Erdbeere ~苺~ ★23.セルゲーム 忍者ブログ
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2015年03月09日 (Mon)
23話/戦闘/ちょいグロ/※ヒロイン視点

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セルゲーム当日。
ほぼ時間通りに揃った私達から最初に出たのは、悟空だった。


その前にサタン達が出てワイワイしてたんだけど・・・結果は言わずもがな。

死人が出なかっただけ幸いとしか言いようが無かった。


「いきなり貴様からか。楽しみは最後にとっておきたかったのだがな」
「・・・・」


皆が見守る中、ちょっとチンケなセルゲームの舞台にセルと悟空の二人が並ぶ。

どっちが勝ちそうとか分からない。
でも、本当になんとなくだけど、この勝負に悟空は勝てない気がしていた。


感じられる気はほぼ互角。

戦いを始めた二人の動きは、私達ですら圧倒されてしまう。


同時に、見惚れてしまうほど素晴らしい戦いだった。
地球の運命をかけてる戦いだってことを、忘れてしまうほどに。


「す、すげぇ・・・」


ぽつんと言葉を漏らしたクリリンに、誰も文句は言わない。
その通りだと思ったから。

だけど、その隣で見ていた悟飯だけは、微妙な表情を浮かべていた。


まるで気に食わなさそうな。
不思議がっているような。


「どうしたの?ごは・・・・」
「皆、リングから離れろーーー!!!」


悟飯に話しかけようとした瞬間、悟空の叫びが上空から響いた。
慌てて身を翻し、セルゲームの舞台から離れる。


離れてたった数秒後。


私達が目の前で見ていた舞台は、粉々に砕け散った。


あまりの攻撃力に、ベジータでさえ、たじろぐ。
私も空中でバランスを崩し、ピッコロのマントにしがみついた。


「やば・・・」
「チッ・・・とんだバケモンだぜ・・・・」


舞台が消えたせいか、戦いは激しさを増す。

広くなった戦いの場所を活かすような動き。
それについていく悟空の攻撃。

勝負はまだ、見えない。

でもそろそろだ。そろそろ、見えてくる。


「悟空のパワーが下がってきた・・・」


それに比べて、セルはどうだ?
息が上がってきてるように見えるけど、パワーが下がってるわけじゃない。


―――――そんな時、だった。


激しい攻撃の後、突然悟空が空に上がった。
そのまま、見覚えのある構えを取る。


「か・・・め・・・」


悟空を包む全力に近いエネルギー。
かめはめ波を撃つにしても、悟空が狙ってるのは地上に居るセル。

あんな力で撃ったら、地球が。


「ご、悟空!?」
「ま・・・まさか撃つつもりじゃ・・・?」


悟空の行動に気づいたクリリンとヤムチャも、顔を引きつらせた。
あんな力、上手くコントロールしたとしても掠っただけで危険だ。


「は・・・め・・・」
「き、貴様・・・本当に、撃つつもりか・・・?」


セルが怯んだ、その一瞬。

ヒュッと風を切るような音と共に悟空が消えて、セルの足元に姿を現した。


「しまっ!?」
「波ァーーーー!!!」


ほんの一瞬の移動。
放たれたかめはめ波は、綺麗にセルを直撃した。

もちろん、地球にはほとんど影響ない。
ほんとセンスあるやつだ。ベジータと悟空は特に飛び抜けてる。


「天才的・・・」
「お父さん・・・・」


土埃が消えていく視界の中にある、セルの下半身。

あの直撃を食らっても、その身体にはほとんどの気が残っていた。
そのことに気づいた悟空が警戒しながらセルに近づく。


「どういうことだ?まだ気が・・・」
「危ないぞ悟空!!セルは復活する!!」
「っ!?」


クリリンの声と同時にセルの下半身がぴょんっと立ち上がり、再生を始めた。

まじまじと見つめるにはグロイ光景で、思わず顔を逸らす。
ピッコロはそれに顔をしかめながら、私を庇うようにマントを広げてくれた。


「ふっ・・・どうした孫悟空。相当パワーが落ちてしまったようだな?」
「そういう・・・てめぇもな?さすがに今のでだいぶ使っちまったんじゃねぇのか?」


やっぱり、悟空に勝ち目が見えない。
お互いにパワーが落ちてるといえど、セルの方がまだ余裕がある。


・・・何を考えてるんだろう、悟空は。


何の計画もナシに戦うようなやつじゃないって思ってる。
だって地球の運命を幾度と無く救った戦士だ。


地球の運命が掛かってるのに、負けてしまうなんてこと。


「降参だ。オラもうやめとく」
「・・・何?」


え?


今、なんて言った?
降参って、確かにそう聞こえた。


聞き間違いかと思ってマントから顔を出すが、それは間違いじゃなかったらしい。

悟空は驚くセルを置いてこちらへと戻ってくる。


「何を言ってるんだ孫悟空!千豆を食え!!貴様がやめれば、この地球はおしまいだぞ!」
「おいおい何言ってんだ。オラが戦えなくても、まだ戦う奴はいる。オラはそいつがお前を倒すと確信した・・・だから、やめたんだ」


