いらっしゃいませ!
名前変更所
気だるい身体を起こしながら、私は真っ赤になる顔を抑えることは出来なかった。
結婚初夜。
酔っていたこと、そしてもう何も我慢する必要がないことに理性というものが消えて。
狂うように彼を求めた。
朝日が上るまでずっと。
「っ・・・・」
「ゆえ・・・?」
「っ!お、おおおおはよ!!!!」
「フッ・・・恥ずかしがることないだろう?」
意地悪じゃない、ピッコロの笑み。
ベッドに腰掛けていた私の頬を撫で、そのまま口付ける。
「・・・・おはよう、ゆえ」
「うん、おはよピッコロ」
なんか、凄く夫婦って感じ。
思わずニヤける顔を抑えられず、私はもう一度口付けた。
これからずっと。
ううん、これからが始まりなんだ。
私達の、第二の人生は。
私はピッコロと結婚してから修行の時間を倍以上に増やした。
理由は二つ。
一つ目は単純にピッコロや他の人たちを守れるようになりたかったから。
二つ目は、死ぬことが怖くなったから。
私達悪魔は死んだらそこで終わり。
魂は悪を巻き込んで消滅し、地獄にも天国にもいけないで消える。
でも死ななきゃ永遠の命。
だからピッコロとずっと一緒にいるためには、強くなくちゃいけない。
もっと色んな魔法を考えて、天才にならなくちゃいけない。
「はぁああ!!!」
それから私の戦い方は一番最初の頃の”望んでない戦い方”へ変わっていった。
まさか天使をやめてから気づくなんて。
天使が何故あれだけの脅威な力を持っていたのかを。
天使はつまらないと思っていた。
持っていても力だけ。
何も考えずに戦っても勝てるほどの驚異的な力だけだと。
あるのは力と厳しいだけの規則。
全てがつまらないと思っていた。
「っく・・・」
「ピッコロ、前が隙だらけだよ!!」
「チッ・・・!!」
でもそれが、守るための力なんだと今になって気付かされた。
守るためには掛け引きなんて楽しんでる場合じゃないんだって。
規則も、その力によって秩序が乱れないようにするためのものだったんだろう。
たとえ緊急時でも規則を破ったものは罰が与えられる。
今でもそれに関しては納得できてないけど、少しだけ理解できたような気がした。
あぁでも。
いまさら天使に戻りたいなんて思ってないよ?
「考え事とはいい度胸だな・・・!!」
「よっと!」
「ぐっ!?」
「喰らえ・・・ビックバンアタック!!」
前に打ち出した魔弾により、ピッコロが吹き飛ぶ。
結婚してあれから数ヶ月。
私はピッコロに一度も負けることがなくなっていた。
脅威の成長率・・・もしくは、変なプライドを捨てた結果か。
体勢を立て直したピッコロが私に近づいてくる。
後ろに回り込もうとする身体の動きを見て、私は尻尾を伸ばした。
「な!?」
「隙ありぃー!」
私の手と足ばっかり見てたピッコロに、不意打ちの尻尾攻撃を食らわせる。
師弟関係は変わってないのに逆転した立場。
今後たぶん、ピッコロが私に勝つことはないだろう。
それでもピッコロが師匠ということに変わりはない。
変えるつもりも、ない。
「どっちが隙ありだ」
「ひ・・・・!?あぐっ!?」
「調子に乗るな、馬鹿者が」
尻尾攻撃を当てて喜んでいた私の腹部を襲う、重たい一撃。
ほらね?ピッコロの方が油断も無くてしっかりしてる。
やっぱり師匠はこうでなくっちゃ。
「さ、さすが師匠」
「苛立つ言い方をしてくれるな・・・」
「いや待って・・・・もう疲れました」
「お前にただひとつ足りないのは”体力”だ。行くぞ!」
「ひぃいい!」
襲い掛かってくる気弾を必死に避ける。
魔法での戦いが多い私にとっての弱点――――体力。
それを重点的に狙ってくるピッコロの攻撃に、段々と息が上がる。
魔法で弾いて距離をとっても、意地でついてくるピッコロの気弾。
「ったく・・・しょうがないな。爆裂魔波!!」
ついてきた気弾を全てかき消す魔力を放つ。
いくつもの爆発音が神殿に響き、爆風が消えたころには気弾は全て消え去っていた。
「休憩しよーよー・・・」
「俺が満足したらな」
「・・・わかった。それじゃあ」
ピッコロを動けなくすればいいんだな?
そしたら強制的に休憩だ。
頭良い私!!
