Erdbeere ~苺~ ★30.歴史の書3.今よりも厳しい師匠 忍者ブログ
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2015年03月22日 (Sun)
30話/戦闘/軽いグロ/ほのぼの/※ヒロイン視点

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連続での時間移動はこんなにも疲れるものなのか。
大丈夫だとか、気にならないとかは思ってたけど、実際地面に足をつけると目眩がした。

でも弱音は吐かない。

来ちゃったし。
それに今回の歴史修正はラディッツの時より簡単だ。


干渉してるのがピッコロだけだから、最悪私が敵にトドメをさしてもさほど歴史は歪まない。

星の光だけが輝く夜の荒野を、ピッコロの気を探りながら駆け抜ける。


「っさむ・・・・」


私の勘が正しければ、もうピッコロは戦っているはずだ。
いつも巻物で飛んでくる時間は、改変されるギリギリの時間だったから。

きっと今回も、似たようなタイミングのはず。

その考えは正しかったらしく、遠くに見つけたピッコロの気が強く揺らぐのを感じた。


「間に合え・・・っ!」


吐く息が白い。
こんな場所で悟飯は放置されてるんだなって思うと、ちょっとかわいそうな気がした。

あの修行があって、今の彼だから助けてあげることは出来ないけど。
震える身体がようやく温まった頃、開けた場所でピッコロと恐竜が戦っているのを見つけた。


え、ってかあれ、恐竜なの?

目の前に現れたそれは、恐竜というより完全に――――バケモノ。


「ッ・・・・」


ピッコロより数十倍大きくて。
姿はプテラノドンみたいな恐竜。でもその爪は紫色に光っていて明らかに普通じゃない。

しかも放っているのは邪悪な気。

操られているとはいえ、元々凶暴な生き物だったのだろうと理解する。


「ピッコロ!!」
「ッ!!」


遠くから魔法でそのバケモノを撃ち落とそうとしたその時、バケモノの爪がピッコロに向けられるのを見て叫んだ。


あ、またこのパターンか。なんて思いつつ。
勝手に動いた身体はピッコロを突き飛ばし、その爪を自分の身体に受けていた。


「っぐ・・・!!」
「な、お前、また・・・!!」


あの時庇ったのとは比べ物にならない痛み。
一向に収まらない痛みと重みを不思議に思った私は後ろを振り返った。

左肩の近くに突き刺さる、大きな爪。

ふと、もう片方の爪を見れば、鉤爪の様に曲がった形が目に入る。


まさかあの形が私の肩に?
――――まずい。


「っあ、ああぁあああああああっ!!!!」


そう思った頃にはもう遅かった。
爪を食い込ませたままバケモノが勢いよく飛び上がろうとし、私の肩に裂けるような痛みが走る。


あああいたい。いたい、エグい!!


こいつの爪は、獲物を逃がさないようにするために深く抉って突き刺さるような形になってるんだ。
早く切らないと、私の、私の肩が。


震える手でバケモノの足を斬ろうとした私を、ピッコロの手が止めた。
そのままピッコロが急速に気を集中させ、見覚えのある技をバケモノに放つ。


「魔貫光殺砲!!!」


バケモノの動きが制限され、十分に時間が稼げたその技は一瞬でバケモノの命を奪った。
同時にバケモノの手を気弾で焼き落とし、ピッコロが解放された私の身体を抱きかかえる。


「ピッコ、ロ・・・?」
「見ないほうがいいぞ。だいぶエグいからな」
「え?・・・・うぎゃあぁああああ!!!!!」
「だから見るなと言っただろうが。馬鹿か」


爪だけが刺さったままのそこ。
傷口が思いっきり広がったそこはあまりにもグロテスクで、私は思わずピッコロに抱きついた。

てかこれどうするの。
抜けるの?抜けなかったらどうするの?


ま、まさか、私の肩を千切・・・・!?


