Erdbeere ~苺~ それは馴れ初めの話 忍者ブログ
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2019年10月13日 (Sun)


フレン夢/フレン視点/ユーリ片思い

※決戦前


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ユーリと剣を交えて、ついに負けた。
なんとなく分かっていた。僕が彼より弱くなってしまっていることは。それでも現実になるとこんなにも悔しく、けれどどこかスッキリとした気持ちが心を満たす。

もうやり残したことはない。
あとは決戦に向けてやるべきことをやるだけ。僕として、騎士団として。

そんなことを考えていたら隣に寝ていたユーリが笑いながら体を起こした。


「おいおい、何スッキリした顔してんだよ」
「いやぁ、なんだか色々晴れた気分なんだ」
「まだやること残ってんだろ」
「それはもちろん。むしろこれからが山場だ。騎士団としても僕がやらねばならないことは・・・」
「そうじゃねぇよ」


呆れた顔でユーリが僕の話を遮る。
やれやれと首を振る彼の動作に、まったく考えが浮かばず首をかしげてしまった。


「・・・?そういうことじゃないのかい?」
「お前、決戦前だってのにまだアメリィとのことに決着つけないつもりかよ」
「え」
「・・・・・・まさかバレてないとでも思ってたのか?」


特にユーリに告げた覚えのない気持ちを目の前で告げられ、固まる。
アメリィへの気持ちには自分でも気がついていた。旅の途中、ユーリと合流した彼女に嫉妬するくらいには強く。それでもユーリにはバレないようにしていたつもりだった。

それは彼女が、ユーリのことを好いていると思っていたから。
その気持ちを邪魔してしまうくらいなら、この好意は騎士団の忙しさに隠してしまおうと。


「お前、昔からアメリィのこと好きだろ」
「そ、それは・・・・」
「さっさと言ってやれよ。決戦前だぞ?もちろん大成功で終わらせるつもりだけどよ、何が起こるかわからねぇんだ。・・・・言えなくなっちまったら、後悔するぞ」


ユーリの言う通りではあった。だが僕はその言葉に体を起こせないでいた。


「・・・・彼女には、きっと他にお似合いの人がいる」
「それはねぇと思うけどな・・・・」
「なぜ、そう言い切れるんだい?」
「もう10年近くお前らのそのうだうだを見せられて、我慢の限界だからだよ俺は。そんなに信じられないってなら、明日の旅立ちまでアイツを見とけよ。俺の言葉の意味がわかるだろうからよ」


そう言うとユーリは寝転がったままの僕に鋭い視線と切っ先を向けた。


「もし言わないってんなら、俺が貰う」
「・・・・!!それは!」
「嫌ならさっさと決めるんだな。・・・・俺も初恋の相手をくれてやるほど優しくないんでね、決めないってなら貰うだけだ」


彼の挑発は本気だ。目が、嘘をついていない。
そのまま歩いてオルニオンに帰っていくユーリを、僕は何も言えないまま見送った。

彼女を、見てみろ?
アメリィのことはいつだって見てきた。昔も今も。
旅の途中でユーリと合流するたび嬉しそうに笑って。状況に応じて動いているとは分かっていても、彼女がユーリと旅をするためにいなくなる時間が僕の心を静かに蝕んで。

でも、それがもし彼女の幸せなら。
僕のこの気持ちはただ彼女を混乱させるだけになる。


「・・・・」


ゆっくりと起き上がった僕は、静かに剣をしまった。
そしてユーリの言葉の意味をこの目で確かめるために、アメリィを探すことにした。



















アメリィは昔から明るく、元気な子だった。
僕たちに辛いことが起きても彼女が笑わせてくれて、いつの間にか解決してくれて。

騎士団に入ってからも、それは変わらなかった。
色んな人達とすぐ仲良くなり、上も下も関係なく人の輪を広げていった。
最初はそんな彼女のことをただの”いい子”だと思っていた。