なんとなく、悟空の言葉が誰を指しているのか分かってしまった。

ごくりと息を呑んで、自分のことだと気づいていない本人――――悟飯を見る。

さっきの戦いを、唯一余裕ある目で見ていたのは悟飯だ。
悟空があの時から悟飯の才能に気づいていたのだとしたら。


「おめぇの出番だ、悟飯!」
「・・・・え?僕・・・?」


予想、通りだ。


「やれるな?」
「何を考えているんだ悟空!!悟飯だと!?無理だ!!!」
「まぁそう言うなよ。考えてみろ、悟飯はすんごいちいせぇ頃からオラ達と戦ってきたんだ」


ピッコロの記憶の中で見た悟飯の戦いがよみがえる。

確かに悟飯は小さい頃から戦ってきた。
戦いが嫌いなサイヤ人なのに、ピッコロに無理やり修行させられて。


でも正義感が強い子だったから、それすらも耐えぬいて、今では立派な戦士になった。


戦いの歴でいえば確かに長いのかもしれない。
あとは悟空が何か知ってるんだ、きっと。


「お父さん、僕・・・」
「やれるな?悟飯」
「・・・」
「偉い学者さんになりたいんだろう?平和な世の中を・・・取り戻すんだ」
「・・・・はい。やってみます!」


ああ、なんて良い子なんだろう。
誰かさんの弟子ってのが信じられないぐらい、真っ直ぐで、素直な。


「っぐ!?」


突然、背中に衝撃が走った。
心の中を読んだらしいピッコロが、私の後ろで不機嫌そうに睨んでいる。


「?どうした、ゆえ
「い、いや、なんでもない・・・」


心配する悟空に適当な返事を返し、セルと対峙する悟飯を見つめた。


上がっていく気は悟空、いや、もしかしたらソレ以上かもしれない。
何時の間にか飛び抜けた成長をしていた悟飯に、悲しくなる。

私は、成長できてるんだろうか?とか。


「ガキが・・・すっかりその気か?」
「・・・・」


戦いに入る悟飯の表情は険しい。
殴り合いが始まっても悟空より余裕を持った動きをしていて、悟空の言葉に真実味が増した。


・・・でも。


「ぐあっ!」
「悟飯っ・・・・」


ピッコロが反対した理由は、分かってる。
たとえ本当に強くても、悟飯は優しいから。

覚悟が、未熟なのだ。

セルの攻撃を避けるだけでまったく攻撃しない悟飯に、段々とセルが苛立つ。
そして一気にスピードを上げたセルが、悟飯を岩場に殴り飛ばした。


「悟飯・・・・!!!!おい、悟空ッ!!完全に貴様のせいだぞ・・・!!!」
「おい、落ち着けよピッコロ。悟飯の気は落ちちゃいねぇだろ?」
「・・・・!」


岩場に投げられても。殴られても。
悟飯はまったく変わりないパワーで立ち上がる。


増えていくのは、悟飯の傷。

起き上がってセルの前に歩き出した悟飯は、小さな声で呟いた。


「もう、止めようよ。こんな戦い、意味が無いよ・・・・」


彼らしい、と思ってしまった。
優しい少年の心が、手に取るように見える。


「意味ならある。いわばこれは私の楽しみだ」
