Erdbeere ~苺~ ★20.紳士で残酷というギャップ萌え 忍者ブログ
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2015年03月04日 (Wed)
20話/戦闘/甘/※ヒロイン視点

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静かすぎる世界。
でも刻一刻と迫ってくる、世界を掛けた戦い。


トランクスが一人で修行に出かけている中、私達は二人で並んで瞑想をしていた。


今日の修行は、ピッコロが放出する気に出来る限り自分の魔力を合わせる練習。
細かい魔力の操作が出来るようになるための修行なのだが、これがまた難しい。


「む・・・・」


隣で跳ね上がったピッコロの気を感じて魔力を上げれば、思ったよりも大きく上がってしまう。
慌てて抑えようとしても、次は抑えすぎてピッコロの気よりも小さくなった。


まるで同じラインに水を揃える作業。

注ぎすぎたらそれを零して、零し過ぎたらまた注ぎ足す。


「むぅうう・・・」
「・・・・」
「ううぅうう・・・ん?」
「・・・・・おい」
「んーーー・・・・」
「おい」
「んんんっ」
「おい!!!」
「何!?必死なんだから邪魔すんな!」
「全部声に出てるんだ貴様は!!静かに出来んのか!!」


え、全部声に出てた?
まったく自覚が無かった私は、謝りながらもう一度目を閉じた。

ピッコロの気はかなり小さい。
私もそれに合わせようとして、完全に表に出す魔力が消滅して失敗する。

ほんの数ミリの穴に糸を通すような、そんな感じ。


「っぐう・・・」
「おい」
「ううぅううむ」
「お前はっ・・・・少しは静かにせんか!!」
「あだーー!?」


ついに殴られた。

人が一生懸命やってるのに、殴るなんてひどすぎる。
文句を言うために目を開ければ、そこには思った以上に青筋立った表情のピッコロが居た。


「あ・・・そんなにうるさかったですかね・・・・」
「あぁ」
「だって難しいんだもんー・・・」
「うるさくして良い理由にはならん」
「やだなー。大好きな私の声が聞こえて満足だよ!ぐらい言っぐえっ!?」


またか。

またこのパターンか。


おふざけに、わりとガチなレベルのパンチをお見舞いされて悶える。
パンチが入ったお腹を抑えながら崩れ落ちた私を、ピッコロは喉を鳴らしながら笑っていた。


「ひ、ひどい・・・ひどすぎる・・・・」
「お前がくだらんことを言うからだ」
「二人きりの時ぐらい、デレてくれたっていいじゃん」
「修行とそれは、また別だ。お前がこの修行を完璧にできたら考えてやらんこともない」
「ほんと!?いよっしゃーー!!頑張る。超頑張るから待ってて!!」


現金なやつだな・・・とか何とか聞こえてきたけど、無視して集中する。
意地悪いピッコロはさっきとは真逆に、気をかなり高め始めた。


コップぎりぎりに溢れないよう、水を注ぐイメージ。

ゆっくりとピッコロが出した気に合わせ、魔力を解放していく。


「・・・・・」


ピッコロの気と合いそうになった瞬間、私は力を込めて魔力の上昇を抑えた。
ぴったりと合った気に、思わずガッツポーズをする。


「どう?」
「・・・一回できたぐらいで調子に乗るなよ?もう一度だ」
「はぁい!」


次は一瞬でピッコロの気が下がった。

ううーん。
感じるか感じないかぐらいの気の量。これは難しい。


でも、やらないとピッコロのデレが貰えない・・・ッ!!