でも違った。

彼女は僕の父が馬鹿にされたとき、あろうことか自分の立場を危険に晒してでも反論した。自分の考えはハッキリ言う、彼女はいい子ではなく“強い子”だった。

そんな彼女に僕は惹かれていた。
でも言えなかった。

それは僕が弱いからかもしれないし、勇気がなかっただけかもしれない。


「あ・・・」
アメリィー!!」
「!」


考えごとをしながら歩いていると、瓦礫が集まっている付近にアメリィを見つけた。
それと同時にカロルの声が聞こえ、僕は思わず隠れてしまう。


(ぼ、僕は何をしてるんだ・・・これじゃあストーカーみたいじゃないか)
「お?どうしたよカロル」
「町の近くに変な魔物の巣があるみたいなんだ」
「え、まじ?」
「でもみんな出払ってるし・・・あ!フレンとかに言ったほうがいいかな?」


そういうのは騎士の努めだ。
僕がやろうと声を上げて出ようとした僕を、アメリィの冷たい声が止めた。


「だめ」
「え」
「フレンは疲れてるの、せっかく私達と合流してるんだからここにいる間は最低限の仕事だけにしてあげて」
「じゃ、じゃあ・・・」
「もちろん、元騎士団のわたしが引き受けてあげるよ。大丈夫、魔物の巣ぐらいなら私一人で平気だからさ」
「え!?一人で行くの!?じゃあ僕も・・・」
「だめだめ。カロルはその器用さを活かすところがあるでしょ!リタに呼ばれたらすぐ行けなきゃだめなんだから」
「・・・・ほ、ほんとに、大丈夫なの?」


心配そうなカロルの声は最もだ。
魔物の巣は危険だ。子供だけならまだしも親の魔物が住んでいればその巨体と戦うことが必要になってくる場合もある。

だがアメリィは自信満々に頷く。


「あったりまえよ。明日旅立つまで、こういう仕事は全部一旦私かユーリ通してね」
「う、うん・・・・」
「緊急なものはしょうがないけどさ。・・・フレンはどうせ言わなくても見回りとかやっちゃうし、休まないんだから、渡しちゃだめ!んじゃ、行ってきまーす!」


大剣を担いで歩き出したアメリィに、僕は何故か声をかけられないままついていった。

嬉しかった。彼女がそんなに僕のことを心配してくれているなんて思わなかったから。
けれど、今までも気づかなかっただけなんだろう。
彼女は騎士団を抜けてギルドに入ってからもしょっちゅう僕のところに来ていた。任務中にも遠征中にも。そして助けてくれた。きっとそれも、偶然なんて言葉を信じるものじゃなかったんだと、今の会話を見ていて気付かされた。


「さーて、このへんかな」


そんなことを考えていると結局声をかけられないまま。
町の裏側にある、少し荒れた岩山のところにそれはいた。
岩山に身を隠しながら僕は彼女の戦いを見守る。

心配はないのは正直分かっている。
振り上げる剣は僕たちが持つものより大きく、繰り出す技は誰よりも素早い。

彼女は誰よりも努力して、強くなってきた。
それがなぜなのか、聞いたことはなかったが。


「ガァアア!!!」
「轟け!鳳凰天駆!!」


振り回される大剣に、魔物たちがひれ伏していく。
やがて静かになった頃、アメリィが少し顔を歪めて右腕を見た。


「・・・・!」


血だ。
剣を握る手から血が流れている。


「はー、また豆が・・・治癒術でやってもすぐ出来ちゃうなぁ・・・」


ファーストエイドと小さな声が聞こえ、彼女の手から流れていた血が止まったようだった。
でも彼女はどこか辛そうな表情のまま。こちらに向かってきたためやはり声をかけるタイミングを見失って僕は隠れる場所を変えた。通り過ぎる際、悲しげな言葉が聞こえたのは、僕の気の所為ではないだろう。


「こんな手じゃ、やっぱりフレンには似合わないかなぁ・・・」


ますます声をかけられなくなった僕は、罪悪感に蝕まれながら後をつけた。
























僕は、何をしているんだろう。
結局暗くなるまで特に問題も飛び込んでこず、僕はただ彼女をストーカーしていただけだった。

暗くなった町の外で鋭い音が響く。
ユーリとアメリィが剣をぶつけ合っている音だ。
大きな剣と技で圧倒するアメリィの攻撃を、ユーリは軽々避けながらその隙に的確な攻撃を仕掛けていく。もちろん、アメリィはそれを弱点だと分かっているのだろう。それをさせないよう晶術を展開させてどうにかユーリを翻弄しようとしているが、追いついていない。


