いらっしゃいませ!
名前変更所
どんなことがあってもプライドは曲げない。
曲げる必要がない。なんたって俺は―――
「はい次右腕ねー」
「ぐっ!!!貴様、もっとゆっくり出来んのか!」
「っさいなー。気を操って回復するのもわりとめんどいんだから黙っててよ」
遠征から帰ってきた俺は、全身に大けがを負っていた。
その星にいた馬鹿が、最後の最後で星ごと自爆しやがったせいで、俺も巻き込まれたのだ。
この女は自分一人上手く逃げやがって、無傷だったらしいが。
それに対して怒りを露わにしていると、フィレット族特有の気の扱いで、俺に対して治療を始めた。
・・・までは、よかった。
だがこいつの治療は手荒い。
気を強く入れ込み内部から治療する技らしいが、容赦なく気を注ぎ込むせいか、傷口が熱を持ち痛みを発する。
「っつ・・・」
「何?痛いなら泣いてもいいんだよぉ?」
「・・・・・」
「っだぁあぁ~~~!!!痛いっ!!無言で尻尾を踏むなぁぁぁっ!!」
「これはすまない。見えなかったものでな」
「う、うそつけぇ・・・・」
ぷるぷると震えながら涙を浮かべるベリトアに笑みを浮かべると、それが気に食わなかったらしいベリトアが俺を睨みつけた。
「こ、こんの、治療しないぞこのやろう・・・・」
「元はといえば、お前が俺を置いて一人だけわけのわからんバリアに閉じこもったからだろうが・・・・」
「えー?あんなのぐらい想像出来るでしょ。気で防がないのが悪・・・だからふむなっ!!ふむなぁあああぁっ!!」
俺のプライドをいちいち穢すようなことを言いやがって。
苛立ち紛れにもう一度尻尾を踏めば、またベリトアがぷるぷると震える。
ハッ。この俺に逆らうからだ。
わざと彼女を煽るように意地悪い笑みを浮かべれば、思った通りの表情で俺を睨む。
「うぐぐ・・・ったく。治療してるんだから黙っといてよねっ」
「さっさとしろ」
「いちいちむかつく」
「はっ。そう言いながら治療続けてる奴は誰だ?」
「っぐ・・・」
文句を言おうが、何を言おうが、こいつはきちんと俺に従う。
その心地よさに最近は慣れて、俺はこいつと一緒に居るのが当たり前になっていた。
当たり前になりすぎて、気付かない感情があるとは知らずに。
「んー、あいつらの自爆も大したもんだねー。ここまでベジータに深い傷負わせちゃうなんてびっくり」
「ったく、小賢しいマネしてくれる」
「あはは、まぁ、いいじゃん。はいほら治ったよ!」
声と同時に立ち上がり、腕を動かす。
傷を負っていた部分は嘘のように無くなり、俺自身の消費した気も元に戻っていた。
サイヤ人が戦いに使う気の扱いとはまた違う、特殊な術。
だが特殊な術が使えようと、俺には敵わない。それは分かり切ったことだ。
「何ニマニマしてんの?気持ちわ・・・・ごめんなさい、やめて、もう踏まないで、わりと本当に痛いんだから・・・・」
悪口を言うことを見越して尻尾を踏んでいた足に力を入れると、ベリトアがヒクヒクと顔を引き攣らせて謝った。
その表情が、俺の加虐心を擽る。
それに満足した俺は、そのまま部屋を出ようとして―――ベリトアに止められた。
「おいこらまて」
「なんだ?また踏まれたいのか?」
「ちょぉっと危ないな!!違うっつの。治したんだからお礼は?私の気だって消耗してんだからね!!」
「フン・・・礼を言うまでもない」
「はぁ?アンタには出来ないでしょーがっ!放っておいたら痛いまんまだよ?」
叫ぶベリトアをスカウターで覗けば、戦闘力が普段より大幅に下がっている。
どうやら俺を治療する際、相当な気を消費したらしい。
こいつの気の能力は俺には出来ない・・・・いや、しないだけだ。
