いらっしゃいませ!
名前変更所
私が改変した歴史の中では”悪者”だったセル。
でも、師匠としてトキトキ都に現れた彼は、ただの戦闘馬鹿の暇人って感じだった。
どの時間軸にも干渉しない場所だから、少し性格が違うのかな?って思ったけど。
時の界王神様が言うにはさほど違いは無いらしい。
だから面白半分で師弟関係になってみたんだ、この前。
それが原因だったんだろうね。
セルから一つ一つ褒められるたび、技を教えられるたび―――私が私じゃなくなっていくようになったのは。
「・・・何をぼけっとしている!」
「ッ!!」
考え事をしながら戦っていた私に飛ぶ、大きな気弾。
魔人の特性を活かして身体をぐにゃっと曲げた私は、その気弾をギリギリで避けた。
避けた先で、大きな爆発と共にセルゲーム会場が吹き飛ぶ。
彼が好きな場所なのだここは。
修行するときは、いつもセルゲームの会場を模したここ。
「私との修行中に考え事とはいい度胸だ。どれ・・・少しペースを上げるとしようか?」
「え、や、たんま!!」
「もう遅いッ!!」
「のわっ!?」
手加減されていた彼の気が解放され、私の身体を吹き飛ばした。
あーあ、もう。相変わらず容赦無いんだから。
そう思いながらも口元が笑ってしまうのは、何故だろうか。
楽しいから?
それもそう。
でも一番は、セルがかっこいいから。
戦いに身を委ねる彼は、一番かっこいい。
「油断しているとすぐに死ぬぞ」
「セル師匠相手に油断なんて出来ませんっ」
「白々しい。・・・さっきから集中出来ていないことぐらい分かっているぞ」
「まぁ、それはそれ!なんちゃっ・・・・てっ!!」
「っ・・・む」
突き出される鋭い拳を右手で受け止め、そのまま投げる。
が、しかし。
私より数倍でかいセルがそんなことで飛ぶわけもなく、すぐに切り返されて逆に手を掴まれた。
しまった、と思うにはもう遅く。
セルは意地悪い笑みを浮かべ、容赦なく私をセルゲーム会場の床へと叩きつけた。
「がはっ!~~~~っ」
「物覚えの悪い奴には少し痛い仕置きが必要だろう?」
「随分とひっどい師匠ですね!!レディには優しくしないと?」
「・・・・」
私の言葉に、セルが少し考えこむ。
え、何その表情。
すんごい呆れ顔されてるんだけど。
「レディがどこにいるのかね?」
「・・・ぶっとばす!!!」
「おお、こわいこわい。これのどこがレディだというのか教えて欲しいものだな」
「かめはめ波!!」
「遅い!!!」
私はセルが好きだ。
師匠として。
・・・1人の男の人として。
でも彼はこの通り、私を”魔人”としてしか見ていない。
もしくは、”弟子”とだけしか。
悲しいけど叶う恋じゃないから、私はずっと彼の弟子で居続ける。
「右がガラ空きだな・・・。どちらか片方に集中する癖を忘れるんだ」
「はいっ」
「返事はいいが実戦出来ていないぞ・・・?」
「っ!!」
容赦なく隙をついてくる攻撃。
それすらも、私はうれしく感じる。
きっとこのトキトキ都の中では、彼に一番近い存在だって、そう思う。
「ふむ・・・そろそろ日がくれるな」
「え、もうそんな・・・うわぁあぁああ!?」
私との組み手を続けながら、余裕じみた表情でセルが空を見上げた。
つられて空を見ようとした私を、罰するセルのかめはめ波。
今日何度目かの地面の味を味わいつつ、私はセルを睨みつけた。
魔人特有の打たれ強さは、こんなもんじゃ怯まない。
「今日は私に膝をつけさせたら終わりにしよう」
「うへえ、またハードな・・・・」
「ハードだと?何を言っている。お前の力はもう私と同等に近い。それぐらい出来るはずだが?」
「はーい!」
これ以上ぐずるとまた説教食らっちゃうからね。
さっさと納得したフリをしてみせた私は、拳を構えてセルに突っ込んだ。
