いらっしゃいませ!
名前変更所
ベジータがイライラしてたけど、それを無視して精神と時の部屋に入る順番を決めた。
悟空たちが出てきた今、次の順番は私達。
部屋の扉を開けると、そこにあったのは真っ白な世界。
重苦しい空気に変な蒸し暑さ。
部屋にいるだけで疲れてしまうという発言を悟空がしてたけど、間違ってはいなかった。
「うへぇ・・・・」
「なんだ?もう疲れたのか」
「ナメック星人ズルすぎ!気温変化あんまり関係ないんでしょー?」
ナメック星人は気温の変化はあまり受け付けない。
寒い地域に行った時も、寒がってるのは私だけだった。
とりあえず部屋の中に入り、ある程度の設備を紹介してもらう。
食料もあるらしいけど、関係あるのはベッドとお風呂ぐらいかな。
「では、早速始めるぞ」
「はいはーい!」
この白い、何もないキツイ世界で1年。
だけど私は何一つイヤじゃなかった。
強くなれるってのも嬉しいけど、一番嬉しいのはこの状況。
ピッコロと、二人きりってこの状況が嬉しいんだ。
長年心の中をモヤモヤさせていた恋心が実った今、ピッコロといられるならなんだって嬉しい。
ニヤニヤしながら表に出ようとした私を、上からの重力がグンッと押さえつけた。
「おわっ!?」
「・・・なんだ、お前。重力の修行は初めてだったか?」
「い、いや、少しは・・・あるけど・・・・」
跪く形になった私をピッコロが見下げる。
重力室に入ったことはあるが、ここまでの重みを感じるのは初めてだ。
というより、重力室で真面目に修行しなかったからかもしれないが。
私はなんとか足に力を込め、その場から立ち上がった。
ゆっくりと重力の感覚に慣れ、バランスを崩さないよう歩く。
「・・・・よし」
「ほう、もう歩けるか。さすがだな」
「でしょ?ってことで・・・ピッコロ!これやろう!」
ピッコロの前で手を叩き、見覚えのあるであろうトランプを取り出した。
そう、このトランプは人造人間が来る前にしようとした修行のトランプ。
攻撃出来る手段と防御できる手段を縛られる修行。
得意分野を伸ばすのではなく、各状況でそれぞれの動きができるようになるには、もってこいの修行なのだ。
「後悔するなよ?・・・これにするか」
「お、どれどれ?」
私の両手に持ったトランプから、一枚ずつ引いた。
書かれていた攻撃手段は「気弾のみ」
そして防御手段は「回避のみ」
まぁ、特に得意不得意がないピッコロにとっては、問題のない結果だろう。
私は自分の持っていたトランプを渡し、ピッコロに持ってもらった。
「よし、じゃあ引け」
「はーい!私はこれ!」
できれば「気弾のみ」がありがたい。
気弾の打ち合いでなら、ピッコロに勝てるから。
でもまぁこういうのって、センサーが働いてるのか、自分が欲しいのは来ないのが流れ。
ものの見事に「近接のみ」の攻撃手段を引いた私は、防御手段のカードを見てヒクッと顔を引きつらせた。
近接のみで、ガードのみ。
相手が気弾のみの回避。
完全に私が苦手な状況。
い、いや、修行だから良いんだけど。
「フッ・・・お前には数十倍不利な条件になったな?」
何故かちょっと嬉しそうなピッコロに、べーっと舌を出す。
「勝ってやるからいいですー」
「言ったな?やってみろ。全力で来いよ?・・・修行にならんからな」
「ピッコロこそ、こういう関係になったからって手を抜かないでよ?」
「残念だが・・・・」
ニヤリと笑ったピッコロに、少しドキッとした。
近づいてきたピッコロの手が私の頬に触れ、優しく撫でてから離れる。
「俺はこのようなことで手加減はせんぞ?」
「ですよねー」
「・・・なんだその顔は。お前が手加減するなと言ったんだろうが」
「いやー、そこは少し戸惑いぐらい見せて欲しかったなーなんて!」
「安心しろ。気弾は使えないんだ。怪我をしても余っている魔力で治せるだろう?」
「むぐ・・・っ」
いや確かに手加減して欲しくないけども!
