Erdbeere ~苺~ ★31.歴史の書4.大切な人が消え行く時 忍者ブログ
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2015年03月23日 (Mon)
31話/戦闘/少し切なめ→甘々/※ヒロイン視点

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目を瞑った先で空気が変わったのを感じた。
目を開ければ、そこには見覚えのある奴らの顔がある。

そして、見覚えのある人達の、死体も。


「おいベジータ。お前だけ楽しみすぎじゃねぇのかぁ?」
「フンッ」


今死んでるメンバーは歴史通りのようだが、もうベジータも戦う気になっているようだった。
生きているのはピッコロと悟飯と、クリリン。


悟空は――――まだか。

ベジータ達は私に気づくこと無くピッコロ達と対峙している。

えっと、どうすればいいんだ?
歴史通りにするためには、私がベジータを止めてればいいのかな?


「・・・見た感じ、ナッパは操られてないみたいだしね・・・」


幸運なことに、邪悪な気を放っているのはベジータだけだった。
これならナッパと他の三人が戦ってくれれば、一応歴史通りに物事が運ぶはず。


「ナッパ。お前はあの餓鬼共とでもやってろ。俺はこのマトモそうなナメック星人の野郎と戦う」
「チッ・・・ずりぃなぁ」
「くっ・・・・」
「はいはいはいストーップ!」
「「!?」」


叫びと同時に私は走りだした。
驚く皆をよそに、その隙をついてベジータだけを蹴り飛ばす。


あ、よく飛んだ。

バァン!と空気が弾けるような音が響き、ベジータは岩場に突っ込んでいった。


「やりすぎたか」
「・・・ハッ。やっぱり現れたか」
「あれ、予想済み?」
「なんとなくな」
「皆はそっちのハゲ頭よろしく。私はあいつと戦っとくから」


この言葉にも、ピッコロは何も言わない。

文句とか疑問とかぶつけられると思ったのに。
一応信用されたってことかな?

