いらっしゃいませ!
名前変更所
リオンとあけが任務を終え、ディムロス達を持ち帰った時には、既に日が落ちようとしていた。
薄暗い中、報告を急ぐためにまっすぐ屋敷へ向かう。
「リオン、報告は私が行ってくるよ!」
「何を言っている?僕も・・・・」
「ううん、私が行く」
あけの力強い瞳に、リオンは押し黙る。
リオンにはあけが何で一人で行こうとしているのか、すぐに分かった。
だからこそ、行かせたくなかった。
でもこうなったあけを、止める術はリオンにも無い。
言い始めたことは絶対にするぐらい、とにかく頑固なのだ。
「あけ・・・・」
「だいじょぶ、だいじょぶだから・・・・ね?」
「・・・・ああ、分かった。報告だけしてすぐ戻ってこい」
リオンが許可を出すと、にっこりほほ笑んだあけがすぐさま屋敷の扉を開けた。
すると待ってましたとばかりに、マリアンが迎えにくる。
そのマリアンさえ軽い挨拶で通り過ぎたあけは、走るようにしてヒューゴの部屋へと急いだ。
「あらまぁ・・・・どうしたのかしら?」
「ま、まてあけ!!・・・・くそっ・・・・!」
悔しそうに舌打ちするリオンを、マリアンが不思議そうに見つめる。
ヒューゴの部屋の前までついていくつもりだったリオンは、あけを捕まえようとして手を伸ばすが、走り去ってしまったあけを捕えることは出来なかった。
あけはヒューゴが苦手だ。それはリオンの屋敷に拾われてから、変わらない。
少しでも二人っきりにするのを避けさせたかったのだが、その前に走り去ってしまった向こう見ずなあけに、リオンは軽く眩暈を覚えた。
まったく、人の心配をなんだと思っているのだろうか。
仕方なくリオンはマリアンにソーディアンを渡し、優しく微笑みながら挨拶を口にした。
「ただいま、マリアン」
「おかえりなさい・・・エミリオ」
その奥でぱたん、と。
扉が閉ざされる音がした。
私はヒューゴが凄く苦手だ。
でもルーティの処刑のことを話すには、どうしてもリオンを遠ざけなきゃいけなかった。
だってリオンが居たら、気まずくて話せないもん。
「それで?今回の任務はどうだった?」
ぞくり、と。
嫌な寒気が全身を襲う。
私はそれに耐えながら、ゆっくりとヒューゴの目を見つめた。
「盗賊は3名、そのうち一人の男がディムロスを所持していました。そしてルーティという女性も、アトワイトと呼ばれるソーディアンを所持していました」
「ほう・・・・なるほど。それで?」
「剣はリオンに任せてあります。捕えた人たちは城へ」
「なるほど」
満足そうに微笑む姿が、何故か憎らしい。
私は落ち着いて息を吐き、本当に話したかったことをヒューゴに告げた。
「それで、ルーティについてなのですが」
「そいつがどうした?」
なぜ、こいつはビクともしない?
ルーティ・カトレット。
名前を知ってるということは、リオンと同じファミリーネイム・・・・すなわち、ヒューゴの娘であることは知っているはずだ。
自分自身の娘のはずなのに、どうして?
リオンもヒューゴを警戒しているため、あえてエミリオの本名を知らないことにして話を続けた。
「ルーティだけじゃありません・・・もう一人の男にも言えることなのですが」
「なんだ?言ってみなさい」
「処刑するのは、勿体ないのではと思います」
「ほう?」
静かな部屋に、私の声が冷たく響き渡る。
ヒューゴから目を逸らさないよう、力強く拳を握る。
「二人とも、ソーディアンマスターの資質があります。滅多にいない人材です・・・・それを、罪人とはいえ、処刑してしまうのは・・・・」
「あけ」
名前を呼ばれた私は、思わずビクッと身体を震わせた。
思わず逸らしたくなるような冷酷な瞳が、私をじっと見ている。
すごく、楽しそうに。
私をあざ笑うかのように。
「処刑は全て、王が決めることだ・・・・お前が口を出せることじゃない」
「・・・・すみません」
無意識に、唇をかみしめる。
「まぁ、だが・・・・確かに君の意見も正しい。私から王の方へ伝えておこう。どうなるかは分からないがな・・・・」
「は、はい。ありがとうございます」
「用が終わったら、もう行っていい」
「はい・・・・失礼しました」
ああいう風には言ったが、本当はどうなるか分からない。
上手くいかなかった焦りと、ヒューゴへの恐怖感が同時に襲い掛かる。
ヒューゴの部屋から出た私はゆっくり息を吸うと、少し離れた壁に身体を預けた。
日常会話の時には感じない、冷たくて鋭い殺気のようなもの。
任務が絡んでいる時や、何か真剣な話をするときは、必ずヒューゴの空気が変わる。
まるで、別人になったかのように。
殺されるのではないか?と思ったこともあった。
今回も、名前を呼ばれたときは、正直恐怖が身体を支配していた。
でも、彼の――――――リオンのために、こうするしかなかったんだ。
たとえ殺されることになっても、傷つくことになっても、私は彼が1番傷つかない方法を選びたい。
命にかけて。それほど私にとってリオンは大切な存在。
エルフという存在を受け入れてくれて、歳を取らない身体でも同じ存在として見てくれた、彼のためになら。
「でもリオンに会えたのも、ヒューゴのおかげなんだよね・・・・」
ヒューゴと初めてであった時。
リオンと会うきっかけになったけれど、複雑な出会い。
その時のことを思い出した私は、リオンが来るまでにしっかりしようと、自分の頬を叩いて気を取り直すことにした。
