Erdbeere ~苺~ ★27.平和を破ったのは天使様 忍者ブログ
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2015年03月20日 (Fri)
27話/ギャグ/甘/※ヒロイン視点

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あれから、1年。
私達の生活は変わること無く、ひたすらに修行して、夜は2人の時間を感じる日々が続いた。

時間が経ったからといって私達の愛に変化はない。


良くも悪くも、変わらない。


いつか覚悟を決めなきゃってのは分かってる。
恋人じゃなく夫婦になりたいって、思う。


あれからピッコロもだいぶ恋愛に慣れてきた。


ただ強く求め、欲望のままに動く魔族としての愛情が。
私を気遣うように優しいものに変わり、デートや記念日といったものも気にしてくれるようになった。


「・・・そろそろ、なんだろうけどなぁ」


日々人間らしさを増していくピッコロに、私の自信がどんどん落ちていく。
こんな素晴らしい彼に私はふさわしいのかと。

・・・いや、やめよう。

こんな馬鹿らしい考えは、ピッコロに失礼だ。


気だるい身体を起こし、ベッドには居ないピッコロの気を探る。
今日こそ覚悟を決めようと気を引き締めた瞬間――――それは、起こった。


「・・・・っ!?」


ゾクリ。

寒気にも似た威圧感。
感じる、強い、恐ろしい魔力。


そう、魔力。


私は慌てて部屋を飛び出し、その魔力を感じた方へ走った。
神殿の端の部分に漂うその強い力は、地球の空気を変えてしまいそうなほど冷たい。

ただならぬ感覚を感じ取ったのか、ベジータ達の気が一斉にこちらに向かってくる。


でも今の私にとって、その魔力よりも”向かってくる奴ら”の方が問題だった。


・・・・だって、あの魔力は。


「あら、お久しぶりですねぇ」


神殿に漂う白い影。

真っ白な翼。
白い長い髪を揺らし、頭の上には天使の輪っか。


間違いなく、天使。


私はそいつを知っている。
天使だった頃、唯一私と一緒に並んで仕事をしていた天使。

私と争う、もう一人の問題児天使。


「・・・サリエル」


私が名前を呼ぶと、美しい女性の姿をした天使は微笑んだ。

サリエル。
癒やしを司る天使。


「サリエル、アンタ一体なにしに・・・」
ゆえ!これは一体・・・!?」
「あ、貴方は・・・っ」
「・・・サリエル、様」


何しに来た?と聞く前に、後ろからポポ達が来てしまった。
厄介なことになったと舌打ちしそうになった私を、サリエルがわざとらしく宥める。


「まぁそう目くじら立てないで?お久しぶりでしょう?」
「いや久しぶりだけどさ・・・サリエルぐらいの立場の天使が、なんでこんなところに・・・」


偉い天使ほど下界への干渉は少ない。
下界への使いなら下級天使がいくらでも行くはずだ。

なのに今回来ているサリエルは上級天使。

神であるデンデと神の知識を持つピッコロは、無意識の内に頭を下げている。


「おい、妙な空気がしやがっ・・・・」
「ピッコロさん!ゆえさん、これは・・・」


やばい、本当にやばい。

厄介なことにしたくないのに、どんどん人が集まってきた。


ベジータに悟飯。ヤムチャにクリリンまで。
くそう・・・天使の気配って神に近いから分からないはずなのに。

こいつらには、違和感で分かってしまったのか。


「貴様、何も・・・ぐあっ!?」
「ベジータ!」


失礼なことを言いかけたベジータに、ピッコロがサリエルの説明を始めた。
それを横で聞く悟飯達。ああもう・・・どうにでもなれ。

どんどん被害が広がっていく中、私はここからの被害を最小限にしようとサリエルを睨んだ。


察しろ、と。


サリエルが無駄に話をすれば、私の天使だった頃のことが広がる可能性だってある。

この偉い天使と同期だったなんてバレれば、皆笑うに決まってる。
現にピッコロは私が大天使だったと知っただけで笑いやがったから。

ロクなことに、ならない。


「あらやだ、そんな怖い顔しないでくださいよ”ルシフェル”」


――――こいつ!!!


