いらっしゃいませ!
名前変更所
悟飯がある時、変な人間を連れてきた。
その人間は俺を見ても怯えること無く笑い、そして。
「弟子にしてください!」
まっすぐ、俺を見て、そう言った。
最初は面倒だと思った。
当たり前だ。こんな人間と俺が修行をして相手になるわけがない。
俺の修行の邪魔なだけだ、と。
だがその人間は諦めず、俺に勝負を挑んだ。
”一発入れたら弟子にしてくれ”と。面白い条件だと呑んだ結果がこれだ。
「あだっ!?」
「今寝ていたな?」
「お、起きてます・・・!」
うとうとしながら空中で座禅を組む二番弟子を睨みつけ、俺はため息を吐いた。
その人間―――――りかという女は、最後まで諦めず本当に一発入れてきたのだ。
どんなに殴られても、やられても、楽しそうな笑みを浮かべて俺に挑み続けた。
まるで女版の孫のようだと、俺も柄になくワクワクしたのだが。
この女、悟飯のときよりも厄介だった。
「集中しろ」
「っ・・・・む、ぐぐ・・・・」
「静かに、集中しろ」
「あー、こういうの苦手なん・・・あ、ちゃんとします!!!」
悟飯の時より戦闘に対して積極的なのはいいが、とにかく手がかかる。
うるさい。目を離せばサボる。いつも笑ってやがるせいで限界が見分けにくい。
まぁ、悪い部分ばかりではないのは確かだ。
心と顔と言葉が素直なおかげで、心を読まなくても大体のことが分かるのは便利といえる。
「ま、まだ、ですか・・・・」
「あと5分だ。大体お前はまだ集中しきれていない。あと2時間追加してもいいぞ」
「あ~!やだ!!体動かした・・・あぐっ!?」
「静かにしろと言ったはずだが?」
「ずみまぜん・・・・」
騒ぎ出したりかに容赦ない気弾を浴びせれば、蹲りながらも瞑想の続きを始めた。
「・・・・」
「・・・・」
ようやく、静かになった。
俺は久しぶりに訪れた静けさに身を預け、瞑想に入る。
静かな空間から聞こえるのは風の音と、呼吸音。
鳥さえも飛ばないこの神殿に響く音はただそれだけ。
本来ならば、常にそうだったというのに。
こいつが来てからというもの、ほとんどの時間がこいつのせいで騒がしくなっている。
デンデは話を聞くのが楽しいらしく、喜んではいたが。
あまり騒がしいのに慣れない俺にとって、こいつは嵐のような女だった。
「・・・・」
静かすぎて、逆に耳が痛くなる。
うるさい環境に慣れつつある身体に、苛立ちを込めてため息を吐いた。
「・・・っ」
ぴくりと分かりやすく、隣にいるりかの気が揺らぐ。
あぁ、そうだ。今のため息は貴様に向けたものだ。
心の中で、聞こえないと分かっていながらも、能天気野郎に向けて意地悪い言葉を向ける。
厳しめな言葉を吐けばすぐに泣いていた悟飯も悟飯だが、気にせずにこにこと笑うこいつもこいつで腹ただしい。
「おーい?ピッコロさーん?」
「・・・・なんだ」
「なんか気が殺気立ってるんですけど」
「気のせいだろ」
「・・・・な、ならいいんですけど・・・なんか今すぐ刺されそうで怖」
その言葉が終わる前に、俺は懐に隠していた手から気弾を放った。
小さな悲鳴と共に土煙が上がる。小さな気弾といえど、ほぼゼロ距離で喰らえばそれなりのダメージになるはずだ。
「あ、あぶ、あぶな・・・!!」
まぁ、もちろん。俺の弟子なら食らってはいないだろう。
驚きに表情を染めながらも、きちんと俺の気弾を弾いたらしいりかが俺の方を睨む。
「な、なにすんの!」
「お望み通り刺してやろうとしたんだが?」
「別に望んでないです!」
「体を動かしたかったんだろう?ちょうどいい運動になったな」
「下手すれば撃ち抜かれて死んでたかもしれないんですけど!!」
「ならそこまでだな」
冷たく返した言葉にりかは頬を膨らませる。
だがそれ以上は何も言わず、すぐ瞑想に戻った。
・・・ように、見せているだけなのは丸わかりだった。
微かに揺れるりかの気が、刃のように冷たく収束されていくのが分かる。
先程俺がしたように、瞑想するふりをしながら俺に対して気を放つつもりなのだろう。
ちらりと横目でりかの表情を盗み見れば、瞑想とは思えぬほど額にシワを寄せていた。
見ればバレバレだぞと言ってやりたい気持ちを押さえ、放たれた気弾を一瞬で叩き落とす。
「あー!?」
「あー!?じゃない」
「頑張ってバレないように仕込んだのに!」