「とぉおおらぁああ!!」
「ッ!!!」
一気に間合いを詰め、ピッコロを気絶させようと鳩尾を狙う。
だがそれはバレていたらしく、ギリギリのところでピッコロの手に阻まれた。
魔力をかなり込めていたせいか、受け止めたピッコロの身体が少し揺らぐ。
それを見て、ピッコロがピシッと顔に青筋を浮かべた。
「休憩のために俺を殺しにかかるな!!!」
「え?いやそんな、殺すつもりは・・・」
「確実に急所を狙っておいて貴様は・・・!!!」
「そんな怒らないでよー・・・・えいっ」
「おい・・・!!!」
怒りに震える声を下に敷く。
押し倒した上に座った私を、しばらくしてピッコロが持ち上げた。
そしてそのまま、文句も言わず私を座禅の上に座らせる。
いつもの体勢だ。
ピッコロが瞑想する時、私が座禅の上に座ってピッコロに身体を預けるこの体勢。
「やったー休憩ー!」
「ちっ・・・10分だけだぞ」
「え?じゃあちょっと話を盛り上げて20分ぐらいに・・・」
「俺と話が盛り上がると思っているのか?」
「毎日楽しいよ?」
「っ・・・・」
素直な言葉を言って見上げると、少し照れたように私から顔を逸らした。
ピッコロは私から素直に言葉を言うと弱い。
まぁ、逆も同じなんだけどね。
私もピッコロから言われると弱いから。
「・・・ねぇ、ピッコロ」
「なんだ?」
「答えにくかったらいいんだけど・・・ちょっとベタなコト聞いていい?」
「・・・ほう?」
静かな空間で、ふと思いついたコト。
ピッコロが困っちゃうかもって思いつつ、ピッコロの手に指を絡ませながら聞いた。
「ピッコロって、恋愛分からないんだよね?どうして・・・私の事、好きになってくれたの?」
こういうの聞くのは地球の男でもめんどくさがる奴が多いと聞く。
それでも、聞きたくなったんだからしょうがない。
だってほら・・・ピッコロは恋愛を知らなかったはずでしょ?
なのに私なんかと、さ。
「恋愛は分からないが、”知る必要がなかった”だけだ。俺は元々魔族として生まれている・・・たとえナメック星人といえど、育った環境はこの地球。性別の存在も最初から知っていた」
「あ、そっか・・・大魔王も地球のこと知ってたもんね」
「そうだ・・・デンデたちとは違い、俺にはそのような感情を持つキッカケがあったということだろうな。そしてそれを生んだのが・・・お前だったわけだ」
ぽんぽんと叩くように頭を撫でられる。
案外ピッコロがすんなり答えてくれて、思わず顔がニヤケた。
嫌がらないなら他のも答えてもらっちゃおうかな?って調子に乗ってみる。
「じゃあ、いつ私のこと好きになったの?」
「・・・気づいたら、いつの間にか・・・という表現が一番しっくりくるな」
「ま、最初はぼろっぼろに言われてましたからねーっ」
「くくっ・・・それでもまったく折れないお前は、本当の馬鹿だったぞ」
「うわ、妻に対して馬鹿とか言う?」
「あぁ馬鹿だ・・・・だが」
あ、そっか。
ピッコロの”馬鹿”は、褒め言葉だっけ。
私がピッコロと修行を始めた頃、ピッコロは修行以外ほとんど口を聞いてくれなかった。
話しかけても無駄話をするなの一点張りで、すぐどこかに消えてしまう。
でも修行するからには仲良くなりたくて。
せっかく気に入った契約者なんだし、色々知りたいと思って。
私は毎日、修行以外の時間もピッコロについて回った。
”ねぇねぇ”
”しつこい・・・本当に殺すぞ貴様”
”貴様じゃありません、ゆえですー!!そのぐらい覚えてよゴシュジンサマ”
”・・・・うるさい。俺に関わるな”
”いいじゃん!”
”関わるなと言ってるだろうが・・・っ!”
”ヒィイ!?”
時には気弾を浴びせられたり。
”ピッコロって水しか飲まないんだっけ。やっぱり水って場所で味が違うの?”
”・・・あぁ”
”へー。ね、どこの水がおいしい?”
”そんなもの聞いてどうする”
”ん?魔法で出してあげよっかなーって。場所行ってくれれば、記憶の中で見た場所の水ぐらい魔法で出せるよ?”
”・・・いらん”
”えーー!?ほらほら、言ってみ・・・のああぁあああ!?”
