Erdbeere ~苺~ 本気にさせた罪は重い 忍者ブログ
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2014年04月23日 (Wed)
本気にさせた罪は重いんだ、と。目の前の彼は不敵に笑った
<桐生夢/見参/ギャグ/甘/ヒロイン視点>

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祇園。
昼間は活気のある人々で溢れ、夜は妖艶な雰囲気に包まれる町。

ここでの権力は力じゃない。金だ。
だから女の私でも、ある程度の金さえあれば存在が認められる。

遊女達も、同じ。

どんな手を使ってでも貢がせる者もいれば、逆に遊女を散々弄ぶ男もいる。


全ては、お金。
それがこの町の地位であり、権力。力。

私が始めてここに来たときは、ここの町人達の生気の無さに驚かされた。

女を求め、金を求め、遊びを求め。
生気があるようで、どこか目的を見失っている人間ばかり。


まぁ、私もそんな人間の一人なのだが。


「・・・・暇だなー」


外で情報屋の仕事をしていた私は、目的を見失ってこの町にきた。
そして暇つぶしにこの町で仕事を始めたところ――――抜け出せなくなったのだ。

金さえあれば、女の私でも上位に上れるというこの町から。


「や、やめてくださいっ」
「うるせぇな・・・さっさとこい」
「・・・ん?」


ぼけっと手のひらに乗せたお金を見つめていた私の耳に、女の悲鳴が響いた。
声がした家と家の間にひょこっと顔を出すと、遊女らしき女と見たことのある男がもめている。

もめている、というよりは・・・引っ張って連れて行こうとしてるのか?

あの男は、金さえ払えばなんでもする龍屋の桐生だ。
遊女の誘拐でも頼まれたのか?
ったく、いくら積まれたらそんなゲスい仕事するんだよ。


「・・・・」


人のことに口出しをするつもりはない。
ただ、私は元からアイツのことが、桐生のことが好きではなかった。

何故って?

だってアイツ、金さえ払えば本当に何でもするんだぜ。

人殺しまでは見たこと無いが、ある程度の復讐も請け負っていたらしい。
情報屋としては、ああいうやつは一番やりにくい。
だから必然的に苦手意識を抱いていた。


そして2つ目の理由は、あいつの女好き。
たまに仕事上で衝突する私に対しても、遊女のような扱いで私に接しようとするアイツの態度。あれが本当に気にくわねぇんだ。

私はそこらにいるような遊びの女じゃない。

気に食わない。私を下に見やがって。


「暇だし、ちょっかいだしてやるか」


怯える遊女の姿も尋常じゃねぇし、桐生だし、暇だし。


3つの理由で動き出した私は、遊女を掴んでいる桐生の手に向かって、小さな石を投げた。

それは一直線に桐生の手を捉え、桐生が痛みに声を上げる。
遊女はその隙を突いて桐生から離れ、一目散にその場から逃げていった。

それを追おうとする桐生の前に、立ちふざがるように足を出す。


「あんな可愛い子ちゃんにちょっかいなんざ、桐生らしいな」
「・・・てめぇか、あけ。そこをどけ」
「やーだよっ!あんな可愛い子ちゃんがお前なんかに捕まっちゃうなんて、いやだからな」
「なんだ?・・・・あぁ、そうか、嫉妬したのか?」
「な、なに!?」
「最近遊んでやらなかったからな・・・寂しかったんだろ?今夜はお前と・・・・って何しやがる。危ないだろうが」


これだ、この態度。

まさに遊び人って感じの態度しやがって。


全身に立った鳥肌を治めるために、私は強く首を横に振った。
そして馬鹿なことを言い続けている桐生に対し、持っていた石をもう一度投げつける。

まぁ、こんなのが当たるわけないと、知っているんだが。

桐生は余裕の表情で石を避けると、私のほうへじりじりと近づいてきた。


「さっきの女は逃がしちまったからな。お前に責任でもとってもらおうか?あけ
「やなこった。大体こんな真昼間から盛ってんのかよ」
「いや?さっきの女は遊女に扮した盗人だ」
「・・・・へ?」


盗人?
そういえば最近、祇園を騒がせていた盗人集団が居たような。

まだその情報は私では掴めていない。
ま、まさか、じゃあ、さっきのが?