「サリエルッ!!」
「あら、どうしました?そんなに怒って」
「よ、余計なこと言うな!」
「余計なこと?あら、私はただ貴方の名前を呼んだだけですよ”ルシフェル”」


わざと強調されるその名前。
まだ意味を理解していないベジータ達に胸を撫で下ろしたのもつかの間、ベジータが真剣な表情で余計な一言を放った。


「ルシフェルとはなんだ?」
「・・・創造神の右腕。天使の中でも2番目に偉い天使のことですよ」
「それが今何故出てくる」
「何故って・・・あなた達の目の前にい「サリエルッ!!」」


サリエルのにっこりとした笑み。
必死に止めようとする私を翻弄するそれは、完全に楽しんでる。


もう、殴ってでも止めようか。

そう思い始めたの私の頭を、ぽんぽんと優しく撫でた。


「冗談ですよ。少し遊びすぎましたね」
「ほんとだよ・・・・」
「まぁ貴方と会えたのも久しぶりですから、ルシフェル。あぁ・・・間違えました、ゆえでしたか?」
「なっ・・・・!?」


完全に、わざとだ。


こいつ本当に天使か?
人が言われたくないことを必死に隠してるっていうのに、なんて酷い奴!!

怒る私とは真逆に周りは静寂に包まれる。


「ルシフェル・・・?」
「ええ」
「誰が・・・?」
ゆえが」
「は・・・?」
「私と同期だったんですよ彼女は。いやぁ、久しぶりで本当に嬉しいです」
「サリエルぅぅううううう!!!!」
「あぁ、やっぱり貴方をからかうのは楽しいですねぇ」
「死ねッ!!!」


ぽかんとするベジータ達。
怒り狂ってサリエルに殴りかかる私。


やがて静寂を破る、皆の笑い声。

予想していた私は「やっぱり」という気持ちと同時にサリエルへの怒りを増幅させた。


「ぶっあははは!!ルシフェル!?ゆえが!?お前そんなに偉かったのかよ!!似合わねーー!!」
「黙れヤムチャぶっ殺すよ!?」
「天使様がそんな口調じゃ世も末だな」
「言いながら笑うなおいこらピッコロ」
「くくっ・・・」
「ベジータも静かに笑うなバレてんぞ!!悟飯以外笑ってんの分かってんだからね!?」


悟飯だけが、純粋に目を輝かせて「ルシフェルってすごいですね!」って言ってる。
ああ・・・純粋ってなんて良いんだ。悟飯だけはそうで居て欲しい。


って、それはそうと。


怒りのあまりサリエルの話を聞くことを忘れていた私は、笑う皆を無視してサリエルに向き直った。
サリエルも半笑いだったけど、この際見なかったことにする。


「それで?サリエルは何しにきたの?」
「あぁ、そうでした。こんなくだらないことをしてる場合じゃなかったですね」
「・・・・・・くだらな・・・!?」
「真面目な話をしにきたんです。ちょうどここの全ての人に関わることなので助かりました」


扱いが、酷い。
酷いけどサリエルの話は気になるから、大人しく聞くことにした。


「ここの全ての人に関わる・・・?」
「ええ。今、歴史を歪めて力を手に入れようとしている者がいます。その人達は力ある者や世界に強く影響したものの過去を歪めているんです」
「過去を・・・?」
「はい。たとえばベジータさん、貴方が一番はじめに悟空と戦った時・・・クリリンさんにトドメを刺されかけましたね?」
「ッ・・・・!」


ベジータが目を見開く。
クリリンも少し気まずそうにベジータから離れた。

サリエルはその反応を見て満足したのか話を続ける。


「もしあの場所でクリリンさんに何かしらの影響がかかり、ベジータさんを殺してしまったら・・・歴史はどうなります?生まれるはずだった生命すら無くなり、もしかすると勝てるはずだった戦いすら負けていたかもしれない・・・」
「な・・・そんなことが、出来るのか・・・?」
「はい。今現在、色々な場所でそのような改変が起きています。そしてその改変によって得られたエネルギーで力をつけようとしている者がいるのです」