セルいわく、私の潜在能力は凄いものらしい。
でも戦闘経験が少ないから、隙が多いとか技の選択が下手とか何とか。
「では私も本気で行くぞ・・・かめはめ波!」
「バニシングボールッ!!」
「撃ち合いを選ぶか・・・いいぞ。さぁ、お前の力をぶつけてみろ!」
ああ、なんだか楽しそう。
セルのかめはめ波に真っ向からぶつかる選択をした私に、セルの笑みが映る。
気のぶつかり合う音。
少しずつ押されていく私の気。
・・・・本当は、もっと出せる。
けれどこれで終わったら寂しいでしょ?今日の修行が終わっちゃう。
「ッ・・・はっ」
「!!」
修行が長引くのは嬉しいことだ。
辛いってのは本音だけど、それでも。
私がセルと一緒にいられる、貴重な時間。
セルはあんまり他愛もない話をしてくれないし。
私と一緒にいても、ぶっきらぼうで。
楽しそうにしてくれるのは、この時だけだから。
「もらった!!」
「甘いな。敵が見せた隙が全て本当だと思うべきではない」
「っ・・・・!!」
「お前を誘う罠かもしれないぞ・・・このようにな?」
「あぐっ!!!!」
見せた隙に飛び込んだ私を、逆に反撃で吹き飛ばすセル。
魔人がこんなこと思いながら弟子として戦ってるなんて、セルは気づいてすらないんだろうな。
ただセルとの時間が欲しいがために、力を弱めて戦ってるなんてさ。
「その調子では今日の修行は終わらんぞ?私は構わないが」
私も、構わないんだけど。
「まだまだぁ!!」
「っ・・・ふ、そうだ。来い!もっと私を楽しませるんだ。ガッカリさせるなよ・・・」
殺気にも似たセルの気迫が私を押さえつける。
負けじと気を開放し、セルの真正面まで一気に飛び込んだ。
もちろん、それを目で追っていたセルが拳を突き出す。
予想通りの動きだと笑いながら拳を避け、セルの首元に回し蹴りを入れた。
「ぐっ・・・・」
ぐらりと揺らいだ彼の身体。
そのまま背中側に飛んで抜けた私は、後ろを振り返って弱めの気弾を放った。
ここで強めの気弾を撃てば確実に終わる。
でも出来ない。
まだ日は暮れてないでしょ?もう少し、一緒にいてよ。
「・・・・つ」
ダメージを追ったセルが少し苛立った表情を浮かべた。
「何故だ」
「え?」
「今、気を弱めただろう」
いつものように、「気のコントロールを怠るな!気が弱まっているぞ!」って怒られると思ってた私は、投げかけられた疑問符に戸惑う。
なんで、って。
そんなの答えられるわけがない。
「よ、弱めてないよ。ミスっちゃっただけで・・・」
「嘘をつくな・・・お前の師匠を何ヶ月していると思っている?お前の気の動きぐらい分かっているぞ」
「・・・・」
「何故だ?まさか私を心配したわけでもあるまい。・・・答えるんだ、キウイ」
あまり呼ばれない名前を呼ばれて顔を見上げれば、セルが目の前に居た。
慌てて距離を置こうとする私を、容赦なく掴むセルの腕。
突然すぎて頭がついてこない。
どうしよう、どうすればいい。
もし本当の気持ちを伝えて、彼に幻滅されたら・・・弟子ですら居られないかもしれない。
でもチャンスでもある。気持ちを伝えるチャンスでも。
「っ・・・・」
「ほう・・・お前でも、そのような表情をするのだな・・・」
「へ・・・・」
「普段は言葉だけで、表情はあまり変わらないようだったが・・・・」
魔人は表情の変化が少し分かりにくい。
そのことを言っているのだろうが、”そのような表情”ってどんな表情だろう。
気になって自分の頬に手を当ててみる。
「・・・・?」
「フッ・・・わからんか?」
「うーん・・・・」
「お前は今、誰よりも人間らしい表情をしているぞ。まさか私にそんな表情をしてくれるとは思ってもいなかったがな」
「う、ううーん・・・?」
そんな表情?
え、変なのかな?
