Erdbeere ~苺~ ★35.学者の卵は好奇心の塊です 忍者ブログ
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2015年04月07日 (Tue)
35話/ほのぼの甘/※ヒロイン視点

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神殿はいつも静かだ。
響くのは私達の声と、風の音ぐらいしか無い。

私達の声が響いている時点で、静かなんて言えないかもしれないけど。


「んー、美味しー!」
「・・・た、食べ過ぎじゃないですか?ゆえさん」
「このぐらい食べないと頭働かないよ?」
「太るぞ」
「っさいな!!」


ひたすらお菓子を食べながら魔法を練り続ける私。
それをからかうピッコロ。

そして魔法を考える私を興味深く観察する悟飯。


悟飯は学校に通い始めたらしく、学者の卵としてその芽を咲かせ始めていた。

興味があることには何でも食いついて調べる。
素晴らしい探究心だ。


ピッコロと私は相変わらず、この数年も変わらぬまま。

見た目も、変わらぬまま。
私は隣に座る悟飯を見上げ、呟いた。


「にしても、悟飯大きくなったねぇ・・・」
「お前が小さいだけだろ」
「あはは!確かにゆえさんは小さいですね!」
「っのやろ・・・」


苛立ち紛れに一口、お菓子を口に含む。


隣に座る悟飯も、その近くで座禅を組むピッコロも、でかすぎるだけだ。
私だって160ある。普通の女性の平均だぞ?

こいつらがおかしいだけだと、また一口お菓子を放り込んだ。


「・・・・ねぇ、ゆえさん」
「んぅ?」
「聞きたいことあるんですけど、いいですか?」
「んぐっ・・・ん、んむ」


それをじーっと見ていた悟飯が、手元の本を閉じてぐいっと身を乗り出す。
突然近づいた悟飯の顔に、思わず口の中の物を丸呑みした。


「な、なにが聞きたいの?」
「答えにくかったら全然いいんですけど、悪魔自体に興味があって・・・」
「うんうん?」
「本来の契約って実際どんなことするのかなーって。だってほら、ピッコロさんとは契約してる感じがまったくしないじゃないですか」


ぱくり。

お菓子を口に含みながら、確かにと頷く。


ピッコロと私は契約してるけど、何ら変わりない日常を過ごしてる。
一応、契約時の約束である”気を食べさせる”ってのは、やってもらってるけどね。

ここだけ見れば、契約なんて簡単なモノに見えてしまうだろう。


「悪魔との契約ってのは、魂をかけて願いを一つ叶えるモノなんだよ」


悪魔との契約に例外は無い。

――――本来、なら。


ピッコロと私の関係は例外だ。
そもそも悪魔に理性があるヤツのほうが珍しく、大体の悪魔は欲望のままに魂を貪る。


「悪魔は心のなかに闇が潜むやつや、力を求めてるやつを見つけて現れて・・・ま、いっちゃえば弱みをついて契約を結ぶわけさ」
「弱み?」
「そうそう。恨んでる奴はいない?殺したいやつはいない?って」
「う・・・・」
「そんな願いをする奴に手を貸して、殺すなり、そいつに力を渡して殺させるなり・・・それが悪魔の契約。んで、それが成功しようがしまいが魂はいただく・・・と」


