いらっしゃいませ!
名前変更所
ピッコロと夫婦になってもう二桁の年数になろうとしてる。
でも世界は私達を完全に平和にはしてくれない。
最近感じ取った気。不吉な、それ。
ピッコロが言うにはその気は「フリーザ」のものだったという。
私が記憶の中で見たその帝王は恐ろしい悪だった。
今の私達にとっては別に怖くない存在だろうけど、嫌な予感はする。
「はぁ・・・平和って中々ないもんだなぁ・・・・」
悟空が悪人を惹きつけてる説、ほんとにありだな。
そんなことを思いながら寝返りを打てば、腰に温かい手が回りこんできた。
ぐいっと引き寄せられる感覚。
お互いに服を着てないことを思い出した私は、慌てて暴れる。
「ちょ、こら!!!」
「・・・なんだ」
私を引き寄せた犯人――――旦那様であるピッコロが、不機嫌そうに私を睨んだ。
なんだ、じゃないよなんだじゃ!!
素っ裸のままで密着なんて、その、色々やばいんだから。
特にピッコロが。
朝からそういうことに持ち込まれたら、私の身体がもたない。
「ふ、服着てからにしよ?」
ピッコロの方を見ないように言う。
すると急にピッコロの手が私の脇の下に潜り込み、そのまま胸を掴んだ。
「ひっ!?ちょっと!何し・・・っ」
明らかに狙った触り方をするその手。
思わず身体を震わせれば、背中に当たる彼の熱。
えーっと、これは?
つまり?まさか?
「ま、待って、ピッコロ」
「ん?」
「ん?じゃないよ、どこ触って・・・っ」
「胸だな。相変わらず触り心地が良い」
「っ変態かよ!!の・・・!離せー!!アンタ昨日何回したと思ってんのー!!」
ピッコロと結婚して10年が経とうとしてる。
なのにピッコロは身体の関係に飽きることがない。
むしろ前よりもずっと激しく求めるようになっていたり。
遠慮が無くなったというか。
変態チックに、なっていくというか。
だからほぼ毎日抱かれている私の身体は、悲鳴を上げているのだ。
朝からの行為なんてヘタすれば今日1日寝こむことに――――!
「デンデがいる。心配するな」
「そこじゃないよ!!心読むなよ!!ってかそんなことに神様の回復使うな!!」
「うるさいぞ・・・少し黙れ」
「あ、やっ・・・・」
魔術によって出された紐。
それに両腕を縛られた私は、覚悟を決めて目を閉じた。
結局起きたのは昼。
シャワーを浴び終わった私は、ぶすっとした表情で部屋に戻ってやった。
「・・・そんな顔をするな」
「腰痛いです」
「拭いてやるから機嫌治せ」
「腰痛いです」
「・・・・今夜は少し手加減してやるから」
「たまには、しないって選択肢をだな・・・!」
そう言いながらも慣れた感じでピッコロのひざ上に座る。
ピッコロも慣れた手つきで私の髪を梳かすと、丁寧に長い髪を結んでいった。
私のポニーテールはこうやって出来る。
ピッコロが髪の毛を切るなっていうから切ってないんだけど、それから毎日こうやってピッコロが結んでくれているのだ。
しかも魔法を使わないで、ちゃんとピッコロ自身の手で結んでくれる。
最初は長い髪が嫌いだった私も、そのおかげかこの髪型が大好きになっていた。
「にひひー」
「なんだ、機嫌は治ったのか?」
「しょうがないからねー、なおってあげたよー」
「・・・・ふ」
女の私より、起用で丁寧な結び方。
笑いながら髪を結ぶピッコロの手つきは鮮やかだ。
こうやってると本当に平和を感じる。
その平和が壊れようとしてるのも、事実だけど。
「ほら、出来たぞ」
「ん、ありがと!!」
立ち上がって鏡を確認すると、綺麗に結ばれた髪が目に入った。
お礼を言いながらキスをしてピッコロの手を引く。
「よし、修行しよっかー」
「・・・身体は大丈夫なのか?」
「心配するなら朝から襲うな馬鹿!!」
怒ってもどうせ治さないんだろうな。
そう思いながら神殿の外に出た。
もちろんピッコロの手は握ったままで。
外ではデンデとポポが下界の様子を見守っている。
いつもの、光景。
「おはよー、デンデ、ポポ」
「おはようございます。でももうお昼ですよ?」
「・・・・ピッコロに言ってよ」
「ふふ、仲が良くて羨ましいです」
からかうようなデンデの声に思わず顔を逸らした。
「は、早く修行するよっ」
「顔が赤いぞ?どうした」
「うるさいな!!」
ピッコロを広い場所まで引っ張り、手を離す。
そして私達は何も言わずに拳を構えた。
私達が外に出てやることは大体決まってる。
修行かデート。今日は修行の日。
本当に疲れてる時は乗り気じゃないんだけど、最近は修行も好きだ。
なんでって?