ピッコロが私の言葉通りに三人で戦い始めたのを見て、思わず微笑む。


もちろん、後ろから怒り心頭のベジータが迫ってきているのは、ちゃんと気づいている。


「貴様ァ・・・・!!」
「おーおー。いつもより目つき悪いベジータさん怖い!」
「・・・!何故、俺の名前を・・・」


ベジータの質問なんて聞いてるはずもなく、私は深く考え込んだ。

ベジータを相手にするのはいいけど、どこまでやっていいんだろ?
あまりやりすぎると悟空との戦いでズレが起きるかもしれないし・・・。


でも今のままじゃ、確実に悟空が倒される。

なんたってあの気。邪悪な気。


とりあえず、あれを解除させるぐらいに殴っとけばいいかな。
そう心の中で結論を出して再び現実に意識を戻した私を、ベジータの拳が襲った。


「うおおおお!?」


目の前に映るベジータの顔はマジだ。

打ち出される拳は気が集中されていて、威力がある。
さすがはベジータ。この時代から相当強い。


でも驚かない。

だって、私の時代にいるベジータはもっと怖いから。


「よっと・・・!」
「ちょこまか避けやがって・・・!逃げ足だけは早いようだな!!」
「逃げ足だけか、試してみる!?」
「っ!!」


逃げながら方向転換した私は、一気にベジータの前に飛び込んだ。
防御の構えを取るベジータの側面を抜けて、背後から回し蹴りを放つ。


ベジータは一瞬の反応の遅れを取りつつ、その蹴りを右手で掴んだ。

足を掴まれた私はバランスを崩すが、そのままベジータの顔面に手を持って行って魔力を込める。


「チッ・・・!」
「のわっ!」


危険を察知したベジータが悔しそうに私の足を放り投げた。

放り投げられた私は慌てて受け身を取り、地面に片膝をつく。


うーん。思ったよりやる。
操られてるのもあるだろうけど、やっぱりベジータのセンスはピカイチだ。


「私が近接苦手なのもあるだろうけど・・・ね」


ベジータの邪悪な気を取りたい。
だけど、そのために魔法なんか使えば、さすがのベジータでもかなりのダメージを負う。


だからぶん殴って目覚めさせたいんだけど・・・中々難しい。


「来ないのなら・・・こっちから行ってやるぜ!!」
「ッと!?」


右から打ち出された真っ直ぐな拳を左手で捌く。
素早い攻撃を最小限の動きで捌きながら、段々と攻撃のパターンが分かってきた私は反撃を開始した。

攻撃の隙に小さくダメージを与える。

カウンターで一撃。
相打ちで一撃。


「っぐ・・・!!」


さすがにこの頃じゃ実力差は大きい。
ただ防御で弾くだけでも、ベジータの体力は確実に削れている。


それと同様に邪悪な気も段々と薄れていた。

久しぶりに神経張ることの連続で私も疲れてきたけど、もう少しだ。


「来なよベジータ」
「・・・なめるな!!!!」


わざと煽って相手の体力の消費を増やす。


さぁ、もっともっと。
早くなる攻撃の手を一つ残らず捌いて、気を消費させる。

失敗は許されない。

だから反撃はしない。


あくまでも、ベジータを倒すのは悟空――――そう、歴史は、変えてはいけない。


「あ・・・」
「もう鬼ごっこはおしまいだぜ、クズ野郎」


一瞬の動揺が命取りになった。
この先に待ち受けているピッコロの死を考えてしまった私は、その隙をベジータに取られた。

左手で頭を掴まれ、右手は腹部に。

重たい攻撃に思わず息が詰まる。


「がはっ」


そのまま腹部に気弾を打ち込まれ、私は遠くに吹き飛んだ。

吹き飛んだ先に映った悟飯の泣きそうな顔。
泣き虫だった、懐かしい悟飯。


「え・・?」


てかこれ、やばいんじゃ?
周りをよく見てなかったけど、見覚えのある構成だ。

悟飯が震えて泣いていて。

目の前には、気を高めて構えるナッパの姿。


「死ね・・・!!」
「あ・・ああ・・・」


あれ、これ。
私が一番見たくない、ところ。


・・・いやだ。


でもこれ、避けていいの?
ピッコロの姿が、全然見えない。

歴史はどうなってる?

避けて、もし悟飯が死んだら?