「っ・・・・!くっそ」
「おせぇんだよ・・・!」


ユーリの蹴りがアメリィの手元に決まり、剣が落ちた。
ものすごく渋い顔をしたアメリィが悔しそうに剣を拾い上げる。


「・・・・お前また豆できてるぞ」
「後でしっかりエステルに治してもらうつもり!」
「はー・・・ったく、その強さなら十分フレンを守れるだろ」


ユーリのその言葉は、まるでこっそり見ている僕にわざと聞かせるような、大きな声だった。
きっと彼は僕が近くで見ていることを知っているのだろう。自分で、アメリィを見ていろと言ったのだから。


「まだまだ足りないでしょ。私には強さしか、他の人に勝てる要素がないんだから」
「んなこたねぇだろ」
「ウソつけー!フレンの周り見てみてよ!あんな可愛い姫様に、キレイな部下たち!どうやっても勝てないじゃんかよ~~!!?」


駄々っ子のように寝転がってジタバタし始めるアメリィを見て、思わず笑いそうになると共に言葉の意味が分かってきて顔が熱くなる。

まさか、それでは。
いやでもまさか。
僕の考えを見抜くようにユーリが大きな声で続ける。


「お前のその10年越しの片思い、そろそろ決着つけろよな」
「っぐ・・・うるせーーーやい!!」


それは、僕に対して?いや、アメリィに対しての言葉。
10年越し?僕ではなく彼女の片思い?

――――ではやはり、彼女は。


「ッ・・・・」


僕は顔が熱くなるのを感じ、その場から離れた。



























僕は彼女を見ているつもりだった。
だからこそ、彼女はユーリが好きなのだと思っていた。

でも、どうやら違ったようだ。
確信できるまで行動に移せない僕は、ユーリからすれば頭が固いというやつなのか。
だけどもう迷わない。迷えばユーリに取られてしまう。それだけは、許せない。

トントン、と。
小さく彼女の部屋をノックした。
返事はない。本来ならここで声をかけるべきなのだろうが、何故か僕はそっと扉を開けていた。

今日のストーカー癖が身についてしまったのだろうか。
ゆっくりと開けていく視界の先で、ベッドが膨らんでいる。
音と気配を消してそっと近づき、僕とは反対側を向いて眠る彼女の近くに座った。

ベッドの軋む音。
彼女の、呼吸音。


「・・・・寝ていたのか」


ユーリに言われて気づいた。
こんなに近くで彼女を見続けたのは、久しぶりなことを。

僕は思った以上に想われていた。自分が想っていた人に。
だから伝えなければならない。


「なんだか恥ずかしいが、寝ている君なら言えそうだ」


君が起きたら、もう一度言う。だから。


「好きだよ、アメリィ


予行練習を。


「・・・・・・・・・アメリィ、もしかして起きてる?」


予行練習のつもりだったが、見えていたアメリィの耳が真っ赤に染まっていくのを見て僕は彼女が起きていたことを知った。
だが彼女はあくまでも寝ているふりをしたいらしい。気配も乱れ、もう寝ているとは言えない状況なのは分かっているのに動かない。

あぁ、そうか、なるほど。それなら僕にも考えがある。
もう我慢はしない。僕はもうこの抑え込んでいた気持ちを、君に伝えると決めたから。


「なら、もう一度言おう」
「・・・・」
「好きなんだ、君のことが。アメリィ
「・・・・」
「・・・もう一度言ったほうがいいかな?」
「ご、ごめん、も、もう、あの、大丈夫。ごめん・・・・」


寝返りをうって僕の方をちらりと見たアメリィは、僕と目があった瞬間布団に潜ってしまった。
明らかに余裕のない彼女の姿を見て、余裕がなかった僕の心に落ち着きが戻ってくる。