さすがに私はそこまでの願いを叶えたことはないけど、普通の願いだ。


自分の命を掛ける願いだから、皆わりと残酷な願いをする。
悪魔にお願いするようなやつに、まともな奴がいないってのが正解かもしれない。


「え、えげつないですね・・・」
「そういうもんさ。私に食われなかっただけありがたいと思ってよね、ピッコロは」
「・・・・フン」


ケラケラと笑いながらピッコロのほうを見る。
ピッコロは少し複雑そうな顔で私に近づき、私の頭を撫でた。


そんな私達を、嬉しそうに見る悟飯の顔。

恥ずかしくなった私は魔法でお菓子を増やし、その一つを悟飯の口に突っ込んだ。


「んぐぐ!?」
「質問はそれでおしまい?」
「っ・・・ぷは!!もう一つ聞きたいです!」
「おー、何かな?今日は機嫌が良いから答えちゃうよー?」


正直、新しい魔法作りに飽きただけなんだが。

そんな私の本音を知るわけもなく、嬉しそうに笑った悟飯が質問を続ける。


「じゃあ、魔法について教えて下さい!ゆえさんの魔法って、どんなことが出来るんですか?」
「う、うん・・・・」


魔法から離れたかったのに、魔法の質問が来て顔が引き攣った。


神様、貴方は心を読んで・・・って、神様はデンデか。
それなら心を読んでてもおかしくない。


なんて馬鹿なことを考えつつ、私は悟飯の目の前に手を差し出した。

魔力を集中させて手の上に大きな剣を作り出す。


「基本なんでも出来るよ?”想象”出来るものならなんだって具現化できるし、新しい魔法として生み出すことも出来る」
「かっこいいですね・・・」
「ただ・・・細かいものになると、素材とか大きさとか全部考えなきゃいけないから、時間掛かっちゃうんだよねー。それが弱点」
「うわぁ・・・わりとめんどくさそう」


悟飯の言うとおり、物を出現させる系の魔法はめんどくさい。
でも、便利だから使っちゃうんだよね。


最初の頃はこうやってたくさんの武器を出したりして戦ってた。

でも途中でピッコロに、その隙が弱点だって言われて。


「次はー・・・治癒?かな。こんなかんじ」


言葉の最中で自分の腕ではなく、ピッコロの腕を掴んで軽く切った。
そのままピッコロが文句を言う前に急いで魔法で治療する。


「ね、すごいでしょ?」
「へぇ・・・ピッコロさんの自己再生とは違って、他の人も出来るんですね」
「そうそう。軽いのしか出来ないけどね」


ごく自然と会話を続ける私に刺さる、ピッコロの視線。


「おい」
「はい」
「今、何故俺の腕を切った?」
「え、近くにいたから?」
「・・・・」
「・・・・」
「おい」
「はい」
「ぶっ殺すぞ」
「いだあぁああああ!!!!」
「ピ、ピッコロさん!そんなにしたらゆえさん潰れちゃう!!」


私の頭に全力で圧力をかけ始めたピッコロを、悟飯が慌てて止めた。

ありがとう悟飯。
今普通に意識飛びかけてたよ。


「けほっ・・・えー、んで次はあるものを変化させたり操ったりするのかなー」
「よくある、物を浮かせたりとかですか?」
「そうそう。例えば・・・よいしょ」


近くにあったピッコロのマントを左手でつかむ。
そして右手で指を鳴らし、ピッコロのマントに魔法を掛けた。


白いマントがゆらめき、魔法によって可愛い花がらのマントへと変化する。


「・・・・・・・・・おい」


このパターン2度目です。
後ろから怒りの蹴りが飛んでくるのを感じた私は、魔法でバリアを創りだした。


ガン!という鈍い音。

ピッコロの表情が更に険しくなる。


「とまぁ、こういうバリアーも張れちゃいます!」
「あ、あの、ゆえさん・・・ピッコロさんが・・・」
「ほらそんなに怒らないでよー・・・ごふっ!?」
「このクソガキが・・・イタズラばっかりしやがって・・・」


ピッコロみたいな人にはイタズラしたくなるでしょ?
ツンケンしてる人がどんな表情するのか、とか。

後は構って欲しいとか、ちょっと可愛らしい理由だから許して欲しいものだ。


笑う私と、怒るピッコロ。
そしてそれを見てオドオドする悟飯。

平和な時間は今日も過ぎていく。


いつも通り、何も変わらず。


「悟飯、こんな怒りっぽい人になっちゃだめだよ?」
ゆえさん・・・・」
「いい度胸だな貴様・・・おい悟飯。貴様、最近修行をさぼっているだろう?」
「あ・・・あはは・・・・」
「ちょうどいい、こいつ相手に修行でもするか。こいつの弱点は体力だからな。俺たち2人で修行つけてやろう」
「え」
「悟飯」
「ごめんなさいゆえさん」
「悟飯・・・?ほら、悟飯は優しい子でしょ?」
「・・・・ごめんなさいゆえさん」
「あ、こら、2人がかりはやめ・・・うわぁあぁああ!!」