そうなると、話は別だ。

暇だから、気に食わないから、なんて理由で邪魔したのは完全に私の罪になる。


だらり。
流れ落ちる冷や汗。

それに気づいたのだろう。

桐生がにんまりと意地悪い笑みを浮かべながら私ににじり寄ってくる。


「ほう?情報屋ともあろうお前が、知らなかったのか?あいつは最近祇園を騒がせてた盗人の一人だ。捕まえてくれと依頼があったから受けたというのに、お前が・・・・」
「あ、いや、そ、それは・・・日ごろのお前の行いが悪いんだっ」
「言い訳か?どうやら”謝る”方法をしらねぇようだな?」
「・・・っぐ・・・・」


桐生の言葉に勝つことが出来ず、ぎりりと唇を噛んだ。
その瞬間、桐生の後ろの細い道から、一瞬だけ殺気が流れ出すのを感じて止まる。

・・・・なんだ?


「・・・・」
「おい、あけ。聞いてるのか?」
「っおわ!?き、聞いてるっ」
「そのわりには、俺が近づいてることにも気がついてなかったみたいだがなぁ・・・」


感じた殺気――――違和感に気をとられ、私は桐生への反応を取ることが出来なかった。
目の前にいることに驚いても、もう遅い。


「捕まえたぜ」
「は、はな、はなせっ!!!」


どうあがいても、男の力。
羽交い絞めにされてしまった私は、桐生のことと、そして殺気を感じた方向が気になって暴れる事すら出来ない。

とりあえず桐生のことは無視だ。
殺気を感じた方向・・・あの女が逃げて行った方向。
私はその方向だけに意識を集中させ、気配が動くのを感じ取った。


「・・・・くる」
「?・・・お前何を言って」
「桐生、伏せろっ!!」


羽交い絞めにされていた状態のままで身体を地面に伏せる。
私の手を掴んでいた桐生も、その勢いにつられて地面に転がった。

そこに鋭く響く、風を切る音。
見てみれば、先ほど私たちが居た近くの壁に、小さな刀が2本刺さっていた。


桐生は驚いた表情で私と、その刀が飛んできた方向を睨む。


「チッ・・・外したか」


刀を投げた犯人であろう女―――遊女に扮した盗人が、イラだちの表情で新しい刀を取り出そうとしていた。
私は咄嗟に桐生の腕から離れ、桐生を庇うように立って刀に手を添える。


「あら、何?お嬢ちゃんが相手してくれるのかい?」
「・・・あぁ」
「どいてろ、あけ。そいつは相当腕の立つ奴らしい。ここは俺がやる」
「いい。逃がしたのは私の責任だ。私がやる!!」
「やめろ、お前じゃ無理だ」


最初は責任を感じ、刀を抜いていた私。
だが今の言葉で責任は苛立ちに変わり、桐生に噛みつく勢いで振り返った。

何だ。
あの遊女は、あの盗賊は強いと認めて、私は女扱いか。


イライラする。

馬鹿にされてるとしか思えなくて。


私は桐生と同じ職業人だ。
女だからって弱く見れるのが、馬鹿にされるのが嫌いでここに来たのに。


こいつだけは。

こいつだけは―――私を、私を・・・・。


「ふっざけんな!!私を馬鹿にすんなよ!!」
「おやおや?もめてるのかい?それならこっちからいくよ?」
「おい、相手がくるぞ。さっさと俺の後ろに下がれ、あけ!」
「嫌だね!!あんな女相手、私一人で十分だ!!」