歴史を歪んで手に入れられるエネルギーなんて、使えるのはごく僅かな人間だ。
そもそも、歴史を歪ませるって事自体が異例の技。

深い記憶の中を探り、一つの可能性に行き当たる。

時空を行き来して歴史を歪ませる・・・そんな技を使えるのは。


「暗黒魔界の人間、だね」
「・・・さすが。よくお分かりで」
「それで?そいつらと私達に何の関係が?」
「関係ありまくりでしょう?力もある、戦いにも影響してる・・・あなた達には必ず、その者達の時空の歪みの犠牲になります」
「ハッ・・・ふざけるな、俺がそんなものに・・・」
「残念ながらベジータさん。この術はどんなに力を持ってるものでも回避することは出来ないのです。出来るのは時空を司る戦士達と、神のみ」


歪んだ時空を本来の正しい流れに戻し、歴史の改変に巻き込まれた人を助けるのが、”時の界王神”という時を司る神の下で働く”タイムパトローラー”という戦士たちだ。


彼らは時空が干渉しない場所に暮らしているため、時空の歪みの影響を受けない。
でもそれなら、今私達に言っても何も意味がないのでは?


「くっ・・・なら俺達にどうしろと・・・」


私が言いたいことをベジータがぼやいた。
同意するように深く頷けば、サリエルの目が哀れんだ目に変わる。


ゆえ・・・貴方、馬鹿ですか?」
「ば・・・っ」
「貴方は悪魔とはいえ元天使。神の領域に居た者です。貴方には時空の歪みの影響が出ないでしょうから・・・もしものときは、貴方にもご協力いただきたいと、それを伝えに来たのです」


あれ、そうだったっけ。
時空の歪みなんて考えたことも無かったから、私は誤魔化すように笑った。

そしてふと、真面目な話に飲み込まれたとある部分に突っ込んでしまう。


「え?じゃあ最初のくだり必要あった?私のことバラす必要あった?ねぇ?」
「なんのことですかねぇ・・・・」
「おいこら!!!それでも本当に天使か!!!」


がしっとサリエルの肩を掴めば、サリエルが意味深な笑みを浮かべた。
やっぱりこいつ、ただ私をからかうために・・・!

それに気づいた私は肩から手を離し、一気に力を込めてサリエルの腹部を狙った。


もちろん当たらないとは知っていて、だけど。
天使としての強い力に拳を押さえこまれた私は、しょうがなくその拳を下げた。


「怖いですねぇ、いきなり殴りかかるなんて」
「チッ・・・・」
「まぁそういうことですから、何かあったらよろしくお願いしますね!」
「なっ・・・ちょっと!!まだ話は終わってな」


――――いない。


サリエルのいなくなった神殿は、今までのことが夢だったかのような静けさを取り戻した。
ただ残っているのはすさまじい疲労感と、未だにぷるぷる震えながら笑っているこいつら。


「いつまで・・・笑ってんのかなぁ?」
「そう怒るな、ルシフェル様・・・っくく・・・」
「ベジータァ・・・?」
「ま、まぁほら、誰にだって過去ってものが・・・さ・・・」
「クリリン。最後まできっちり言えたら褒めてあげれたんだけどなー?」
「天使のゆえちゃんも可愛いと思うぜ!」
「お前ら・・・・帰れーーーーー!!!!!!!!」

































皆を帰した後、少し修行した私達はそれぞれの時間を過ごしていた。
それぞれの時間っていっても、どちらかがお風呂に入ってる間時間を潰すだけ。

今はピッコロが部屋でお風呂に入ってるから、私の自由時間。

神殿の外に出て、手を伸ばせば届きそうな月を眺める。


「綺麗だなぁ・・・・」


ここの月は下界よりも凄く綺麗。
単純に、下界より高い場所にあるからなのかな?

あと無駄な光も一切ないし。
邪魔するものが、何も無いから。


「・・・・・」


眠れない夜はよくピッコロと夜空を眺める。
1人で見るこの月もいいけど、やっぱりピッコロと見たほうが綺麗だ。

ピッコロがお風呂から上がったら呼ぼうかな?