だけどここは、ちょっとぐらい優しさがあっても・・・なんて。
乙女心と修行心の二つが戦ってる中、私は拳を構えた。
「よっしゃ・・・勝って見せる!!勝ったら褒めてよね!!」
「あぁ、褒めてやるさ」
「・・・・そ、そういう時だけ優しくなるなこのやろう!!」
「どうした?顔が赤いぞ?」
「~~~~~っ」
恋愛が分からない人に、翻弄されてる自分。
恥ずかしくなって顔を隠した私は、高まるピッコロの気を感じて気持ちを引き締めた。
顔を真正面に戻せば、目の前に迫る意地悪そうなピッコロの顔。
勝負は始まってるんだ!とばかりに拳を振り上げるが、ひょいっと簡単に避けられた。
そして、がら空きの腹部に気弾が撃ち込まれる。
「あぐっ!?」
ほ、本当に容赦無いなこいつ!!
走った衝撃になんとか耐えつつ、私はくるっと身体を回転させて逆さまになった。
そのまま、勢い良く足を振り下ろす。
もちろんピッコロは、避けるしか無い。
避けた所に瞬時に近づいてもう1発。
完璧だ。そう考えていた私の作戦を見事に裏切る気弾の光。
足に思いっきり当たった気弾が、私の身体を弾き飛ばして地面に打ち付けた。
「~~~~っ!!いったぁぁ!!!」
「ふん。避けるしか無いと考えたのだろう?甘いな。攻撃に攻撃で防御するという可能性も考えろ、馬鹿者が」
さっきとは違う、師匠としてのピッコロ。
あーあ、本当にずるいや。見惚れちゃう。
でも、私だって強くなりたい。
ピッコロを、守りたい。
「この、やろっ・・・!!!」
「言っただろう、攻撃が甘いと!!もう少し判断を早めにしろ!!」
「たぁ!!!」
「何度言わせる気だ?そんな攻撃に意味など無いぞ!」
「っぐ!!・・・やってくれたなーーーー!?」
こうやって私達の修行は丸1日続いた。
あと、364日。
この二人きりの世界が、続く。
「今日はここまでだ」
あれから二ヶ月。
完全にこの部屋に慣れてきた私は、やっとピッコロと対等の勝負が出来るようになった。
といっても、技術の全てを使って戦わなきゃ、勝利すら見えないんだけど。
疲れで重力に勝てないほどふらふらになった私を、ピッコロがそっと抱きかかえる。
「わ!」
「修行は終わったからな・・・ゆっくり話でもしよう」
「う、うん・・・・」
この切り替えに、何時まで経っても慣れない。
修行の時のピッコロはいつもと同じように厳しくて、容赦なく殺しに来るようなレベル。
だけど修行が終われば、前には考えられないほど穏やかな表情になって、私の傍に居てくれる。
お互いに修行で汚れた服を魔法で交換して。
白い世界を見つめるようにしてベットに座り、ピッコロの温もりを後ろに感じた。
ピッコロは私と話す時、いつも私を後ろから抱きしめるようにして座る。
顔が見たいから隣に座って?って言うと、渋々座ってくれるんだけど・・・どうやら恥ずかしい時に顔を見られるのが嫌らしい。
こんなにも私を翻弄しておきながら、自分は恥ずかしいから顔を見せてくれないなんて。
ほんと、魔族って卑怯。
「おい」
「ん?」
「・・・・全部聞こえてるぞ」
「っ!こ、こら、心を読むな!!」
私が翻弄されるのは、これも理由なのかもしれない。
心を読めるピッコロには何を言っても、何を誤魔化しても無駄だから。
勝とうとしても勝てない。
いつの間にかピッコロが私をからかって、私が顔を真っ赤にする毎日。
「髪が伸びてきたな」
「元々少し邪魔なぐらいだったもんね。1年経ったら腰上ぐらいまでなっちゃうかも」
私の髪をそっと撫でる大きな手。
心地良くてその手に頭を押し付けると、ピッコロが呆れたように笑った。
「甘えたがりだな。お前は俺より年上だろうが」
「えー?いいじゃん別にー」
最初は不器用だったピッコロも、段々慣れて愛情表現を分かるようになっていった。
部屋に入った直後は私から抱きつかないと必要以上にくっつこうとしなかったし、好きって言葉も言わなかったのに。
日に日にピッコロのことがもっと好きになっていく。
神様の知識もあるからか、手探り状態でも私を翻弄するんだ。
いつも翻弄されて、悔しいけど嬉しい。
「ふぁー・・・落ち着く」
「・・・そうか?」
「だってピッコロあったかーい!」
「お前も暖かい・・・落ち着くが・・・それよりも・・・・」
「・・・?」
