いらっしゃいませ!
名前変更所
飲み物を飲んでたらすごい顔のベジータに拉致られた。
ピッコロの不機嫌そうな殺気が、遠く離れた私達に突き刺さっているのが気になる。
「いきなり拉致るなんて何~!?てかブルマの誕生日なのに、何トレーニングスーツ着てるの?」
「うるさい、今はそれどころじゃない!」
なんなのこの王子。
自分の奥さんの誕生日パーティだっていうのに、トレーニングスーツ着て、しかもブルマじゃなく私を拉致って。
何を考えているのかさっぱりだ。
頭を抱える私を無視し、目の前の王子は不機嫌全開で私の腕をつかむ。
「貴様、ビルス様を知っているな!?」
不機嫌全開の王子から出てきた言葉に、苛立ちがさっと消えた。
せっかくピッコロのおかげでソイツの名前を忘れてた所なのに。
というか、なんでベジータがその名前を?
「・・・・さっき、北の界王から連絡があった」
「北の界王?なんでまた・・・・」
「地球に、ビルス様が向かっているとな」
「はぁ!?」
思わず大きな声が出た。
いやだって、こんなところに何の用があるのよ?
地球はビルスの星からだいぶ遠いはずだ。
あの気まぐれ破壊神は、そういうのをめんどくさがる。
よほどのことが無い限りこんな場所まで来ないはず。
「何したのよ!?」
「は?」
「ビルスがこんなところに目をつけるわけないでしょ!ベジータがなんかしたんだろ!」
「何故俺になる!!貴様、馬鹿にしてやがるのか!?」
「怪しい!」
「ぶっ飛ばすぞ貴様!!」
「受けて立つわよ!」
お互いに拳を構えたその瞬間。
ぞわり。
走ったのは、またあの感覚。
喧嘩してる最中じゃないと一瞬で意識を引き戻された。
目の前のベジータは拳を握ったままだ。
そうか。神の気配は、普通の人には分からないんだ。
「っ・・・・今は、こんなことしてる場合じゃないね」
握りしめた拳を下ろして、空を見る。
北の界王も連絡が遅いんじゃない?
感じる気配は、もうかなり近い。
私が油断してたのもあるけど。
「それで?ビルスは何の用でここにくるって?」
「それは知らん。・・・・いや、それよりもだ、奴はあとどのぐらいで来る?お前なら分かるんだろう?」
「うーん、そうね・・・」
目を瞑って気配を見る。
ぼんやりとだけ見えていた気配が強くなっていく。
今どこにいる?
彼らは、今。
それを突き止めた時、私は苦笑しながら目を開けた。
「・・・・遅かったかな。恨むなら界王を恨んで?」
「何?」
ベジータはまだ気づいていない。
その気配が、もう残り数歩のところにいることを。
私とその気配の目が合う。
彼は私のこの姿を見るのは初めてで、少しだけ驚いたような表情を浮かべた。
それもすぐに元に戻って。
気まぐれな猫の顔をした神は、ベジータに意地悪く囁く。
「君たちの気ってのは、僕達には通用しないようだねぇ?」
「ッ・・・!!」
神――――ビルスの声に驚きの声も出なかったベジータは、私の方に飛び退いた。
ベジータの気がありえないぐらいに揺らいでいる。
ある意味、貴重な場面だ。
「ビ、ビルス、様」
「おや、僕のことを覚えてるんだ。・・・君の親父さんには、お世話になったから・・・ねぇ?ベジータ王」
「・・・・っ」
「そうだ、君に聞きたいことがあるんだよ。超サイヤ人ゴッドって知らない?」
「い、いえ・・・そのような、話は、聞いたことが・・・・」
気が分からないベジータにも伝わる、威圧感。
私はベジータを守るように前に立った。
久しぶり、なんて言う間柄でも無い。
だからといって、別にすぐおっ始めるような仲でも無い。
「・・・・君がこんなところにいるとはな、ルシフェル」
静まる空気。
私もいつもの自分を消して、出来る限り威厳ある表情を作った。
「アンタ達は変わってないわね、ビルス、ウィス」
「貴方は随分と変わりましたねぇ・・・」
ウィスの視線が私の翼と尻尾に注がれる。
そう、私はもう”ルシフェル”じゃない。
彼らが知ってる私の姿は、この姿じゃない。
でも悪魔になったからってナメてもらっちゃ困る。
大体、こんなところに何しに――――。
「あら?ベジータ、こちらはどちらさま?お友達?」
「なっ・・・!?」
絶妙なタイミングでブルマが私達の間に入ってきた。
ブルマは得意のその性格でビルスとウィスに警戒を抱くこと無く普段通りに絡み始める。