そりゃさ、ピッコロが戦ってるの・・・かっこいいでしょ?
つまりそれを見る余裕が、戦いの中で持てるようになったってわけさ。
「行くぞ!!」
「っしゃー!来いっ!!」
ぶつけ合う拳。
ひらりと翻るマントは、ピッコロのかっこよさを引き立たせる。
苛立った瞳が私を刺す。――――かっこいい。
「っ・・・よそ見しやがって・・・!」
「のわっ!?」
見とれていた私を突き刺すような気弾が目の前に落ちた。
それすらもかっこいい。
容赦なく撃ち込まれる攻撃を避けながら、懐に飛び込む。
鳩尾を狙って膝蹴りを決めようとした私の足を、ピッコロの手が掴んで放り投げた。
「っうわぁああ!?」
放り投げた、といっても手は足から離れておらず。
得意の伸びる手に掴まれたままになった私は、抜け出せないまま地面に激突した。
油断、とはこのことだ。
顔面から激突したためか、鼻血が流れる感触がする。
「ほう、かっこよくなったな」
「・・・嬉しくないです」
「褒めてやったのにか?」
鋭い歯を見せながらニヤつく彼に少しドキッとした。
意地悪されるとむかつくし、仕返ししたくもなるんだけど・・・。
何故か魔族らしい彼を見ると、いつもと違う感じにドキドキする。
ま、これだけ年数経ってるのにドキドキ出来るってのも貴重だよね?
逆にピッコロは?
ピッコロは、私にドキドキしたりすることってあるんだろうか。
「レディに鼻血出させるとか失礼な・・・っ!!」
でも、とりあえず今は仕返しだ。
スピードを上げた私は、血が流れるのも気にせずピッコロの目の前で高速移動した。
そしてそのまま、後ろに回り込む。
まぁ、これはピッコロに気づかれて止められるだろう。
「分かっているぞ!!」
「こっちこそ、分かってるよ!!」
「なっ・・・・!?」
ピッコロが後ろを向いてからもう一度高速移動を仕掛けた。
見事ピッコロの後ろに回りこんだ私は、ニヤけながらピッコロに抱きつく。
抱きつく・・・なんて言えば優しいかもしれない。
実際は、地面に顔面を強打させるレベルで”押し倒した”
「ぐふっ!?」
「へへー、仕返し!」
「き、貴様ァ・・・・!」
「あ、ピッコロますますいい男になったよ!」
「黙れ!」
私の身体を気で吹き飛ばし、体勢を逆転させたピッコロがまた笑う。
やめてよ、かっこいいんだから。
顔面紫色ですけど、血で。
「どうした、今日はヤケに集中力がないな?」
「あ、ばれた?」
「わからないとでも思ってるのか」
「いやさー、今日はいつもよりカッコイイなぁ・・・って?」
「・・・・は?」
ピッコロが私の上に容赦なく伸し掛かる。
2m越えの人の重さに必死に耐えながら、ピッコロの手に頬を寄せた。
平和が崩れると思うと、いつもより愛情を感じたくなるのだろうか。
当たり前の日常を――――もっと深く刺激的に味わいたいと。
「・・・ゆえ」
「だってピッコロかっこいいんだもん、その表情も、動きも、声も、全部。あーちくしょー、私ばっかりドキドキしちゃってさー!」
ネガティブになりかけた心をごまかすようにまくし立てれば、ピッコロが私の上から身体を退けた。
私の両脇に手をつき、覆いかぶさるように体勢を変えたピッコロが表情を歪める。
「お前ばかりだと?・・・・馬鹿だな、お前は・・・」
「っ・・・!」
伸びてきた手が、私の頬に触れてから身体のラインをなぞる。
いや、ちょ、待って。
見えないけど一応デンデ達も外にいるんだよ!?