「・・・・僕はどんなやつでも、殺したくないんだ・・・たとえお前のようなやつでも」


優しい少年の言葉も、彼には届かない。


「殺す?お前は何年経っても私を殺すことは出来ない・・・違うか?」
「僕には昔から力があったんだ。カッとなって怒ると、分からなくなって・・・」
「・・・・ほう?」
「自分でも、怖いんだ・・・だから・・・・」


悟飯の言葉に反応したのは、セルだけじゃなかった。

ピッコロがやられかけたときに見せた急激な戦闘力の上昇。
普通の戦いの時には見せない、凛々しい表情。


ここにいるほとんどの人間が、それに覚えがあるのだろう。

悟空もまた、それを狙ったのかもしれない。


「なるほど。だがそのことを私に話したのは間違いだったな」
「がっ!?」
「私は貴様を・・・何がなんでも怒らせたくなった」


セルの腕が悟飯を抱え込んだ。
そのまま力強く、悟飯の小さな身体を締め付ける。


「がぁああぁあっ!!」
「そうら、怒れ!このまま死ぬのは嫌だろう!?」
「うあぁあああぁああっ!!」


痛みに叫ぶ声。

誰もが耳をふさぎたくなるような声が、響き渡る。


止めに行きたい。
だけど出来ない。


誰もが分かってるんだ。

文句をいえど、彼と対等に戦える存在が・・・悟空と悟飯しか居ないってことを。


「はぁっ・・・はぁっ・・・・」
「チッ・・・強情なガキが・・・」


しばらく悟飯を傷めつけた後、セルは乱暴に悟飯を地面に放り投げた。
荒く息を吐く悟飯にトドメを刺すこともせず、ただ見下す。

そして突然、何かを思いついたかのように私達の方へ振り返った。

嫌な予感がする。


「どうやら、自分の痛みだけでは怒る気にならんらしい」


一瞬で悟飯の目の前から姿を消したセルは、クリリンの目の前に現れた。
警戒する暇もなく、セルがクリリンから何かを引ったくる。


悟飯の所に戻っていったセルの手元を見た私は、無意識に口唇を噛んだ。


「あいつ、千豆を・・・・!」
「し、しまった・・・もっと早く、食べておくべきだった・・・!」


私の隣でそう嘆く悟空の身体は、傷だらけだ。

傷ぐらいなら私でも治せるから問題ないけど、気力や体力はまた別。

悟空が消費したパワーの量は、とてもじゃないけど魔法なんかじゃ回復できない。
とりあえず悟空の傷を治そうと手を翳した私に、異様な光景が飛び込む。


「な、なんだ、何をする気だ・・・!?」


飛び込んできたもの。
それは小さなセル。しかも8人。

まるで子供のようだけど、感じ取れる気はセル本人とさほど変わりない。
セルの行動からして何をしてくるか理解した私は、回復するのを止めて構えた。


「くるよ、皆。構えて!!」
「え!?」
「チッ・・・」
「ほう、勘がいいな・・・そうら、行け!セルジュニアたちよ!あいつらを痛めつけろ!!殺してしまっても・・・構わんぞ?」
「「「「キキー!!」」」」