”ハッ・・・馬鹿が。油断するからそうなるんだ”
時には湖に落とされたり。
”ピッコロ、手出して”
”は?っ・・・おい!”
”ほら、怪我してる。治してあげよう!”
”いらん。余計なことをするな。記憶を見たなら知っているだろう?俺が貴様のような奴の手を借りなくても回復できることぐらい・・・”
”でも、気の消費が激しいんでしょあれ”
”・・・・っ”
”悟空と悟飯と私と、全員分戦ったんだから気なんて残ってないくせにー!ってことで治療開始しまーすっ!”
”おいこら・・・貴様勝手に・・・!!っ!!おい!!やるなら丁寧にやれ!!”
時には怒鳴られたり。
でも段々、ピッコロも優しく・・・いや諦めてきたのかな。
私の話に付き合ってくれるようになってった。
その時に言われたんだ。
”ここまで俺と関わろうとする馬鹿はある意味初めてだな”
”ええ!?”
”フッ・・・今のは褒め言葉だ”
「昔言われたもんね、”馬鹿は褒め言葉だって”」
「あぁ・・・今でも変わらん」
「でも前より本気で馬鹿にされてる感じがするのは気のせい・・・?」
「気のせいだ」
あの時から私達って何も変わってない気がする。
馬鹿言い合って、こうやって静かな時も一緒に過ごして。
前は私が無理矢理って感じだったけど、今ではこうやってピッコロから望んでくれてる。
「逆に聞くが」
「う?」
答えに満足してニヤけていた私に、ピッコロが尋ねた。
「何故お前は俺を好きになった」
「へっ・・・?」
「俺に聞いたんだ。お前も答えられるだろう?」
いつ?
・・・いつだ?
ピッコロの顔を見上げたまま、私は考え込んだ。
「ううーん・・・」
「・・・やたら考えるな・・・」
「えー・・・だって・・・ううーん」
どうしよう。正確には覚えてない。
いつの間にか、だ。
人のこと怒っといて、まさかの自分も。
でも強いていうなら。
ピッコロとの思い出を振り返りつつ、一番覚えていることを口にした。
「パーティの時」
「ん?」
「私が契約してまだ1年も経ってないころの、ブルマの誕生日パーティの時・・・私が質問攻めにあってたの、助けてくれたでしょ?」
まだ私が、ただの悪魔だってことしかバラしてない時。
色々質問されて困ってた私を、ピッコロが拾って助けてくれた。
ツンツンした優しさだったけど、あれからの会話が凄くうれしくて。
私の誕生日を聞いてくれたことも・・・あの後、ちゃんと祝ってくれたことも覚えてる。
「懐かしいな」
「強いて言うならあの時だけど・・・でも、一目惚れだったかも」
「・・・・」
「だって私、今まで契約違反を許したことなんてないもん」
そう、ピッコロが生きてる時点で契約違反。
願いが叶った時点、もしくは呼び出しておいて契約無視したときに必ず魂を貰う。
ピッコロは後者。最初呼び出しておいて契約せず破棄しようとした。
無理矢理?ソレでも良い。悪魔なんだから。
そう思ってたけど、ピッコロのことを見た私は、魂を奪う興味を初めて失った。
失ったは嘘かな。
それ以上の興味を持ったからだ。
ピッコロという、存在に。
「あの時みた目が、言葉が・・・分からないけど、”食べるのもったいない”って思わせてくれたんだよね。だからちょっと脅しで戦ってみたんだけど・・・強いしで・・・」
「俺がお前の気に入るやつじゃなかったら食われてたわけか」
「そうですよ?悪魔だもーん」
冗談めいた言い方で尻尾を揺らす。
揺らした尻尾でピッコロの顔を撫でれば、うっとおしそうに退かされた。
「おい」
「うん?」
「さっさと修行に戻るぞ」
厳しいけど優しい言い方。
見なくてもピッコロが少し照れてるのが分かって、私はわざとピッコロの方を見ないように立ち上がった。
見てからかったら修行が厳しくなるかもしれないでしょ?
それに、私も今は・・・顔が赤いから。
「なんだ、やけに素直だな?」
「んー?ちょっと熱くなっちゃったから・・・ね」
「フッ・・・ならさっさと始めるぞ」
「来なよ。またボコしてやるからさ!」
「忘れるなよ、俺はお前の師匠だ・・・必ずお前をまた越えてやる・・・!!」
甘い会話と戦いは同じ割合で。
ブルマに「戦闘馬鹿カップルね」って言われたのを思い出して、ピッコロに見えないようクスリと笑った。
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