ピッコロが少し落ち着かない様子で私を抱きしめた。
「なんか・・・・ピッコロ、最近・・・・」
感じる香り。
ピッコロ特有の大きな身体。
いつもと変わらない。
でも、違う。
「男っぽくなったよね」
「・・・は?」
私の言葉に、ピッコロの手が緩んだ。
ピッコロを見上げれば、呆れた表情が目に入る。
「いやなんかさ、男っぽい」
「性別はないと言ってるだろう」
「そうなんだけどさ。なんかこう・・・顔つきが男っぽくなったんだよね。なんて表現すればいいか分からないんだけど・・・・」
「今までは女っぽかったといいたいのか?」
「違うって!ううーん・・・・」
ナメック星人に性別はない。
そんなことぐらい分かってるはずだったんだけど。
元々、どっちかと言われれば男側だったピッコロ。
男らしいからそれで納得してたけど、今では本当に男なんじゃないかって思うようになった。
なんとも言えないんだけど。
こう、香りというか、温もりというか・・・顔つきというか・・・。
「ま、いいや。どんなピッコロでも好きだし」
「・・・・・馬鹿が」
「へ?んっ・・・・」
急に身体が浮いたかと思うと、真正面を向くようにして座らされた。
そのまま口唇を塞がれ、私の手が宙を彷徨う。
気持ちいい。
恥ずかしいけど、この時間も好き。
「・・・・んっ!?」
触れるだけのキスが、深まる。
口唇を割り、舌が私の口の中を味わっていく。
経験ないとか、嘘みたいな口づけ。
思わず身体が震えるのを、止められない。
「ん・・・・」
息が苦しくなって胸を叩けば、口唇が少し離れた。
そこから深く息を吸ったところで、また塞がれる口唇。
口を開いていたせいでさっきよりも深く舌が入り込む。
ゾクゾクと駆け上る感覚が、私を酔わせる。
「っ・・・・!!」
「ふ・・・」
漏れた甘い吐息。
ピッコロから滅多に聞くことの出来ないその色気漂う声は、私の恥じらいを壊した。
恥じらいすら消えるほど、欲しくなる。
気づけばその言葉を、勝手に口にしていた。
「もっと」
口にしてから、はっとして顔を逸そうとしても遅い。
さっきよりも実に楽しそうな笑みを浮かべたピッコロが、私の顎を少し強めに押さえた。
最後の抵抗で口を隠しても、私の力じゃ隠し切れないのは当たり前で。
「い・・・・いまのは私じゃないです!」
「ここには俺とお前しか居ないはずだが?」
「げ、幻聴だよ!!」
「幻聴がお前にも聞こえてるのか?」
「とりあえず違うんだってストッ・・・」
「もう黙れ」
また、塞がれる。
好きなんだけど、好きなんだけどさ。
苦しいんだよ・・・凄く。
一回の口づけが長すぎて、死んでしまいそうになる。
軽い酸欠状態になった私は、次は思いっきり力を込めてピッコロの腹を殴った。
「ぐっ!?き、貴様・・・・」
「な、長いんだって!!息出来ないの!死んじゃうから!!!」
「鼻でしろ!!」
「できるか!!緊張してできないよ!!てかピッコロがうますぎるんだよ!!変態!!」
「変態だと!?このっ・・・・!!」
また、塞がれる。
苛立った表情だったくせに、殴られるかと思ったら口づけ。
「こうすれば黙るのか?いい手を知ったな」
「うぐっ・・・ピッコロはどうやったら静かになるんですかねー」
「同じことをすればいいんじゃないか?」
「へー?」
ここで引いたらやられるがまま。
言ったな?とばかりに私はピッコロの口唇を自ら塞いだ。
今日で何度目だろうね。
こんなにキスして、口唇腫れちゃうよ。
「っぷは、どうだ!」
「・・・くくっ。ぎこちないな」
「いやだから最初から出来てるピッコロがおかしいんだっての・・・・」
「知識はあるからな」
「わ、私だって知識ぐらい・・・・!!!!」
「ほう?」
「あ、もう本当にギブアップ!!」
まだやろうかと口を近づけてきたピッコロの顔を押さえつける。
押さえつけられたピッコロは不機嫌そうに私を離し、ベッドに横たわった。
無言の、合図。
赤くて綺麗な目が私を捉えて。
私も静かに横たわった。
何をするわけでもなく、ただ抱き合って寝るだけの夜。
不純な気持ちでドキドキしてしまう私を、彼は許してくれるだろうか。
「おやすみ、ピッコロ」
「あぁ、おやすみ」
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