いらっしゃいませ!
名前変更所
私がフリーザに仕えるようになったのは、惑星ベジータがフリーザの配下に治められてから。
何故か私だけ直々に引きぬかれて、ザーボン達と同じように側近として働くようになった。
別に嫌じゃない。
ただ楽しければ良い。
だからといって誰かに跪くってのも性に合わない私は、気ままにフリーザの側近として働いていた。
いつ殺されても構わないって感じで、フリーザに”様”すら付けず。
なのに殺されない。怒られもしない。
「フリーザ、お茶でも飲めば?ずっと仕事じゃ疲れるよ」
「貴方はいつも気楽でいいですね・・・きちんと仕事してくださいよ」
「文句あるなら側近から外せば?ま、仕事はちゃんと終わってるけど」
「だから外せないんですよ・・・ふ、私の見込み通りの人だ」
「はいお茶」
「どうも」
だから本当に、ただの上司だと思っていた。
私のことを偶然気に入っただけの変人だと。
「まったく、貴方はなぜそんな馬鹿みたいな戦い方をするんです」
「えー?」
「もっと効率的にさっさと殺せるでしょう」
「大猿になれってこと?嫌よ。あんな格好させるの?レディを」
「レディ?」
「どこにいるの?みたいな顔したな。ぶっ飛ばすわよ」
「おやおや、その力をあいつらに投げて欲しいんですけどねぇ・・・」
「むかつく・・・っ」
アンタが、死ぬまでは。
「ついに、この時が来ましたね・・・」
「ほんと。手間かけさせてくれるわ。困った上司さん」
あれから何年経っただろう。
私はこの時をずっと待っていた。
ずっと教えて欲しかったの、フリーザ。
この気持が何なのか。
フリーザとただ気ままに仕事をするだけの日々が壊れて。
何もかもが無くなった瞬間、虚無感に襲われた。
誰にも従う必要が無くなったのに。
もう何も恐れるものはなくなったのに。
私は結局、アンタに従ってる。
「・・・・これは」
「おはよう、フリーザ」
「・・・・!」
再生機から出てきたフリーザは、私の声に目を見開いた。
生き返ったことに驚いたっていうより、私がいることに驚いてるような表情。
とりあえず再生機の液体を拭いてあげようと手を伸ばせば、その手をグイッと力強く引き寄せられた。
「っ・・・何!」
「・・・・皆さん、席を外していただけますか?」
「は、はい」
後ろで見ていたタゴマ達がフリーザの指示に従って部屋を出て行く。
ってどうしてよ。
こいつらはアンタを助けてあげたのに、お礼よりも先に追い出すってアンタ。
文句を言おうにも、目の前のフリーザがそれを許さない。
「・・・・」
「・・・・」
誰もいなくなった部屋。
静かな空間の中で、私とフリーザの呼吸音だけが響いた。
あれから何十年。
私達はこの時のため、フリーザの復活のため、動き続けてきた。
やっと願いが叶ったのに、私の気持ちは晴れない。
むしろモヤモヤが増えたように感じる。
「驚きましたよ」
「・・・・」
「貴方は随分と私を嫌っているようでしたからね。・・・まさか、私の復活を願う軍の中に、貴方がいるとは」
「悪い?」
「いいえ、悪いとは言っていません。むしろ嬉しいのですよ」
ああ、いつもの声だ。
私に命令するときの、私をからかうときの、あの声。
「今度は何を企んでるんです?」
「何か企みがないと動かないような人に見える?」
「ええ」
「はっきり言いやがった・・・。まぁでも、あたりかも。確かに企みがあるわ」
引き寄せられた手を逆に握りしめて、私はフリーザに顔を近づけた。
異星人としての表情。
かっこいいとかは分からないけど、近くで見るとドキドキする。
なんで?どうして?
それが知りたくて、アンタを生き返らせたんだ。
「誰かに従うなんてまっぴらだと思ってたの」
自由気ままに生きたい。
それだけだったはず。
「なのにアンタがいなくなって・・・つまらなくなった」
「・・・・・」
「だからその理由が知りたくてアンタを生き返らせたのよ。ねぇ、教えてよ。アンタ私に何したのさ?」
今までこんなことなかった。
誰かに執着することなんてなかった。
この感情は何?