セルの掛け声と共に、一斉にセルジュニア達が私達に襲い掛かってくる。

私は周りの様子を見ながらも、悟空を庇うようにセルジュニア2人と戦うことにした。


「お姉さん、こっちだよーだ!」
「こんの・・・!!」


さすがは、セルジュニア。
セルの子供なだけはある。

いざ戦い始めてみると、私はセルジュニア達にさえも翻弄された。

ちょこまかと動く彼らを捉えることが出来ず。
何とか防御は間に合っても、反撃が出来ない。


「お姉さん、ヨワーイ!」
「ヨワーイ!」
「す、すまねぇ、ゆえ・・・」
「っさいな・・・悟空は黙って守られてて」


私はこんな奴らに勝てないほど弱いの?
いや、違う。そんなはずない。私だってピッコロの弟子だ。


ちらりとピッコロの方を盗み見れば、ジュニア達をうまい具合に吹き飛ばしながら、戦うことが難しいであろう天津飯やヤムチャの援護に回っていた。


さすが、としか言えない。
私も落ち着けばきっと出来る。大丈夫。


「キキー!」
「さぁ・・・反撃といこうか!!」
「キッ!?」


一撃一撃を確実に決める。
避けられたとしても、慌てず、次の一手を頭の中で考える。

段々と戦いに冷静になってきた私は、ジュニア2人相手でも、ある程度戦えるようになっていた。


「もらった・・・!!」
「キキー!?」


ジュニアの攻撃をかわし、1人目を地面に押さえつける。
もちろん、助けに入ろうとするであろうもう1人のジュニアも計算済みだ。


「キー!!」
「いらっしゃーい」
「キ・・・!?」


助けに来ようと私の背後から来たジュニアを捉える、魔法の鎖。

これで今、一時的に2人のジュニアは動けない。
全力で消すなら今だと、まずは地面に押さえつけている方のジュニアを睨んだ。


マウントポジションだから、逃げ場なんて無い。


そのままジュニアに体重を掛けた私は、目の前に両手を翳した。
急激に魔力を高めていく私を見てジュニアが暴れだすが、抜け出せるわけがない。


「キキ!キー!!!キキーーー!!!」
「っさいな!アンタに構ってる暇は・・・ないんだ!!」


両手から放たれた光が、あっけなくジュニアを粉々に打ち砕いた。

さぁて、次は。
動かなくなってしまったジュニアの下半身を放り投げながら、後ろで捕まっているジュニアにも手を翳す。


「キッ・・・・!!!!」
「アンタも、終わりだ!!」


光と、嫌な匂い。

放たれた魔弾で木っ端微塵になったジュニアを、見下ろす。
それを見ていた悟空が、何やら難しそうな表情で私を見つめていた。


「おめぇ・・・」
「ん?」
「い、いや・・・・」


あぁ、思ったより残酷だな、とか思われちゃったのかな。
でも当たり前だ。


私の友達に、親友に、兄弟弟子に・・・恋人に、危害が加わろうとしているんだから。


私はそのままピッコロの援護へ入り、次々とセルジュニア達を魔弾で打ち砕いた。
数の減っていくセルジュニアに、わずかながらセルの気が揺らぐ。


「お前・・・大丈夫か?」
「大丈夫。私自身はノーダメージに近いんだから!」
「ぐあっ!」
「あ、ベジータ!」


ピッコロの心配をよそに、ベジータの顔面をマウントで殴り続けるジュニアを引き剥がした。


「おいこら。ベジータ王子の顔は貴重なんだぞ?」
「キ・・・?」
「貴様、くだら、ねぇことを・・・」
「あ、なんだ、意識あった?」
「貴様・・・ッ!!!!」
「冗談冗談!!怒んないで!」
「っ・・・こ、これが、怒らないでいられるとっ・・・・」
「あーあー、ソレ以上喋ったら体力落ちちゃうよ。こいつは私がやっとくから」
「何・・・・!?」