「っ・・・くそ!」


私は仕方なく咄嗟の判断で防御を構えた。
もしこれで歴史が変わってしまったら、最悪時の界王神にもう一度飛ばしてもらうしか無い。

でもしょうがない。

ここで悟飯が死んだら、大きく歴史が変わってしまう。

この瞬間には近くにいるはずのピッコロも見えない。
庇うしか、ない。


「ッ・・・」


目の前に閃光が走る。
さすがに死なないと思うけど、ある程度の痛みを覚悟して目を閉じた。


その瞬間、突き飛ばされる感覚。


「え・・・?」


思わず、目を開いた。
そして見たくないものを、間近で見てしまった。

私を突き飛ばしたのは、紛れも無いピッコロ。

そのピッコロは歴史通り悟飯を庇い、ナッパの攻撃を全身で受け止めた。


「・・・・どう、して」


歴史通り、だけど。
攻撃を受けたピッコロのは、本来の歴史より痛々しかった。


理由は分かってる。

私を突き飛ばすために、体勢が崩れたからだ。


「ピッコロ!!!」


慌ててピッコロに駆け寄る。
回復すれば助かる。ああでも、それは、出来ない。

出来ないんだ。


「ピッコロ・・・っ」
「なんで、お前まで・・・泣くんだ・・・最後、まで、変な・・・奴だな・・・」


手が震えてた。

未来ではきちんと存在してるって分かってるのに、怖くてしょうがなかった。

息が詰まる。
正常に息が出来てるのかも分からなくなる。


冷たくなっていくその姿が、あまりにも恐ろしくて。


「フッ・・・お前に、会えるのが・・・楽しみ・・・・・だな」
「ッ・・・・」


こんなにも、怖いんだ。
人が居なくなるのって。大切な人が消えてしまうのって。

震える身体をピッコロの身体に押さえつけて、私はその場で泣き崩れた。

私やっぱり、強くならなきゃ。
セルがいなくなったからなんて、関係ないんだ。


失いたくない。

誰も、ピッコロも。


「・・・・ピッコロ、私、未来のピッコロに言うよ・・・」


失ってからでは遅い。
そのことを、見せつけられたような気がした。

今まで私が悩んでたことに対して、強く。


帰ったら伝えよう。
彼に、私の本当の気持ちを。


永遠に居たいって、覚悟を。

子供も作れないし普通の人間じゃないけど、それでも許されるならって。


「・・・・」
「残念だったなァ?」


楽しそうなベジータの声が後ろから掛かる。
でもそれと同時に私の役目が終わったことを知った。

ベジータの気が、正史通りに戻っている。


私は振り返り際に涙を拭った。
楽しそうなベジータの顔を真正面から覗き込み、笑う。


「悪役なベジータもかっこよかったよ。・・・またね」
「なっ・・・」


後ろ手に持っていた巻物に魔力を注ぎ込んで。
私はその歴史から――――消えた。
































疲労、の一言。

戻った私は疲労感から座り込み、ピッコロのベッドに向かってずるずる這いつくばって移動した。

デンデは、いない。
さすがに遅くなったから、寝てしまったんだろうか。


「ピッコロ・・・」


ピッコロの方を見れば、ピッコロの気が正常に戻っていた。
巻物が光輝き、上空に吸い込まれていく。

これで、これでピッコロは。


「ん・・・」
「ピッコロ!」


触れられる。
気の乱れも無くなってる。

嬉しくなって思わず抱きついた。
むぐ!?と苦しそうな声が聞こえてきたけど、お構いなしに力を込める。


ゆえ・・・・」


少し乾いた声。
顔を上げた先に映るピッコロは、あの時よりも大人っぽい。


「フッ・・・やっと会えたな」
「・・・・覚えて、るんだ」
「当たり前だろう。あんな激しい主張すれば誰だって覚える」
「で、ですよねー」


歴史に関わっても消されると思ってたら、違うんだ?
色々やっちゃったなーと冷や汗をかいた私を、ピッコロが強く抱きしめてきた。


・・・温かい。


なんだか凄く久しぶりに感じる。
こっちの時代じゃ、まだあのままの夜なのに。


「よかった・・・ピッコロ・・・」
「ったく、お前はどこでも無茶しやがる・・・」
「にひひ」
「・・・・ゆえ
「・・・ん」


名前を呼ばれて顔を上げる。
降ってきた口づけは優しくて、心地良い。

一度口唇を離した私は、ピッコロに抱きついたまま囁いた。


「ね、ピッコロ・・・伝えたいことが出来たの。外、出ない?」


珍しく真面目な感じ。
恥ずかしくなってピッコロの顔が見れなかった。

そんな私を見てか、ピッコロが笑いながら私を抱きかかえる。
そのまま扉を乱暴に開け放ち、月明かりに照らされる神殿の外に出た。