アメリィ
「ゆ、ゆめ、なの、夢みたいだ。どうしよう・・・・」
「夢じゃないよ。ここにいるだろう、僕は」
「でも、そんな、だって、フレンには素敵な人がいっぱいいて・・・私、わたしなんて」
「僕は君がいいんだ」
「っ・・・うう、死んじゃう、どうしよう、心臓出そう・・・・」


もう少しアメリィを落ち着かせてあげたかったけど、早く返事が聞きたくて。
僕は無理やりめに布団を引っ張り、アメリィを布団から出した。


「返事は、聞かせてもらえるかな」
「・・・・一生、ついてっていいなら」
「もちろん」
「後悔、するよ。私、フレンが思ってる以上にフレンのこと好きだからね」
「あぁ」
「ずっとついていくし、離れないよ。いいの・・・・」
「嬉しいね。でもまぁ、それよりも早く・・・僕にも返事をくれるかな」


騎士団に恥じない強さと、勇ましさ。
普段鈴のように明るく笑う彼女の、女性としての顔。


「私も、フレンが・・・好き、です」


嬉しくなって手を握れば、溶けてしまいそうなぐらい熱い彼女の体温が伝わってくる。


「・・・・しに、そう」
「死なれたら困るな」
「夢じゃないよね、本当に」
「あぁ。・・・どうやったら信じれるんだい?」
「うーん・・・・じゃあ、キスして」
「え」


余裕のない彼女から発せられたものとは信じれないほど、挑発的な言葉に目を見開く。
それこそ夢かと思ったが、そうではないようだ。
小さな声で、あ、いや、やっぱなし!と言いながら僕の手を振りほどこうとしているアメリィが可笑しすぎて笑ってしまう。

おかげで僕にはもう余裕が出来ていた。
男の僕をからかうなんてね、と。目を細めて笑えば更に抵抗が強まった。

残念だけど、僕は君より強い。
両手を抑えて、逃げれないようにしてから顔を近づける。

そっと、触れるだけ。
それでも長年の想いを抱く相手とのキスは、本当に夢のようで。
もう一度と二度目を触れると、僕の腕から逃げ出したアメリィが距離をとって顔を隠した。


「ま、まって!たんま!!死ぬ!!!」
「死なないよ」
「~~~むり、ごめんなさい、はず、はずかしい・・・」
「っふふ、君がそこまで余裕をなくしているのを見れるなんて、嬉しいな」
「む、むかつくな・・・・」
「その顔、誰にも見せちゃだめだからね」
「・・・・っ、わ、わかってるよ・・・・」


昔と何ら変わりない会話のノリ。けれど恋人同士の会話。
夢のような幸せを感じたくて近づけば、全力で逃げられる。


「む、むり」
「無理ってなんだい」
「フレン、ちょっと顔笑ってんだけど?」
「いや・・・君がここまで戸惑うとはちょっと思ってなくてね。思った以上に僕に余裕が出てきてしまったよ」
「うわ~~!!ほんっとむかつく!」
「少しは余裕が出てきたかい?なら大丈夫かな」
「な、なんも大丈夫じゃ・・・!」


逃げ回るアメリィを捕まえて、腕の中に閉じ込めた。
そのままベッドに引きずり込んで横たえる。
布団をかぶせて、腕の中にアメリィを抱えて、完璧な体勢。腕の中の彼女は不満なようだけど。


「さ、明日も忙しいし寝よう」
「うそでしょ、こ、このまま寝れるわけないじゃん!?」
「でも、起きたときに君がいないと、夢だと思ってしまいそうだから」
「平気でそういうことを・・・・あーもう・・・分かったよう・・・」


静かになったアメリィの髪に顔を埋め、堪能しながら目を閉じる。
あぁ、僕は今一番幸せだ。この幸せのために、世界の未来のために、僕は全力で挑もう。


「おやすみ」








迎える最終決戦に、僕たち二人は寝不足。

(むしろそれでよく耐えれたな)
(何の話だい?)
(いや、俺だったら間違いなく食っちまうからな)
(結構ぎりぎりだったけどね)
(・・・・お前、そういうところわりとさらっと言うよな・・・ウブなんだか男なんだか)


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