いらっしゃいませ!
名前変更所
ブルマとベジータの結婚式当日。
C.Cの令嬢の結婚式とだけあって、規模も参加人数も予想以上のものになっていた。
綺麗なウェディングドレスに身を包んだブルマ。
それをツンケンしながらもきちんとリードしているタキシード姿のベジータ。
「ありがとう、ベジータ」
「フン・・・」
そんな2人を見て、私は少し離れた場所で”羨ましさ”を感じていた。
やっぱり恋人と夫婦じゃ響きが違うから、さ?
でもブルマのように結婚しようって自分から言ってできるほど勇気は無い。
もちろん、強行突破しちゃうところがまたいいところなんだけどね。
ブルマのその自信も、強さも、きちんと考えてるところも。
全部ベジータには伝わってるし、ベジータの不器用な良さもブルマは分かってあげてる。
「理想的、だなぁ・・・・」
賑やかな結婚式会場。
そこから少し離れた場所で涼んでいた私は、視界の端で珍しい組み合わせを見つけた。
ピッコロと、ブルマだ。
何やら話し込んでるみたいだけど・・・あの様子じゃ、酔っ払ったブルマにピッコロが捕まったんだろう。
「ま、大変そうだったら回収しにいってあげますか」
それよりも今は、少し涼みたかった。
あまりにも結婚式が大規模すぎて、人に酔ってしまったのだ。
私の記憶にある結婚式ってこじんまりしたのばっかりだったのになぁ。
ブルマの結婚式って規模が違う。
それはもう世界の富豪が集まる一種のパーティだ。
「お前がこんなところにいるのは珍しいな」
「・・・ベジータ。主役がこんな端っこにいていいの?」
「ハッ。もう式どころじゃねぇだろうが」
ベジータの視線の先は確かにもう結婚式なんてもんじゃない。
ただでさえ人混みが嫌いなベジータだ。
私が人酔いしてるんだから彼はもっとキツイんだろう。
からかおうと思ったけどそれを止めて、後ろにあった大きな木の根元に腰掛けた。
ベジータも私の隣に立ち、身体を木に預ける。
「あれ、ベジータ。何も飲んでないの?」
「・・・・俺はあまり酒は好きじゃない」
「そう?でももったいないからほら、雰囲気だけでも!」
「あ、おいこら!!」
怒るベジータの手を取ってワイングラスを渡した。
もちろん中身も入ってるけど、これは雰囲気だけ。
見た目はワイン。中身はただのノンアルコールだ。
「チッ・・・余計なことを」
そう言いながら、ベジータはそのワインを飲み干した。
邪魔だとばかりにワイングラスを私に放り投げ、また木に寄りかかる。
「・・・・」
「・・・なんだ」
寄りかかってるベジータを見つめてたら、睨まれた。
いやだってさ。今のベジータ、タキシードなんだよ?
見惚れないわけ無いよね。王子様のタキシード姿に。
ベジータの睨みにも臆せず、ベジータを見つめ続けた。
「なんだと聞いてるだろうが!!無言で見るな!!」
「いだだ!!タキシードのベジータ王子に見とれてたんですっ!!」
「・・・・は?」
「は?じゃないよ!かっこいいんだもん、見とれちゃうでしょ?」
睨みから、何言ってんだコイツという視線に変わっても気にせず力説する。
「だってベジータみたいなステキな人が旦那さんになって、タキシード着てて・・・いいなぁ・・・・」
「・・・何言ってやがる。酔っ払ったか?」
「前から思ってたことだよ?ベジータは凄くステキ。強くて、優しくて、誇り高くて・・・ベジータにしか、サイヤ人の王にはなれないと思うんだよね、ほんと」
まぁ、普通に接してるとわかりにくいけど。
ベジータは誇り高きサイヤ人だ。
でもただ高いだけじゃない。その力のため、プライドのため、日々孤独に努力を続けるような素晴らしい人。
気づきにくいけど、厳しさの中に優しさもあって。
ブルマはそんな小さな優しさにも気づいてるんだと思う。
ベジータもそれが分かっていて普段と態度を変えないんだ。
「理想の夫婦だなぁ・・・・ブルマもすっごくステキだし」
「・・・お前もピッコロと結婚したら良いだろうが」
「・・・へっ!?」
「何驚いてやがる。お前には相手がいるだろう。悩む必要なんてあるのか?」
珍しい。
ベジータがそんな話、してくるなんて。
驚いて一瞬固まっちゃったけど、慌てて口を開いた。
「そ、そんな簡単じゃないよ・・・・」
「・・・・・」
「だってほら、ブルマはいい奥さんになれるよ?きっとベジータのどんな時でも支えてあげれる人だし・・・でも私にそこまでの良さがあるのかなぁって」
私は悪魔だ。
ピッコロのことは大好きだし、普通の人間よりも愛せる自信はあるけど。
きちんと女性として、彼を幸せに出来るかは正直分からない。
ましてやピッコロは徐々に恋愛を学んでいってる状態。
もしかしたら、悪魔なんて嫌だって、私みたいなのは嫌だって、そんな風に――――。
「馬鹿かお前は」
「うおっ!?」
いつの間にかベジータの顔が目の前にあった。
驚いて身体を引こうとすれば、そのまま乱暴に頭を掴まれて固定される。
「ち、ちかっ、ちかい!!」
「うるさい黙れ。いいか、一度しか言わない。良く聞きやがれ」
や、やっぱり酔ってるんじゃないの?