首根っこを掴むように捕まえていたジュニアを、手刀で真っ二つにする。

飛び散る、ジュニアの身体。
それを見ていたベジータが、唖然とした表情を浮かべる。


「お、お前・・・この俺様でさえ苦戦していたセルジュニアを・・・い、一撃で・・・」


あ、確かに。
ベジータ達が苦戦してた敵なのに、わりとあっさりいけてるような。


しばらく考え込んだ後、適当に結論を出した。


「魔力に弱いんだよ、きっと!」
「違う・・・貴様の力が、カカロットの言ったように・・・・」
「まぁまぁ、そういう話はあとで!!トランクス助けてくる!」


残りのジュニアは、後1人。
ずっと1人で戦い続けていたトランクスの背後に近づき、一瞬の隙を突いてセルジュニアの腹部に手を突き立てた。

魔力で強化した手は、すんなりとセルジュニアを串刺しにする。


「はい、終了」
「あ・・・ありがとう、ゆえ
「どーいたしまして!」


広がっているのはセルジュニア達の死体。
崖下を見てみれば、随分と不機嫌そうになった表情のセルがこちらを睨んでいた。


ざまぁみろ!のヒトコトぐらい言ってやりたかったけど、今の戦いで私以外のほとんどの皆が体力を消費してしまっているこの状況。

もう一度セルジュニアを出されたらやばいだろうし、止めておいた。


ゆえ、大丈夫か?」
「うん。どうしたの?そんなに心配そうな顔して」


私の肩を抱いたピッコロの表情は、いつもより険しい。


「あれだけの魔力を出しておきながら、心配するなという奴の方がおかしい」
「え・・・?そんなに出してたっけ・・・・?」
「お前・・・自覚無かったのか・・・?」


ピッコロがこんなときに限って冗談言うわけもない。
となると、私は自分が思っている以上の力を出せてたわけだ。

思わず、口元がニヤける。

やっぱり修行は無駄じゃなかった。
悟飯と同じように成長できていた自分に、喜びを感じる。


「にひひ」
「何笑ってやがる」
「いだっ!」


頭をくしゃっと撫でられても、笑みは消えなかった。

ピッコロを見上げ、皆が見てるのも構わず抱きつく。
すかさず首根っこを掴まれて引き剥がされたのに文句を言おうとしたら、ピッコロは呆然と私の後ろを見ていた。


・・・・あれ。

じゃあ、今私を掴んでるのは・・・?


「セル!!ゆえを離せ!!」
「ッ!!」


ピッコロの言葉で後ろの人物の正体を知る。

え、なに、私セルに首根っこ掴まれてるの?
どういう状況なの、これ?


「あの、セル?」
「・・・来い」
「ぐえあっ!?」
ゆえ!!!!」


引っ張られた衝撃で、女とは思えない声が出た。
それでも勢いを弱めないセルは、そのまま私を悟飯の前に投げ捨てた。

慌てて受け身を取り、何とか地面との衝突は防ぐ。

心配そうに悟飯が駆け寄ってくるが、私にとっては傷だらけの悟飯の方が心配だった。


「私と戦え、ゆえ


セルの言葉に悟飯が私を庇うように立つ。


「ふざけるな!!お前の相手は・・・ぐあっ!?」
「悟飯ッ!!」


先程より容赦無い攻撃が悟飯を岩壁に吹き飛ばした。

こいつ、本気だ。
悟飯を怒らせるためとかじゃなくて、本気で私と戦うつもりだ。


「なんで私なのさ」
「セルジュニア達を破壊できたのはお前だけだ」
「・・・・悟飯と戦えばいいでしょ」
「お前と戦ってあの餓鬼が怒れば、私にとっては更に都合が良い。正直、今の状態のあの餓鬼では相手にならん」
「・・・・」