デレのために必死になって格闘していた私は、下界に少し違和感を感じて魔力の操作を止めた。


「・・・・?」


下界で大量の魂が動くのを感じる。
気も何もほとんど無い人間達の魂が、大量に移動してる。

しかもその先は。

・・・・ちょっとだけ、嫌な予感。


「・・・?ゆえ?」


立ち上がって、下界の様子を覗き見た。
ピッコロの声に適当な反応を返しつつ、魂の移動を感じた場所を見つける。


「いた・・・・!」
「お前、一体何を見て・・・」


下界に見える、大量の軍。

向かってる先はセルの気を感じる場所。


馬鹿だ。
軍が通じるレベルじゃないことぐらい、テレビを見てても分かったはずなのに。

大量の平気で何とかなる?
それで済めば、苦労はしない。


「バカなやつらめ・・・・」


そう言うピッコロの表情は、曇っていた。
当たり前だ。もうドラゴンボールは無いんだから。

人が死んでも助けることは出来ない。

生き返ることは、出来ない。

でも普通の人たちには分からないんだ。
気とか、力とか、そういうものは。


「・・・・っ」
「!?おい、ゆえ?」


あれだけの人間でも、セルの前でなら一瞬で消されてしまう。
悟空が無駄に人を殺すなって言ってくれたらしいけど、あのセルがそのまま帰すわけがない。


ふわりと舞空術で浮いて、神殿の地面から足を離す。


その行動が何を意味しているのか。
理解したピッコロが、私に向かって手を伸ばした。


「まさかお前、行くつもりじゃないだろうな!?」
「・・・・大丈夫、助けたらすぐ戻ってくるから。行ってきます!」
「ふざけるな!!許さんぞ俺は!!ゆえ!戻ってこい、ゆえッ!!!」


空を切る、ピッコロの手に謝りながら。
私は魂が集まる場所を目指し、スピードを上げた。

































「何のマネかな、お嬢さん」


間一髪だった。
莫大な気を溜めた手を、振り下ろせないように掴む私の手。


後ろで軍人達の悲鳴が聞こえる。


もう誰もセルに攻撃しようとはしない。
当たり前だ。全力の軍兵器でも結果は見えていたんだから。


「もう一度聞いたほうがいいかな?」
「聞こえてる。ってか、お嬢さんってやめよう?」
「あぁ・・・では、ゆえ。何のマネかな?これは」


私はセルが軍人達に攻撃する一歩手前で阻止した。

それに対してセルは言ってるんだろう。

口調は丁寧でも、私が押さえている手には徐々に力が掛かってきている。
押さえているのも限界だったため、軍人達が逃げ出したのを見てから掴んでいた手を離した。


「何故邪魔をした」
「悟空から言われなかった?無駄な殺しはするなって」
「今のは無駄ではないだろう?愚かな奴らへの・・・罰だ」


その言葉と同時にセルが気を放つ。
空気を揺るがし、大地を削っていくその気を、逃げてる人達のところまで届かないように魔法で閉じ込める。


広がる、私とセルを囲む防壁。

セルは目を細めてその壁を見た後、ゆっくりと拍手をした。


「素晴らしい!やはりお前の力には素晴らしいものがある・・・!」
「いやー、照れちゃうなー」
「歓迎しようではないか。君から会いに来てくれたことを」
「っ・・・!?」


流れるような動きで手を引かれる。
空中で私の前に跪いたセルは、私の目を見ながらわざとらしく指先にキスをした。

紳士としか言いようのない、その行動。
でも違う。騙されちゃいけない。こいつには残酷さがあることも。


「な、なな、なにしてんの!!」


慌てて手を振り払えば、セルは顔を近づけてきてニヤリと笑った。


「おや?随分と可愛らしい反応だな」
「は、離せ!」
「そう言われると離したくなくなるだろう?」


ぐいっと抱き寄せられる身体。
抵抗の意味も込めて拳を握れば、気づいたセルにその手を掴まれる。


何がしたいのか、見えてこない。

ただ優しく私に近づいて、抱きしめているだけ。


「・・・な、何がしたいの」


痺れを切らして聞くと、また笑われた。
その笑い方も何故か紳士的で、逆に不気味さを感じてしまう。


「何がしたい、か・・・言えば君のことがもっと知りたい、かな?」
「そんな言い方してもなんにも教えるものないよ?」
「たくさんあるだろう?たとえば君が」


”何者なのか・・・とか、な?”


囁かれた言葉に、恐怖という名の寒気が走る。


優しい?
紳士?

そんなのは、表だけ。


いや、たとえその紳士さが本物だったとしても。
彼の中にある”残酷”さは、常に牙を向いている。


「・・・どうした?」


セルを突き飛ばし、距離を置いた。

どうした?じゃない。
感じないと思っていたんだろうか?