「座れ」
「あああああああの、千切らないよね!?」
「は?良いから座れ。死にたいなら別にいいぞ。この俺様直々にトドメを・・・・」
「あ、座ります」


このピッコロならやりかねない。

連れて来られた洞窟の中に大人しく座った私を、ピッコロが冷たい目で見下ろす。


「どうして俺を助けた」


ピッコロは何か知識があるのだろうか。
私の肩からすんなり爪を抜き去ると、魔術で布を出して私の腕を縛った。

そこまでしてもらってから”普通に魔法で治せば良かった”なんて思っちゃったけど、何も言わずに治療を受ける。


「え、言ったでしょ?私は未来のお嫁さんなんだからそのぐら・・・あぁあああいたいいいい!!!」
「ククッ・・・今貴様の命は俺が握っているようなものだ。さっさと答えるんだなぁ?」
「ちょ、ちょっとまって・・・!」
「こうやって捕まえていればこの前のように消えることも出来んだろう?貴様に逃げ場は無いぞ・・・?」


治療中の肩を強く掴まれ、痛みに視界がチカチカと揺れた。

突き飛ばして巻物を使うのもいいけど、今のこの状態でまともに使えるかも分からない。
観念した私は両手を上げ、降参の意を示した。


「降参です」
「・・・・なら、答えろ」
「それはちょっとねー・・・どうせ、もうすぐ分かることだし、そこは勘弁して?」
「降参の意味を知っているか?それでは何も変わらん」
「ほんとすぐだから、さ。言えることは、私はピッコロの味方だよってことと、お嫁さんになりたいぐらい大好きだよってことだけかな?」
「・・・・・・・・は?」


無駄な事は言えない。
でも別にこれぐらいなら、未来は変わらないでしょ?


どうせこの時代のピッコロじゃ、愛だの何だのは信じないはずだから。

その証拠に、完全に苛立ちの表情を浮かべたピッコロの手が私の肩を強く掴み始める。


「貴様が変なやつだということだけは理解出来たが、何の質問の答えにもなってないぞ・・!!!」
「あだだだちぎれるッ!!なんで!?ってか変なやつじゃないし!!」
「変なやつだろうが!!この俺が好きだと?馬鹿か貴様は。本当に俺はお前を殺すこともためらわない・・・ただの魔族だ」


ピッコロの言葉に、悟飯に言っていた言葉を思い出した。
記憶の一つとして少し気になってた、あの言葉。


”恨むんならてめぇの運命を恨むんだな・・・この俺のように”


ピッコロは自分の運命を恨んでたのかな。
悟空を倒すためだけに生まれた、自分の運命を。

その目的しかなかった、魔族としての自分を。


「・・・ピッコロ」


痛い。
掴まれる力が、強くなる。

でも今の私はそれどころじゃなかった。


すごく、悲しくて、苦しかった。


悟空を殺すために生まれたピッコロ大魔王の生まれ変わり。
その名前も、その姿も、ほとんどの人に怖がられる存在。

でもそれは決して、ピッコロが望んだ生まれ方ではなくて。


「・・・・どうした、女。恐怖で声がでなくなったか?」


ねぇ、ピッコロ。
今のピッコロは幸せなのかな?

運命を忘れて、純粋に魔族としての自分を許せてるのかな。


それとも、まだ恨んでる?
自分の運命を。自分の生まれを。


「ピッコロ・・・・」


ここで余計なことを言うのは、歴史に触れるかもしれない。
いや、むしろピッコロの心に対して侮辱するようなことを言ってしまうかもしれない。


でも、それでも――――言いたかった。


「ピッコロ、私は、どんなピッコロでも・・・好きだよ」


今のピッコロに言っても理解されないのは分かってる。

分かってるけど。
知ってもらいたかった。


悟飯のように、真っ直ぐピッコロを見つめて、知ろうとしてくれてる人がいることを。


どんな運命にも絶対なんてものはないんだと。

どんな生まれ方でも、ピッコロは”悟空を殺すためのピッコロ大魔王の生まれかわり”じゃなくて、”ただの息子”なんだと。


「生まれてきてくれて、ありがとう」


この言葉が今のピッコロにとっては酷なのを知っていた。

ごめんね、昔のピッコロ。
でもお願い。分かって。

自分の運命を、恨まないで。


馬鹿みたいな女が、ピッコロと、ピッコロの運命ごと好きだったと、そんな認識でも良いから。


「・・・・・・貴様、名前はなんだ」


ピッコロが小さく問いながら私から手を離した。


ゆえ
「・・・ゆえ、か。貴様と会ったのは数年の間でほんの数分だが・・・これだけは分かる。ただの馬鹿だとな」
「もういいよ、ピッコロの馬鹿は褒め言葉だってことにしとくから!」
「あぁ・・・そうだな。今の馬鹿は、褒め言葉かもしれんな」
「ふーん?・・・え?今、なんて?」


褒め言葉かも?もしかして、少し心を開いてくれた?