きっとフリーザが私に薬か術を掛けたんだ。
「何もしてませんよ」
「嘘。それならなんで・・・こんなにモヤモヤするのよ」
「戦闘民族というのは、戦闘以外のことを知らないようで困りますね」
「・・・さりげなく馬鹿にすんな」
目の前の顔を殴ってやろうと拳を握りしめる。
でもその手はフリーザの顔を殴ること無く、力を失った。
まっすぐ私を見据える瞳が・・・あまりにも綺麗で。
あまりにも、妖艶で。
「・・・・・っ」
「私はずっと、貴方を側近にした時から貴方のその感情と同じものを抱いてました」
「・・・な、なによ、フリーザもモヤモヤしてたわけ?」
「えぇ。ずっと・・・地獄でもずっと、ね」
捉えられたように動けない。
いや、実際捉えられてるんだ。
長い尻尾が私の腰を抱く。
抵抗出来ないまま引き寄せられ、自ら近づけていた顔がもっと近づけられた。
それはもう、キスすら出来てしまいそうな位置。
「貴方がそんな表情をしてくれるなんて思いませんでしたよ・・・・」
フリーザの声が、いつもと違う。
「ずっと待っていました。貴方がその感情に目覚めてくれるのを・・・」
熱っぽくて、私を、狂わせる。
「教えて差し上げましょう。それは恋ですよ」
「恋?・・・ちょっとまってよ。宇宙の帝王ともあろうお方が、そんなこと口にするの?」
「真実ですよ。それとも、帝王は愛を知ってはいけないと?」
”いいや、違う”
自分の言葉を否定して、フリーザは私に口付けた。
力強い口づけに抵抗すら出来ず、私は腰を抜かしてしまう。
「っは・・・!」
「逆さ。帝王だからこそ、なんだ。私はお前がほしいと思った・・・だから、どんな手を使ってでもお前を手に入れようと思ったんだよ」
「な、え・・・ええ・・・!?」
「ふふ、少し乱暴でしたね・・・すみません。ですが本気ですよ、私は」
笑みを浮かべるフリーザが、ふわりと浮いて私を見下した。
前はむかつくと思っていたその視線が。
何故か心地良いと感じた。
これが恋?
分からない。
私はフリーザが好き?
――――それなら。
「じゃあ、分かるまではアンタの部下でいるわ」
「・・・貴方らしい返事ですね。もう分かっていることでしょうに」
「わからないわよ。いきなり言われたって・・・その、よく分からないし。このモヤモヤだけが恋だの愛だの言われても・・・」
カツン。
地面に降りたフリーザが、私から尻尾を離して私に近づいた。
思わず、一歩引き下がる。
「・・・私を見てどう思います?今私にキスをされて・・・どう思いました?」
カツン。
また、一歩。
掴まれてないのに追い込まれていく感覚。
「ど、どうって・・・」
「嫌では無かったんでしょうね?今の貴方なら、私を突き飛ばすことだって出来たでしょうから。どう思いました?感じたままに言えばいいんですよ」
カツン。
ついに背中が壁に当たった。
逃げ場を失った私の横に、フリーザの尻尾がゆっくりと近づく。
「っ・・・・」
「そんなに顔を赤くして。期待してしまいますよ?」
「ち、ちがう」
「違う?何が違うんです?」
「や、その、・・・・っ」
――――逃げられない。
「・・・は」
「・・・・ふ、ぅ」
「なぜ避けないのです?」
「・・・・・・・っ」
「答えなさい」
「・・・・じゃ、ないからよ」
「もう一度」
「嫌じゃ、ないからよ」
「・・・良い答えです」
私の精一杯の答えだった。
愛なんて分からない。
恋すらも分からない。
誰かに従ったりすることだって、分からないはずだった。
なのに。
「お待ちしておりました、フリーザ様」
意表をつく、仕返し。
私はその日、初めてフリーザを様づけて呼んだ。
驚くフリーザにしてやったりの笑顔を浮かべれば、すぐ反撃の口づけを食らう。
「っは・・・!」
「やはり貴方は私の最高の部下だ」
「ここまで言っておいて部下なの?」
「ほう?それはつまり?」
ああ、間違ってたわ。
アンタに勝とうと思ったことが。
「訂正しましょう、貴方は最高の・・・私の、大切な人ですよ」
気づいてしまったら最後。
その感情から抜け出せることはない。
永遠、に。
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