”君が何者なのか”って言った時に感じた、恐怖。


誤魔化せないほどの、残酷さ。
戦いを望む人造人間だということを、思い出させる。


「悪いけど、私、別にセルに用があって来たわけじゃないんだよね・・・・」
「あぁ、知っているとも。愚かな奴らを助けたかったんだろう?」
「・・・まぁそういうこと。んじゃ、用済んだから帰・・・」


一瞬だった。
帰ろうと踵を返した私に飛んできた、小さな気弾。


頬を掠めたそれに、セルを睨みつける。


先ほどとは打って変わって残忍な笑みを浮かべている彼。
恐怖に耐えつつ、私は逃げることだけを考えた。


「そんなに慌てなくても、私もセルゲームに参加するよ?」
「すまないね。目の前に現れた獲物を簡単に逃がすほど、私も甘くはない」
「獲物って・・・ったく。こんなところでやりあったら怒られるのは私なんだから!」


ピッコロに怒られるのは確実として。
ここで戦えば、悟空やトランクスたちにも怒られかねない。

少しでも怒られる可能性を減らすため、私の選択肢は揺るがなかった。


「そういうことだから、帰ります」
「帰らせん」
「困ります」
「フッ・・・ならこの私から逃げ切ってみれば良いだろう・・・!!」
「ッ・・・!のわぁっ!?」


目の前に気を感じて、慌てて後ろに飛ぶ。
それを猛スピードで追いかけてくるセルを視界に捉えながら、反撃の準備をした。

恐れてはいけない。

昨日も習ったばっかりだ。敵から目を逸らさないこと。
敵から意識を、外さないこと。


たとえ勝てなくても、力では五分五分の可能性がある以上。
諦めたり冷静さを失うことの方が、危険だ。


「・・・ゆえ
「何?」
「君も随分と変わったようだな?・・・隠しているようだが、前と違う力は隠しきれん」
「だからセルゲームに参加するってば・・・・」


ぐったり。

今すぐにでもその力を見たい!と言わんばかりのセルの表情に、拳を固める。


「悪いけど、これ以上ピッコロを怒らせたら私の身が保たないからさ・・・」


固めた拳を肩上まで運んで。
後ろに太陽があることを確認して、一気にその拳を頭の前で開いた。

セルの目が、見開かれる。


見覚えがあるでしょ?
だってこれは、セルが私達から逃げるために使った技。


「お前・・・っ!!」

「これはお返しだ!!

――――太陽拳ッ!!!!」

































追ってくる気は感じない。
探ってみても、セルの気は動く気配を見せなかった。

彼としては、ちょっと私を脅して遊んだぐらいのレベルなんだろう。

無事に神殿に足を着けた私は、明らかに殺気を放つピッコロの前に真っ直ぐ歩いて行った。


「・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・た、ただいま!」
「何がただいまだこの馬鹿が!!!」


