いらっしゃいませ!
名前変更所
創造と破壊は正反対。
世界に生命が満ち溢れすぎても駄目だし、無さ過ぎても駄目。
世界のバランスのためには、破壊神も必要って話なんだけど。
もちろんそれはバランスのためであって。
バランスを考えない破壊はもっての外。
「ちょっっと!!!何考えてんのよ!?」
宇宙空間の中。
破壊されたばかりの星を目の前に、破壊したであろう犯人に怒鳴り掛かる。
怒鳴り掛かられた猫人間――――ビルスは、それでも神かってレベルで呑気な表情をしていた。
「何って、見ての通りだよ?」
「見てのとおりだよ?じゃない!ここは私の管理区間だし、この区間の破壊が進みすぎてるって話をこの前したばっかでしょ!?」
破壊と創造は対であり、バランスに必要不可欠なモノ。
だがそれは行き過ぎれば一瞬で世界を破滅させる恐ろしい存在。
私はここ一帯の銀河の生命を生み出している天使だ。
そして39年前のビルスの破壊のせいで、一番大打撃を負った地域。
なのに・・・またコイツ、ここの星を壊しやがって・・・!!
「完全には壊してないだろ?半分は残してあげたさ」
「半分残ってればいいって問題じゃない。ウィスも何とか言ってよね!?」
「・・・仕方がありませんよ、ビルス様は「ウィス」」
ウィスが何かを言いかけた瞬間、ビルスが一瞬で気を上げて黙らせた。
「え、何?嫌がらせ?嫌がらせなの?」
「さーね?」
「なに、やるつもり?」
わざと私の管理地域狙ってるっていうなら、こっちにだって考えがある。
創造の天使。
聞こえはいいけど、その力は破壊神と同等のモノを持っている。
やろうと思えば私自身が破壊を行うことだって出来る。
「ここでやりあえば、君の星もっと壊れちゃうと思うけどなぁ・・・」
「~~~~っ!もういい!帰る!!」
毎回こうだ。
どちらにせよ、たまに目覚める気まぐれ破壊神の破壊を止めることは難しい。
私は諦め、自分の星に帰ることにした。
苛立ちながら踵を返した私に、ビルスの手が伸ばされる。
「どこにいくんだ?」
「帰るの、私の星に」
「なら僕達も着いて行くか、ウィス」
「はい」
「え、なんでよ!?」
まさか。
「私の星まで壊すつもりじゃないよね?」
「ご飯が美味しくなかったら半分壊すかもね」
「へ?なんで食事用意しなきゃいけないの」
「僕のためにさ」
「あぁ、ついでに私のためにも」
「ア、アンタ達ね・・・・」
好き勝手言う二人にもう怒りすら湧いてこない。
出来れば二人を追い返したいけど、どうせそれも叶わないだろう。
諦めた私は手の中に杖を出し、うるさい二人の手を掴んだ。
こうなったら更に文句を言われる前に連れて行くのが一番。
「おや、潔いね?」
「もしここで断っても、ウィスに頼んで私の星まで来て私の星を壊す・・・どう?」
「正解だね」
「なら連れて行くしか選択肢ないだろ!」
半ギレで杖を回し、魔法を発動させた。
ウィスもこの類の魔法は使えるけど、私のは特別。
自分の星には一瞬で飛べる、お手製の魔法の杖だ。
「はい、つきました」
がらりと変わる視界。
すっと軽くなる空気。
周りを見回せば、見慣れた私の星があった。
花畑や透き通る湖だけがあるこの星に降り立つ、破壊神とその従者。
「んー。すごい違和感」
「何がだい?」
「アンタ達がここにいるの」
「あら、それは心外ですねぇ」
「壊しちゃう?」
「やめろ!」
バシッとビルスの腕を掴み、そのまま自分が住む城へと引っ張った。
まったく、なんでこんな奴らに奉仕しなきゃいけないのだ。
心の中でブツブツ文句を言いながら、魔法でバシバシ扉を開けていく。
一面大理石の城。
白と紫だけが支配する怪しい空間。
「これが天使の城とはな」
何?
天使の城だから、真っ白な世界で埋め尽くされてるとでも?