・・・うん、いつも通りだ。
































毎日毎日、何も変わらない。

これでも満足なんだけど、さすがに何か修行以外の趣味を持とうと思った私は、色々な勉強を始めた。


「っ・・・」


でもそれは、あまりにも私には不向きだったようで。

何をしても私にできることは無かった。
勉強は悟飯が小学生ぐらいのときに解けていた問題すら解けず。


裁縫はまさかのピッコロよりもヘタクソっていう。


「ククッ・・・・」


料理はさすがに必要が無かったのでパスした。

絵は絵心なかったし。
音楽は好きだったけど長続きしなかった。


それで試行錯誤の上、やっと辿り着いた私にできることが――――今やっているコレ。


「ね、ピッコロ」
「ふっ・・・な、なんだ?」
「いつまで笑ってんですかね・・・?」
「いや、お前の意外な才能が・・・ふ、面白くてな・・・」


爆笑するピッコロの前で機械をいじる私。


そう、私が始めた趣味。
意外な才能を発揮したソレは機械いじりだった。


私が暇だということを聞いたブルマが機械の開発セットみたいなのを冗談で置いてってくれたんだけど・・・これが案外私にピッタリで。


すぐにホイポイカプセルの仕組みを理解することが出来た私は、改造品を作ってブルマに渡した。

それがブルマの目に止まり、今ではこうして暇なときにブルマからの依頼を引き受け、C.Cに必要な機械の作成をしている。


「計算もロクに出来んやつが・・・くくっ」
「笑うなよ!!!」


確かに私は計算なんて出来ない。
だからどうして私にもこの作業の理解ができているのか、理解できてない。


「あーもういいよ。笑っとけばいいよーっだ」


青空の下。

笑うピッコロに背を向け、私は手元の機材に集中した。

今回のブルマの依頼は家事をサポートするためのロボットの部品。
慣れた手つきで作業を進めていけば、ふわりとピッコロの香りが鼻をくすぐった。


「ピッコロ?」


笑うのをやめたかと思えばいきなりなんだ?
私の腰に回された腕が、私の作業を少しだけ邪魔する。


まぁ、引っぺがすほど邪魔じゃないから良いか。

そう思って作業を続けようとした私の耳元に、ふっと息が掛かった。


「ひう!?ここここら!!!」
「・・・ん?なんだ?」
「息がっ!耳元に息がっ」
「別にいいだろう」
「よく、ない・・・っ」


退かそうと肘に力を込めてピッコロの腹を押してみるが、ビクともしない。
仕方なく作業を進めても、結局はまたピッコロに邪魔される。


「ね、ちょっと、ピッコロ・・・っ」


くすぐったさに我慢しきれなくなった私は、手を止めてピッコロの方を見た。

その瞬間、顎を掴まれて無理矢理口付けられる。


口づけはいつもするものより深く、私は慌ててピッコロの胸を叩いた。
それでも続けられる口づけに、段々と身体がうずき始める。


「っ・・・は」
「・・・機械いじりはもうやめろ。別にいいだろう、修行だけでも」
「えー?でもたまには違う趣味ってのもいいじゃん?」
「駄目だ」
「ええ!?」
「大体お前、何でも作れるだろうが。そんなもの魔法で作れ」
「魔法で作るにも、理解してないものは作れないんだから。こういうのを理解しておくことで、魔法で巨大ロボとか出せたり・・・んっ」


また口唇を塞がれた。

巨大ロボのこと突っ込んでよ、せめて。
本当に出すぞ巨大ロボ。


そんなことを思う私を、じっくり味わうように口付けるピッコロはどこか不機嫌だ。

まさかとは、思うけど。


「・・・・寂しいの?」
「・・・・黙ってろ」
「んっ!?んんっ・・・・」


悟飯を見て、私も何かを極めてみようって思っただけだったのに。
どうやら私には趣味の浮気も許されないようだ。

甘い口づけを受けながら、ピッコロの方を向き直って首に手を回す。


「は・・・ぅ、しょうがないなぁ・・・ね、ピッコロ。デートいこ!」
「どこにだ」
「んー?いつもの滝のところはどう?」
「あそこでいいのか?」
「うん、いいよ。二人きりで落ち着けるし」
「なら・・・行くか」
「ほわっ!?」


変わらない日々。
無理に変わることを望む必要もないみたいだと、私はピッコロの腕の中でクスリと笑った。

それにしてもピッコロが、まさか作業に嫉妬するなんて・・・・ね。


まだまだ私達の恋愛は新鮮なことばかりらしい。

夫婦になっても衰えない――――いや、衰えるどころかもっと深みにはまっていく私達は、これからもずっとこうやって愛し合っていくはずだ。


きっと。
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