こ、この状況、まるで私がピッコロに襲われてるみたいで・・・!!
「お前が襲われるようなことを言うから悪い」
「え、も、それ、襲ってることを肯定してるような・・・!?」
「あぁ・・・そうだが?」
「いいいいいや!」
「何度も教えてるのに分からないお前が悪いんだろうが。言っただろう。見た目の魅力だけではなく、お前は全てにおいて俺を・・・狂わせる」
覗く牙。
赤い瞳。
意識が揺らぐ。
食べられ、ちゃいそう。
「俺がこうやって支配したいと思うのはお前だけだ。・・・諦めるんだな?俺をこうやって意地悪くさせるのも、魔族の血をうずかせるのも、全部お前のせいなんだ」
好きな人には優しくなるってタイプじゃなくて、意地悪したくなるタイプなんだね。
ピッコロって案外、子供っぽい?
ってか、好きとかそういうのを言うのは恥ずかしがるのに。
こういう言葉を言う時は平気そうな顔をするんだよね、ピッコロって。
おかげで私が恥ずかしい。
耐え切れずに視線を逸らした私を、咎めるように耳元に息が触れる。
「・・・何を考えてやがる」
「な、にが・・・っ?」
「それだけじゃないだろう。何かぼーっとしてる理由は」
「・・・・・・うーん」
「・・・ゆえ」
「いやさー、どうしてこうも、平和が崩れるのかなぁって・・・・」
悟飯達に子供が出来た。
ベジータと悟空も楽しそうに修行の日々を送ってる。
何一つ、壊れて欲しい日常なんて無いのに。
また嫌な予感が近づいてきてる。
「こうやってずっとずっと・・・・ピッコロと、静かに、暮らしてたいのになぁ」
私にまたがるピッコロの頭を撫でた。
ターバンの縁を辿って耳に触れて、それから微笑む。
「・・・・だーいすき」
言う直前で照れた私は、触れていた手でピッコロの目を隠した。
クツクツと意地悪く笑う声が降り注ぐ。
私に目を隠されたまま手を掴んで、抱き上げた。
「安心しろ。俺達は平和のために・・・この時間を守るために、強くなるんだろう?」
昔とは違う。
誰かを殺したり、傷つけたり。
誰かに勝つためだけの力じゃない。
誰かを守る、力。
何かを作り出す、力。
「・・・うん」
「フッ・・・分かったなら不安そうな表情をするな。調子が狂う」
「私が元気じゃないと調子狂うの?さみしがりやだなぁー!」
「あぁ・・・悪いか?」
「ッ・・・・」
開き直ったピッコロは強い。
危うくピッコロの雰囲気に流されかけた私は、そのままピッコロを押しのけて立ち上がった。
そしてまた、拳を構える。
「じゃ、そのためにも・・・修行しますか!!」
「もう大丈夫か?」
「ピッコロこそ。・・・行くよ!!」
さ、次は、本気でね?