悩む私の頬に添えられた手。
大きくて私の頬をすっぽりと包んでしまうセルの手が、頬をゆっくりと撫でる。
「え・・・・・・ぁ、え、えっと」
「くっ・・くくっ・・・」
「な、なに笑って・・・」
「なるほど。どうやら私は・・・勘違いをしていたようだ」
急にセルの声が低くなって。
頬を撫でていた手が顎まで下がり、私の顔を上げさせた。
目の前まで近づいてくるセルの顔に、心拍数が跳ね上がる。
どんな修行よりも、辛い。心臓が痛い。
「か、かんちがいって、な、なんですか・・・っ」
「私は、お前が私のことを嫌いなのだと思っていたのだ」
「・・・・へ?」
「お前は人前で私と話すのを拒む。それに私と話す時は・・・他の奴らと話している時よりも落ち着きが無い。目も合わようとせん・・・」
それはセルと話すと緊張しちゃうから。
誰かと見られながらなんて、落ち着けなくて時間がもったいないから。
どうせ話すなら二人きりが良かった、から。
「嫌われているのではなく、逆か。お前は私が好きなんだろう?・・・・違うか?」
嬉しそうに言うセルに、私は迷わず頷いていた。
きっと思いを伝えるのは今しかないと、心が叫んでいた。
意地悪いのに、紳士的な笑み。
私に顔を上げさせたまま更に顔を近づけてきたセルは、そのまま私の耳元に口唇を近づけて囁いた。
「ならば問題ないな・・・キウイ。私のモノになれ、永遠に」
「え・・・え!?」
「なんだ?・・・嫌か?」
「いやすんごい嬉しいんだけど!嬉しいんだけど、その・・・」
「どうした」
「だって、セル・・・私と話す時、つまらなさそうだったし・・・・その、私・・・で、いいのかなって。そんな、弟子だからって気を」
使わなくたって、いいのに。
続けて言うつもりだった言葉は、言えなかった。
理由は簡単。セルに口唇を塞がれたからだ。
しかも手ではなく、口唇で。
味わったことのない温かさと湿っぽさが、私の背筋をゾクリと震わせる。
「・・・・お前の気持ちがわかっていれば、すぐにだってこうしていた」
「んえぇ・・・っ!?」
「何だその声は」
「いやだってレディなんてどこに居る?とか言ってたくせに!!」
いつもただの弟子って感じで、セルの暇つぶしだけの存在だと思ってたのに。
「お前が、私を・・・嫌っていると、思っていたからだ」
「う、え・・・?」
「言っただろう。お前は私と話している時だけ落ち着きがなく、目も合わせようとしない・・・嫌われていると思ったのだ」
あれ、つまり?
私はセルに嫌われてると思ってたけど勘違いで、セルも勘違いしてたってこと?
え、じゃあ、元からお互いに好き――――?
混乱し始める私をよそに、セルは段々と落ち着きを取り戻していく。
「これで私も色々と我慢する必要が無くなったな」
「ぁ、う、でも、その、私恋愛とかよくわからない、し・・・・」
好きは、好き。
でも恋人同士が何をしたりするのかはあまりしらない。
魔人にはあまり必要のない情報だから。
「ふ・・・お前は私が何者か忘れたようだな?そんなもの、私が教えてやる」
「・・・究極の生命体、だっけ」
「そうだ。パーフェクトなこの私に、わからないことがあると思うか?」
「でも人造人間じゃん!セルだってこういうことは、わからないんじゃないの?」
悔しくて少し突っ張ってみる。
私はこんなにも動揺してるのに、余裕なセルがむかつくんだもん。
まぁもちろん、私の突っ張りにセルが動じるわけもない。
セルは楽しそうに目を細めると、私をそのまま抱きかかえた。
「そこまで言うなら教えてやろう。私はお前の師匠だからな」
「な、なに!?」
「まずは恋人同士がやることについてたっぷりとな・・・・」
「ま・・・待って!!」
「待つものか。今までどれだけ待っていたと思っている」
「なんでそんなに余裕なんだよーーー!!」
ジタバタと暴れてもセルの力は緩まない。
それどころかお姫様抱っこ状態で顔を近づけられ、思わず目を閉じた。
閉じてても分かるほど、息遣いを感じる。
本当に人造人間なのかな?セルだって、誰よりも人間味があるのに。
誰よりも強さを求めて。
意地悪く笑ったりして。
今こうやって私を抱きしめてる腕も温かい。
恥ずかしさに耐え切れずセルの腕を掴んだその瞬間、また口唇が塞がれた。
「っ・・・・ん!」
「ふ・・・」
セルから漏れた吐息が、甘い。
口唇が離れてからセルの方を見れば、セルの表情が少し苦しげだった。
「セル・・・?」
「余裕なわけが、ないだろう・・・」
吐息混じりの声。
次に降ってきたのは、触れるだけのキス。
「これから色々なことを教えてやろう。恋愛のことも、戦いのことも、全て含めて私がお前の師匠だ。私のことだけを全て聞いてれば良い」
・・・ある意味、すんごい独占欲が強いセリフなような。
悔しいけど、やっぱりセルは私の好きな人だ。
掴んでいた腕を離して、代わりに首元に手を回す。
少し驚いたセルの顔。
仕返しだとばかりに耳元まで顔を近づけ、囁いた。
「だいすき!!」
その瞬間、また塞がれた口唇。
余裕のない口づけを味わいながら、私はこれからの修行が楽しみで仕方なくなっていた。
もっと、もっとたくさんのことを教えて。
私だけの師匠。
「まだ下手だな。口を開けろ」
「あ、あける・・・?」
「お前はまだしも私は大人だ。こんなキスで満足できると思うか?」
「あけてどうするの・・・?」
「ほう。知らないのか・・・教えてやる。実践でな」
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