ちょうど今日は満月。
いつもより強い光を放つ月が、狂わせる。


「ふぁう・・・ピッコロ遅いなぁ」


普段より長めの入浴。
今日の修行も激しかったから、疲れてるのかも。

そう思いながらのんびり神殿のタイルに寝転がって、気づいた。

ちょっとした違和感。
ピッコロの気の、小さな揺らぎ。


「・・・・まさか」


サリエルが言っていたことを思い出し、すぐさま私は部屋に戻った。

乱暴に扉を開ければ、バスローブのまま倒れているピッコロの姿が目に入る。


慌ててピッコロを抱き起こしてベッドに寝かせた。
魔法で服を着させ、治癒の魔法を送り込んでみるが・・・まったく収まる気配がない。

むしろ収まるどころかピッコロの気の揺れが激しくなった。

それと共にピッコロが苦しみ始め、見たこともないような禍々しい気が放たれる。


「な、なにこれ・・・っ」
「ぐぅ・・・・!」
「ピッコロ・・・え?」


心配してピッコロの頬に触れようとした手は、突き抜けた。

うそ、どうして。
存在は確かに感じるのに。


やっぱりこれは。

”歴史の改変”
過去のピッコロが、誰かの手によって消されようとしてる。


「・・・っ!時の界王神!!見てるんでしょ!!」


デンデ達のことなんか気にせず声を上げた。
虚しく響いた私の声は、何も無い空間に吸い込まれて消える。

何してるんだ。

歴史の改変が起こってるってのに、起こってる場所の監視すら出来てないの?


時の界王神は、全ての時を司り、見守る神様のことだ。
歴史の改変などを修正しているのも、この神様とその下につく戦士達のはずなのだが。


<はいはい、呼んだ?>


気だるそうな返事に、頭を抱える。


「はいはい呼んだ?じゃないよ!ピッコロが・・・!」
<今、ベジータ達も同じ状況で正直人手がたりないのよ・・・>
「なっ・・・じゃあ、どうしろと・・・」
<貴方、ピッコロの過去を全て見てるわよね?申し訳ないけど、貴方自身で改変の修正をお願いするわ>


失敗すれば自分たちの歴史に関わる重大なことなのに、こいつときたら。


・・・でも、拒否権なんて、ない。


そんなの分かってる。
このままピッコロが消えてしまうことが一番、失敗するよりも何より恐ろしい。

私は時の界王神に促されるまま、覚悟を決めて立ち上がった。


「分かった。何すればいい?」
<今から改変が起こってる歴史の巻物を渡すわ>
「オーケー。間違い探しってやつね?おかしな歴史を元に戻す、らくしょーよ!」
<任せたわ。他の人たちは私達に任せなさい!>


頭上に降ってきた4つの巻物。

それはどれも禍々しい気を放っており、私はその内の一つを手にとった。

広げると見える、巻物に記されたピッコロの過去。
これは・・・まだピッコロが天下一武道会に出る前の時間軸の巻物だ。


巻物に目を通し、どこが改変されているのかを探る。

この頃のピッコロは天下一武道会が行われるまで1人で修行して、3歳ぐらいの頃に悟空と戦ってるはず。


「・・・・ここだ」


順調に動いていた巻物が異変を示したのはピッコロが2歳の時点。
修行のために戦っていた、何もない恐竜にピッコロが食い殺されるのが映っている。

その恐竜の目は、明らかにおかしい。

赤く光っている上に、普通の生き物には感じられないほどの気を感じた。


これだ。
歴史を改変して力を得ようとした奴は、この恐竜に何かしら魔法をかけてピッコロを殺させたんだ・・・。


「ピッコロ・・・待ってて」


私、過去の貴方も救ってみせるよ。
記憶の中でしか知らないピッコロの過去を持って、私は目を閉じた。


吸い込まれる感覚。

身体が歪むような違和感。


人の過去に触れるなんて、結構怖いもんだ。

でも、ちょっと嬉しさを持っている自分がいた。
だって。


「過去のピッコロにも、会えるなんて――――ね?」


不謹慎な笑みを浮かべながら、私は1つ目の巻物の世界に足を踏み入れた。




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(龍如/オール・海賊/剣豪)