セルジュニアは所詮ジュニア。
破壊できたのは確かだけど、あれはあいつらの頭がまだ子供だったからに過ぎない。


セルは違う。

戦いのセンスにおいても、悟空、もしかすれば悟空以上。


できれば戦いたくない。
そう躊躇していた私の背中を、セルは容赦なく押す。


「そうか・・・お前が戦わないのなら、残念だがあの餓鬼を殺すとするか」
「ッ!!」
「あくまでも今の出場者はあの餓鬼だからな?さぁ、どうする、ゆえ


どうする?なんて、聞くなよな。

紳士ぶってただの鬼畜だ。この選択肢に選択権なんて無い。

私は仕方なくセルの前に立ち、答えの代わりに拳を構えた。
満足気に笑う紳士な笑みが・・・憎たらしい。


「良い返事だ」
「選択肢なんてなかったくせに良く言う」
「さて、なんのことかな?では・・・早速、始めよう」
「っ・・・!!」


一気に詰められた距離。
ピッコロ達の方から心配する声が聞こえる中、私は咄嗟に後方へ飛んだ。

もちろん、セルはそれを追いかけて距離を詰めてくる。


次の一手はどうする?
セルに距離を詰められるたった一秒で、私の頭の中はフル回転する。

次の一手は、防御。

セルが突き出してきた右手を左手で防御し、反撃に右手から魔弾を放つ。


「フッ・・・その程度か?」
「んなわけないでしょ!」


大丈夫、いける!!

ついに本格化した戦闘の中で、私はセルの攻撃に食いつくことが出来た。
お互いに防御し、反撃する。

でも、どちらも当たらない。


「・・・・ほう」
「っはぁ・・・」


一旦距離を置いたセルは、満足気に笑みを浮かべた。


「面白い・・・この私のスピードについてくるとは」
「褒められても嬉しくないね・・・」
「そうか?この完璧な存在に褒められているんだ、喜ぶべきだろう」
「あーわーうれしいー」


棒読みでセルの言葉に応え、すぐに空中へと浮く。
間一髪、私が居た場所の地面が抉れるのを見届けながら。


「・・・勘も良いらしい」


セルが少し不満気に言う。


何が勘だ。
話しながら一瞬で気を高められたら、誰だって何かしてくると思って逃げるのが当たり前だ。

仕返しにと、私を見上げたまま地面にいるセルの両足を土で固めた。

気づいたセルが足を動かそうとした瞬間、距離を詰めて真正面に攻撃を放つ。


「ッ!」
「喰らえ・・・爆力魔波!!」


一瞬で力を溜め、魔力を爆発させながら前に押し出す技。
ピッコロの技を自分なりにアレンジした技が、セルの身体を思いっきり捉えた。

私の目の前に残っているのは、セルの足首部分だけ。


身体は土埃の中に消えた。
まぁ、見た感じ生きているだろう。


「さっさと立ち上がりなよ。あんまり食らってないことぐらい分かってるっての」


私にも演技するつもり?
そんなことさせないと、私は土埃を魔法の風で吹き飛ばした。

土埃が消えれば、見えてきたのは足首を再生するセルの姿。


その表情には、ほら、余裕の笑み。


「むかつくやつ・・・」
「フッ・・・少しは勝利の気持ちを味わえたか?」
「それさっき悟空ので見たからいらなーい」
「なるほど、お気に召さなかったようだな」
「もうばりばりお気に召しませんでした!!!」