でもベジータからはお酒の香りは一切しない。
あまりにも近すぎる距離で思わずドキドキしていると、ベジータが小さく囁いた。
「少しは自分に自信をもて」
優しい声色。
「お前は・・・お前自身が思ってるよりも、ずっと、人間らしい奴だ」
「・・・・ベジータ・・・」
「馬鹿で、面白くて、見てて飽きない」
「・・・・・・」
あれ、これ慰められてるのかな?
馬鹿にされてるんじゃ、ないよね?
「そのくせして無謀なぐらいの度胸を持ってやがる。この俺様にも最初から食って掛かるぐらいだからな」
そういえば、召喚された次の日ぐらいにベジータと会って喧嘩した気がする。
第一声で「よう、悪魔野郎」って言われたから。
「名前があるんだぞこのM字ハゲが」って言い返して、殴り合いになったんだっけ。
その時止めに入ったブルマの度胸と剣幕がすごかったのを覚えてる。
「お前みたいな奴は、そういるもんじゃねぇ。だからあのナメック星人もお前を選んだんだろう」
「え、今のどこらへんに褒められた場所があったのかな?」
「全部だ」
「う、うん・・・?」
つまり。
私が馬鹿で面白くて見てて飽きなくて、度胸がある女だから、惹かれた?
いやいや。ちょっと良くわからないんだけど。
馬鹿にされてる部分しかない気がするんですけど!!
「ある意味カカロットと似たものを感じる・・・虫唾が走るぜ」
「ついに罵倒されたんだけど?」
「・・・別に俺は、お前と居るのは嫌いじゃない」
「・・・・」
すっごく分かりにくい。
けど、私から手を離したベジータの顔が赤いから、今のが精一杯の褒め言葉だったんだろう。
どんなに分かりにくい言葉でも、滅多に聞けないベジータから聞くとかなり嬉しかった。
思わずからかいそうになって・・・その言葉を飲み込んで、顔を逸らす。
月明かりに照らされたベジータの表情が、思ったより凄く真剣で。
今までの言葉が本当に真剣に考えられたものだと思うと、ドキッとした。
「・・・・ひ、卑怯だよ・・・」
「・・・なにがだ」
「滅多に褒めてくれないくせに」
「ハッ・・・お前が辛気臭い顔してるからだろうが」
「・・・・・・ベジータ、よ、酔ってる?」
普段のベジータからは考えられないような言葉がたくさん出てくる。
でも、お酒を飲んでる様子は本当になくて。
一応聞いた私に返ってきたのは、ベジータらしい言葉だった。
「お前が飲ませたせいだろうな。貸しだ。この借りは返しにこいよ」
「ええ!?」
「・・・・じゃあな」
ベジータは私の返事を聞くこと無く会場へと戻っていった。
飲ませたせいって言っても、あれノンアルコールだったのに。
照れ隠しに使ったんだろうけど、タネを知ってる人間からすれば微笑ましいものだった。
ほんと、ベジータってば不器用だなぁ。
不器用な優しさ。
なんというか、昔のピッコロに似てるかもしれない。
「ま、ベジータもピッコロも昔は敵だったんだもんねぇ・・・」
「俺がなんだって?」
「おわっ!?ピ、ピッコロ・・・」
いつの間にかピッコロが私の後ろに居た。
近づいてくる彼から香るお酒の香りに驚く。
「ピッコロ、お酒飲んだの?」
「あぁ・・・ブルマに無理矢理、な」
やっぱり。
数分前の光景を思い出した私は、笑いながら水を取り出して渡した。
水しか摂取しないナメック星人にとって、アルコール類は少量でもキツイはずだ。
その証拠にピッコロの頬が少し赤く染まっている。
「大丈夫?」
「フン・・・このぐらいじゃ酔いはせん」
「真っ赤な顔で言われても説得力がないよ・・・」
大きな木の根元に2人。
会場の賑やかさからは少し離れたこの場所で、私はピッコロに寄り添った。
ピッコロも何も言わず、私の肩を抱き寄せる。
「・・・・綺麗だったね、ブルマ」
「ドレスというやつか」
「そうそう。ただのドレスじゃないよ?結婚するときにだけ着るウェディングドレス」
「・・・・・着たいと、思うのか?」
その質問に、ドキッとした。
着たくないといえば嘘になる。
だけど恋愛すら理解にいっぱいいっぱいなピッコロに、夫婦まで要求するのは・・・迷惑じゃないかって思ってしまう。
むしろそれを要求するほどのスペックがある人間なのかなぁって、さ。
ごめんね、ベジータ。
あんなに慰めてくれたのに。
私はやっぱり臆病だ。
自分に自信なんて持てない。
「着たいと思うけど、焦らなくていいよ?」
「・・・すまない」
「謝らないでよー!」
「だがお前は・・・気を使ってるんだろう?恋愛ですらいっぱいいっぱいな俺に、夫婦というものまで押し付けたくないと・・・そう思ってるんだろう?」
心を、読まれた?
