんまりこういうこと言わなかったなって。今は行動出来ないから、言葉で・・・・ね」


手足の自由が奪われたフリーザに、私からの愛を。

表情は見えないけど、少しだけフリーザが笑ったような気がした。


「・・・・ますよ」
「・・・え」


聞き取れないぐらい、小さな声。

目を見開いた私に、不機嫌そうなフリーザの視線が突き刺さる。


「ちゃんと聞いてなさい。貴方が言ったんでしょう」
「あ、ご、ごめんなさい・・・」


もし、間違いじゃないのなら。
きっと私は今、最高に幸せだ。


”私も愛してますよ”


初めての言葉。

狂った末の結末に、また私は思うのだ。
「これも悪くないかもしれない」と。

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