その様子を見て、ビクビクしているベジータの方が面白い。
「はじめまして。私はベジータの・・・美人妻よ」
「ベジータ婦人。これはこれは、よろしく」
「あら、ベジータの友人にしては品のある方ねぇ?」
思ったことを口にするブルマに、怖いものというのは無さそうだ。
ブルマはベジータや私の表情を気にすること無く話を進めていく。
そして最終的にはビルス達を料理で釣ってパーティに連れて行った。
「さぁ、こっちよ!ついてきてー!」
「あらあら。では私もおじゃましますね」
「いいわよ!どーんと楽しんでってちょうだい!」
なんというか。
今回はブルマの無茶っぷりに救われたような気がする。
それを理解していないベジータは、ブルマの行動に拳を震わせていた。
今にも怒鳴り掛かりそうな勢いのベジータを止めて、小さく囁く。
「ベジータ、今回はブルマに救われたんだから、静かにしといて!」
「何?アイツは下手すればビルス様を怒らせて・・・っ」
「いいこと教えてあげる。ビルス達は食べ物に弱い!・・・つまり、ブルマがご馳走に話をフッたのは正解だったのよ?」
私が指差す方向に映る、子供のようにはしゃいで料理を食べる二人の姿。
あれが宇宙一恐ろしい美食家の姿だ。
気に入られなきゃ、破壊あるのみ。
・・・・でも。
「地球の食事は正直天界の料理より数倍美味しいから、気に入られると思うよ」
「・・・・なら、いいが」
「ま、あとはビルスが機嫌を損ねないように私達で見てるしかないね」
「チッ・・・分かった」
舌打ちしながらも進んで行動するベジータは、ビルスに対して何か恐怖心があるように見えた。
ビルスの話を聞いただけで、あんなふうになるだろうか?
もしかして過去に会ったことがあるとか?
聞いてみようと思ってベジータを追いかけた私は、首根っこを誰かに掴まれて止まった。
振り返らなくても分かる、一番感じ慣れた気。
「ピッコロ」
「・・・大丈夫か?」
「大丈夫!心配してくれたの?」
「当たり前だろうが。・・・・本当に、破壊神ビルス様がここにくるとは・・・」
「でも今のところ問題は無さそうだから、大丈夫じゃないかなー」
食事を楽しんだり。
他の人達と談笑したり。
わりと皆に打ち解けてるからちょっと安心した。
今までのビルスって、すぐ相手を脅して、気に食わなきゃ破壊って感じだったから。
まぁ、地球のご飯が美味しいだけって可能性もあるんだけどね。
「・・・とりあえずは、大丈夫そうだな」
「そうだね・・・私達も何か食べる?」
「フッ・・・・どうせお前はこれが食べたいんだろう?」
そう言ってピッコロは魔術でアイスを取り出した。
「あ、そ、それ、私がさっき狙ってたやつ!」
「取っておいてやった」
「ほんと?ありがと!!いっただっきまー」
「ほら」
「・・・・っ」
ピッコロから奪おうとしたアイスは遠ざけられて。
代わりにスプーンに乗った一口大のアイスが目の前に運ばれる。
え、これって、まさか。
「い、いや、え、なんで?」
「たまにはいいだろう?」
「くっ・・・」
嫌じゃないけど、なんでいきなりあーんってされなきゃいけないのか。
ピッコロの気分って分からないだけに、恥ずかしくてためらってしまう。
でも、食べたい。
誘惑に負けた私は目を瞑って口を開けた。
口に広がる冷たい感触。
そしてほのかに香る、甘いバニラの香り。
「美味しい・・・」
「ふっ・・・やっと肩の力が抜けたな」
「え・・・?」
「ずっと力が入っていたぞ。・・・そんなに気にするな。何かあればここにいる全員が力になるんだ」
気にしてないつもりでも、力が入ってしまっていたらしい。
ピッコロの優しさに感謝しつつも、またやられたらたまらないのでアイスを奪い取った。
「っ!おい」
「残りは自分で食べますー」
「・・・大人しく食べさせられてればいいだろうが」
「嫌ですーっ」
「なら俺にも食わせろ」
「えー?どうしよっかなー?」
「ほう・・・?」
「うあ!!いきなり掴むな!こぼれたらどうするッ!!」
何だかんだ何事もなく。
私達もパーティを楽しむこと1時間。
ついに催し物が始まりだした。
ステージの前に皆が集まり、賑やかさが増す。
「地球はどう、ウィス?」
そんな中、私は一人もくもくと食べ続けているウィスに話しかけた。
彼とは長い付き合いだ。