「すごいなー。あんなに色々あったのに、ここはまだ夜かぁ・・・」
「あぁ・・・」


ほんの数時間の間に、数日を体験した感じなんだろうか。
未だに疲労感が残る身体でピッコロの首に手を回し、覚悟を決めた。

さぁ、言おう。

迷う必要なんてない。
私の気持ちはきっと、変わらない。


相手を思うことは大事だけど。

ワガママ通せずに失ってしまったら、それが一番怖いことなんだと知ったから。


「ねぇ、私ね、ピッコロが色々なこと知っていって、色々なことしてくれるの嬉しかったんだ」


デートってのをしてくれるようになって。
記念日に小洒落たプレゼントまでくれて。


言葉での表現はまだぎこちないけど、ソレ以外はほとんど普通の恋愛。


「でもそれと同時に怖かったんだ・・・その、ピッコロが私じゃ物足りなくなるんじゃって。私じゃ・・・ピッコロにふさわしくないんじゃないかって」


ピッコロはとても素敵だ。


ピッコロが知らないだけ。
その魅力はたくさんある。


だから怖かった。

だから、言えなかった。


「私、元々人間じゃないから・・・身体は女でも、子供を産んだりとかも・・・出来ないし」
「・・・・」
「もしそういうのを望んだらって・・・」


思わず口唇を噛みしめる。
怖くて、ピッコロの顔は見れなかった。

目を瞑ったまま、首に回した手を強める。


「だけど、もう、我慢出来ないや。ワガママでも、何でもいい。聞いて欲しいの、私、ピッコロと・・・」
「そこまでだ」


一番大事なところを、ピッコロの指に止められた。
口唇を這う指が優しくなぞって、離れていく。


「そこから先は、俺が言う」


――――え?


「俺も同じだった。お前は普通の人間としても生きていける。・・・俺のようなやつと、永遠を誓わせていいのかと、ずっと・・・考えていた」


ピッコロの手が私から離れた。
地面についた私の足元に、ピッコロが跪く。


異様な、光景だった。

同時にすごくドキドキした。


月明かりに照らされて、真っ赤な目が私を見上げている。
その瞳は優しいのに私を食べてしまいそうで。


「だがお前が過去に来た時・・・お前の言葉で、俺は自分の気持ちを押し通すことを決めた。お前がどんな俺でも、俺を望んでくれていると・・・知ったからだ」


ふわり。

私の手を優しく取って、その手のひらに魔術で何かを出した。

小さな、箱。
その箱をそっと開けながらピッコロが言う。


ゆえ・・・俺と結婚してくれ。俺は永遠に、ゆえを、俺のものにしたい・・・」


箱から覗いた小さな宝石の乗った指輪。
紫色に光る宝石が、滲んでいく。

あ、どうしよう、止まらない。

せっかくの指輪が全然見えない。


「・・・何故、泣く?」


戸惑ったようにピッコロが私の手を強く握った。


「うれしいから」
「嬉しいのに泣くのか」
「・・・うん」
「そうか。・・・また教えてくれ、その感情も。俺の傍で」
「・・・・・うん」


何を言われても涙が止まらない。
嬉しくて、嬉しすぎて。


死んでしまいそうなほど、幸せ。


立ち上がったピッコロが私の腰を抱き寄せる。
2人で見た星空は、滲んでて何も見えなかった。


「・・・早速、明日はブルマのところだな」
「へ?なんで?」


ようやく涙が乾いた頃、そう呟いたピッコロに首を傾げる。
ピッコロは苦笑しながら私の方を向き、私の目元を優しく拭った。


「ブルマに言われたんだ。・・・プロポーズする覚悟が出来て成功したら、式を3日で準備してやるから言えと」
「・・・・ブルマらしいね・・・もしかして、ブルマの式で捕まってたのって、それ?」
「あぁ、それだ」


ブルマの結婚式でピッコロがブルマに捕まってたのを思い出す。
ただ酔っ払ったブルマに捕まってただけだと思ってたけど・・・そういうことだったんだ。


式、かぁ。

嬉しすぎてまた泣きそうになれば、両手で顔を挟まれた。


「泣くな」
「だ、だって・・・」
「言い訳は聞かん・・・お前は、笑っていろ」


そう言って塞がれた口唇は、とても温かい。
感じる幸せに零れた涙は私の頬を伝って、やがて分からなくなった。

もう、分かるのは温かい口唇だけ。


溶けるように、味わうように、私達はお互いの口唇を重ねあった。
きっとこれからも、私達は変わらない。


「これからもよろしく、ダーリン!!」
「やり直せ」


ほら、ね。
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(龍如/オール・海賊/剣豪)