残念ながら私はそんな性格はしていない。
この城も、私の趣味。
「その後ろについてる翼は偽物だったりしてな?」
「ビルス様、天使の翼は神聖なるものなのですよ。あまり触っては・・・」
「おいウィス。すんごくふさふさだぞ」
「なんと?ではわたくしも失礼して・・・」
「・・・・き、貴様ら・・・」
歩いている最中すら静かに出来ないらしい。
突然私の天使の翼を触りだしたビルスが、その感触を気に入ったのか強く触り始める。
でも、ここで怒って暴れても、被害に合うのは私の星なわけで。
「・・・あんまり触るな」
「別にいいだろー?減るもんじゃないし」
「千切れたらどうするの?それ、生えるまでにかなり時間掛かるんだけど」
「ちぎれるのか?これ」
「っだ!!ばかか!!言ってる傍から抜くな!!」
ぴりっとした痛みと共に、ビルスの手元に現れた白く光る羽根。
私の、天使の羽根だ。
別に抜かれたからと言ってどうかなるわけじゃないが、一応痛みはあるのだ。
抜かれて良い気がする奴なんて居ないだろう。
「ほー、抜いても光るのか。面白い羽根だねぇ」
「そら天使の羽根だからね。そこら辺の鳥の羽根とは違う」
「なら記念にもう少しもらっていくか」
「っだ!!痛い!!」
「我慢しろ」
「意味分かんないよ!」
あぁもう、怒鳴りすぎて疲れてきた。
何言ったって無駄。
それを理解した私はただ黙って二人を城の奥へ案内した。
城の奥には大きな机とシャンデリア。
手に持っていた杖で床をコツンと叩く。
―――――すると。
「ほう、これはこれは」
ウィスがテーブルを見て目を細めた。
さっきまで何も無かった机の上に並べられた、料理の数々。
私が祝い事のために時々準備したものを魔法で復元したのだ。
湯気が立ち上る料理を目の前に、私のことなんか放置して料理にむしゃぶりつく二人。
「何なんだ・・・」
美味しそうに料理食べてくれるのは嬉しいけど。
「これはなんという食べ物だ?」
「それは確か、そう、ハンバーグっていう食べ物だったかと思いますよ」
「なんで知ってるんだ」
「前に天使の総会に呼ばれた時に食べたんです」
「なーんでお前だけ食べてるんだよウィス!」
「そう怒らないでくださいよ、今回は全てビルス様に差し上げますから」
「もう食べたあとだろうが」
本当に神様なのか、こいつら。
どうせ私の方なんか見ちゃいないんだろうと、食事に夢中な二人を置いて自分の部屋の方へそっと歩き出した。
コツコツ。
私の歩く音だけが聞こえる冷たい廊下。
まるでお化け屋敷のような暗さ。
その暗さの中に光る、紫色の光。
「ふー」
自分の部屋についた私は、大きなベッドに身体を投げ出した。
自分の身体がふかふかのベッドに沈む。
このぐらいふかふかじゃないと、寝た時に翼が痛いから。
あー、ウィス達は自分で帰れるし、このまま一眠りしちゃっても・・・。
「おい」
「っわ!?」
突然頭上から聞こえた声に変な声が出る。
目を開けると、そこにはさっきまで食事をしていたはずのビルスがいた。
「・・・何?」
「勝手に居なくなるなよ。星、破壊してもいいのか?」
「なんで私が居なくなったら破壊していいことになんのよ」
「なら勝手に居なくなるなよ」
なんでさ。
アンタはいつだって破壊を自由に楽しむ神でしょ。
なんでそんなこと言うの。
それもまた、気まぐれ?
私でからかって遊ぶため?
「からかって遊ぶなら他をあたって?」
「別にからかうなんて言ってないだろ?」
「じゃあなんで私がいなきゃいけないのさ。食事は出したでしょー」
「・・・・・さぁ、な。なんとなく」
「ビルスって分かんないわ。へんなやつ」
気まぐれな破壊神のことなんて、分からなくて当たり前なのかもしれない。
私はベッドに寝転がったまま欠伸を浮かべる。
それにつられて、ビルスも大きな口を開けた。
「ふぁう」
「眠いの?」
「・・・少しね」
「39年も寝たくせに?」
「お前のせいだろ。お前を見てたら眠たくなった」
「なにそれ」
ほんと、何考えてるんだか。
「お前の心も、僕には分からない」
突然つぶやかれた言葉。
ぎしりとベッドが軋む。
気づけば私を押し倒すようにして、ビルスが私の上に乗っていた。
何この状況?