薄暗い中、報告を急ぐためにまっすぐ屋敷へ向かう。
「リオン、報告は私が行ってくるよ!」
「何を言っている?僕も・・・・」
「ううん、私が行く」
あけの力強い瞳に、リオンは押し黙る。
リオンにはあけが何で一人で行こうとしているのか、すぐに分かった。
だからこそ、行かせたくなかった。
でもこうなったあけを、止める術はリオンにも無い。
言い始めたことは絶対にするぐらい、とにかく頑固なのだ。
「あけ・・・・」
「だいじょぶ、だいじょぶだから・・・・ね?」
「・・・・ああ、分かった。報告だけしてすぐ戻ってこい」
リオンが許可を出すと、にっこりほほ笑んだあけがすぐさま屋敷の扉を開けた。
すると待ってましたとばかりに、マリアンが迎えにくる。
そのマリアンさえ軽い挨拶で通り過ぎたあけは、走るようにしてヒューゴの部屋へと急いだ。
「あらまぁ・・・・どうしたのかしら?」
「ま、まてあけ!!・・・・くそっ・・・・!」
悔しそうに舌打ちするリオンを、マリアンが不思議そうに見つめる。
ヒューゴの部屋の前までついていくつもりだったリオンは、あけを捕まえようとして手を伸ばすが、走り去ってしまったあけを捕えることは出来なかった。
あけはヒューゴが苦手だ。それはリオンの屋敷に拾われてから、変わらない。
少しでも二人っきりにするのを避けさせたかったのだが、その前に走り去ってしまった向こう見ずなあけに、リオンは軽く眩暈を覚えた。
まったく、人の心配をなんだと思っているのだろうか。
仕方なくリオンはマリアンにソーディアンを渡し、優しく微笑みながら挨拶を口にした。
「ただいま、マリアン」
「おかえりなさい・・・エミリオ」
その奥でぱたん、と。
扉が閉ざされる音がした。
私はヒューゴが凄く苦手だ。
でもルーティの処刑のことを話すには、どうしてもリオンを遠ざけなきゃいけなかった。
だってリオンが居たら、気まずくて話せないもん。
「それで?今回の任務はどうだった?」
ぞくり、と。
嫌な寒気が全身を襲う。
私はそれに耐えながら、ゆっくりとヒューゴの目を見つめた。
「盗賊は3名、そのうち一人の男がディムロスを所持していました。そしてルーティという女性も、アトワイトと呼ばれるソーディアンを所持していました」
「ほう・・・・なるほど。それで?」
「剣はリオンに任せてあります。捕えた人たちは城へ」
「なるほど」
満足そうに微笑む姿が、何故か憎らしい。
私は落ち着いて息を吐き、本当に話したかったことをヒューゴに告げた。
「それで、ルーティについてなのですが」
「そいつがどうした?」
なぜ、こいつはビクともしない?
ルーティ・カトレット。
名前を知ってるということは、リオンと同じファミリーネイム・・・・すなわち、ヒューゴの娘であることは知っているはずだ。
自分自身の娘のはずなのに、どうして?
リオンもヒューゴを警戒しているため、あえてエミリオの本名を知らないことにして話を続けた。
「ルーティだけじゃありません・・・もう一人の男にも言えることなのですが」
「なんだ?言ってみなさい」
「処刑するのは、勿体ないのではと思います」
「ほう?」
静かな部屋に、私の声が冷たく響き渡る。
ヒューゴから目を逸らさないよう、力強く拳を握る。
「二人とも、ソーディアンマスターの資質があります。滅多にいない人材です・・・・それを、罪人とはいえ、処刑してしまうのは・・・・」
「あけ」
名前を呼ばれた私は、思わずビクッと身体を震わせた。
思わず逸らしたくなるような冷酷な瞳が、私をじっと見ている。
すごく、楽しそうに。
私をあざ笑うかのように。
「処刑は全て、王が決めることだ・・・・お前が口を出せることじゃない」
「・・・・すみません」
無意識に、唇をかみしめる。
「まぁ、だが・・・・確かに君の意見も正しい。私から王の方へ伝えておこう。どうなるかは分からないがな・・・・」
「は、はい。ありがとうございます」
「用が終わったら、もう行っていい」
「はい・・・・失礼しました」
ああいう風には言ったが、本当はどうなるか分からない。
上手くいかなかった焦りと、ヒューゴへの恐怖感が同時に襲い掛かる。
ヒューゴの部屋から出た私はゆっくり息を吸うと、少し離れた壁に身体を預けた。
日常会話の時には感じない、冷たくて鋭い殺気のようなもの。
任務が絡んでいる時や、何か真剣な話をするときは、必ずヒューゴの空気が変わる。
まるで、別人になったかのように。
殺されるのではないか?と思ったこともあった。
今回も、名前を呼ばれたときは、正直恐怖が身体を支配していた。
でも、彼の――――――リオンのために、こうするしかなかったんだ。
たとえ殺されることになっても、傷つくことになっても、私は彼が1番傷つかない方法を選びたい。
命にかけて。それほど私にとってリオンは大切な存在。
エルフという存在を受け入れてくれて、歳を取らない身体でも同じ存在として見てくれた、彼のためになら。
「でもリオンに会えたのも、ヒューゴのおかげなんだよね・・・・」
ヒューゴと初めてであった時。
リオンと会うきっかけになったけれど、複雑な出会い。
その時のことを思い出した私は、リオンが来るまでにしっかりしようと、自分の頬を叩いて気を取り直すことにした。
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