気を治癒に使用したり、バリアをはったりなど、そんな器用な使い方はしないからだ。
戦闘で相手を破壊する、そのための力。気。
決して出来ないわけでない。この俺様に出来ないことなどない。
しないだけだ。
「そのぐらい、俺が本気を出せば簡単なことだ」
「へー?こんな器用なマネ、出来なさそうですけどー??」
「うるさいぞ。出来ないんじゃねぇ、しないだけだ」
「それを出来ないって言うんじゃないんですかぁー?乱暴破壊神ベジータ様でも、こんな器用な気の使い方ができるんですかぁ?」
ぶちり、と。
何かが俺の中でキレるのを感じ、俺はゆっくりとベリトアに近づいた。
「分かった。そのままで居ろ。俺が特別に見せてやるんだ、感謝しろ」
「お?本当に出来るの?何々?」
わくわくした表情を浮かべるベリトアに、そっと手をかざす。
そのまま気を集中させ、手のひらに小さな気の球を作り出した。
それをベリトアの周りに浮遊させ、気を高める。
何が起きるのか目を光らせている彼女に、高めた気の球を放った。
もちろん、殺気のこもったものじゃない。
それを分かっているからこそ、ベリトアも避けようとしなかった。
「おおー?何これなにこれ?」
からかうような声。
浮遊するだけの気の球。
ニヤニヤと笑い始めるベリトアを見て、俺も笑みを深める。
「さぁ、見るが良い。喜べ」
「・・・・へ?」
ヒュッと風を切るような音が響き、気の球がはじけ飛んだ。
はじけ飛んだ気は球体から紐状へと形を変え、治療するために座っていた椅子へとベリトアの手足を縛りつける。
「・・・・え・・・?」
手足を椅子に固定され、まったく身動きの取れなくなったベリトアが俺を見上げた。
嫌な予感を感じ取ったのか、だらだらと冷や汗を流している。
そう、その嫌な予感の通りだ、ベリトア。
俺はベリトアを固定した気を解かないまま、踵を返す。
「ああああ待って!!このまま縛りつけて放置するつもりじゃないだろうな!?」
「なんだ?解いて欲しいのか?その態度で?」
「わ、私は見せてっていっただけじゃない!縛るなんて聞いてないーー!!」
「だったらそのままで居るんだな。それか自力で解け」
「アンタの気を解けるわけないでしょーが!!良いから解いてよっ!はやくっ!」
じばたばと暴れる気配を後ろに感じる。だが、俺の知ったことじゃない。
俺を馬鹿にするからこうなるんだ。
「ちょっとたんま!!ほんと!ほんと無理!!解いて!!」
「聞こえんなぁ」
「くっ・・・し、ます」
「何だ?はっきりと言え」
「お、お前ほんと根性くさってるっつの・・・この性悪め・・・」
あぁ、その表情。
どんな奴らを追い詰めるときよりも、ゾクゾクさせるぜ。
背を向けたまま、少し顔を向ければ、目に入る悔しそうな表情。
やがてベリトアは諦めたのか、唇を噛みながら俺の欲しがっていた言葉を呟く。
「ほ、解いて、ください」
「・・・・誰に頼んでるんだ?」
「こ、こんの、や、ろ・・・・」
「ほう、よほどそのままで居たいと見える」
「分かったよ分かったよ・・・解いて、ください・・・ベジータ様」
その言葉と同時に、ぱちんっと音を立てて指を鳴らした。
音を合図に気の縛りが解け、ベリトアが安心したように息を吐き出す。
「はぁぁ・・・助かった・・・こんの鬼畜王子め・・・・」
「・・・次縛られたくなかったらさっさと・・・」
「はいはいはーーーい!!」
憎まれ口の叩き合い。
それでも俺たちは、何故か常に共にいるのだ。
悪い気はしない。
(純粋な目が俺を見て、笑う。それが)
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