予想通り、一発。


頭に思いっきり降り注いだ拳を、私は抵抗すること無く受け止めた。

文句は言えない。
こうなることを分かっていて、無茶をした。


「ほう?珍しく言い訳がないな?」
「・・・怒られるの、分かってた。けど・・・・」
「ったく・・・とんだ甘い悪魔だぜ」
「ピッコロ・・・」


そう言って鼻で笑われる。
でもピッコロの表情は、怒ってなかった。

静かに近づいてくる顔。

何をされるか気づいて、目を閉じる。


「ん・・・・」


彼なりのお仕置きなんだろうけど。
口づけの苦しささえも嬉しく感じてしまう自分がいた。

甘い口づけが深まっていくたびに、もっともっとピッコロが欲しくなる。


満足なんてそこにはない。


強請るようにピッコロの腰に手を回すと、ピッコロの口唇が弧を描いた。
そのまま深く口づけられ、自然と息が上がる。


・・・・と、突然吹き抜ける風。


「よっ!・・・・あ」
「・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」


真横に現れた悟空。

私達は抱きしめ合ったまま、かろうじて口唇を離した状態で悟空を見た。


固まる、三人。
一番最初に動き出したのは私で、悲鳴を上げながらピッコロを突き飛ばした。

思いの外勢い良く突き飛ばしてしまい、ピッコロが転がっていく。


「い、いらっしゃい悟空!」
「でぇじょうぶか?ピッコロ!」
「あいつはほっといて大丈夫。それで、どうしたの?」


必死に誤魔化す私に負け、悟空が話を始めた。


「え?あ、あぁ・・・いやさ、ピッコロってもう神との融合前には戻れねぇのか聞きたくて来たんだけどよ」


融合前?
ああ、神を戻してドラゴンボールを復活させたいのかな。


でも無理だ。

それが出来るなら、ピッコロはあんなに融合を躊躇しなかっただろう。


ピッコロの代わりに答えようとした私を、復活したピッコロが止める。
そして私の頭を掴みながら、質問に答えた。


「あ、いたい、潰れ、潰れ・・・・っ」
「残念だがもう元には戻れん。戻れるならこんなにも融合を躊躇しなかった」
「そか・・・・なら、新しいナメック星の場所、知ってるか?」
「新ナメック星か?・・・いや、知らんな。お前は知ってるか?」


話を振られ、首を振る。


「知らないや」
「うーん。なら、ちーっと探してみっか。新しい神様になってくれる人見つけて、連れてくる」
「そ、そんなこと出来るのか!?」
「やったことねぇけどよ・・・まぁ、ピッコロに近い気を探してみるさ」


そう言って悟空は、指を額に当てながら気を探る作業に入った。

ピッコロに近い気かぁ。
そういえば記憶で見たナメック星の人たちって、ほんと皆ピッコロにそっくりだったっけ。

特に最初に融合したネイルって人は、双子みたいだったけど。
マジマジとピッコロを見つめ、記憶の中の顔と見比べる。


「な、なんだ・・・?」
「いやさ・・・ナメック星人って皆似てるけど、よーく見ると皆違うんだなーって」


そっくりだけど、違う。
ピッコロは特に物凄くイケメンの類。

他の人たちよりちょっと、いや、かなり悪人顔なのが気にな・・・・。


「あの」
「ん?」
「な、なんですかね、その手」
「気にするな」


気にするなって言われても。
私の目の前に翳された指から、バチバチと鳴る音が嫌でも気にさせる。


「いやだって指先から出てる気が完全に私を貫きそうなんですが」
「悪人顔とかどうとか聞こえたのでな。悪人らしいことをしてやろうと・・・」
「また心読んで・・・てか違うよ!悪人顔って褒め言葉だから!!」
「ほう?」
「その顔もまたかっこいい、から!!」


嘘は言ってない。
全力で、本音だ。

だからこそ、少し恥ずかしくなって。

言い終わってすぐ、私は悟空の方にそっと移動した。
ピッコロはまた私の心を読んだのだろう。満足気にニヤニヤと笑っている。


悪人顔、め。


「どう?悟空」
「んー・・・だめだ。わからなかった」
「そうか・・・・」


がっくりと肩を落とす悟空とピッコロに、あ!と声を上げる。


「ね、ここじゃちょっとわかりにくいから、もっと世界・・・というか広く惑星が見れる場所にいったら良いんじゃない?界王様のところとかさ」
「!!あったまいいなゆえ!サンキューな!早速行ってくる!」


悟空は私の頭を撫でた後、すぐに瞬間移動で姿を消した。
ピッコロとは全然違う撫で方に、ちょっとだけ笑みが溢れる。


悟空はほんと、良いお兄さんって感じだなぁ。

そんなことを考えていた私の頭に、ピッコロの手が乗せられる。


「うん?」


首を傾げる私に、ピッコロは何も言わず、乗せた手をわしゃわしゃと動かし始めた。

乱暴なようで優しいピッコロ特有の撫で方に、思わず目を閉じる。

撫でられるのは凄く心地いい。
もちろん、一番はピッコロだ。


ピッコロに撫でられるのが一番嬉しい。


「フン・・・」
「嫉妬しちゃってー」
「うるさいぞ」
「はいはい!・・・でも良かったね。神様が蘇れば、ドラゴンボールでセルに殺された人たちを戻せるじゃん」
「そうだな・・・上手くいくと、いいな」


私達が望むのは平和な世界。
新たな地球の神様を待ちつつ、私達は静かに佇んでいた。

この平和な時間が、いつか終わるんだろうなって考えないようにしながら。

ピッコロの温もりに甘え続けた。




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