「バレバレだから叩き落されたんだ馬鹿者」
「え、ばれてた・・・?」
「あぁ、見なくても分かるぐらいにな」
本当にバレていないと思っていたらしいりかは、俺の言葉に口を尖らせた。
戦闘において重要なのは力だけではなく、こういう駆け引きも大事なのだが、りかにはそのセンスをまったく感じられない。
「お前には戦いのセンスがない」
きっぱり告げてもりかは笑っている。
「それを教えてくれるんでしょ、師匠!」
「甘えるな。教えはせん、盗み取れ」
「はーい!」
けらけらと笑うりかに再度ため息を吐こうとした瞬間、ピッコロは目を見開いてその場を離れた。
1秒遅れて、今までピッコロが座禅を組んでいた場所が気によってはじけ飛ぶ。
「ッ、貴様・・・!」
「ありゃー、だめだったか!割といけたと思ったのに・・・!」
いつの間に仕掛けられたのか。
まったく気づかなかった二段構えの攻撃に思わず舌打ちする。
「どうだった?今の」
「20点」
「ええ・・・!」
「補習だ・・・」
気づかなかった自分への苛立ちと、未だ脳天気に笑い続ける目の前の人間に対しての怒りで瞑想を止め、拳を構えた。
「・・・来い」
「やったー!やっと体動かすんだね!よし、行きます!!!」
嬉しそうに拳を構えるりかを見て、悪人顔で笑ってしまうのは元魔族の血か、それとも。
純粋に楽しみ始めているのかもしれない、この修行を。
「ま、まいり、ました・・・っ!」
地面にひれ伏すりかを見て、俺は容赦なくトドメの一撃をりかの横に放った。
悲鳴を上げて「降参しただろー!!」と叫ぶりかを無視し、お茶を用意し始めたデンデ達の方に視線を向ける。
「デンデ」
「あ、おわりましたか?」
「終わりじゃないが、休憩だ」
「え~!!!終わりじゃないの!?も、もう、夕方ですけど!」
「休憩だ」
デンデとの会話を聞いていたりかが、疲れ果てた顔で俺を見た。
鬼!と言いたそうな表情を俺は鼻で笑う。
「あぁ、いいぞ、そんなに早く終わりたいなら休憩もいらないな?」
「きゅ、休憩でいいです!」
俺の言葉を聞いた瞬間、りかは慌てて立ち上がりデンデの持っていたお茶を手に取った。
「デンデ、いつもありがとう!」
「いえ、お疲れ様ですりかさん」
明るく笑い始めるりかにデンデもつられて笑う。
まるで花が咲いたかのようにほのぼのと話し始める二人を見て、俺は静かに目を閉じた。
見ていると俺まで影響されてしまいそうだ。
いや、別に、影響されたところで何があるというわけではない。
ただ気に食わないだけだ。魔族であった自分が平和に流れていくのが。
妙な気分にさせられるこの感覚が、あまり好きではないのだ。
悟飯と修行をした、あの時に似ている。
悟空と戦った、あの時とも。
そして次はこの女。俺を見ても恐れることなく真っ直ぐ”俺”を見る、変わった女。
「ピッコロさーん!」
「・・・なんだ?」
「はい、お水!」
片目を開けた先に差し出された、水。
「・・・あぁ」
「いやー、もうへとへとです!ピッコロさんってなんでそんな無限の体力なの?」
「別に無限じゃない、お前の体力がなさすぎるだけだ」
「1時間も戦闘すれば普通に死ぬと思うんですけど!」
「安心しろ、死なないようにしてやる」
俺の発言にりかの表情が引きつる。
「え、いや、遠慮、します・・・・?」
「遠慮しようが関係ない」
「なんかその過程で死んだりしない?それ、大丈夫なんですかね?」
「お前が耐え抜けばいいだけの話だ」
「耐えれない可能性もありますよ!」
「なら死ぬだけだな?」
「えぇ!?」
りかは悲鳴を上げるが、その表情から笑みが消えることはなかった。
デンデがいれてくれたお茶をゆっくり口に運び、また俺に笑いかける。
「ま、いつかは絶対勝ってやりますから!」
「何年後だろうな」
「意外とすぐかもよ!明日とか!?」
どこにあるのか分からない自信に満ちあふれている弟子を見て、俺はまた悪人顔を浮かべた。
「ほう・・・ならその腕、見せてもらおうか?・・・・全力でいくぞ」
「・・・・え」
数秒後、神殿に悲鳴が上がったのは言うまでもないことだった。
厄介な弟子、増えました
(ボロボロになって床にひれ伏すりかに、俺は呆れながらデンデを呼んだ)
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