刀を構え、向かってきた切っ先を静かに避ける。
そしてそのまま盗人の懐に飛び込み、思いっきり右足で腹を蹴り上げた。

うぐ、とくぐもった声が響く。
私はしてやったりと笑い、続けて峯打ちで相手の鳩尾を叩きつける。

桐生はそんな私の動きを、厳しい表情で見つめていた。



「どうだよ桐生。私一人でも十分だろ?」
「・・・・あけ、お前は女だ。少しは俺の言うことを聞いて静かに後ろにいろ」
「うるせぇ・・・確かに私は女だ。でも必要以上に女扱いされるのは腹立つんだよ!」
「なーにそんなにお前は怒ってるんだ?そんなに女扱いされるのがいやか?」
「あぁ、いやだね。私はお前と同じ、職業人だ。馬鹿にされるためにこんなところに来たわけじゃねぇ・・・・」


キッと桐生を睨み返し、起き上がりかけた盗人をもう一度蹴り上げる。
それでも足元でわぁわぁ騒いでる盗人に苛立ちの限界を超えた私は、そのまま盗人を峯打ちで気絶させた。

私の敵はこいつじゃない。

目の前にいるこいつだ。桐生だ!


「そこまでいうならやろうぜ、桐生。お前をぶっ倒して私を認めさせてやる」
「・・・・ったく、お前は」
「・・・・なんだよ」
「お前が俺に勝っても、俺はお前を女としか見ない」
「・・・っ」
「当たり前だろ?俺はお前しかみてねぇんだ。俺はお前を女としかみれねぇ」


何言ってんだこいつは。
拳を握りしめ、それを桐生に叩き付けるが、そんな攻撃はあっさりと捉えられてしまう。


「っ・・・・」
「お前はどうしてそうやって・・・・俺を本気にさせるんだ?」


何を、言ってるんだ?

桐生の瞳が、怪しい光を帯びて、細められる。
私の手を捉えていた手がグッと引かれ、私は抵抗することも出来ずに桐生に抱き寄せられる形になった。


「俺はここに、過去を忘れるために来た」
「・・・・っ」
「お前の知ってのとおり、俺はたくさんの女と遊んできた。だがお前は違う・・・お前は嘘偽り無く、常に真っ直ぐ、俺のことを見ている」


この街は、祇園。
遊女からすれば桐生は金持ちのお客。

だが私にはそんなものは関係ない。
媚を売る必要も無い。
真っ直ぐ見て、何が悪い。


「どれだけ俺を煽れば気が済むんだ・・・・」
「さっきから何を言って・・・っ」
「分からねぇのか?・・・・お前を手に入れたくて、しょうがなくなるのを我慢してやってるって話だ」
「な・・・・なに!?」


塞がれた、唇。
気付けば私は桐生に口づけをされていた。

もがこうにも、力が入らなくて抜け出せない。
ぞくりと、味わったことの無い感覚に足が震える。


「ッ・・・」
「好きだ」


何、言ってるんだ。
理解できず麻痺していく考えを、戻すことが出来ない。

好き?

私、を?


「馬鹿・・・?」
「言ってくれるじゃねぇか。なんと言われようが、俺はお前を手に入れる」


目の前の桐生が、カチリと音を立てて刀を抜いた。
冗談だろ?と、いつものようにへらっと笑って見せても、桐生の瞳は変わらない。


「ま、まて。女が欲しいなら遊女と遊べばいいだろ!」
「お前を狙ってるのは遊びじゃない・・・本気だ」
「よく分からねぇよ!」
「今まで俺も我慢してきた。だがそこまで無防備にされたんじゃ・・・」


突きつけられる刀。
ニヤリと浮かべる悪い笑み。

ドキリとしてしまった、私の心。


「我慢しねぇよ。俺はそういうお前が好きなんだ。だからそこまで俺に女としてみてもらいたくないなら・・・お前が女だということを分からせてやるまで俺が”教えてやる”」


私はその言葉を聴き終えた瞬間、抵抗することなくその場から逃げ出した。
後ろから桐生が追ってくる足音が聞こえるが、かまわない。

戦えば勝てるか分からない相手。
それ以上に、今の私の心で、桐生をまともに相手に出来るわけ・・・。


「おいどうした?お前が勝ったらお前を認めてやるよ。ただし俺が勝ったら―――」











































本気にさせた言葉。本気にさせた、勝負。
(お前を手に入れる好機を、おまえ自身が作ったのが間違いだ)
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