会話をしながらも私達の戦いは続く。

お互いが離れたことにより遠距離戦になった戦いは、お互いの気弾を消し合う視界の悪い戦いになった。


視界が悪いから目では見れない。
「見るのではなく感じるんだ」と言っていた師匠の言葉を思い出しながら、私は必死にセルの攻撃を相殺し続けた。


「やるじゃないか」
「遠距離は私の得意分野だからね・・・不利なのはアンタだよ!!」
「ほう?」


牽制の魔弾を撃ちつつ、徐々に魔力を溜めていく。
そして確実に彼に当たる場面を狙って、溜めた魔力を一気に放った。

放たれた魔力は視界の悪い中を進み、分散する。
やがてそれは形を変え、いくつもの剣へと変化した。


「いけ・・・!!」


セルの視界外から徐々に距離を詰め、セルを完全に囲んだところで一気に速度を上げる。

気づいているかもしれない。
でも、気づいていなければ確実に――――当たる。


「っ!?」


魔力による風で一気に視界が開けた。
そこに現れたのは大量の剣と、それに囲まれたセルの姿。

どうやらセルは気づいて居なかったらしく、慌てて高度を上げて逃げようとした。

だがもちろん、上にも下にも・・・全部技は敷き詰めてある。
この技はピッコロの魔空包囲弾を参考にした技。逃げ場なんて、ない。


「き、貴様・・・!」
「言ったでしょ?遠距離は私が有利だって・・・くたばれ!!!」


手を振り下ろすのと同時に降り注ぐ刃。
セルが防御の構えを取ったのを見て、思わずニヤける。

あの剣は普通の剣じゃない。

刃の部分に魔力を巡らせた、いわば貫通力に特化した剣だ。


あれをただ防御しようとすれば。
結果は、一つ。


「がっ!?」


防御の構えを取っていたセルの腕に、剣が一本突きさった。
紫色の血が、剣を伝って地面へと落ちる。


「な、なぜ・・・!?」


普通の刃じゃ傷ひとつ付かない、自称完璧な身体。

悟空の拳ですら簡単に受け止めてしまうその腕。


たとえどんなに完璧でも、関係ない。
次々と串刺しになっていくグロテスクな光景を見ながら、私は次の一手に移る準備を始めることにした。


「ぐお、この、私が・・・っ!貴様ぁ・・・!!!!」


ああなれば、きっとセルも余裕を無くす。
身体中から血を流した状態で、なお膨大な気を放っているセルに、余裕なんて浮かんでこない。

逆に支配する、不安。

彼を完全に怒らせたことで・・・どうなるか。


「ゆ、許さん・・・!!許さんぞ・・・!!!」


上がっていく気。
慌てずセルの姿に集中して、構えを取る。


「貴様が遠距離が得意なのは認めよう。ならば私は・・・」
「っ!!」
「近接で攻めるだけだ」
「くっ・・・!」
「貴様はどうやら動きからして、こういうのが苦手なんだろう?」