そんな疑問を口にする前に、ビルスが笑う。
「分からない?・・・読んだくせに」
「全部読めるわけじゃないのはお前も知ってるだろ」
「知らないわよ。私はアンタみたいに心を覗いたことないし」
「なら覗けばいいだろ?」
「・・・興味、ない」
興味ないなんて嘘。
何を考えてるのか。
私の地域の星ばっかり破壊するのはなんでなのかとか。
知りたいことばっかりだけど。
何故か、見たくなかった。
「知りたいかい?」
あぁ、また。
「僕が知りたいことを教えてくれるなら教えてあげてもいいよ」
何言ってるんだ。
アンタの知りたいことなんて全部こうやって見てるくせに。
「それだけは見えないんだ。僕でも、お前の知りたい部分だけは見えない」
「へぇ?何が知りたいの?」
「お前の、僕への気持ちだ」
「ビルス・・・への?」
いきなり何を聞くかと思えば。
「大事なことさ。お前は、お前の星を壊す僕が嫌いか?」
さみしげに揺れたビルスの表情に、ごくりと喉が鳴った。
手も、何も動かせない。
この体勢だって抵抗すれば逃げ出せるはずなのに、それが出来ない。
なんで。
「・・・・」
「答えろ」
ぞわり。
ビルスの低い声が私の耳元で響いた。
命令口調なのも、今は気にならない。
大体、そんなの意識したことあると思う?
好きか嫌いかなんて、分かりきったこと。
「・・・・ッ嫌いなやつを自分の星に呼ぶと思う?」
「じゃあ、好きか?」
「へっ?」
「好きかって聞いてるんだ、僕のことが」
神様が恋愛を語るなんて思ってなくて。
動揺だけが私の心を支配する。
「ぐちゃぐちゃだな、お前の心は」
「誰のせいだと思ってるのよ」
「僕のせいかな」
「分かってるならどいてくれる?アンタの質問の答えを探しに、寝てくるから」
「ならその答えが出るまで、僕もここで寝よう」
気まぐれな破壊神の質問。
どうせ、深い意味なんて無いんだ。
「起きたらすぐ聞くからね、覚悟しておくように」
「・・・わかったわよ、おやすみ」
「あぁ、おやすみ」
また、私をからかうための、ただの遊び。
―――――なんて思ってた私が甘かったと思わされるまで、あと1年。
私達はわずかな昼寝をして、同時に目を覚まして・・・そして彼は口にした。
「さぁ、質問の答えは出たかい?」
PR
この記事にコメントする
サイト紹介
※転載禁止
公式とは無関係
晒し迷惑行為等あり次第閉鎖
検索避け済
◆管理人 きつつき ◆サイト傾向 ギャグ甘 裏系グロ系は注意書放置 ◆取り扱い 夢小説 ・龍如(桐生・峯・オール) ・海賊(ゾロ) ・DB(ベジータ・ピッコロ) ・テイルズ ・気まぐれ ◆Thanks! 見に来てくださってありがとうございます。拍手、コメント読ませていただいております。現在お熱なジャンルに関しては、リクエスト等あれば優先的に反映することが多いのでよろしければ拍手コメント等いただけるとやる気出ます。(龍如/オール・海賊/剣豪)
簡易ページリンク
【サイト内リンクリスト】 ★TOPページ 【如く】 ★龍如 2ページ目 維新
★龍如(峯短編集)
★龍如(連載/桐生落ち逆ハー)
【海賊】 ★海賊 さよならは言わない
★海賊 ハート泥棒
【DB】 ★DB 永遠の忠誠(原作・アニメ沿い連載) ★DB 愛知らぬが故に(原作・アニメ沿い連載) ★DB プラスマイナスゼロ(短編繋ぎ形式の中編) ★DB(短編)