謎の多い彼の存在を、私は天使になった時から知っている。
そのとんでもない強さと。
何を考えているか分からない、その表情。
「最高ですね、ここまで美味しい食事があるとは知りませんでしたよ」
ゼリーを頬張りながらそう話す彼を、”ビルスより強い存在”だと知る人は少ないだろう。
「ほんと、食べるの好きねー?」
「これといった楽しみは、このぐらいしかありませんからね」
「・・・まぁ、否定はしないけど」
私達が過ごす時間の長さは人間たちとは比べ物にならない。
その中で楽しみを見つけるのは、とても大事なことだ。
「それよりも私は貴方のことの方がよほど驚きましたよ」
ウィスの目が一瞬、冷たく光った。
何を言われるのかと身を硬くすれば、その冷たさはすぐに消えて無くなる。
読めない、人だ。
「ふふ、そう警戒しないでください。私は貴方が下界の人間と結婚していることに驚いただけですよ」
「もう天使じゃないからね。問題ないでしょ?」
「貴方が天使じゃなくなったっていう方が問題あるような気がするんですけどね」
「・・・・」
ウィスの鋭いツッコミに言葉が詰まる。
でも何を言われようと、私には関係ない。
私は天使のルールに縛られるつもりはないし、戻るつもりもない。
「残念ですねぇ、貴方は次の破壊神の候補でしたのに」
とんでもない発言に、飲み物を飲もうと思っていた私は咳き込んだ。
「げほっ!ア、アンタ何言ってんの・・・?」
「天使の中で一番の力を持った貴方なら、ビルス様の代わりに・・・」
「物騒なこと言うな!・・・だ、大体、天使の私がそんなことするわけないでしょ・・・」
守りはしても。
破壊なんて、したことない。
私が天使として持ってる力は、守るためのものだから。
「そういうところは真面目なんですねぇ」
”そういうところ”
言葉に引っかかったが、何も言わないでおく。
悲しいが否定出来るような働きを天使の頃にしてなかったのも確かだし。
あえてスルーし、話を続ける。
「それで、ウィスたちは何しにきたの?」
「何しにとは?」
「・・・何も目的なしに、こんな星に目をつけるとは思えない」
「あぁ、それはビルス様の命令ですよ。なんでも、この地球に・・・何か、探したい人がいるんだとか」
「探したい人?」
「超サイヤ人・・・ゴッド、とかでしたかね」
「・・・・・」
ああ、そういえば。
ブルマに連れて行かれる前、ビルスがベジータに聞いてたな。
まったく聞き覚えのない単語だったから、からかいか何かだと思ってたけど。
まさか本当に実在する奴の名前なの?
「”超サイヤ人ゴッド”?うーん。超サイヤ人の上位って感じ・・・かな」
「そうですねぇ・・・そこら辺は私達もよく知らないのですよ」
「知らないで来たの・・・?」
「ビルス様がちゃんと調べてくると思うんですか?」
「な、何気に酷いね・・・・」
喋ってる間もウィスはもぐもぐと何かを食べている。
少し警戒が解けた私は隣に座ってそれを覗きこんだ。
「ふふ、それ美味しい?」
「ええ・・・!これはなんという食べ物でしたっけ?甘酸っぱくてやみつきになります」
「苺のムースだね。そういうのはあんまり天界や異界にはないから、新鮮だよね」
私も初めて地球に来た時は、食べ物の美味しさに感動したのを覚えている。
それほど地球のご飯は美味しいのだ。
これならビルスも機嫌を損なうことはないだろう。
そう思いながらステージの方を見れば、ビンゴゲームが始まる音が聞こえてきた。
「っ!行かなきゃ!ちょっと行ってくる!」
ブルマの誕生日パーティのビンゴゲーム。
世界一大金持ちのビンゴゲーム・・・もちろん目的は景品だ。
「はいはーい!!景品、出すわよ!めんどくさかったらお金に換金してもOKよ!」
ブルマの一言に18号が目を輝かせているのが見える。
ブルマのビンゴゲームの景品は、一番小さな景品でも船とか車という凄い豪華さだ。
ちなみに真ん中ぐらいの景品でお城とか別荘。
レベルが違う。
そして一番最高の景品は――――。
「今回のビンゴゲームの最高景品は、これよ!!」
ステージの上でも一際目立つ台座に置かれた”何か”
その台座の布が引かれた瞬間、パーティ会場がざわめくのを感じた。
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