いや―――たぶん、違う。
「ピッコロ・・・」
「薄々気づいていた。お前が、ブルマの話を聞いてから・・・そういうことに深く興味があるということは・・・・」
「興味はあるけど、どうしてもしたい!ってわけじゃないんだよ?」
したいよ、本当は。
結婚して夫婦になってしまえば、本当に永遠を誓える。
でも怖いよね?
私は普通の人間じゃないから子供を残すことは出来ない。
もしピッコロが恋愛を理解していく内に、子孫を残したいと願う様になってしまったら。
色々な希望を持つようになって、それを私が叶えることが出来なかったら。
・・・・どうなる?
「ね、ピッコロ」
「ん?」
「私達にはたっくさん時間があるんだから・・・ゆっくり、一緒に、進もう?」
「ゆえ・・・」
たくさん時間があるのに。
焦るほどピッコロが欲しい。
それは私のワガママ。
封印して、自分に少しでも自信が持てたら・・・言おう。
結婚して欲しいって、私から言っちゃおう。
夫婦として何もしてあげれないかもしれないけど、それでもよければって。
「大好きだよ、ピッコロ」
「あぁ・・・俺もだ」
その言葉と同時に私達は浮かび上がり、静かに会場を後にした。
下の景色が見えるギリギリの位置を飛ぶ。
無言で手だけを繋いで空を飛ぶ私達は、誰からも見えないだろう。
暗い夜の闇。
たとえ見えたとしても、それは一瞬のスピード。
「夜景というのも・・・・案外、いいものだな」
意外な言葉だった。
無言を破ったピッコロの言葉に、思わずピッコロの方を見た。
ピッコロは私の方は見ず、穏やかな表情で夜景を見続けている。
「急に、どうしたの?」
「いや・・・今まで景色に意味を見出したことなどなかったのだがな。こうやってお前と見てみると・・・・案外良いものだと思えた」
「そっかー!じゃあ今度、もっともっと綺麗な場所に連れてってあげよう!」
とはいっても、ピッコロのほうが知ってそうだけどね。
私よりたくさん修行して、私よりたくさんの場所に行ってるわけだし。
だけどピッコロは笑ってくれた。
頼むって言いながら、私の手を強く握る。
「いやー、平和っていいものだねぇ」
「ハッ。この俺には物足りん」
「やだやだ。刺激とやらに付き合ってあげてるじゃないですか」
「修行から逃げ出すお前を捕まえるのが刺激なら物足りんな。いっそ殺すつもりで捕まえればいいか?」
「大人しく修行します」
「・・・なんだ、つまらん」
「なんか私で遊んでない?」
「気のせいだ」
甘い空気だけじゃないのが私達。
こんな会話にも幸せを感じながら、私達は神殿に向かって高度を上げた。
PR
この記事にコメントする
サイト紹介
※転載禁止
公式とは無関係
晒し迷惑行為等あり次第閉鎖
検索避け済
◆管理人 きつつき ◆サイト傾向 ギャグ甘 裏系グロ系は注意書放置 ◆取り扱い 夢小説 ・龍如(桐生・峯・オール) ・海賊(ゾロ) ・DB(ベジータ・ピッコロ) ・テイルズ ・気まぐれ ◆Thanks! 見に来てくださってありがとうございます。拍手、コメント読ませていただいております。現在お熱なジャンルに関しては、リクエスト等あれば優先的に反映することが多いのでよろしければ拍手コメント等いただけるとやる気出ます。(龍如/オール・海賊/剣豪)
簡易ページリンク
【サイト内リンクリスト】 ★TOPページ 【如く】 ★龍如 2ページ目 維新
★龍如(峯短編集)
★龍如(連載/桐生落ち逆ハー)
【海賊】 ★海賊 さよならは言わない
★海賊 ハート泥棒
【DB】 ★DB 永遠の忠誠(原作・アニメ沿い連載) ★DB 愛知らぬが故に(原作・アニメ沿い連載) ★DB プラスマイナスゼロ(短編繋ぎ形式の中編) ★DB(短編)