まるでピッコロの弟子になったばっかりの頃を思い出す。
修行の時以外はあまり話してくれなくて、それでも私はピッコロのことが知りたくて・・・良く追い掛け回したっけ。

ピッコロの心が折れて、話をしてくれるようになった時。
あの時も言ってた。


”馬鹿なやつだなお前は。・・・あぁ。今のは・・・褒め言葉だ”


きっとこの時代に出会っていても、私達の運命は変わらなかった。
そう、思える。


「あー・・・身体、だるい・・・」
「当たり前だ。普通のやつならあの傷で気絶しても可笑しくない。肩の肉がえぐれて骨が・・・・」
「あぁああああ言わないで!言わないで!!!!」
「ククッ・・・・」


そこから私の体力が回復するまで、洞窟の中でお話した。

ピッコロの今までのこと。
修行中の悟飯のこと。


そして段々慣れてくると、話の内容はピッコロらしく修行の話になっていった。


技のことだったり、攻撃のパターンだったり。
今のピッコロよりかなり考えは魔族っぽくて、かなり厳しい話もあった。

あとは単純に私が聞きたかった、新しい技の考え方とか。


「あ、世が明けてきた」


洞窟の入り口に差し込む光を見て、私は立ち上がった。
そろそろ帰らなきゃ。元の時間軸に。

そしてまた救わなきゃ。

もう一つの時間軸の、ピッコロを。


「・・・また消えるのか」
「うん。もう少しで私のことも分かるから、楽しみにしといてね!」
「貴様みたいなやつ知ったことか。さっさろ消え失せろ」
「ひど!!!」


もう私に何者かなんて聞かなくなった。
巻物を取り出す私を、捕まえようともしなくなった。


「またね!」
「二度と来るな」
「ぐすっ」


嘘泣きのフリして、巻物に魔力を注ぎ込む。

消えていく視界の中にピッコロを捉えながら、私はまた時間軸を移動した。































「っはぁ・・・!!」
ゆえさん!」
「・・・あ、あれ、デンデ・・・?」


時間軸の移動で、回復したはずの体力が持って行かれたらしい。
苦しさに膝をついた私を、後ろからデンデが支えた。

綺麗になった巻物が、魔法によって時の界王神のところへ送られる。

そして残りの一つ。
禍々しい気を放つ巻物を見ながら、私はデンデに笑顔を見せた。


「大丈夫。ほら、あと一つだから」
「無茶しすぎです!・・・まったく。僕のことも頼ってくれたっていいじゃないですか」
「デンデ・・・」


いつも怒らないデンデの怒鳴り声。
思わずビクッと震えれば、デンデの手が私の手を包む。


「別に行くのは反対しないです。でも、僕にも頼ってください!」
「っ・・・ご、ごめん、あの、急いでたからその・・・」
「ピッコロさんにも言われてたじゃないですか!無茶しすぎるなって!」
「ひぃいいごめんなさいいいい!」


デンデの説教は、怖い。
これ、本当。

こっぴどくデンデに怒られた私は、しばらくして自分の身体が軽くなっていることに気づいた。


不思議に思って手を握りしめる。
デンデはそんな私を見て、ため息を吐きながら微笑んだ。


「体力を回復しておきました。僕にも手助けさせてください」
「ごめんね、デンデ・・・ありがとう」
「いいえ・・・そういえば、次の巻物はどこなんですか?」
「うん?えーっとね・・・」


最後の邪悪な巻物を開き、固まる。


「・・・・」
ゆえさん・・・?」


一番、行きたくなかった時間軸だ。

ピッコロが死ぬことが決まっている、あの時間。
ナッパやベジータ達と戦う、あの激闘が目に映る。


時間軸を移動しても、元の歴史を変えることは許されない。

今ピッコロは生き返ってるんだから、別に何も怖がることは無いはずなのに。


見るのが、怖かった。
目の前で彼の死を見なくちゃ行けないことが。


「・・・・っ」


変えられた歴史はもっと酷いものになっていた。

悟空が来るまで待っていたナッパが痺れを切らして戦うシーン。
そこまでは同じだ。でも、その戦いにベジータまでが加わっていて。


ナッパですら苦戦した戦士たちは、ベジータとナッパの2人にゴミ同然のように殺されていた。

しかもその2人には邪悪な気。
どうやら今回の歴史改変が、一番でかいようだ。


「・・・ゆえさん」
「大丈夫!・・・いっちょやってやりますか!!」


目の前で苦しんでるピッコロを救うために。
私は目を瞑って、巻物に魔力を込めた。
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