修行の時間だけで日が落ちた。
いつも通りお風呂を浴びて、部屋に戻る。
部屋に戻ると、部屋が小さな明かりで照らされていた。
これは、ロウソクの光だ。
そして甘く漂ってくる香り。
どうやら、アロマキャンドルが焚かれているらしい。
「ピッコロ」
「あがったか」
「それ・・・」
「ふ・・・この前気に入ってただろう?疲れただろうからな、また出してみたんだ」
優しい言葉。
優しい声。
惹き寄せられるようにピッコロに近づく。
そしてベッドに腰掛けていた彼の膝に、ゆっくり腰掛けた。
「・・・重い」
「レディになんつーこと言うんだ」
ぴしっとピッコロの膝を叩くが、ピッコロは私を抱えたまま笑っている。
「・・・・綺麗」
「俺にはさっぱりだな。ただの火だろうが」
「えー?じゃあ、こういうのはどう?」
真っ暗な部屋の中。
揺らぐ火に手を伸ばし、パチンと指を鳴らした。
その瞬間、ゆらゆらと揺れていた火が形を変える。
「・・・・なんだこれは?」
「壁、見てみて」
「ん?・・・ほう、なるほどな」
揺れる火がつくる、影。
私が手で作った影を、揺れる火がぐにゃりと歪める。
「ほら、ピッコロ」
「似てない」
「いやほらそっくりでしょ?このぴょんっとした触覚とか!」
影に触覚みたいなのを生やして遊んでいたら、ピッコロに怒られた。
仕返しとばかりに後ろから強く抱きしめられる。
その影すらも壁に映しだされて、ちょっと恥ずかしくなった。
「こ、こら・・・っ」
「いい影だな・・・ほら、見ろ。まるでお前が食われてるみたいだぞ」
「っさいな・・・・!!」
恥ずかしくてピッコロの膝をぺしっと叩く。
そんなんじゃビクともしない。
分かってても、恥ずかしさのせいでこういうことしちゃうんだよね。
彼もそれを分かってて、叩かれても笑ってるんだろうけど。
「ん・・・・ど、どこ触ってるの?」
結局今日もやるのか。
そう思わせるピッコロの手の動きに、身体を捩った。
すると、わりとすんなりピッコロの手が離れる。
「・・・ちっ。今日は我慢してやる」
・・・・そ、そう言われると、なんか寂しい。
ちょっと期待しちゃってる自分を感じて、思わず苦笑した。
「ほら、寝るぞ」
「うん」
ずるずると布団の中に引きずり込まれる。
いつもはこの後襲われて、ぐったりして寝るんだけど・・・今日はそれがない。
そのせいか、布団に引きずり込まれても、まったく眠気が来なかった。
それはピッコロも同じなのだろう。
私を抱きしめて寝ている彼の気も、眠っていないことを示している。
「寝れないの?」
「・・・お前もか」
「いつもは誰かさんのせいでぐったりして寝るからねー」
後ろから抱え込まれてるせいで、ピッコロの顔は見えない。
でもきっと今、意地悪な顔してる。
なんとなく分かる。
「ぐったりさせて欲しいならそういえば良いだろう?」
ちゅっと音を立てて首筋に口付けられた。
びくっと跳ねる身体は、正直。
「へんたーい」
「文句を言うなら寝ろ」
「ねれません」
「じゃあ襲うぞ」
「どうぞ?」
「っ・・・」
会話が、止まる。
無言になった空間で、ピッコロが私を仰向けにさせた。
その上にまたがるピッコロは怪しく笑ってる。
マントの首元に長い指をかけて。
するりと、脱ぎ去る。
――――見惚れる。
覗く牙が、私をゾクリと震わせた。
「飽きないね、ピッコロも」
「飽きて欲しいのか?」
「んなこと言ってないじゃん!でも、毎日してて飽きないのかなーって?」
「お前は飽きたのか?」
え、そ、そんな。
そんな真顔で聞かれても。
降り注ぐ視線から目をそらし、ぼそっと答える。
「あ・・・き、ないですけど・・・・」
「だろう?俺も同じことだ」
「・・・そ、そですか・・・」
私自身はそこまで自分に魅力があるとは思わない。
ただ、ピッコロに愛されてるからには、少しは自分に自信を持たなきゃって思う。
10年以上の付き合い、だからこそ。
今更何を考える?
飽きる飽きないじゃない。
ただお互いに欲しい―――それだけ。
「これだけ俺と一緒にいてわからないのか?俺は・・・お前の前では、何も変わらない」
そうだったね。
あんなに柔らかく、優しくなったピッコロが。
私の前では変わらない。
ずっとただの魔族。
ううん、ただの男。
「じゃあ、手加減してよ?」
「あぁ・・・考えといてやる」
「え、ちょ、それ・・・っ」
絶対、手加減しないやつだ。
そう思いながらも身を委ねる私は、彼の虜。
ずっと続くことのない平和なら。
また、戻せばいい。
「お前は、必ず・・・どんなことが起きても、俺が・・・守ってやる・・・!」
「は、わたし、も・・・」
「ゆえ・・・・っ」
必ず2人で――――幸せでいられるように。
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