一瞬でセルが目の前に現れた。

傷を回復した彼の表情には、少しだけ余裕が戻ってきている。


確実にダメージは与えてる。それでも、恐ろしい奴には変わりないけどね。
でも今が一番のチャンスだ。

相手が”私の苦手分野”だからと、油断しているこの時こそ。


「さぁ・・・貴様のその表情が恐怖に歪む瞬間を・・・見せるんだ」


追いつけない攻撃が私の腹部を捉える。
悟飯やピッコロ達の叫びが聞こえて、私は何故か笑ってしまった。


最初の打ち合いの時は、セルも手を抜いていたんだ。

さっきとまったく同じ殴り合いのはずなのに、私の攻撃は当たらず、彼の攻撃だけが私の身体を傷つける。


「っは・・・!」
「くくっ・・・いい表情だ!!」


セルの手が、私の首を掴んだ。


「そら・・・もっと、もっと苦し」


言葉が途中で途切れた。
途切れさせたのは、私。


私の首元を掴んでいるセルの手に、全力の魔力がこもった手が触れたから。


掴まれてるから抵抗しないなんて考えは甘い。
そう教えてくれたのは、ピッコロだ。


「がっ・・・な、なんだ・・・!?」


セルの身体がよろけたのを見て、まずセルの手を首からどかした。
もちろん、触れている手は離さない。


「な、なぜ、だ・・・!!力が・・・っ!!」
「なぜ?なぜだとおもう?”魔法”なんて得体のしれない技を使う相手に、こんな触れ合うチャンスを与えるアンタのミスだ」


全力の賭けだった。


相手の感覚や意志を支配する魔法は、魔力をとてつもなく消費する。
しかもセルほどの実力者を押さえこむとなれば、もっと。

でもこれしか、方法は無い。

そのことに気づいていた私は、確実にこの術を発動させるタイミングを狙っていた。


「い、きが・・・・っ」
「悪いけど、時間がないんだ・・・」


相手の感覚を支配するこの魔法。
心臓の動きを鈍らせ、呼吸に繋がる神経を蝕む恐怖の魔法。

同時に、私の身体を大量の魔力が蝕んでいく。

バチバチと、自分の身体の周りで溢れだした魔力が弾けた。


「がぁあぁ・・・!!!!」
「何も出来ずに殺してやるよ・・・!!!」


さぁ、死んでしまえ。
トドメだとばかりに魔力を上げて相手の神経を全て断ち切ろうとした瞬間、ぷちりと何かが切れる音が聞こえた。


――――ああ、殺したい。

殺したい、血が見たい。全て。全て壊して。


支配される感覚。
身体が血を求めて疼くのを感じて、私は咄嗟に全ての魔力を抑えた。


「あ・・・・・ぁ・・・!?がはっ・・・はぁっ・・・・!!!」


限界、だったんだ・・・!!!


魔力の限界。
これ以上放出したら身体が壊れて悪に蝕まれる。

でも同時に、それは私の負けを示していた。
魔法から解放されたセルが、今までにない殺気立った目で私を睨みつける。


そして、苦しさから跪いた私の頭を踏みつけた。


「がっ!?」
「・・・やってくれたでは・・・ないか。貴様の攻撃は本当に素晴らしいものだ」


息を切らしながら喋るセルの気は、さっきよりもだいぶ落ちている。
これならもう・・・今の悟飯でも倒せるかもしれない。

私の役目は、終わったんだ。

まぁ、終わらせてくれるか、分かんないけどね。この状況じゃ。


「見ての通り、私はもう・・・万策尽きたよ。降参す」


頭を踏みつけられて、一撃。


「あがっ!!!!」


そのまま顎を蹴り上げられて、二撃。


「ぐあぁ、ぁ、あぁああっ!」
ゆえ!!!!」
「くくっ・・・降参だと?言わせると思うか?」
「あ、あ・・・・っ」
「貴様には、この私が味わった今の苦しみを・・・じっくりと味あわせてやるとしよう」


頭を掴んで持ち上げられ、腹部にセルの爪をねじ込まれる。
そこから伝わってくる電撃にも似た気の衝撃に、思わず意識が飛びかけた。


「あぁああぁあああッ!!!!!!」


痛い。

痛い、痛い。


「貴様がしたような術をマネてみたのだが・・・ふむ、案外難しいものだな」


身体が、燃えるように熱い。
流れこんでくる電撃のような痛みが、壊していく。

痛い、痛い、痛い。

痛みに狂わされてしまう。
壊れる。


ゆえさんっ!!」
「あ、ぁ・・・・っ、がっ・・・・」
「あ・・・あ・・・・」
「ごは、ん・・・・」


狂っていく私を見て、悟飯が泣いているのが見えた。

ごめんね、悟飯。
妹弟子だってのに、こんな情けない姿、見せちゃって。


心の中でそう謝罪しながら目を閉じた瞬間。


―――――大きな気が、私を包んだ。


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 ・龍如(桐生・峯・オール)
 ・海賊(ゾロ)
 ・DB(ベジータ・ピッコロ)
 ・テイルズ
 ・気まぐれ

◆Thanks!
見に来てくださってありがとうございます。拍手、コメント読ませていただいております。
現在お熱なジャンルに関しては、リクエスト等あれば優先的に反映することが多いのでよろしければ拍手コメント等いただけるとやる気出ます。
(龍如/オール・海賊/剣豪)